薄明と双子の姉妹 (リメイク中)   作:きょうこつ

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抱く疑念

あれから森・丘へと入りゲンジ達は目的のモンスターである火竜『リオレウス』を発見すると3人で協力の末に討伐する事に成功した。

 

だが、妙だった。

 

「…変だな。弱すぎる」

 

地面に倒れ臥すリオレウスの遺体をゲンジは睨みつけながらそう零した。ヒノエとミノトと共にリオレウスと会敵してから僅か数分。たった数分で空の王者と呼ばれるリオレウスは虫の息となったのだ。

明らかに弱すぎる。情報によれば手強いと聞いていたので上位またはマスターランク程の個体を予想し、数時間の攻防を覚悟していた。

だが、全くそれに及ばない程貧弱だったのだ。

 

「不思議ですね…。それにあまり飛ぶ事もありませんでしたし…まるで成体に成り立ての様に見えました」

 

「俺もそう思っていた…」

村の人の目が大袈裟に捉えていたのか、それとも情報と違ったのか。全く理解ができなかった。

 

そんな時だ。倒れ臥すリオレウスの身体を剥ぎ取っていたミノトが叫んだ。

 

「ゲンジ!姉様!」

 

ゲンジとヒノエは背中を剥ぎ取っていたミノトの方へと駆け寄る。すると、ミノトは剥ぎ取った背中の殻を掲げる様にして見せた。

 

「見てください!これは堅殻ではありません!甲殻です!!」

 

「は!?」

それに驚いたゲンジは即座にそれを受け取るとペタペタと触ったり握ったりしてみる。ゲンジはこれまで数十以上もの火竜を討伐してきた。故に甲殻や堅殻、果ては重殻の違いなど手に取ればすぐに読み取る事ができるのだ。

 

馴染んだ手に感じられたのはやや柔らかめで、未発達と呼ぶにふさわしい感触であった。

 

「本当だ…。てことはコイツは下位個体…ということか…?」

 

ゲンジは驚くと共に倒れ臥すリオレウスへと再び目を向けた。

 

「一体どう言う事なのでしょうか…手紙には強力な個体と書かれていた筈…」

 

「…」

 

ミノトの言葉にゲンジは黙り込んでしまった。

 

◇◇◇◇◇◇

 

「おい。これは一体どう言う事だ?全然話しと違ぇだろ」

 

討伐を終え、森・丘から帰還したゲンジ達は事情を聞くべく討伐報告と共に村長の家へと上がり込むとその村長へと詰め寄った。ゲンジは村長の胸ぐらを掴み上げながら手に入れた甲殻を押し付けると村長を睨みつけた。

 

それに対して村長は細々とした声で答えた。

 

「いやその…私達の見間違いだったかもしれんのぅ…まさか成体に成り立てだったとは…ぐぇ!?」

 

その答えにゲンジは眉間に皺を寄せると更に力を入れて掴み上げる。

 

「と言う事は確証もつかねぇ情報使って俺を“騙して”無理矢理 呼び寄せたって事か?」

 

「いや!決してそんな事は…!!」

 

村長は否定するが、ゲンジは信じる気はない。その上に何かを企んでいるかの様な仕草に怒りが湧き上がっており、目元からは再び筋が湧き出っていた。

 

「信用できねぇな…!」

 

「ひぃ!?」

その言葉と共にゲンジは筋が湧き立つと共に瞳を鋭くさせながら殺気を放つ。それによって村長の身体は次々と震えていった。

 

「ゲンジ、落ち着いてください」

 

咄嗟にヒノエはゲンジの肩に手を置き、ゲンジを宥めた。

 

「お怒りなのは分かります。ですが今は堪えましょう?」

 

「…あぁ…」

ヒノエの言葉に怒りに駆られていたゲンジは勢いを収めると、村長から手を離した。

 

ゲンジが離れるとヒノエはゲンジに代わるようにして村長に目を向けた。

 

「村長様。此度の依頼はこれでよろしいでしょうか?」

 

「あ…あぁ。感謝するよ…」

ヒノエの問い掛けに村長は頷く。ゲンジの気迫に完全に気圧されたのか、声が震えていた。

 

「では、もう残すはあと一つですね」

 

「そうだな」

そう言いヒノエは後ろで座るゲンジに目を向けた。それに対してゲンジは頷くと立ち上がり村長の前に立つ。

 

「な…なにかな…?」

 

「俺がここに来たのは依頼の為だけじゃねぇ。お前らと正式に縁を切る為にも来たんだ」

 

「な…!?」

 

その言葉に驚く村長に向けてゲンジは人差し指を突き付けた。

 

「俺はもう二度とここに来ねぇし立ち入らない。だからお前らも二度と俺に依頼を寄越すな。そしてその顔を見せるな…!!」

 

「な…なぜそこまで私達を嫌うのだ!?それに我々はこれから誰に依頼を…!!」

 

「近くにドンドルマがあるだろ。そこなら腕の立つハンターなんてウジャウジャいる。そこに頼め。それに俺がこんなにキレてる理由はお前も十分分かってるだろ?なぁモモカのお父さんよぉ…!!」

 

「…ぐぅ…」

 

ゲンジに言われた事により、村長は黙り込んでしまう。この村長はモモカの父親でもあったのだ。彼も娘であるモモカがゲンジにしてきた所業については知っていた。

 

「この条件は必ず飲んでもらうぞ?いいな?」

 

「……わかった…」

 

村長は提示された条件に息を呑み込みながらもゆっくりと頷いた。その頷きを確認したゲンジはゆっくりと立ち上がる。

 

