薄明と双子の姉妹 (リメイク中) 作:きょうこつ
1夜明けた翌日。停泊していた船で寝ていたフィオレーネは目を覚ますと、装備を纏い外へと出た。
「…ロンディーネの言う通り…良い場所だな…」
王国とは違った風の強さと空気の味。そして山紫水明の風景を堪能しながら彼女はふと呟いた。
その時だ。停泊していたもう一方の船から同じく騎士としての装備を纏ったロンディーネが現れた。
「姉上…おはよう」
「あぁ。ここはお前の言う通り良い里だ。私も調査が終わったら是非プライベートで訪れたいよ」
「そうだろ?それよりも、同行するハンターは決まったのか?」
ロンディーネが尋ねるとフィオレーネは昨日のゲンジの事を思い出す。
「今のところは銀の装備を纏う彼が行ってくれる様になった」
「…!!」
フィオレーネが答えた瞬間 ロンディーネは驚いたのか、一瞬ながら目を大きく開かせる。
「…ん?どうした?」
それに対してフィオレーネは疑問に思い尋ねるも、ロンディーネは目を逸らし「別に何でもない」とだけ答えた。
「さて、私は彼らの所に行ってくるよ。彼らの狩りの腕を見たいからね」
それだけ言い残すとフィオレーネは少ししか昇っていない日に照らされている里の方へと向かっていった。
その姿を見つめていたロンディーネは何か複雑な表情を浮かべていた。
「ゲンジ……大丈夫なのだろうか…」
カムラの民と同じくゲンジの秘密を知っていた彼女はゲンジの事を思い出しながら彼の事を心配したのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇
所変わり、里に着いたフィオレーネは人ひとりいない広場を通り抜けると水車に流れる川のせせらぎが聞こえるゲンジの家の前までやってきた。
「ここだな」
コンコン
彼の家に着くと軽く扉を叩いた後に手を掛ける。
「すまないゲンジ殿に皆。少し良いだろうか?」
そう言いながらフィオレーネは扉を開けた。
「お邪魔するぞ」
ガラガラガラ
「うふふ♪旦那様〜朝のミルクのお時間ですよ〜♪」
「ここも…凄く硬くなってきてますね…」
バタン!!
フィオレーネは即座に扉を閉める。気の所為だろうか、一瞬だけ二人の竜人族の女性が奥の布団の上で寄ってたかって青髪の少年の頭や下半身に胸を押し付けている光景が見えた。
「いや…そんなまさか…暗いとはいえもう早朝だぞ…?まさか…いや、ないない」
フィオレーネはその目で見たのかもしれない光景を即座に顔を振る形で否定すると再び扉を開けた。
「お邪魔す___」
「ほらほら〜早く吸わないと私とミノトに押し潰されてしまいますよ〜♪」
「んん…上手に吸えていますね。もっと強く…」
そこには先程とは全く変わりない光景が__。
「は…破廉恥なぁぁぁあ!!!!!」
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それからヒノエとミノトは和服を着ると布団を片付け、今もなお煙の出る囲炉裏の側でフィオレーネと向かい合う様にして座った。二人の間に挟まれながら座るゲンジはハンターとしての勇ましい面影が消え失せ、1人の初心な子供の様に縮こまっていた。
「先程は申し訳ありませんでした。いつもは私達が朝一番に起きていたのですが、まさか貴方がこんなに早く起きてくるとは思わなかったもので…」
「い…いやいい…/////」
先程の光景がまだ頭から離れないのか、ヒノエ達と向かい合う様にして座っていたフィオレーネの顔からは険しい顔つきが無くなり真っ赤に染まっていた。その顔を強引に戻そうとしているのか、眉間に皺を寄せているものの、一向に頬の紅潮が収まる様子はなかった。
「き…君たちはいつもこんな感じなのか…?」
その質問に対してゲンジは頬を紅潮させながら頷いた。
「う…うん…」
「私達は夫婦なんですからこれくらい当たり前ですよ♪」
「…」
