薄明と双子の姉妹 (リメイク中)   作:きょうこつ

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怒りの記憶と魅惑の花

「お帰りなさいませ。私の旦那様」

 

そう言いながらモモカと呼ばれた女性は桃色に輝く瞳をゲンジに向けた。

その一方でその言葉を聞いたゲンジの頬からは勢いを潜めていた筋が再び湧き立つと共に目をモンスターの様に鋭く変化させていた。

 

「俺がお前の旦那?寝言でもほざいてんのか?」

 

「いいえ。寝言ではありませんよ」

 

そう言いモモカは近づくとゲンジに向けてニッコリとした笑みを浮かべた。

 

「私は真剣です。貴方の事を心から愛しております」

 

その笑みは見る者を魅了してしまう程に可憐かつ美しいモノであったが、逆にゲンジは怒りを増していき、瞳と共に握り拳までもが震え始めていった。

 

「その道端のクソに等しい気持ち悪い笑顔を向けんじゃねぇよ。自然と殺意が湧いてテメェをグチャグチャにしてモンスターの餌にしてやりてぇ衝動に襲われちまうだろうが」

 

「あらあら。相変わらず血の気が多い方ですね。ですが、そこに痺れてしまいます♪」

 

その言葉と共にモモカの手がゆっくりと伸びてくるとゲンジの髪の間から飛び出す耳たぶに触れようとした。

 

「…!!」

それに対して限界に来たのかゲンジは手を掴むと振り払った。それによってモモカの身体は後ろによろけると共に地面に尻餅をついた。

 

「何をなさるのですか?」

 

「それはこっちのセリフだ」

 

ゲンジは此方を見上げてくるモモカの瞳に向けて鋭い目線を向けると指を指す。

 

「気安く触るな。気安く名前を呼ぶな。テメェの旦那になる気なんざ毛頭ねぇ」

 

昔の事を頭に思い浮かべると共にその時に自身に残酷な言葉を言い放つ彼女の姿を重ねながらゲンジは吐き捨てると、ヒノエとミノトの手を引き、村の出口へと向かう。

 

「行くぞ二人とも」

 

「「!?」」

 

手を引かれたヒノエとミノトはあの女性の言葉に理解が出来ず混乱していた。

 

ゲンジが二人の手を引きながら狩場へと向かう姿を尻についた土を払いながら見ていたモモカは横にいるゲンジ達を案内した青年へと目を向けた。

 

「テイラ。あの二人だれ?」

 

「なんでも狩猟の助っ人らしいぜ?特にゲンジとは関係がなさそうだが」

 

「そう。ならサッサと帰してしまった方がいいわね」

ゲンジを見つめた瞬間モモカの目が鋭く変化した。それはまるで獲物を捕らえたモンスターであるかの様に。

そしてゲンジを見つめながら口元に手を当てるとその指先を舌で舐め取る。

 

「アンタだけは絶対に逃がさないわよ“モンスター”」

 

◇◇◇◇◇◇

 

村を出て狩場である森・丘のキャンプへと到着するとミノトは自身らの手を引き連れてきたゲンジへ先程の女性モモカについて尋ねた。

 

「ゲンジ…あの女性と一体何があったのですか?」

 

「…」

 

「あの…もしお辛ければ無理して話さなくても…」

 

「いや、話す」

ミノトに問われたゲンジは暗く悲しい表情を浮かべながら答えた。

 

「アイツは…俺の友達だった。あの案内した奴『テイラ』もな…」

 

そう言いながらゲンジはキャンプのベッドの上に腰を掛けると話し始めた。

 

ーーーーーーー

薬の効力が出る前。俺は肺が弱く訓練について行けずエスラ姉さんやシャーラ姉さんが留守の間、皆が遊ぶ姿をずっと遠くから見つめていた。

 

俺も皆の輪に入りたい。そう思っていた時に声を掛けて来てくれたのが『テイラ』と『モモカ』だった。

 

「ねぇねぇ!君も一緒に遊ぼうよ!」

 

そう言いながらモモカは俺の手を引き皆のところに引っ張り出した。あの二人のおかげで俺は皆と打ち解けて友達になることが出来た。父親が不在な時はエスラ姉さんとシャーラ姉さんを誘って皆で集まりよく遊んだ。

 

 

 

けど

 

俺が薬を打ち込まれ身体が変化してから皆は俺を避ける様になった。

 

「おはよう!」

 

俺が声を掛けた時に答えてくれる奴は誰もいなかった。何度も声を掛けても無視をされ、脚を進ませるとソソクサと避けられる。

 

その様子から俺はアイツらから嫌われていると確信した。

 

だから俺は訓練に熱を注いだ。皆に声を掛けることなく、強くなった身体を更に鍛え上げる為に。

 

 

強くなる。強くなる。強くなる。

 

 

目的もなくただただそんな思いを呟きながら訓練に打ち込んでも、俺の中にはアイツらともう一度 友達に戻りたいという感情があった。

 

ようやく出来た友達を失いたくなかった。

 

