薄明と双子の姉妹 (リメイク中)   作:きょうこつ

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砦に舞う風神龍

    淵源 今こそ逢着せん。

 

____対よ 対よ 大地を喰らう轟雷よ_。

 

__対よ 対よ 叢雲を薙ぐ烈風よ_。

 

______稲妻 _狂飆 ほろに毀つ。

我ら楽土が かぞいろは_

_____いざ眷属で以て 天地を治めん。

 

◇◇◇◇◇◇

 

里を立ち数時間。龍宮砦へと到達したゲンジとエスラは飛行艇から降りると砦から離れた場所に設置されたキャンプに降り立つ。既に砦周辺には不気味な黒い雲が渦巻き空を侵食していた。

ゲンジを連れ戻した時に砦を照らしていたあの青い空が嘘のように消えていたのだ。

 

「久しぶりだな。お姉ちゃんと2人だけで狩りに出るのは」

 

「あぁ。確か数年前のドンドルマでリオレイア希少種以来か」

 

火炎弾を装填するエスラに頷きながらゲンジは首を鳴らす。フィールドに続く道には翔蟲の雄の個体『大翔蟲』が浮遊していた。

 

「コイツらを通じていけばいいらしいな」

 

「そのようだ。さて、準備はいいか?」

 

「あぁ…!」

 

2人は目の前に浮遊している大翔蟲の糸を掴む。すると、それに呼応するかのように大翔蟲は砦に向かって飛んでいき、自身らも引っ張られていった。

 

◇◇◇◇◇◇

 

大翔蟲に引き寄せられながら砦へと到達する。そこには傷だらけでありながらも自身らを待っていたかのように空を悠々と漂いながらこちらを睨む風神龍の姿があった。

 

二人は鉄蟲糸の手を離すと、その場に着地する。

 

「久しぶりだな…!!イブシマキヒコ…!」

 

あの日ゲンジを岩の下敷きにした所業を思い出し、エスラは心の奥底から怒りが湧き上がると共に頬に筋を浮かべボウガンを構える。

 

その一方で、縄張りへと進入された事によりイブシマキヒコは怒ると共に巨大な咆哮を放った。

 

 

「グロォオァァァアッ!!!」

 

「ぐ!?」

 

その咆哮は砦で聞いた時と同じく正に風そのものであり、耳を塞がせる程の大音量と共に自身の身体を吹き飛す強風が向かってきた。

その強風にエスラとゲンジは腕で顔を覆いながら吹き飛ばされないように耐える。

 

咆哮を上げたイブシマキヒコは鋭くギョロギョロとした不気味な目玉を向けると自身らを敵と認識し、排除すべく風を纏い辺りから強風を発生させた。

その姿からエスラはあの日、砦にて会敵した時の記憶を鮮明に思い出した。

 

「まさか交配を終えてもなおこれ程の力を持っているとはな…!」

 

イブシマキヒコの傷ついても衰える事のない能力と底知れぬ体力にエスラは驚きながらもボウガンを再び構える。

 

「前のようにはいかないさ。貴様の全力に満たないその力なぞ私達の前には無意味だということを教えてやろう」

 

その銃口を向けた時だった。

 

 

突然 ゲンジが突然武器を構えながら前屈みになると脚を踏み締め、駆け出した。

 

「うぉ!?」

一人で風神龍へと向かっていった事にエスラは驚き、即座に静止の声を上げる。

 

「おい!待てゲンジ!いくらなんでも単身で古龍は危険だぞ!」

 

エスラは叫びながら向かっていくゲンジへ静止の声を掛ける。だが、ゲンジの耳にそれは届く事なく、止まらずに風を纏う風神龍へと向かっていった。

たとえ手負いだとはいえ、相手は古龍だ。不用意な攻撃は命取りとなる。

 

「グルル…!!」

 

向かってくるゲンジから発せられる気迫からイブシマキヒコはあの日、自身を完膚なきまでに叩き潰したイビルジョー と重ね合わせると怒りの声を唸らせる。

 

そして発達した巨大な前足に風を纏わせると、向かってくるゲンジを吹き飛ばすべく前へ向けて突き出した。

 

突き出された右前足は風を纏いながらゲンジへと向けて突き出されていく。

 

 

 

 

 

その瞬間_。

 

 

「ヴォォァアアアアアッ!!!!」

 

突如としてゲンジの巨大な雄叫びが響き渡ると同時に身体が回転し、突き出されたイブシマキヒコの右前脚へとぶつかるとその地点から螺旋状に回転し、指先から腕の付け根にかけて螺旋状の切り傷を刻み込んだ。

 

その切り傷からは大量の血液が飛び散ると共に紫色の爆発が切られた手先から次々と連鎖爆発していき、イブシマキヒコの腕を紫色の爆炎に包み込んでいく。

 

その爆発によってイブシマキヒコの身体を浮かび上がらせる役割をする羽衣の部位が破壊され機能を停止した。

 

 

更に腕を斬り終えたゲンジは上空へと飛び立つとイブシマキヒコがこちらを向くよりも速く、翔蟲を取り出すと今度は左前脚の付け根に向けて翔蟲を放つ。

 

「ヴォラァァアアアッ!!!」

 

再び巨大な雄叫びが響き渡ると共にゲンジの身体が回転し、今度は腕の付け根から左前脚の先端部分にかけて一直線の傷が刻み込まれ、紫色の爆炎が発生すると共に左前脚の羽衣の部位を破壊した。

 

「ギャォォォォォ…!?」

 

