薄明と双子の姉妹 (リメイク中)   作:きょうこつ

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恐怖と絶望をもたらす龍

我は悪魔__古きを壊し喰らう者。

 

 ____大地を喰らう轟雷も___叢雲を薙ぐ烈風も___百竜を従えし淵源も__星に降り注ぐ赫き彗星も__我が前には全て餌__。

 

喰らえ喰らえ__。全てを喰らえ__。森羅万象を悉く喰らい尽くす事こそ我が生。

 

 

   我___絶対の捕食者なり__。

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「ぐぅ…!!」

 

バルファルクの急降下による激突。そして激突した瞬間に発生した爆風は岩陰に隠れていたエスラの場所にも届き、その激しい風圧にエスラは飛ばされない様に身を固めていた。

 

「ゲンジ…!!」

 

いくらイビルジョー へと変異し筋肉の塊に包まれようともあれほどの急降下を受けてしまえばひとたまりもないだろう。

身体の一部が損傷してもおかしくない。

 

爆発が収まると、エスラは様子を伺うべく、岩の隙間から顔を出した。

 

 

 

「__!!!」

 

 

その景色を見たエスラは 絶句してしまった。

そこにはとんでもない光景が広がっていた。

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

__一体何が起こったというのだ…?

 

爆炎の影響により発生した煙が辺りに舞う中 その中心地にいたバルファルクの身体は地面に伏せていた。それも身体を無理やり押し付けられているかの様に。

 

なぜ自身はこの状態なのか全く理解ができなかった。頭の中に渦巻いていた闘争心も高揚感も消え失せ、何も残っていなかった。

頭の中から狂気が消え失せたバルファルクは倒れる中、突然と戻った理性を用いて自身の身体へと目を向けた。

 

そこには煙で微かにしか見えないが、頭部と同じく地面に倒れ臥す自身の身体があった。

 

「…!」

 

バルファルクは身体を揺さぶり、何とか起きようとする。だが、その煙に包まれた部分だけはいくら動いても起き上がらせる事ができなかった。

 

まるで、何かに押さえつけられているかの様に。

 

そんな中、辺りに舞っていた煙が次第に晴れていき、視界を回復させていった。

 

「ゴルル…」

 

バルファルクは喉を唸らせる。一体“何が”自身の身体を押さえ込んでいるのだろう。警戒を抱きながらバルファルクは晴れていくその場を見つめていた。

すると、煙が晴れていき自身を押さえている状態が露わとなった。

 

 

その瞬間

 

バルファルクの目から勢いが消え失せ、絶望に染まった。

 

煙が晴れ、そこにあったのは__

 

____自身の胴体に牙を突き立てるイビルジョー の姿であった。

 

 

「…!!」

突然と広がった景色を見たバルファルクの闘争心と狂気に満ちていた赫い目玉は勢いを失ったかの様に元の色へと戻り、その白い目玉の中にある瞳は小刻みに震えていた。

 

自身の渾身の技である空からの襲撃は全くもってイビルジョー の身に届いていなかった。

その身に届くほぼ直前にイビルジョー は持ち上げた首を一瞬で振り下ろし向かってきた自身の身体を掴む様にして噛みつきながら地面に叩きつけたのだ。

 

 

「…!!」

 

バルファルクはようやく理解した。

自身が相手にしていたのはこの世のモノではない。身体を顎で挟み持ち上げるどころか何度も叩きつけた上に音速に近い速度の急降下を耐えるどころか真っ正面からカウンターを掛けるという常識を覆した行動を取る_

 

_____“悪魔”であった。

 

 

 

すると、イビルジョー の血走った不気味な目玉が此方に向けられジッと見つめてきた。

 

その目はバルファルクの龍気よりも更に濃い…正に“血の色”そこに映っていたのは全身を震わせるバルファルクの姿であった。

 

 

イビルジョーの腹に食い込んでいた口が離されると、バルファルクの頭部へと向けて大きく首を振り上げた。

 

