薄明と双子の姉妹 (リメイク中)   作:きょうこつ

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決着の時

ナルハタタヒメが地上へと溢した一粒の雫は地面に落ちると巨大な爆発と共に閃光を発し、ゲンジとエスラを飲み込んだ。

 

その閃光は地下空洞全体を自身もろとも飲み込むと共に着弾した地面に向けて巨大な衝撃波を放った。

 

衝撃波が止まり、閃光がゆっくりと収まってくると、ナルハタタヒメは自身の領域を侵した侵入者の生死を確認するべくその場へ目を向けながら浮遊した。

 

 

「ゴルル…」

 

唸り声を上げながらその鋭い視覚で閃光が晴れていく地面を見つめる。

 

青と金色の混ざった眩しい光が段々と晴れていくと そこには地面に倒れ臥すゲンジとエスラの姿があった。

その身体からは正気は感じられず、何の動きも見せずただ大地に伏していた。

 

“邪魔者は消えた。ようやくやや子を産める”

 

ナルハタタヒメは地上へと降りると、卵塊を温めるべくその身体を地面に下ろす。

 

亡き自身の対であるイブシマキヒコから授かりし遺伝子が自身の中で卵となり産声をあげようとしていた。

 

 

 

 

 

その時だった。

 

 

「く…ククク…!!!」

 

奇妙な笑い声がその場に聞こえてくる。まるで何かに興奮するかのように。

見るとうつ伏せに倒れていたゲンジの四肢が動き出し、両腕が地面を掴むと倒れていたその身体をゆっくりと起き上がらせた。

 

「フフ…。私とした事が…。里に来てからG級クエストを受けていないからウッカリと忘れていたよ。この“感覚”を…!!」

 

ゲンジだけではない。付近にいたエスラも同じく薄ら笑いを浮かべながら立ち上がった。

 

「この感覚は火山でG級のブラキディオスとやりあった時以来だ…!!」

 

「私はヒューム殿と共に狩った金火竜以来だね…!!!」

 

聞こえてくる言葉と共に二人の身体からは異質なオーラが滲み出ていた。

それは常人は持ち合わせていないG級ハンター特有の『真の強者』としてのオーラであった。

ゲンジとエスラは忘れていたのだ。自身らがマスターランクもといG級モンスターと闘い__

 

 

___“楽しんでいた頃を”。

 

ゲンジはもちろん エスラも久方ぶりに本気の本気を出すのだ。

 

その目を見たナルハタタヒメの脳内から危険信号が発信され身体が勝手に反応し、即座に風袋へと風を集めて身体を浮かび上がらせる。

 

 

その瞬間 再びその場所が閃光に包まれた。

 

「…!?」

 

その閃光はナルハタタヒメが起こしたモノではない。突然と目の前が光り始めた事で直視していたナルハタタヒメはその光に目を焼かれ、その場で混乱するかの様に目を回す。

 

その時だった。 

 

 

突如としてナルハタタヒメの左前脚が爆発する。

 

「!?」

 

虚空から爆音と共に赤い火花と炎が破裂し、その左腕を包み込む。見るとナルハタタヒメの左腕に向けてエスラは煙が出ている銃口を向けていた。

 

「ハッ!閃光玉からの徹甲榴弾だ。お気に召したかな?」

 

「グルル…!!」

ナルハタタヒメの腕の部位を破壊したのはエスラの放った『徹甲榴弾』であった。着弾した瞬間に中に含まれている強力な爆弾が音もなく散らばり、爆発した事でナルハタタヒメの左前脚の羽衣を破壊したのだ。

ナルハタタヒメは空中を飛行する際に風袋を活用していた為に爆発と同時に風が漏出してしまい、空中で浮遊するバランスを崩してしまった。 

 

空中にてよろける様子を見たエスラは叫んだ。

 

「さぁ…今がチャンスだ!やれ!!」

 

その力強い声が地下空洞の中に響き渡った直後。

 

 

ナルハタタヒメの目の前から糸を出す翔蟲が飛び出し、ナルハタタヒメの右前脚に付着する。

そしてその糸に引かれながら漆黒の瞳を向けたゲンジが姿を現した。

 

「ヴォラァアアアアアアア!!!!」

 

獣の様な叫び声を上げながらゲンジは翔蟲を回収するとその場から身体を回転させ、ナルハタタヒメの右前脚から腕の付け根に掛けて鬼人大回転乱舞を放ちナルハタタヒメの腕を滑る様にして一筋の傷を刻み込んだ。刻まれていくその傷はイブシマキヒコの時とは段違いに深く、更に遅れる様にして爆破属性が発動し、風を蓄える羽衣を破壊した。

 

「ギャォォォォォ…!!」

両腕の風袋が破壊された事で空中で停止していたナルハタタヒメの身体のバランスが崩れ、更に大きくよろけ始める。

 

「まだだ…!」

その動作が始まったと同時に空中に飛び上がったゲンジは歯を軋ませると即座に2体目の翔蟲を取り出し、今度は尻尾の先端部分から背中に向けて回転乱舞を放った。傷をつけていくと共にナルハタタヒメの背中に生え揃う無数の触手が次々と切り落とされていった。

