薄明と双子の姉妹 (リメイク中)   作:きょうこつ

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百竜ノ淵源ナルハタタヒメ

「ゴルル…!!」

異質なオーラを放ちながら新たな姿へと覚醒したナルハタタヒメは唸り声をあげながらその鋭い瞳を自身らへと向けてきた。

 

すると、ナルハタタヒメは空中で身体を回転させ始めた。

 

「…!」

その動作はまるで鞭を振り回す際に狙いを定める予備動作の様に見えた。その動きを見たエスラは即座にその後の動きを見抜き、ゲンジへと叫ぶ。

 

「…避けろゲンジ!」

エスラはその場からナルハタタヒメから見て左に向けて走り出す。

 

その一方でゲンジもエスラと同様にナルハタタヒメの予備動作を見抜いており、彼女とは反対方向へと駆け出した。

 

その瞬間 

 

何かが叩きつけられる音と共に自身らがいた場所へとナルハタタヒメの巨大な尻尾が振り下ろされた。その巨大な尻尾は地面に叩きつけられると地盤を破壊し、巨大な砂埃と風圧を発生させた。

 

 

それだけでは終わらない。

 

「グロォオオオオオオオ!!!」

 

雄叫びを上げながらナルハタタヒメは身体を再び回転させると尻尾を巻き戻し鋭い瞳を別れて走っていった二人の内、ゲンジの方へと向けた。

 

「やっぱり俺を狙ってくるようだな…!!」

 

風神龍だけではない。雷神龍も自身を狙っているのだ。それは風神龍を取り込んでも変わらなかった。エスラなど二の次なのだろう。

ゲンジもその事は予測していた。次に来る動きを回避するべくゲンジはナルハタタヒメの動作から目を離さず立ち止まった。

 

「何をする気だ…?」

 

その動きを警戒しながら見ていた時だった。

 

「ギャォオオオオ!!!」

ナルハタタヒメは身体を回転させ、何とジンオウガの如く遠心力を纏わせながら巨大な右前脚を自身に向けて振り下ろしてきたのだ。

 

「ほぉ…?」

イブシマキヒコでも見る事が無かったその動作にゲンジは驚くも即座にその腕が振り下ろされる位置から駆け出し回避した。

 

「ハッ!とろいな…!」

ゲンジが立っていた箇所に轟音と共にナルハタタヒメの振り下ろされた右前脚が叩きつけられ、地盤が砕かれる。だが、その動作は今まで狩ってきたモンスターの中でも遅い部類に入るものであり、回避は容易であった。

 

このように威力は恐ろしいものの、それに入る行動自体が遅いモンスターはよくいる。

恐らくナルハタタヒメもその部類に属するのだろう。

 

だが、その慢心が仇となった。

 

「ゲンジ!!危ない!!」

 

遠くからエスラの叫び声が聞こえてくる。そしてそれを聞く前にゲンジも気づいていた。

 

なんとナルハタタヒメが手を叩きつけた場所から扇状の位置が次々と金色に輝いていたのだ。輝くその地面は輝くだけではない。

 

 

 

__“稲妻も走っていた”

 

 

 

その瞬間

 

 

ゲンジが立っていた地面が輝き出し無数の雷が現れゲンジの身体もろとも閃光に包み込むとその身体を吹き飛ばした。

 

「ぐぅ…!」

 

雷を全身に食らったゲンジは吹き飛ばされながらも何とか体勢を立て直し着地する。

だが、雷をその身に受けた事で身体の所々に痺れる様な感覚が広がり全身に稲妻が走り出す『雷属性やられ』となってしまった。

 

「ゲンジ!」

 

「大丈夫だ!…ぐぅ…!」

 

全身へと走る電撃。それは身体を少し痙攣させると共に脳を揺さぶり意識を朦朧とさせた。

 

「(まずいな…このままさっきの叩きつけ受けちまえば確実に意識がぶっ飛ぶ…)」

 

ゲンジは即座に意識を統一し始める。だが、ナルハタタヒメは攻撃の手を止めなかった。

 