ゲンジが頷くと共に両サイドからヒノエとミノトが身を寄せながら答えるとフィオレーネはまるで虚を突かれたかの様な驚きの表情を浮かべる。夫婦の営みは夫婦の勝手であるためにフィオレーネはあまり口を出さずに話を終わらせるべく軽く咳払いをした。
「んん…2人に会うのは恐らく初めてだろう。私の名は『フィオレーネ』カムラの里で交易を行なっているロンディーネの姉だ。妹がいつもお世話になっている。今回は調査の助力を依頼するべく王国から参った」
それに対してヒノエとミノトの双子姉妹は驚きながらも胸に手を置きながら自身の名前を名乗った。
「私はヒノエと申します。カムラの里にて受付を務めさせてもらっております。旦那様を取ろうとするならば…問答無用で射殺します♪」
「ミノトです。里の集会所の受付を務めさせていただいております。私達の可愛い可愛い旦那様を誘惑すれば刺殺します」
「ド直球すぎるだろ!?しないしない!他人の夫に言い寄るなど騎士道に反する!!それに君らが夫婦である事も既にロンディーネから聞いている!」
ヒノエとミノトの初っ端からの殺害予告にフィオレーネは戸惑いながらも弁明した。
それに対してヒノエとミノトは首を傾げる。
「あらあら。ロンディーネさんとは文通でもしていらっしゃるのですか?」
「あぁ。情報交換も兼ねてな。彼がカムラの里に流れ着いた事も結婚した事もロンディーネから聞いていたさ。仲が良すぎる事もな」
「まぁ!では私達夫婦の“あんな事”や“こんな事”も知っているという訳ですね♪」
「は…!?はは…破廉恥な!!そんな君達個人のプライベートなど知る訳ないだろうが!」
「あんな事やこんな事とは主に一緒に食事やお散歩をする事ですよ。あらあら……一体何を想像していらしたのですか〜?」
「くぅぅ…///」
ヒノエに完全にハめられた?フィオレーネは自身が勝手に破廉恥な妄想をしていた事に気付き再び顔を真っ赤に染め上げる。
その一方で、ミノトはゲンジの肩を抱き寄せ、フィオレーネから遠ざける。
「姉様…やはりこの女…私達の旦那様を付け狙っているのでは?」
「可能性はありますね。先程から私達の旦那様を性的に見ている様に見えます」
「狙ってないし見てもない!!!」
◇
それからフィオレーネは再び咳払いをし調子を持ち直すとゲンジに目を向ける。
「んん…今日来たのは他でもない。出発前に君や他の2人の実力を見てみたい」
「俺の実力?」
「あぁ。一昨日に拝見させてもらったが、もう一度見ておきたいのだ。既にマスターランクに到達している君達の実力を疑っている訳ではない。ただの興味本位と受け取って欲しい。華麗なる君達の双剣捌きや百発百中とされるボウガンの扱いを是非拝見させて欲しい」
「別にいい。けど、大社跡が狩場の大型モンスターの依頼はないだろ?」
ゲンジは頷きながらミノトに目を向けると、ミノトは首を傾げる。
「今日の分の依頼を確認しなければ分かりませんね…入り次第、お伝えいたします」
「そうか」
フィオレーネは頷くと、座っていた座布団から腰を上げる。
「では、また来る。それと、もう1人は決まったのか?」
「シャーラ姉さんが行く事になった」
「了解した。感謝するよ」
それからフィオレーネはゲンジの家を後にし、停泊している船へと戻っていった。
「さて、では…先程の続きを…♪」
「するかぁ!?それよりも朝飯の準備だ。ほら、今日は俺が作るから!」
フィオレーネを見送ったゲンジは背中まで伸びた髪を縛りポニーテールにすると米を炊こうとする。
その時だった。
「失礼する」
入り口から再び誰かが入ってきた。その姿は日が昇っていなくともシルエットだけですぐに分かった。
「ロンディーネさん?珍しいですね」
「…」
ヒノエの声と共にそのシルエットは鮮明になる。そこに立っていたのはフィオレーネの妹であるロンディーネであった。いつもは凛とした雰囲気を見せながらもヒノエと同じく笑みを絶やさない彼女であったが、今はそれと一変し何か複雑な悩みを抱えている様であった。
「ゲンジ……話がある」