「じゃあ二人とも…そろそろ帰るぞ」

 

「「はい!」」

 

ゲンジの過去への決着を見届けたヒノエとミノトも笑みを浮かべながら頷き、共に立ち上がる。

 

その時だ。

 

「ま…待ってくれ!!!」

 

突然 村長は呼び止めると、床に手をつき頭を下げた。

 

「今までお前にしてきた事…皆を代表して私が詫びる!!贖罪も兼ねて夕食だけでも食べていってくれないか!?」

 

「はぁ?何言ってんだ。この村の飯なんざ腹に入れたら見た目だけで人を蔑むクソ野郎になっちまうだろうが」

 

ゲンジは頭を下げながら懇願する村長に向けて過去の事を皮肉るかの様にして断る。

だが、それでも村長は引き下がる事はなかった。

 

「お願いだ…!!何なら宿も提供するから頼む…!!!」

 

「…」

今もなお懇願してくる村長に対しゲンジは苦い表情を浮かべる。時刻はもう夕刻。アイルー交通はもう通らない上に考えればここから近くのココット村まで歩くだけで数時間は掛かる。そうなれば夜行性のモンスターに襲われる可能性がある。

 

それを考えたゲンジは溜息をつくと、ヒノエとミノトに問い掛ける。

 

「今日は胸糞悪いがここに泊まる…いいか?」

 

「「大丈夫ですよ」」

 

ヒノエとミノトはゆっくりと頷く。それを確かめたゲンジは今もなお頭を下げる村長へと目を向けた。

 

「言っとくが俺は長い狩猟生活をしてきたから鼻がいい。たった一滴入れられた毒薬なんて普通に分かる。飯に毒薬なんて混ぜやがったらタダじゃおかねぇからな…?」

 

「そんな罰当たりな事する訳ないだろ!?よし…皆に声を掛けてくる!!」

 

そう言い村長は駆け出すと家を飛び出していった。

 

残ったゲンジはヒノエとミノトに目を向けると誰にも聞こえない様な声で伝えた。

 

「油断するなよ…?」

 

「「…」」

それに答えるかの様に二人は頷いた。

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

それから夕食の時刻となった。村長宅の中で座るゲンジ達の前には多くの野菜や肉で作られた料理が置かれていた。

 

「まぁ!美味しそうですね!」

 

「あぁ。どれもウチの畑で取れた新鮮な野菜に活きの良いモスの肉だ。遠慮せず召し上がってくれ」

 

料理を見たヒノエの感嘆する声に村長は頷きながら答える。その料理はお盆に載せられており、ヒノエ、ミノト、ゲンジの分とそれぞれ分かられていた。

 

この地原産の野菜がたくさん添えられたサラダにカットされたモスポーク。そしてココットライスを使って作られた米粉のパン。更にスープ。誰も食欲を唆られる物ばかりである。

 

「……スンスン」

 

だが、やはり警戒が途切れないのか、ゲンジは二人の料理と自分の料理に鼻を近づけると毒物が入っていないか確認する。

その結果は『無し』

 

「…それらしき物は入ってないな」

 

「ではいただきましょう!」

 

ヒノエとミノトはゲンジの判断に感心し、お盆に乗せられた料理を口に運んだ。ゲンジの鼻の良さは二人がよく知っている為にその判断に安心感を抱いたのだ。

 

「…」

 

ヒノエとミノトは口に運んだ料理をジックリと味わう様に噛み締める。すると、口内には絶大な旨味が広がった。

 

「まぁ!美味しい!」

 

「こんなに瑞々しい野菜は初めてです…!」

 

原産地の野菜のその美味なる味にヒノエとミノトは再び感嘆の声を漏らすと次々と食べ進めていった。

 

「ゲンジ!美味しいですね!」

 

そう言いながらヒノエは横で食事に手をつけているゲンジへと目を向けた。

 

 

 

「_____あら?」

 

ゲンジを見た瞬間、ヒノエは食べる動作を止めてしまった。

 

「ゲンジ…?」

 

見るとそこにはゲンジがパンを片手に持ちながら固まっていた。見れば野菜やモスポークを既に平らげ、スープも飲み干していた。

 

「あの…ゲンジ?どうしました?」

 

ヒノエは何度も呼びかける。だが、ゲンジは答える事もなければ動く様子もなく、ただずっと虚空を見つめていた。

 

そんな時だ。後ろの入り口の扉が開き、酒が入った茶碗が乗せられたお盆を持ちながらモモカが入ってきた。

 

「あら、もう召し上がっていらっしゃるのですね」

 

ヒノエは現れながらゲンジの横に膝を付いて座ったモモカにゲンジの容態について尋ねた。

 

「あのモモカさん…。ゲンジが突然 動かなくなってしまったのですが…」

 

 

すると モモカの目の色が変わると共に口角が釣り上げられ三日月のように不気味な笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

「ほぅ…。どうやら成功した様ですね…」

 

 

 

 

「「_!?」」

その瞬間 ヒノエだけでなく食べ進めていたミノトもその手を止めるとモモカを睨んだ。

 

一方でモモカはヒノエとミノトの動作に目を向けることなく虚空を見つめるゲンジを見つめると、ゆっくりゲンジの耳元に口を近づけ囁いた。

 

 

 

「ねぇゲンジ様……私と結婚して一生この村に残ってくれますよね…?」

 

 

その言葉が聞こえた瞬間 先程まで固まっていたゲンジの口元がゆっくりと動き出した。

 

 

「俺は__ここに残る…。お前と…結婚する…」

 

 

 

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