身体を支える為の上半身の風袋が破壊された事でイブシマキヒコは滑空する為のバランスを失い、よろける。

 

 

だが、ゲンジは斬り刻む手を止めなかった。

 

左前脚へ回転乱舞を放ったゲンジは今度はよろけるイブシマキヒコの顔へと翔蟲を放ち、速度を上げながら接近すると、再び身体を回転させる。

 

 

そして

 

「ヴォオオオオオオオッ!!!!!」

 

最大限の叫びと共に頭部から尻尾の先端部分へとかけて一直線に刃を刻み込み、頭部に生えていた角を全て破壊すると共に背中と尻尾の部分に生えている羽衣の部位を発生した紫色の爆炎が包み込みその衝撃によって破壊した。

 

「グロォアアア…!」

 

一瞬にして大量に起こった爆破と斬撃によってイブシマキヒコは喉元から苦痛の声を上げると共に風を失い地面に落下した。

 

「おぉ!?す…凄いな…!」

 

その芸当にエスラは感嘆の声を上げると、即座に武器を取り出し落下したイブシマキヒコの顔面へ向けて火炎弾を放っていく。

 

 

その一方で__

 

 

 

_ゲンジはまだ止まらなかった。

 

「今まで散々とやってくれたな…!!!」

 

辺りへと響く静かな鋭い声がイブシマキヒコへ放たれると共に尻尾の羽衣を破壊したゲンジは、なんとその場からイブシマキヒコのほぼ真上の上空へと向けて翔蟲を放ち、高度を上げていった。

 

その高度は段々と高くなっていき、遂にはイブシマキヒコの身体が視界全てに収まるまでの高さまで飛び上がっていた。

 

その高度に達したゲンジは鎧の隙間から漆黒の目の中で鋭く輝く赤色の瞳をイブシマキヒコへと向けると共に一気に急降下する。

 

「その借りを返してやるよッ!!!」

 

 

落下し次々と速度が増していく中、ゲンジは手に持つイステヤの刃の先端部分を両手で重ね合わせると身体を回転させた。

 

回転速度は次々と増していき、それと共に武器からマガイマガドの“鬼火”を思わせる紫色の炎が現れ回転するゲンジを包み込む。

 

 

 

そして

 

「ヴォオオオオオァァアアアッ!!!!!」

 

 

その場に再び巨大な咆哮が響き渡ると共に紫色の炎を纏ったゲンジは回転する先端部分の刃を倒れるイブシマキヒコの背中に向けて抉り込ませた。

 

背中へと抉り込まれた刃は回転を止める事なく刃を更に抉り込ませると共に次々と爆破を巻き起こし、イブシマキヒコの硬質なゴム状の皮を突き破ると内部にある血肉を抉り取り、辺りへと撒き散らせていった。

 

「ギャァァァァ!!」

 

イブシマキヒコの悲痛な声が響き渡る。幾多もの死線を潜り抜け鍛え上げられたその肉体から放たれる本気の斬撃は傷を負いながらも能力を衰えさせない古龍を

 

___一瞬で瀕死に追い込んだ。

 

 

 

「ヴォォラァアアッ!!!」

 

刃を抉り込ませたゲンジは最後の最後で傷口を無理やりこじ開けるかのように回転を終えたと同時に交差していた腕を一気に開いた。

 

それによって不規則に作られた傷口が更に広げられ、イブシマキヒコの皮の下にある肉や血が更に辺りへ飛び散り血の雨を降らせる。

 

斬撃が終えた時にはイブシマキヒコの目からは光が失われており、力が抜けたかのように首を落としていた。

 

「これでこの前のはチャラな」

 

その言葉と共にイブシマキヒコの地面に垂れた頭にゲンジは右脚で踏みつける。

すると 火炎弾を撃ち終えたエスラはゲンジの行動に眉を挟め、警告する。

 

「おいゲンジ!流石に突然一人で向かっていった時はビックリしたぞ!」

 

「すまんな姉さん。どうしてもコイツだけは俺がぶちのめしたかった」

 

エスラの注意にゲンジは答えながらもイブシマキヒコの頭を踏みつけながら辺りを警戒した。

 

「…さて…残るは雷神龍か。順調だな」

 

イブシマキヒコと対峙した時に恐暴竜の声は聞こえることは無かった。この調子ならば奴を目覚めさせる前に討伐を終わらせる事が可能だろう。

 

早く探さねばならない。

 

 

そう思った時だった。

 

 

「「…!?」」

 

突如としてゲンジの立っていたイブシマキヒコの地点が揺れ始める。

「な…なんだ!?」

 

ゲンジは驚き辺りを見回す。見ると自身が立っているイブシマキヒコの身体の下にある地面が少しずつだが崩れていた。イブシマキヒコが地面に倒れた時の衝撃によって既に地面に亀裂が走っており、そこからゲンジが上空から刃の斬撃を無理やり抉り込ませた事で衝撃が上乗せされ、遂に地面が耐えきれなくなってしまったのだ。

 

 

「うぉ!?」

 

その揺れる地盤は遂に粉々に砕けると巨大な穴を形成し、瓦礫と共にイブシマキヒコとその胴体に乗っていたゲンジ、そして近くに立っていたエスラを穴の中へと引き摺り込んだ。

 

「これは…まさか…!!」

穴の中へと落ちていく中 エスラはゴコクからの言葉を思い出す。

 

『ナルハタタヒメは地中に潜り姿を消した』

 

 

「なるほどな…!!」

即ち…ここからが第二ラウンドの幕開けだった。

 

 

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