薄明と双子の姉妹 (リメイク中) 作:きょうこつ
集会所へと連れてこられたゲンジはすぐさまイオリに肩を掴まれ椅子に座らせられる。
「お…おい!?何する気だ!?」
「衣装ですよ衣装!晴れ舞台なんですからキッチリ決めないと!」
そう言いイオリはナカゴと共に次々と袴やら羽織やら色々と持ってくる。どうやらこれがカムラの里にて新郎が着用する衣装のようだ。
「因みに今、ヒノエさんとミノトさんも衣装を試着している頃ですよ。後で見に行きますか?」
「…いく」
「やっぱり」
まさかの即答にイオリは苦笑する。
その後、ゲンジはイオリとナカゴの協力の元、次々と着用していった。小柄な身であるために必然的に一番小さいサイズとなってしまったが、それは気にしない。
ちなみになぜイオリ達が知っているのかというと、風神龍と雷神龍の討伐に出かける日にゲンジがヒノエとミノトに帰還したら式を挙げると告白した場面をヨモギや他の子供達と共に聞いていたらしく其処から里中に知れ渡っていったらしい。
「……何か悪いな…」
「いえいえ。気にしないでください。貴方方はこの里を救ってくれた英雄です。これくらいどうって事ないですよ!」
それからようやく衣装を着用し終え、ゲンジは立ち上がる。
「ナカゴさん!鏡を!」
「へい!」
ナカゴは別の部屋から大きな鏡を持ってくると立ち上がるゲンジの前にドンと置く。そこに写っていたのは小柄な身にしっかりと引き締まる様に紋付袴を着用した自身の姿であった。
「ほぇ…」
初めて見る自身の袴姿にゲンジは何も言葉にする事が出来なかった。
「に…似合っているか…?」
「「もちろん」」
ゲンジの問い掛けにイオリとナカゴはほぼ同時に頷く。
「さて、ではゲンジさんの試着は終わったのでヒノエさん達のところに行きましょう!」
「え!?式はどうするんだ!?」
「夜に開く予定です。今夜は星々が綺麗に輝くと思いますからね!」
そう言いイオリとナカゴは素早い手つきでゲンジの紋付袴を脱がしていった。今の季節は桜が散ってしまっている故に昼間に行うよりも星々が輝く夜に行った方が良いと皆で決めたらしい。
それからインナー姿となったゲンジはヒノエ、ミノトが試着している場所へと案内された。
◇◇◇◇◇◇
案内されたのは集会所の中に設置された診療所である。その中から着物の布と布が擦れていく音が聞こえてきた。
「き…緊張するな…」
「何言ってるんですか。これから両隣に立つんですよ?」
そう言いながらイオリが扉をノックすると中から「どうぞ」というロンディーネの声が聞こえて来た。
「では、開けますよ」
そう言いイオリは扉をゆっくりと開けた。
「…!!」
そこには純白に統一された袴を履き頭にミツネ装備を被った『白無垢』姿のヒノエとミノトが座っていた。
お淑やかに座りながら白無垢を纏うその姿は天女と見間違う程 美しいものであった。
するとゲンジ達に気づいたヒノエは輝く琥珀色の瞳を向けた。
「あら?そちらはもう終わった様ですね」
「はい!ゲンジさんがどうしても見たいと言っていたので連れてきました」
「どうしてもとは言ってねぇだろ!?」
「でも見たかったんですよね?」
「うぅ…」
その様子にヒノエはクスクスと微笑むと隣に座っているミノトと共に立ち上がりゲンジに近づきその姿を見せた。
「どうですか?旦那様」
「似合ってますか…?」
「…//」
2人の輝かしい花嫁姿を目にしたゲンジはその美しさに顔を真っ赤に染めながらも何とか持ち堪えながら答えた。
「に…にに…似合ってる…綺麗…」
「ありがとうございます!」
「とても嬉しいです」
言葉を詰まらせ、カタコトで感想を伝えるゲンジにヒノエとミノトは笑顔で答えた。
すると
「…ッ//」
その笑顔を見たゲンジは更に顔を赤くさせると彼女達から逸らす。見るとヒノエはいつもと変わらず満面の笑みを浮かべているが、隣に立っているいつも無表情なミノトがヒノエと同じ程の明るい笑みを浮かべていた。初めて見るミノトの満面な笑みをゲンジは直視できなかったのだ。