けれどもアイツらは俺を“仲間”としては見てくれていなかった。

 

そして

俺がイビルジョー に意識を乗っ取られドスジャギィを殺した時にはもうアイツらは俺を“人間”としてさえも見ていなかった。

 

前から無視していた奴らは急変し俺を見かけると無視するどころか罵詈雑言を飛ばし始めた。

 

「出てけよモンスター!!」

 

「村から出てけ!!」

 

「死ね!!」

 

エスラ姉さんやシャーラ姉さんが庇ってくれたとしてもアイツらは止めなかった。

 

俺はその時 モモカとテイラを頼ろうとしたが、あの二人も俺を見放しソイツらに混ざるどころか引っ張る様にして俺に罵詈雑言を浴びせて来た。

 

「アンタのようなモンスターは生きてる価値なんてないんだからさっさと死んじゃえば?」

 

「お前の様な奴なんか仲間にしなければ良かったわ…!」

 

◇◇◇◇◇◇

 

全てを話し終える頃にはゲンジの声は細々となっていた。ミノトとヒノエは自身らを案内したあの青年も加担していた事に驚きを隠さなかった。

 

「あの案内してくれた方がそんな事を…」

 

「だからあの人が話していた時はあれ程まで怒っていたのですね…」

 

ヒノエとミノトはようやく理解した。それ程の過去があったならばあの青年テイラやモモカに対し怒りが湧くのも無理はないだろう。幸いにも今はその二人がいない為にゲンジが怒りに身を乗っ取られる事はなかった。

 

「ミテクレなんて誰でも繕えれるさ…」

 

正常な様子でゲンジは話し終えるとヒノエとミノトに真剣な眼差しを向けると指を指した。

 

「それとだ。俺との関係は絶対に口にするな。俺の関係者だと知ればアイツらは何をしでかしてくるか分からん」

 

「「はい…!」」

ゲンジの促しに二人は静かに頷いた。もしもあの村の者がゲンジに対して何かよからぬ事を考えていればその関係者であるヒノエとミノトにも被害が及ぶだろう。それを危惧したゲンジは二人に注意を促したのだ。

 

「それより…何でアイツは俺を婚約者だと………ん?」

 

 

その時だ。

 

ゲンジはふと自身が立っている岩場から見える日陰のない場所に目を向けた。

 

「どうしました?」

 

ミノトが尋ねるとゲンジはそれに答えずゆっくりと目を向けた場所へと歩いて行く。

 

そこにあったのは紫色の花弁が開き中には赤い花粉が詰まっている何とも毒々しい色の花だった。

その花の後ろに目を向けると続く黒い岩陰にその不気味な花が何輪も咲いており、不気味な花粉を輝かせていた。

 

「まぁ…綺麗なお花ですね」

 

その輝く花に目を向けたミノトは興味を示すと近づき、花びらに触れようと手を伸ばした。

 

「…!触るな!!」

 

「え!?」

ミノトが花に手を伸ばそうとした時。ゲンジは咄嗟に身体に抱きつく様にしてその手を止めた。

 

「どうしたのですか!?」

 

その様子を見て驚いたヒノエは駆け寄りながら尋ねるとゲンジは微量の汗を流しながら答えた。

 

「コイツは間違いない…“センノウカ”だ…!!」

 

「「“センノウカ”…?」」

 

聞いたこともない花の名前にヒノエとミノトは首を傾げる。ゲンジは昔、読んだ図鑑の中で見た絵を思い出しながら説明し始めた。

 

「暗くジメジメとした場所に偶に生えてくる花だよ…。その花の花弁は暗闇の中で紫色に輝き花粉も赤く光る…一見すれば綺麗な花だが…この花粉や茎には洗脳作用があるのさ…」

 

「「!?」」

 

ヒノエとミノトは驚くとその花『センノウカ』を見つめた。

 

「この花の花粉や茎を大量に吸う…または摂取すればしばらく思考が停止しその間に命令を下されれば言いなりになっちまうんだ。それに触れたりすればその花粉が手につく危険もあるからな…」

 

「「成る程…」」

 

ゲンジの説明にヒノエとミノトは納得すると共に花の危険性を理解してその場から後ずさる。

 

「あれ?何かおかしいですね…」

 

そんな中 ヒノエがセンノウカの咲いていた場所を見て首を傾げていた。見れば1箇所だけ土が撒き散らされておりその土の中から先端をもぎ取られた根っこの様な物が顔を出していたのだ。

 

まるでそこだけむしり取られているかの様に。

 

「あそこだけ不自然ですよ?誰かが収穫したかの様に土が掘り返されていますし…」

 

「…」

その地点に目を向けたゲンジは目を鋭くさせ何かよからぬ事が起きる事を予測すると共に睨みつけていた。

 

「それよりもいつまでミノトにだけ抱きついているのですか?」

 

「え……わあああ!!ご…ごめん!!」

 

「いえ…お気になさらず。できれば私はもうしばらくだけ…」

 

その後 3人は目的の火竜を討伐するべく森・丘のエリアへと進んだ。

 

 

 

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