薄明と双子の姉妹 (リメイク中)   作:きょうこつ

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恐暴の目覚め

それは 突然だった。

 

ナルハタタヒメの背中に乗り、身体を固定するべくナルハタタヒメの身体へ鉄蟲糸を巻き付けていたゲンジに向けて巨大な彗星が激突し、ナルハタタヒメの身体もろとも龍宮砦の壁へと叩きつけると共に赫い爆炎に包み込んだ。

 

 

「がぁ…!!」

激突した瞬間 ナルハタタヒメの身体に張り付いていたゲンジは目の前が赫い爆炎に染まると共に背中に受けた衝撃によって倒れ意識を失ってしまった。

 

◇◇◇◇◇◇

 

「…!!」

 

目を覚ますと目の前には龍宮砦ではなく、別の景色が広がっていた。それは自身が意識を手放した際にイビルジョー が呼び出す場所である。だが、いつもと違いドス黒い景色ではなく、何もないただ白い空間だけが広がっていた。

 

「…」

 

ここで目覚めたという事は即ち“奴”も眠りから覚めてしまったという事だ。

 

その時だった。

 

 

「…!!」

 

目の前の空間に突然 血の色に染まった不気味な霧が集まるとやがてそれは巨大な筋肉の塊へと変わっていった。

 

『餌が2体もいる…中々唆られるではないか…!!』

 

ゲンジの中に存在する二つ目の意識『イビルジョー』 は血走らせた目を向けながら上顎と下顎を舌でなぞるように舐める。2体の古龍…いや、特上の餌が2体もいるのか、イビルジョー の口内からは夥しい程の涎が垂れていた。

 

「テメェ…やっぱり起きてやがったのか…」

 

沈んでいた意識が遂に目覚めてしまった事でゲンジは冷や汗を流すと共に鋭い目を向けた。

 

「寝てろ…!!テメェが出てくるのは許さねぇぞ…!!」

 

『ほぅ…?』

 

言い放った声にイビルジョー は頭部を下ろし血走らせた目をほぼゼロ距離にまで近づけた。

 

『気を失っている依代に何ができるというのだ…?』

 

「…!」

 

頭の隅々にまで響いたその言葉にゲンジは何も言い返せなくなり、身の現状を再度理解する。

自身は気を失っているからここにいるのだ。目覚めるのも時間が掛かる。

 

『ほら、もたもたしていると餌の一匹が逃げてしまうぞ?』

 

「…な…!!」

 

すると 空間が歪み外の景色が映し出された。見るとナルハタタヒメの身体が低空ながらもゆっくりと上昇し始めていたのだ。

 

更に遠くには横たわるエスラの姿もあった。

 

「姉さん…!!!」

身体はボロボロ。その付近には現れたモンスター『バルファルク』が立っていた。恐らく自身を守る為に闘ったが、攻撃を食らってしまったのだろう。

そうしている合間にもナルハタタヒメの身体はゆっくりと龍宮砦の外へと出ようとしていた。

 

「ぐぅ…!!」

 

このまま逃げられてしまえば、未開の土地へと姿を消して卵を孵化させてしまう。そうなればカムラの里は更に数百年 災いに悩まされる事となってしまうだろう。

切迫した状況へと追い詰められたゲンジは拳を握り締めると共に歯を食い縛る。

 

 

どうすればいい…?

 

このまま意識が戻るのを待つのか?いや、それでは間に合わない。

だが、ここで心を奴に委ねてしまえば自身は再び暴走してしまう。だが、他に方法がない。

 

『ほら、どうする?また恋人が苦しむ姿を見たいのか?』

 

「…!」

 

その言葉を投げ掛けられた瞬間 ゲンジの脳内に自身を笑顔で抱き締めてくれる二人が思い浮かんだ。

 

笑顔を絶やさず励ましてくれるヒノエ。無表情ながらも寄り添ってくれるミノト。

自身は何度も彼女達に救われた。それが繰り返されていく内に、いつしか二人は自身の中でエスラとシャーラ以外で初めて命を変えてでも守りたいと思える存在となっていた。

 

『彼女達を苦しめたくない。守りたい』

 

それが自身の答えだった。故にゲンジは迷いを断ち切り覚悟を決めた。

 

「ごめん…ミノト姉さん…」

マルバ達を殴り尽くしたあの日の夜、泣きながら懇願してきたミノトとの約束を破ってしまう事に罪悪感を抱く。

 

 

 

 

だが

 

人である事を捨て…たとえモンスターになろうとも___

 

_二人を守れるなら………それでいい__。

 

 

 

「…アイツらを…喰い殺す…ッ!!!」

 

ゲンジの恨みの込められた鋭い目がイビルジョー へと向けられる。そしてその目を見た真っ赤な目は不気味に三日月の形へと変わる。

 

『いい答えだ…!!!』

 

その瞬間 ゲンジの意識が再び恐暴竜によって食い千切られた。

 

◇◇◇◇◇◇

 

突如として発生した雷がゲンジに向かって降り注ぐと、その身体の辺りから次々と骨や肉が形成されていった。

 

 

「ゴルル…!?」

 

見たこともない現象にバルファルクは爪を抑えると共に後退する。目の前で雷と同じ色に輝くゲンジの身体が次々と構築されていく骨と筋肉に包まれていき、自身の体格に勝るとも劣らない身体へと変化していく。

 

太く筋肉密度の高い胴体。それに見合わない小さな前脚。それら全てを支える強靭な後ろ脚。まるでヒルのように太い尻尾。

 

 

そして この世の全てを喰らわんとするかのような恐ろしい牙が生えそろった頭部。

 

 

全身が構築されたその瞬間___。

 

 

「グロォォオオオオオオオッ!!!!!」

 

 

光が更に輝くと共に全身に龍属性エネルギーを纏ったドス黒いモンスターが咆哮を放ちながら現れ、辺り一面を巨大な威圧感で覆い尽くした。

 

 

銀翼の凶星と名高い天彗龍 そして百竜ノ淵源と成った雷神龍に___

 

 

____“恐怖”が襲い掛かる____。

 

 

 

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