薄明と双子の姉妹 (リメイク中)   作:きょうこつ

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『送り火』ではありません。


儀の宣言そして狩人を送る焔

「もぅ…夜か」

 

空がオレンジ色の面影を無くし夜へ染まっていく中、家に帰り準備を済ませたゲンジは外に出て里の入り口である橋に出るとそこから更に暗く染まる空を見上げていた。

暗く染まる空は雲に包まれ、いつもなら見える綺麗な星々が一つも姿を見せなかった。

 

見れば里の灯籠には炎が灯されていった。

 

刻一刻と迫る決戦の時にゲンジは心を震わせる。

思い出すのは初めてヒノエに会った時に自身から放った言葉だった。

 

『百竜夜行を根絶するまで協力してやる』

 

そんな一言を放ったのが昨日のように思えてしまう。あの日からまだ半年も経っていないというのにここまで進展するとは自身でも予想し得なかった。

 

「もうすぐだ…」

 

あの時ヒノエと交わした約束をようやく果たせる。そしてそれが終われば2人は死の運命から解き放たれ………婚約の儀。

 

「…!!!」

 

突如として頭の中に現れてしまったその単語にゲンジは顔を真っ赤にさせた。婚約の儀を行う事で自身とヒノエ、ミノトは正式な夫婦となる。自身もあの2人と共にいられるのは本当に嬉しい。心の奥底が熱くなってしまう。

 

 

 

すると

 

「何がもうすぐなのですか?」

 

「!?」

 

突然と背後から声が聞こえ、その声に驚いたゲンジは即座に自身の世界から現実へと戻されわ反射的に反対方向へと大きく後退した。

 

「あらあら。そこまで驚かなくても」

 

「本当に貴方は神経質ですね」

 

その行動をからかうような声が聞こえた。見てみればそこに立っていたのはヒノエとミノトだった。

 

「な…なんでここに…」

 

「ご夕飯の支度ができたので呼びに来ました」

 

「そんな時間か…」

 

夕食の用意ができたと知るとゲンジはヒノエとミノトと共に家に向かうべく脚を進めた。

 

「それよりも先程は何か仰っていましたね。何て言っていたのですか?」

 

「べ…別に!どうでもいい話だ!ほ…ほら、さっさと行くぞ!腹が減った!」

 

「あらあら♪」

 

「むぅ…気になります」

ヒノエは先程の自身が溢した言葉について追求してくるが、ゲンジは首をふりながらそれをほのめかし、2人の横を通り過ぎた。

 

「……」

だが、なぜか心が苦しい。まるで体の中に空気が詰まっているかのように。言わなければスッキリしない。

 

『あまり溜め込むのは良くありませんよ』

 

「…!」

 

あの雨の日の夜。自身を抱きしめながら囁いたヒノエの言葉を思い出すとゲンジは決心を固め、2人に向けて身体を向けた。

 

「あら?どうしましたか?」

 

突然と立ち止まり、振り返ったゲンジに後ろから付いてくるヒノエとミノトは首を傾げる。

 

振り向いたゲンジは夜でも輝く彼女達の瞳を見つめた。

 

「ヒノエ姉さん…ミノト姉さん」

 

2人の名前を呼びながらゲンジは2人に向けて脚を進めて行った。一方で名前を呼ばれた2人は何故か分からず首を傾げていた。

 

そして2人の目の前に近づいたゲンジはつま先を立てて背伸びをすると自身の頭を彼女達と同じ程まで上げる。

 

 

 

そして

 

 

 

___背伸びをしたゲンジはヒノエ、ミノトの順に自身から口付けをした。

 

 

「「!?」」

口元に広がる感触にヒノエとミノトは数秒遅れてから口元に手を当て頬を赤く染めていた。

 

「ゲ…ゲゲ…ゲンジ!今のは…!」

 

「待て!!」

ミノトの衝撃のあまりに出そうな言葉をゲンジは即座に声を出して遮る。接吻を自身から初めて仕掛けたゲンジは頬を赤く染めながらも2人に目を向けると、震える口調で思いを告白する。

 

「俺は必ず2体を討伐して2人を助ける…。だからその…」

 

言葉に強みがなく、所々に弱々しい音色が出ていた。だが、その言葉はヒノエとミノトの心に深く浸透していった。

 

いや、それだけではゲンジの言葉は終わらなかった。

 

「そ…その…!!」

 

話そうとする度に口元が更に震える。ヒノエとミノトはゲンジが溜めている言葉が気になり、頬を染めながらも何も聞かずに待っていた。

 

そして ゲンジは勇気を振り絞りながら2人に向けて心から思う事を一気に吐き出した。

 

