薄明と双子の姉妹 (リメイク中)   作:きょうこつ

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到着ゲルド村

そして。旅を続けて4日後の朝。

 

目を覚ました3人は起きると軽い朝食を取り、宿を後にするとこの宿のある村に泊まった際に乗っていたアイルー荷車へと乗り込んだ。

 

「どうですか?お身体の様子は」

 

「あぁ…眠れたからだいぶ調子が良いが、少し寝足りないな…」

 

荷車に揺られる中、ミノトに身体の調子を尋ねられたゲンジは腕を何度も握りながら答えた。

 

「でしたら私の膝下もしくは胸元にでも♪」

 

「赤ん坊か俺は!?」

 

ヒノエの茶化しに顔を真っ赤に染めながら叫ぶ。そんな賑やかな様子で荷車は平原を進んでいった。

ちなみにだが、この荷車はゲルド村へと直接向かっていた。なぜココット村ではないのか。それはゲンジ以外に搭乗者がいないためだ。

本来ならばココット村に向かいそこから乗り換えなければならないが、今回は特別と言う事で直接向かってくれるようだ。

 

◇◇◇◇◇◇

 

それから数時間が経過し、正午に差し掛かった。ゲンジ達が乗る荷車は平原を進むとある地点で停車する。

 

「到着ですにゃ〜」

 

軽快な到着を知らせる声を聞いたゲンジとヒノエとミノトは荷物を担ぐとその荷車から降車し、着いた場所へと目を向けた。

 

到着したのは凹凸した平原の中にポツンとある小さな村であった。村の入り口らしき場所には『ゲルド』と書かれた木造の看板が建てられておりその入り口の向こうにはいくつもの木造の家が建っていたのだ。

 

「ここが…ゲンジやエスラさん達が生まれた場所…」

 

カムラの里とは全く違う村の形状や家屋の造りにミノトは感嘆の声を漏らす。

 

「あぁ。平原の端っこにある小さな村だ。近くには川も森もあるから栽培が盛んだし遊び場もある。狩場にも近いから俺たちはそこでよく訓練をしていたのさ」

 

そう言いゲンジは村の向こう側にある森の更に向こう側を指さした。その先にある場所はギルドでは【森・丘】と呼ばれており、狩場として認定されていた。

 

すると

 

「アンタら旅人かい?」

 

一人の薪を背負いながら歩いていた若い青年が自身らに気付き声を掛けてきた。この村の住人らしき人物に遭遇したゲンジは顔を暗くしながらも首を横に振り答えた。

 

「いやハンターだ。手強い飛竜が現れたと聞いて来た」

 

「…!」

ゲンジが事情を話すとその男性は驚きの目を向けるとゲンジの両手を握る。

 

「って事はお前…ゲンジか!?」

 

その表情はとても輝いていおり、まるでずっと待ち侘びていたかのようだった。それに対してゲンジは一才の喜ぶ感情を見せる事なく真顔で頷く。

 

「…あぁ」

 

頷くと青年は嬉しそうに手を握り何度も何度も振る。

 

「久しぶりだなぁ!よく帰って来てくれたなぁ!」

 

「んな事はどうでもいい」

 

ゲンジは握りながら振る手を強引に振り払うと青年に向けて鋭い視線を向ける。

 

「村長に合わせろ」

 

「お…おぅ。そちらの方は?」

 

青年に目を向けられたヒノエとミノトはそれぞれ簡単に自己紹介をする。

 

「ヒノエと申します」

 

「ミノトです。よろしくお願いします」

 

「これはどうも。じゃあ、お連れの方もどうぞどうぞ」

 

その青年は気さくに答えながらヒノエとミノトにも目を向けると中へと案内し始めた。

 

◇◇◇◇◇

 

それからゲンジ達が村の中へと入ると辺りから次々と村の住人らしき人達が自身らを見ようと顔を出してくる。

 

その人数はざっと見ればおよそ数十人程度だ。村としては普通に少ないと見ていいだろう。

その人々を見たヒノエは前を歩く青年に尋ねた。

 

「ここの村の人口はだいたいどれくらいなのでしょうか?見る限り随分と少ないようですが…」

 