「グロォオオオオオオオ!!!!」

 

巨大な雄叫びをあげると再びその身体を回転させ、巨大な尻尾を鞭の如くゲンジに向けて振り下ろした。

 

「ぐ!?」

 

迫り来る巨大な尻尾の影が迫り来る中 ゲンジは身体を横に投げ、何とかその叩きつけを回避する。

 

叩きつけられた尻尾は再び地面を砕き砂煙を発生させた。

 

 

 

一方でその光景を見ていたエスラはナルハタタヒメの注意を引くべくボウガンに斬烈弾を装填する。

 

「(奴はゲンジだけを狙っている…だが、痛みは感じる筈だ…!狙いを私に変えさせることは難しいが…よろけさせることはできる…!!)」

 

ナルハタタヒメの身体に目掛けて狙いを定めたエスラは装填した斬烈弾を放つ。

 

発砲音と共に放たれた斬烈弾はナルハタタヒメの身体に突き刺さるとその中に込められている破片が飛び散りナルハタタヒメの身体へと突き刺さった。

 

「グルル…!?」

 

次々と自身の尻尾や胴体に突き刺さる感覚にナルハタタヒメは違和感と共に痛みを感じ、ゲンジに向けて再び振り下ろそうとした腕を止める。

 

 

「ゲンジ!私が注意を引く!その隙に回復しろッ!!!」

 

ゲンジに向けて呼び掛けながらエスラは斬烈弾を次々と撃っていく。更にエスラは攻撃する中、ナルハタタヒメの身体に突き刺さる斬烈弾の音からそれぞれの部位の肉質の柔らかさを聞き分けていたのだ。

 

「貴様の弱点はその雷袋の様だな…!!」

 

「グルル…!!」

その言葉が正に的を射ている様に雷袋に集中的に無属性の斬烈弾が放たれ、破片が飛び散り突き刺さっていくとナルハタタヒメは苦痛の声を漏らしていった。

 

ナルハタタヒメは反対方向に逃げたゲンジを追いかけていったため、エスラとは距離がある。これ程の距離ならばたとえ身体の打ちつけだろうと雷属性攻撃だろうとエスラが見切るのは容易いだろう。

 

すると、次々と放たれていく弾丸にさすがのナルハタタヒメも警戒の的を変更すべきと判断したのか、手を泳がせながら方向転換するとその不気味な目玉をエスラへと向けた。

 

◇◇◇◇◇

 

 

エスラからの連続射撃を放たれたナルハタタヒメはその痛みに身体を唸らせる。

 

隙が生まれたと共にゲンジ即座に回復薬を取り出すと、飲み干した。回復薬一瓶が喉を通り、身体に安らかな感覚を与えてくる。

 

「…よし…!!」

 

体力を完全に回復したゲンジは武器を構え、エスラの方へと向かおうとするナルハタタヒメへと目を向けた。

 

 

 

その時だった。

 

 

「グロォオオオオオオオッ!!!!!」

 

変貌を遂げた時と同じ…いや、それ以上もの激しい咆哮が響き渡り辺りを振動させた。

 

「ぐぅ!?」

 

その咆哮によってナルハタタヒメ付近にいたゲンジはもちろん、遠くに立っていたエスラでさえも耳を塞いでいた。

 

そして 咆哮を放ったナルハタタヒメは地下の中央の部分へ向けて飛ぶと、その身体が青と金色の色彩が混ざったオーラを放ちながら輝き始めた。

 

すると

 

 

ゴゴゴゴゴゴ…!!!