 

さらに紫色の鬼火爆発が後から続く様に爆発し、刻まれた傷へ更なる苦痛を与えていく。

 

 

「ギャァオオオ!!!!」

発電機関である背中の触手が斬り落とされると共に傷口を更に抉る爆発の痛みにナルハタタヒメは苦痛の声を上げる。それによって風袋から蓄えていた風が漏出してしまった。

 

ナルハタタヒメは磁力を利用して、浮かんでいたが、エスラ達が立ち上がった時は流石に動揺していたのか飛ぶ力が風袋に依存していた為に身体を浮かび上がらせる事ができなくなってしまった。

 

その結果 ナルハタタヒメの身体が空中から巨大な音を立てながら大地に落下した。

 

 

「よう…。さっきは随分と驚かせてくれたな…!!!」

 

それを見据えるかの様に上空からは回転斬りを放った直後に翔蟲を扱い更に飛び上がったゲンジの声が響き渡ってくる。

怒りと興奮が交わったその声が聞こえた瞬間 顔を横倒しにしていたナルハタタヒメのそのギョロついた目玉が上空からこちらを睨むゲンジの姿を捉える。

 

その姿を見た瞬間 ナルハタタヒメは恐怖で全身が震え上がった。

 

こちらに向かってくるゲンジの背後には__自身を喰らおうとした“恐暴竜”の姿が見えていた。

そして防具の隙間から睨むその黒い瞳は正にその恐暴竜のモノと同じであった。

 

 

「もっと楽しませてくれよ…!!!!」

 

その言葉と共に超巨大な鬼人オーラを纏ったゲンジの身体が獲物を踏み潰すイビルジョー の如く急降下してくると空中で一回転し、ナルハタタヒメの首元へと着地する。

 

 

着地したゲンジはゆっくりと双腕を振り上げた。

 

その瞬間 

 

 

「ヴォオオオオアアアアアッ!!!!!」

 

 

腹の底から巨大な咆哮を放ちながら手に握るイステヤをナルハタタヒメの首元へ向けて縦横無尽に振り回した。

 

スタミナを無視した無限に放たれるその斬撃の嵐は紫色の残像を残しながら次々とナルハタタヒメの首元を斬り刻み、ゴム状の皮を打ち破ると血と肉を貪るかの様に穿り出し辺りへと撒き散らせていく。

それだけではない。イステヤ特有の鬼火爆発が途切れる事なく発動し露出したナルハタタヒメの肉から身体の内部を焼き尽くしていった。

 

 

「ギャォオオオオ!!!!」

 

次々と首元に伝わる斬撃と爆破による火傷にナルハタタヒメは苦痛の叫び声を上げる。

 

 

その一方でゲンジは止まらなかった。

 

「ラストスパートだ…!!」

ゲンジが次々と乱舞を放っていく中、エスラも負けじとボウガンを構え、ナルハタタヒメの両前脚へ向けて次々と貫通火炎弾を放っていった。

 

首元から伝わる斬撃と爆炎。そして両腕の内部を突き刺さす灼熱の痛みと熱さにナルハタタヒメは起き上がることも出来ず、ただ叫び声を上げることしかできなかった。

 

 

ゲンジは一心不乱かつ全ての力を出し切るかの様に乱舞を放つ。

 

“止まるな…!!止まるな止まるな止まるな…!!!!”

 

何度も心に叫びかけながらゲンジは双剣を振るう。次々と爆破属性が炸裂していき、まるで幾重にも集まった蓮華のように次々と爆破の華を乱れ咲かせていった。

 

「これで決める…!!」

 

ゲンジは乱舞の手を止めると最後の力を振り絞りながら二つの双剣を持つ手と刃を重ね合わせた。

二つの剣と共にオーラも重ね合わされた事でそのオーラは更に激しさを増していく。

 

 

里を苦しませてきた災いの元凶。このモンスターによって百竜夜行は起こり、イオリやヨモギといった幼い子供達は闘う運命を背負わされた。更に、自身の愛するヒノエとミノトを苦しませた存在でもあった。

 

 

里へ来たばかりの時はこの里が滅ぼうが滅ばなかろうがどうでもよかった。自身には関係ない。ただ、ヒノエへの借りを返せればどうでもよかった。

 

 

 

だが、今は違う。“コイツを殺し里を…そしてヒノエとミノトを救いたい”ッ!!!!

 

 

「…!!!」

重ね合わせた双剣を両手で握り締めると、ゲンジはゆっくりと右脚を後退させ、双剣を構えた。

 

 

数百年間 正体が明かされる事の無かった災害。

今こそその大いなる災いへ終止符を打つ時…ッ!!!!

 

 

 

そして

 

 

 

「ゼィヤァァアアアアアッ!!!!!!!」

 

 

ゲンジは重ね合わせたその双剣を渾身の力と共に振り回した。

 

その振り回しは風神龍の力を吸収し、百竜夜行を巻き起こし淵源へと成ったナルハタタヒメの命を____

 

 

 

______刈り取った。

 

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