 

 

「か…___帰ったらすぐ式をあげるぞ…!」

 

静まり返る空間へと放たれたその一言は辺りに響き渡ると共にヒノエとミノトの心の中へと再び深く浸透し、そして2人の顔を真っ赤に染め上がらせると共に心の中に宿っていた共鳴への恐怖を打ち消し快晴にさせた。

 

「「はい!」」

その言葉を受け取った2人は頬を真っ赤にさせながらも力強く頷いた。

 

その後、3人は家に戻るとエスラ、シャーラと共に夕食を取り、深夜に備えた。

 

そんな中でゲンジは自身から言い出したにも関わらずずっと頬を赤く染めていた。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

そしてその数時間後。薄暗かった空は完全なる闇と化し辺りを暗く染める。

 

「行くぞ。エスラ姉さん。シャーラ姉さん」

 

「あぁ」

 

「うん」

 

遂に来た出立の時。

この地域に存在しない希少種の装備『シルバーソル』を身に纏うとハモンから受け取った新たなる相棒『禍ツ刃ノ幽鬼イステヤ』を背中に背負い、準備が整ったエスラ達と共に家を出る。

 

外へ出ると先程まで灯されていなかった辺りの灯籠にも赤い焔が灯されており、風に吹かれながら揺らめいていた。

里の入り口には既にギルドの飛行艇が待機しており、数人の調査員がゴコクと話をしていた。

 

歩いていたゲンジ達は宿屋から出てきたトゥークと合流する。

 

「よぅ」

 

「おぅ。いよいよだなゲンジ」

 

「そうだな。死ぬなよ?」

 

「いきなりそれかよ…。ま、頑張るさ」

 

互いに言葉を交わしながらギルド調査員の待つ里の入り口に向かう。

 

里と鳥居を隔てる橋を渡る中、ヒノエとミノトは戦場へと赴く狩人達に向けて祈るように言葉を掛けた。

 

「皆さん。どうかお気をつけて」

 

「ご武運を…」

 

それに対して皆は頷く。

彼女達だけではない。ハンター達を見送るべくカムラの民全員がその場にいた。

 

「帰ってきたらウサ団子でお祝いしようね!」

 

「僕らは信じていますからね!」

ヨモギやイオリに続くかのように里の者達も次々と期待と励ましの声を上げ始める。

 

そして 皆を代表するかのようにフゲンが前に出るとゲンジ達へ目を向けた。

 

「金銀姉弟にトゥークとその弟子達。お主らに俺たちカムラの里…いや、このロックラック地方の命運を託す。頼んだぞ…!!そして必ず帰ってきてくれ」

 

フゲンの力強い言葉を受けたハンター全員は頷くと、自身の標的モンスターの潜む場所へ向かう飛行艇へと乗っていく。

 

ゲンジは龍宮砦へと向かう飛行艇にエスラに続き搭乗するべく脚を進めた。

 

その時だ。

 

「ゲンジよ」

 

「…?」

フゲンのプロペラをかき消す程の力強い声が響き渡り、名前を呼ばれたゲンジは搭乗する脚を止めて振り返った。

 

声を掛けたフゲンは歩み寄るとその巨大な手を肩に置いた。

 

「たとえどんな姿になろうとも、必ず帰って来い。俺達は待っているぞ」

 

「フゲンさん…」

フゲンの力強い言葉と共に後ろにいる皆も続くように声をあげていった。次々と聞こえてくる自身の帰りを望む声。その声が次々と自身の不安を打ち消していった。

 

 

すると、フゲンに続くかの様にヒノエとミノトも走り寄り、ゲンジの両手を握り締めた。

 

「ゲンジ…どうかご武運を」

 

「私も姉様も貴方の帰りを待っております。なので…必ず帰ってきてください!」

 

二人の温かい手に包み込まれた両手を見つめると、ゲンジは二人に目を向けてゆっくりと頷いた。

 

「…あぁ!」

 

そして ゲンジは皆に背を向けると飛行艇に乗り込む。ゲンジが乗り込んだ飛行艇はプロペラを回転させると辺りの草や葉を吹き飛ばしながら空へと飛び上がった。

 

いよいよ決戦の時。カムラの…いや、この地方の命運を背負ったゲンジ達ハンターを乗せた飛行艇は数百年続く災害の淵源と決着をつけるべくカムラの里の暖かい焔に見送られながら目的地へと向かっていった。

 

 

ゲンジとエスラの搭乗した飛行艇の向かうその先には風吹き荒れ雷が降り注ぐ禍々しい雲が広がっていた。

 

 

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