薄明と双子の姉妹 (リメイク中)   作:きょうこつ

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絶望の星

ゲンジの大一振りがナルハタタヒメの首を斬り裂き血を撒き散らせると共にナルハタタヒメの首がゆっくりと大地に倒れ、不気味に輝くその目からは光が失われた。

 

「ハァ…ハァ…ハァ…!!」

ナルハタタヒメの首が倒れると、ゲンジは双剣を仕舞うと同時に激しく呼吸をした。

あの技はモンスターに絶大なダメージを与えることが可能だが、それに対してスタミナを無視し、身体機能を限界以上にまで使うためにその後の反動が大きいのだ。

失敗すれば即座にモンスターの反撃に合う諸刃の剣ともいえる。

 

ゲンジは呼吸を整えると、その場から降り、ナルハタタヒメの目の前に立つ。

 

「…」

 

口を開けながら倒れるその姿からはもはや正気は感じられなかった。口内からは四つに分かれた細い第二の口が重なる様にして垂れていた。

 

「終わった…のか…?」

 

「その様だな!」

 

ふと溢した言葉に後ろに立っていたエスラが笑顔で答えながら背中を叩いてくる。

 

「やったなゲンジ。これでヒノエとの約束を果たせるな!」

 

「…あぁ。そうだな」

 

ようやく終わったのだ。カムラの里を数百年間恐怖に縛り付けていた災害…ヒノエとミノトを苦しめていた存在を。

 

「さて、帰って祝杯をあげるとしよう。トゥーク達もそろそろ撃退できている頃合いだろう」

 

エスラの言葉に頷きながら翔蟲を取り出すと、外へ続く大穴へと目を向ける。地上までやや距離があるものの、翔蟲に捕まりながら飛べば楽々と出られるだろう。

 

だがこの時二人はある違和感を感じていた。

 

「…なにか引っかかるな」

 

「あぁ」

 

それは空が一向に晴れないことだ。見上げれば暗雲が未だに立ち込めており、その中の中心にある黒い渦に雲が次々と吸い込まれていくという禍々しい景色が今も尚広がっていたのだ。

 

古龍の力は天候へも影響を及ぼす。この空も風神龍と雷神龍の二体の力によって作られた。ならばその古龍の命が終わればこの禍々しい雲が晴れていく筈だ。

それは未だに晴れる様子を見せなかった。

 

 

 

その時だった。

 

「ゴルル…!!」

 

「「…!?」」

 

突如としてゲンジとエスラの背後に倒れていたナルハタタヒメの身体から唸り声が聞こえる。

二人はその声を耳に捉えた瞬間 驚きながら振り返った。

 

見るとそこには何と力尽きた筈のナルハタタヒメが身体をよろけさせながらも立ち上がり、浮かびあがっていたのだ。

 

「グロォオオ…!!」

 

天井に空いた巨大な穴の向こうに広がる空に向けて放つその咆哮はもはや咆哮ではない。ただの遠吠えであった。

 

 

遠吠えを放ちながらナルハタタヒメは身体を浮かび上がらせると、そのまま空に向かって飛び立とうとした。

 

「まずい!奴が逃げるぞ!」

 

「あぁ!!」

エスラの声にゲンジは頷くと、二人は翔蟲を取り出し、ナルハタタヒメの力なく垂れ下がる尻尾に向けて放つ。

 

 

放たれた翔蟲はナルハタタヒメの揺れる尻尾へと着地する。そして、それに引っ張られるかの様にゲンジとエスラはその尻尾へ到達すると、垂れ下がる触覚を掴む。

 

その一方で、ゲンジ達が自身の尻尾に付いている事をナルハタタヒメは何も止めなかった。まるで生き残る事にのみ焦点を当てているかの様に。

 

故にその身体は次々と天井の大穴へと向かって上昇していた。このまま何も仕掛けなければ自身らもろともこの地域から去っていく事態となってしまう。

 

「ぐぅ…!!姉さん!穴からでたら地上から援護射撃を頼む!!」

 

「了解だ!ゲンジはどうするのだ!?」

 

「俺はこのまま奴の背中に移って鉄蟲糸で身体を固定しながら奴を削る!」

 

咄嗟に考えたその作戦にエスラは汗を流しながらも頷き、了承した。

 

「分かった…。だが、決して無理はするなよ!」

 

エスラが頷くと、ゲンジも頷き、その場から登って行き、背中へと向かっていった。

 

次々と背中に何かが登ってくる感覚を感じてもナルハタタヒメの上昇する動きは止まらない。

そして、遂にその巨大な身体は地下空洞の巨大な入り口に到達し、くぐり抜けた。

 

「よし…!」

 

地上へと出た事でタイミングを見計らったエスラはその場から空中へと身を投げると、翔蟲を扱い、地上へと着地した。

 

そして、上昇していくナルハタタヒメの身体に向けて次々と火炎貫通弾を撃っていく。

 

「…!!」

 

放たれていく弾丸全てはナルハタタヒメの身体に着弾していき、傷を与えていくが、それでもナルハタタヒメは上昇する速度を緩めたりはしなかった。

 

「クソ…!何という執念だ…!!」

 

宿した子供を産むまで絶対に死にきれないのだろう。この世にはもう対は存在しない。そうなれば子孫繁栄の方法はただ一つ。残ったやや子を産むに他ならない。

ナルハタタヒメにとっては宝物なのだろう。

 

だが、それが人間にとって脅威となる。

 

「早く落ちてくれ…!!」

 

心にそう強く願いながらエスラは第二陣を装填し、銃口を向けた。

 

その時だった。

 

「…え…?」

エスラは思わず射撃の手を止めてしまう。

 

「なんだ…あれは…?」

 

銃口を向けるその先に広がる空には赫く輝く彗星が飛んでいた。

突然と何処からともなく現れた謎の彗星はとてつもない速度で赫い軌跡を残しながら龍宮砦を旋回していた。

 

すると、旋回していたその彗星は一瞬だけ輝くと共に軌道を大きく変更し、こちらに向かってきた。

 

いや、自分の方向ではない。別の地点に向かってだ。だが、その軌道上にはナルハタタヒメがいた。

 

「ま…まずい!!!」

 

それを見たエスラは即座に上空にいるナルハタタヒメの背中にて鉄蟲糸を縛りつけるゲンジに向けて腹の底から声を出し叫んだ。

 

 

「ゲンジィ!!!!!今すぐ離れろぉおおおおおおお!!!!!」

 

だがもう間に合わない。

 

その瞬間 ゲンジとナルハタタヒメの身体が空から飛来した彗星に衝突し、龍宮砦の崖に叩きつけられると共に赫い爆炎に飲み込まれた。

 

 

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