 

その咆哮に呼応するかのように地面から地響きと共に何と雷を纏った3本の巨大な黒い柱が出現した。

 

その黒い柱はエスラはもちろん、ゲンジも即座に正体を見抜く。

 

“撃龍槍”だ。古の時代に古龍の腑を抉るために使われていた砦の主要な設備をナルハタタヒメは電気を用いて掘り出したのだ。

 

「おいおい…兵器を掘り出すなんざ初めてだぞ…!?」

 

本来ならばモンスターに用いる兵器をまさかモンスター自身が掘り出し、武器として用いるなど、ゲンジにとっては創造がつかなかった。

それはロジカルシンキングが得意なエスラでもだ。

 

激竜槍を掘り出したナルハタタヒメはゲンジにもエスラにも目を向けることなく、地面に向けて口を開けると、口内から金色に輝く電気の塊を吐き出した。

 

その塊は地面に落ちると何と接着剤の様に付着した。

 

「何だあれは…?」

 

激龍槍に続いて体内から雷の様な球体を吐き出した事にゲンジとエスラは不思議に思いながらも警戒を解かない。

 

 

その瞬間

 

 

 

___「「…!?」」

 

 

ゲンジとエスラの身体が引き寄せられた。まるで無理矢理防具を掴まれ引っ張られるかの様に。

 

「な…!?まさかこいつ…!?」

 

ナルハタタヒメの吐き出した巨大な雷の球は何と磁気を纏っていた。その球の周囲に磁場が存在しており、それによって金属が含まれる装備が引っ張られているのだ。

 

装備には必ず何かしら金属が含まれており、それによって二人の身体は引き寄せられているのだ。

 

 

それだけでは終わらない。

 

「ギャァオオオッ!!!!!」

 

雄叫びと共にナルハタタヒメが掘り起こした撃龍槍が何とナルハタタヒメを中心に次々と回り始めたのだ。

 

「姉さん!!」

 

あれに当たってしまえば確実に巨大なダメージを負ってしまう。ガンナーであるエスラは防御力が格段に低い為にゲンジは彼女へ注意を呼び掛けるべく目を向けた。

見れば彼女は岩が鋭利に尖った部分へと捕まることでその吸引を回避していた。

 

だが、ゲンジが立っていた場所は不幸な事に掴む箇所など存在していなかった。

引き寄せられたゲンジは身体のバランスを保つ事が出来ない故に次々とその身体が引き寄せられていく。

 

「ぐぅ…!?」

 

押し止まっても止まる事のないその吸引にゲンジは成す術がなかった。それに加えて目の前には回転する撃龍槍が迫ってきていた。

 

 

その瞬間 防具が鉄に叩きつけられる様な音が響き渡ると共にゲンジの身体が撃龍槍によって吹き飛ばされる。

 

「ガハァ…!」

 

「ゲンジ!!!」

エスラの叫び声が聞こえる中 吹き飛ばされたゲンジはその衝撃によって体勢を立て直す事ができないまま撃龍槍が描く軌跡の内側に落下した。

 

 

「ぐぅぅ…!!」

身体に来る痛みを押し殺しながらもゲンジは立ち上がる。幸いにも身体を吸引させられる感覚がもう消えており、見ればナルハタタヒメのほぼ真下に設置されていた磁気の塊が消え去っていた。

 

「ッ…!結構驚かせてくれたが…今度は俺の番だ…!!」

 

この位置にくれば撃龍槍はもう襲ってくる事はない上に吸引する磁気の塊もない。

ゲンジは逆転チャンスと思い背負う武器へと手を掛けようとした。

 

 

 

 

 

__だが、それがナルハタタヒメの狙いだったのだ。

 

 

 

その瞬間 ナルハタタヒメは再び自身の真下へと口を向ける逆さ吊りの様な態勢を取った。

 

すると 尻尾の先端から雷が迸り、それが口の先端部分へ伝わると光り輝く小さな雫の様な物体が口内から吐き出された。それは吐き出されたと同時に音を立てる事もなくゆっくりと地面に向けて落下していく。

 

 

「…!!」

 

それを見たエスラは最大限の警戒を抱き、付近に立つゲンジに向けて叫んだ。

 

「___!!!!!」

 

 

だが、その叫び声は即座に地面に落ちた雫の音によって掻き消された。地面に着地し、その雫が弾けた瞬間 地下空洞の内部全体を巨大な閃光が照らし、付近にいたゲンジと遠くに立っていたエスラを完全に飲み込んだ。

 

 

 

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