「…む?なぜ私の方を見て顔を逸らしたのですか?」
「いや…その…」
一方で、やはりそれを見ていたのかミノトは顔を近づける。その一方でヒノエはその理由に気づいているのか微笑みながらミノトの肩をつつく。
「きっとミノトの笑顔が可愛くて照れているのですよ♪」
「…っ!!」
ヒノエから耳打ちされたミノトは目の色を変えるとゲンジの肩を無理やりガシッと掴み出し何が何でも逸らした顔を見ようとした。
「ゲンジ!今すぐその顔を見せてください!!そしてスリスリさせてくださいッ!!」
「やめろぉぉ!見るなぁぁ!!」
結局 真っ赤に染まった顔を見られミノトから気が済むまでスリスリされた。
そんな時だった。入り口からナカゴの声が聞こえてきた。
「おいゲンさん!ゴコク様が呼んでますよ〜!」
「分かった。じゃあ後でな」
ナカゴの声に返事をすると、ゲンジは二人に手を振りながらイオリと共にその場から去っていった。
ゲンジが去っていくと、辺りは再び静かになる。けれども、二人の笑顔が消える事はなかった。
「二人とも本当に嬉しそうだな」
試着を終えたヒノエの袴の紐を解きながらロンディーネは二人に声を掛ける。それに対してヒノエは答えた。
「えぇ。あれほど強く優しく泣き虫な方に嫁げるのですから嬉しい限りです。ね?ミノト」
「はい。あれほど勇敢で頼れる上に泣き虫な方に姉様と共に嫁げるなんて夢の様です」
二人とも『泣き虫』という謎の共通な特徴を述べているが、それには敢えて触れなかった。
まぁ確かにゲンジは二人の前でよく泣いていた。それほど2人はゲンジにとって心の許せる存在だったのだろう。
「それに…何度も助けられてしまえば…もう惚れるなと言われても無理ですよ。助けられた分これからは私達が彼を支えるんです」
「私も姉様と同じ意見です」
「…ふふ。そうか」
2人の覚悟にロンディーネは微笑むとヒノエの紐を解き終え、ミノトの方へと取り掛かった。
すると
「ここか?花嫁がいるのは」
「やっほー」
気迫のある声とやや気の抜けた声が聞こえると共に扉が開き和服を纏ったエスラとシャーラが入ってきた。
「義姉さん!シャーラ!」
「やぁ二人共。試着はもう終わったのかい?」
「えぇ。今解いてもらっているところです」
「そうか。見たかったが、仕方がない。本番で見せてもらおう」
そう言いながらエスラはヒノエとミノトに近づくと、2人の頭にポンと手を乗せ金色に輝く優しい瞳を向けた。
「2人ともこれまで何度もゲンジを救ってくれてありがとう。姉として弟をよろしく頼むよ」
それに続くかの様にシャーラは2人の手を取り握り締めた。
「ゲンジから離れないであげてね」
エスラとシャーラの希望を託すかのような瞳を向けられた2人は笑みを浮かべながら頷いた。
「「はい!」」
そんな時だった。
ギィィン…
扉が音を立てながらゆっくり開くと共に顔を俯かせたゲンジが入ってきた。その表情はとても暗く先程まで輝いていた瞳からは光が失われていた。
「む?どうしたゲンジ。やけに暗いじゃないか」
先程とは一変し顔から輝きを失っていたゲンジに驚いたエスラはそれについて尋ねた。
すると、ゲンジは懐から一枚の手紙を取り出した。
「……『ゲルド村』から手紙が届いた」
「「…!!」」
その話を聞いた途端 エスラとシャーラの目が血走ると共に頬から筋が湧き上がった。
「大型モンスターが現れたから今すぐ討伐を頼みたいってさ。……それだけだ。邪魔した」
ゲンジはそれだけ言い残すと扉に手を掛けながら出ていった。
扉が静かに音を立てながら閉まるとミノトとヒノエはエスラとシャーラに目を向けた。
「あの…ゲルド村…とは一体…」
ミノトはゲンジの表情と顔が怒りに満ちているエスラを不審に思いその表情の原因となった村について尋ねた。
エスラは怒りに満ちた表情を解くと額から汗を流し苦い表情を浮かべながら答えた。
「ここから少し離れた場所にある小さな村__
____私達とゲンジの生まれ故郷だ」
最終章 帰郷編__。