薄明と双子の姉妹 (リメイク中)   作:きょうこつ

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風と雷が交わる刻

対よ対よ__。

淵となりて狂飆なる我が対よ_。

戦に傷つきしその身…我に捧げよ_。我が淵源となりやや子を守ろう__。

 

 

対よ対よ__。源となりてやや子を宿す典麗なる我が対よ__。

我が身を喰らいやや子を護り給え__。

 

◇◇◇◇◇

 

 

地盤が崩れ、そこに広がっていたのは巨大な空洞であった。

 

その空洞の地面に向かってゲンジとエスラは落下していた。

イブシマキヒコの死体に乗っていたゲンジも空中での空気抵抗により、その身体が落下していくイブシマキヒコから離れてしまう。

 

落ちていく中でゲンジはエスラへと呼びかける。

 

「姉さん!翔蟲を!」

 

「あぁ!」

 

エスラとゲンジは翔蟲を同時に取り出すと、翔蟲を飛び立たせ鉄蟲糸を掴んだ。落下した二人の身体は翔蟲の糸に捕まる事で地面から約4メートルの位置にて静止し、何とか地面に叩きつけられる事態を防いだ。

もしもこのまま着地していれば必ず脚の骨を折っていただろう。

 

空中停止をした二人は鉄蟲糸を放し、地面に着地する。砦の地下に広がっていたのはなんともこの世のものとは思えない不気味な空間であった。

辺りは毒々しく紫色に輝く岩に囲まれており、まるであの世…『黄泉の国』を思わせる。

 

だが、その不気味な景色をゲンジとエスラは気に留める事はなかった。

そんな事に気を向けるほど…二人は余裕ではないからだ。

 

「まさか…こんな大きな巣を作っていたとはね…!」

 

エスラはボウガンを構える。

 

「コイツを殺せば終わる…!!」

 

全身に鬼人のオーラを纏いながらゲンジは双剣を構える。

 

二人の目の前には落下し、地面に叩きつけられたイブシマキヒコとそれを見つめながら浮遊するナルハタタヒメの姿があった。

やはり報告通りナルハタタヒメは地下にいたようだ。露払いを雄に任せて自身は気付かれにくいこの地下で産卵する魂胆だったのだろう。

雷袋のある股の部分には8つの球が光玉の如く輝いていた。

 

「ゴルル…!」

 

ナルハタタヒメは遂に巣にまで侵入してきた自身らに怒りを覚え、イブシマキヒコと変わらず鋭い瞳を向けながら喉を唸らす。

 

「一気に決めてしまおう」

 

「そうだな」

 

武器を構え、援護をするべくエスラは後退し、ゲンジは前屈みとなり構える。

 

「気をつけろよ…奴は雷をリング状に飛ばしてくるぞ。私が後方から援護する。奴に隙ができたら一気に叩き込め…!!」

 

「あぁ…!」

 

エスラからの忠告と作戦を耳に入れながらゲンジは双剣を握り締めると、一気に脚を踏み締めた。

 

 

すると

 

倒れていたイブシマキヒコの目に再び光が宿り、ゆっくりとその身を起き上がらせた。

 

「「…!?」」

 

突然とその身が起き上がった事でナルハタタヒメに向けて駆け出そうとしたゲンジは即座に脚を止めた。

 

「まだ生きてやがったか…!」

 

イブシマキヒコの命がまだ消えていないことにゲンジは眉を潜めると武器を構える。

エスラとゲンジはイブシマキヒコとナルハタタヒメへ警戒信号を送りながらその動きを見つめていた。

 

一方で、起き上がったイブシマキヒコは満身創痍でありながらもナルハタタヒメと同じく宙へ舞い上がる。イブシマキヒコとナルハタタヒメはその空中で互いを見つめ合いながらゆっくりと舞った。

 

 

 

 

 

その時だった。

 

 

 

 

__その場に肉を噛み締める音が響き渡る。

 

「な…!?」

その光景を見たエスラは驚きの声と共に瞳を震わせてしまう。目の前に立っているゲンジも広がるその光景に唖然としていた。

 

 

「ゴルル…!!」

なんと空中で待っていたナルハタタヒメは自身の目の前で舞っていたイブシマキヒコの喉笛へと喰らい付いたのだ。

喉笛へと喰らい付かれたイブシマキヒコはその痛みに身体を強張らせる。だが、イブシマキヒコは何の苦しみの声もあげなかった。まるで喰われることを望んでいたかのように。

 

すると、喰らい付かれた箇所が青く発光し、その青く発光する光はまるで吸い込まれるかのようにナルハタタヒメの身体の中へと移動し、溶けるようにして消えていった。

 

イブシマキヒコの身体はナルハタタヒメの口から離されると力が抜け落ちたかのように地面に落下した。

 

 

その瞬間

 

 

「グロォオオオオオオオッ!!!!」

 

ナルハタタヒメの身体から青と金色の混じったオーラが放たれると共にとてつもない咆哮がその場に響き渡り、大地を揺るがす。

 

「ぐぅ!?」

 

「この咆哮は…!?」

 

二人は耳の中に入ってくるその咆哮に耳を塞ぐ。辺りへと響き渡るその咆哮は風のように静かに雷のように力強く響き渡る異質なモノであった。

辺りを揺らすその咆哮は雷と強風を吹き荒らし、龍宮砦全域を揺らしていった。

 

 

その咆哮がようやく鳴り止むと二人は耳から手を離しゆっくりと目の前の光景へと目を向ける。

 

「おやおや…これは予想外だなゲンジ…」

 

「あぁ…まさかイブシマキヒコの力を吸収するとはな…!!」

 

そこに浮かんでいたのは通常とは異なる姿へと変貌したナルハタタヒメであった。

全身からは金色と青の混じった美しいオーラを放つと共に腕や尻尾そして背中には風神龍と同じ青く輝く羽衣が生えていた。

 

淵となりし風神龍の力をその身に取り込み源となりし自身の力が融合した事で真の姿へと生まれ変わったのだ。

 

『百竜淵源 ナルハタタヒメ』

 

 




 
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