「そりゃ赤ん坊合わせて40人程度だからなぁ。ウチの村からハンターになって出ていく奴はもう本当に数年に一人か二人程度だから顔振りがあんまり変わらないんだよ。俺も生まれた時からずっとここに住んでいてな。食べ物に困らないし大型モンスターもあまり現れないから良い場所だよ」

 

「成る程」

 

青年の説明にヒノエは頷く。彼の言葉が事実ならばゲンジを蔑んだ人々は今も尚この村に住んでいると言う事になるだろう。

 

「だから住んでる者達は硬い絆で結ばれているのさ」

 

ピキ

 

「絆…だと?」

青年がそう呟いた瞬間 骨が軋む音が聞こえた。ヒノエが目を向けるとゲンジの頬からは血管が隆起しており、手がまるで骨を鳴らすかのように唸っていた。まるでその言葉を偽りと捉えるかのように。

それを目にしたヒノエは即座に落ち着かせるべく肩に手を置いた。

 

「…落ち着いて」

 

「…あぁ」

青年に聞こえない声でヒノエはゲンジを宥める。幸いにもゲンジは何とか平常心を保てているのか、その露骨な怒りはゆっくりと収められた。

 

その声に青年は気づかず、村長の家へと到着した。

 

「さぁ着いたぞ。ここが村長の家だ」

 

着いた場所はこの村の中心に立つ一軒の大きな家だ。青年が扉を軽く叩くと中から髭を生やした初老の男性が姿を現した。

 

「おぉゲンジよ…!」

 

その男性はゲンジを見るや否や駆け寄ると手を握った。

 

「よくぞ帰って来てくれた…!いやぁ元気そうで何よりだ!」

 

「…」

手を握られるゲンジは村長を鋭い目で見下ろしていた。それに加えて再び頬からは筋が隆起しており怒りに染まっていることが分かる。笑いながら手を握るその男性についてもゲンジにとっては気に入らない相手であったのだ。

 

「それよりも本題の飛竜はどこで見かけた?場所を言え」

 

「まぁ焦るんじゃない。せっかく再開できたのだからもう少しゆっくりしていかないか?」

 

「は…?」

村長は手を握ったまま離そうとはしなかった。まるでゲンジを引き止めるかのように。その動作によって段々とゲンジの心の奥底に眠る怒りが込みあがり、遂には瞳が震え始めていった。

 

それを見たヒノエは咄嗟に前に出て村長に声を掛ける。

 

「村長様。時間は有限です。いつまた飛竜による被害が出るか分かりません。場所をお教え願えませんでしょうか」

 

「…」

ヒノエの言葉によって村長は正気に戻り事の重大さに気づいたのか、不思議と嫌悪感を抱くかの様な表情を浮かべながらその手を離した。

 

「ふむ…分かった」

ヒノエの言葉に頷くとゲンジから手を離し森の奥に聳える丘へと杖を向ける。

 

「あの丘の奥で見かけた。早いとこ頼むぞ」

 

「……行くぞヒノエ姉さん。ミノト姉さん」

「「はい」」

 

少し態度が変わった事が気になるもゲンジは触れずに二人に声を掛ける。それに二人は頷くと、先程入ってきた入り口へと向かおうと脚を進めた。

 

 

その時だ。

 

「お久しぶりですねゲンジ様」

 

「…あぁ?」

 

とても明るく高い声が聞こえてきた。自身の名前を呼ぶ声を聞いたゲンジは鋭い目を向けながら振り向く。

すると 村長の家から一人の小柄な女性が現れた。髪は桜色に染まりクリンとした瞳も同じ桜色に輝いていた。身長はゲンジよりもやや小さく身体もヒノエとミノトよりも細く華奢であった。

 

その女性を見たゲンジは目を鋭くさせる。

 

「テメェ…モモカか?」

 

「よくお気づきに」

その女性は笑みを浮かべながら優雅に一歩一歩と歩み寄るとゲンジに向けてミニスカートの様な形状の服の先端を摘みながらゆっくりとお辞儀をする。

 

「おかえりなさいませゲンジ様。……いえ。私の旦那様」

 

「は?」

 

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