自身の頭部がイビルジョー の影に覆われた瞬間 バルファルクの思考は抜け落ちもう何もかも考える事ができなくなってしまった。

 

 

__もはやこれまでか…。

 

イビルジョーの口が向かってくる中、バルファルクは死を覚悟した。

 

 

 

その時だった。

 

「ゴルル…!」

 

突然 イビルジョー の首がバルファルクとは全く違う方向へと向く。

 

「…!!」

絶望に陥っていたバルファルクは速度は即座に希望を見出し、逃げるチャンスと見て即座に身体をバタつかせ、起きあがろうとする。

 

 

だが、その身体は起き上がることが出来ない上に何故か

 

 

__引っ張られていった。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

バルファルクの放った龍属性エネルギー波の直撃を受けたナルハタタヒメは地面に倒れながらも、何とか意識を保っていた。

 

発達した前脚を用いて立ち上がり、ゆっくりと身体を上昇させながらナルハタタヒメは自身の股にある雷袋に宿っている卵へと目を向けた。

 

見るとその卵は潰れることもなく、今も尚 綺麗な輝きを放っていた。

 

それに対して安心したのか、ナルハタタヒメは即座に再び身体を浮き上がらせる。

 

「ゴルル…!!」

 

__自身の身に宿しやや子は対が残してくれた遺伝子。自身と対の生命の結晶であり、宝物でもある。決して死なせない__。

 

その使命感に酷似した愛情を原動力にナルハタタヒメは身体中に巡る磁気を操り、少しずつ上昇していった。

 

すると、磁気の操りが安定化し、ナルハタタヒメの身体は上昇していく。

 

 

背後からは 対と交わる直前に会敵したモンスターの気配を感じるが、奴は空を飛ぶ事は不可能だ。空に飛び上がってしまえば奴は成す術はない。

 

するとナルハタタヒメの身体はゆっくりと前進し始めた。やはり体力があまり残っていない為か、いつも飛行する速度よりも格段に遅くなってしまっている。これでは通常の飛龍種にも追いつかれてしまうだろう。

 

だが、あと少しだ。あと少しの辛抱だ。

 

そう自身に言い聞かせながらナルハタタヒメは高度を上げていく。

 

 

 その時だった。

 

__ズン…!!!

 

 

背後から大地を踏み鳴らすモンスターの足音が聞こえてきた。それは一定のリズムで聞こえてくるが、足音と足音の間のインターバルが通常よりも短すぎる。

 

 

____何なのだろうか?

 

 

飛行する中 ナルハタタヒメはゆっくりとその音が聞こえる後ろへと目を向けた。

 

 

 

 

 

 

その瞬間 ナルハタタヒメの思考が一瞬にして消え去り 全て恐怖へと変換されてしまった。

 

 

ナルハタタヒメの目の先にあったのは___

 

 

「ヴゥォオオオオオアアアアッ!!!!!!」

 

バルファルクの尻尾を咥えその身体を引き摺りながら此方に向けて走ってくるイビルジョーの姿だった。

 

 

 

「グルル…グロォオオオオオオオ!!!」

 

イビルジョー は巨大な咆哮を上げながら身体を回転させると、掴んでいたバルファルクをまるでボールの如くナルハタタヒメに向けて投げ飛ばした。

 

イビルジョー の驚異的な回転速度と遠心力によって投げ飛ばされたその身体は空気をつけ抜け一直線にナルハタタヒメに向かっていく。

 

「ゴロォォオオ…!!」

ナルハタタヒメ自身は元々 体力がそこまで残っていなかった為に躱す事が叶わず、バルファルクの身体がぶつかると共に覆い被さる事によって、その重さと衝撃により地面へと落下してしまった。

 

ナルハタタヒメが落下していく様子を見ていたイビルジョーは涎を垂らしながらその場へ飛び降りていった。

 

 

__もうこの極悪な牙からは逃がれられない。

 

 

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