薄明と双子の姉妹 (リメイク中)   作:きょうこつ

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帰郷

「…ん…」

 

窓から差し込んでくる朝日の光が部屋の中を照らすと共にその光が顔に当てられた事により、ゲンジは目を覚ます。

目を覚ましたゲンジは自身が裸である事を認識すると、インナーを着るために起きあがろうとする。

 

だが、起きあがろうにも、上手く起き上がる事が出来なかった。

 

「動けねぇ…」

 

見れば両側からヒノエとミノトが覆い被さるように手を身体に巻きつけながら抱きついていた。

まるで抱き枕を抱いているかの様に、その手の力は若干ながらも強く、身体を揺さぶる程度では解けなかった。

 

「……」 

 

ゲンジは2人を起こさない様にゆっくりと手を退かし起き上がると、自身の両側で眠るヒノエとミノトへと目を向けた。

ゲンジが寝ていた場所が見えなくなる程まで、2人はすり寄っており、今もグッスリと寝息を立てながら眠っていた。

 

「う…!?」

その眠る姿を見た途端にゲンジの舌や鼻に甘い香りや味が蘇ってくる。

 

「…(うぅ…口の中がまだ乳臭ぇ…)」

 

口内に広がるミルクの様な甘味にグッタリとしながらも起き上がったゲンジは脱がされたインナーを着用すると2人の身体を揺さぶった。

 

「2人とも、そろそろ起きろ」

 

「「んん…」」

声を掛けられながら身体を揺らされた2人は少し唸りながら琥珀色の瞳を見せる様に目を覚ました。2人は口元に手を当て欠伸をしながら起き上がるとゲンジに笑みを浮かべた。

 

「「おはようございます。旦那様」」

 

「あぁ……ま…前を隠せ…!!」

 

「「え?」」

 

2人は首を傾げると自身の身体を見た。起き上がったことで掛けられていた布団が重力に逆らう様にして身から剥がれ、ヒノエとミノトの白い肌が顕になっていた。

 

「あらあら。うっかりです♪」

 

「これは失礼しました」

 

まるで頬を赤くしているゲンジをからかう様に2人は頬を緩ませながら笑みを浮かべると、インナーを着用した。

 

それから、インナー姿となったゲンジと、受付嬢のコーデを着用したヒノエとミノトは、帰る支度をし終え、部屋を片付けた。

 

「里から出て3日が経ちましたが、いま考えれば短くとも長かったですね」

 

「はい。その中で1日を除けば楽しい日々でした」

 

ヒノエとミノトが片付けながら談笑する中、2人の姿を見ていたゲンジは少しばかり笑みを浮かべた。

 

「…ふふ」

 

「どうしましたか?」

 

「いや、何でもない」

 

それから荷物を整え、宿を出るとカムラの里へと向かうアイルー便に乗りドンドルマを後にした。

 

◇◇◇◇◇◇

 

山中。

 

荷車が凸凹のある道を進み、その拍子に車輪から荷車へと振動が伝わり荷車が揺れる。揺られながら山を登る事、およそ数時間。

 

「御三方、そろそろ着きますぜ」

 

「おぅ。やっとか」

 

カムラの里付近に差し掛かった事を知らせるアイルーの声を聞いたゲンジはミノトに預けていたその身を起こし、前の景色へと目を向けた。

 

「…まぁ…!姉様…!」

 

「え?…あら…!うふふ♪」

その横顔を見たヒノエとミノトは驚きながらも微笑んだ。

 

里の入り口がある方向を見つめるゲンジのその横顔はまるで子供の様に無邪気な笑みを浮かべていた。

 

まるで逸れた母を見つけた時に安心しながら駆け寄っていく子供の様に。

 

そしてその姿を見ている内に森を抜け、遂に里の鳥居が見えてくる様になった。その景色を見たゲンジの笑みは更に明るくなっていった。

 

◇◇◇◇◇

 

「到着ですニャ〜」

 

カムラの里の入り口である鳥居から離れた場所へと荷車は停車した。ゲンジ達は荷車から荷物を背負いながら降りると、目の前に聳え立つ鳥居へと目を向けた。

 

 

「…」

 

里の目の前に立っていた巨大な鳥居は3人を出迎えていたかの様に太陽に照らされながら塗られた漆を輝かせていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

その時だった。

 

「お〜い!!ゲンジさ〜ん!ヒノエさ〜ん!ミノトさ〜ん!」

 

鳥居の向こう側から大きく手を振り、高らかな声を上げながら走ってくる天真爛漫な少女の姿が見えてきた。

 

「あれ…ヨモギ…!?」

 

「俺もいますよ!」

ゲンジが名前をこぼした途端に、ヨモギの横からは大量のアイルーやガルクを連れたイオリが現れた。

 

ヨモギとイオリが鳥居に現れると更に_。

 

「おぅ3人とも!無事に帰ってきたようだな!」

 

「ファ〜フォッフォッ。いやぁ何よりでゲコォ!」

 

イオリ達に続くかの様にフゲン、ゴコク、そして加工屋のハモンやナカゴ、更にセイハクと、次々と里の皆が門の前へ集まってきた。

 

そしてその中には『エスラ』と『シャーラ』の姿も。

 

「ゲンジ!ヒノエ!ミノト!無事だったか!」

 

「何か悪い事とかゲスい事とかされてない?」

 

「エスラ姉さん…シャーラ姉さん…!」

 

それに続くかの様に次々と人が増えていき、遂には里のほぼ全員がその場に集まっていた。

 

「ゲンジ!ヒノエ!ミノト!」

 

「ゲン!ヒノエさん!ミノト!」

 

エスラ、シャーラに続く様に自身らの名前を次々と呼ぶ声が聞こえてくると共に、皆の声が重なった。

 

 

『『『おかえり!!』』』

 

 

「…!!!」

 

その言葉を聞いたゲンジは目を大きく開きながらその場に立ち尽くしてしまう。

 

『おらぁ!モンスターがぁ!とっとと消えち__

 

『さっさと出て___

 

『この紛いも___

 

皆から聞こえてくる温かい声が胸の中に潜んでいたゲルド村の住人達の声を消し去っていき、それと共に頭の中に根付いていた忌まわしき記憶も完全に溶けていく。

 

「どうだ!後で茶屋で一杯!」

 

「あの村の住人は最後どんな顔をしていたんだ?飲みながら教えてくれよ!」

 

「あ!私も聞きた〜い!」

「私も」

 

フゲンの茶に誘う声、エスラの話を聞かせて欲しいという声に続くヨモギやシャーラの声。

 

里の入り口の前だというのに賑やかな雰囲気へと発展するその景色を見ていたゲンジは再び笑みを浮かべていた。

 

「さぁゲンジ」

 

「里に入りましょう」

 

 

___そうだ。ここが俺の帰るべき場所だ。俺の“たった一つの故郷”なんだ。

 

ゲンジは心の中で改めてここが自身が帰る場所である事を認識すると、手を振る皆へヒノエとミノトと共に手をあげ、答えた。

 

 

「ただいま」   

 

 

 




次回でいよいよ最終回となります…。因みに後日談みたいな奴も書きます。
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