薄明と双子の姉妹 (リメイク中)   作:きょうこつ

187 / 205
カムラの里のほのぼの日常 私の鳥は何処?

 

災いが去って初めて来る平和な春。そんなある日の事だった。

 

「オ〜イオイオイオイ…!!!」

 

集会所にあるクエスト受付場にて一人の大男がテーブルの上に顔を伏せながら声を上げて泣いていた。

 

その正体はなんと里長であるフゲンであり、いつもの威厳ある姿はどこえやら。今は旦那が不在の際に姑にいじめられた女房の様にワンワン泣いていた。

 

「えぇと里長…そろそろ落ち着かれた方が…それに私はこの後旦那様と…」

 

「うぉおおおおおん!!!!」

 

その様子を目の前のテーブル即ちカウンターの内側で困り果てていたミノトはそう言うが、フゲンは泣き止まなかった。それどころか更に大きな泣き声をあげ始めた。大男が顔を突っ伏しながら泣き喚くその絵面は恐ろしく、集会所に遊びに来た子供達が泣きながら逃げ出す程であり、終いにはゴコクは勿論、テッカちゃんも引いていた。

 

そんな時だった。

 

「ミノト姉さ〜ん」

 

集会所の入り口からゲンジが入ってきた。

 

 

「ウサ団子食った後でもいいから何か依頼ある……か…」

 

そして案の定。その光景を目にした瞬間にカウンターに近づく歩みを止めて固まってしまった。

 

「えぇと…何があったんだ…」

 

◇◇◇◇◇◇

 

それからフゲンは泣きながら理由を話した。何でも飼育していたフクズク3羽の内、1羽が知らぬ間にいなくなっていたらしい。

 

「それ…小屋のどこかに隠れてたとかじゃないのか?」

 

「最初はそう思っていたのですが…」

改めてゲンジがそう言うとミノトは首を横に振る。

 

「先程、飼育小屋を見てみたのですが、何度数えても2羽しかおらず、残りの1羽はどこにも見当たりませんでした」

 

「成る程…となると里の何処か…最悪の場合 大社跡らへんにいるって事になるか」

 

「そうなりますね…」

ゲンジの見解にミノトは落ち込みながらも頷いた。フクズクが脱走してしまう事はごく稀にだがあり、大抵は里で見つかるのだが、ゲンジが来る前には大社跡まで飛んで行ってしまった個体がいたらしい。

 

「それにしても妙だな。フクズク…しかもフゲンさんのが脱走なんて」

 

「私も耳を疑いました。里長はフクズクをこよなく愛している上にフクズクからも懐かれています。なので脱走なんて…」

 

「本来ならまずありえんでゲコ」

 

ゲンジ、ミノト、ゴコクの3人は不思議そうに思いながらフゲンへと目を向けた。

 

 

すると泣き喚いていたフゲンは遂に装備を脱ぎ出すと背中から剥ぎ取り用のナイフを取り出した。

 

 

「うぉおおおお!!!愛するペット1匹も管理できないとは俺は里長失格だぁぁ!!!しからばここで腹を…!!」

 

 

「「「うおおおいいい!!!!」」」

 

感情昂り切腹しようとした瞬間 ゲンジとゴコクとミノトが咄嗟に飛びつきフゲンを静止させる。

 

「おい落ち着けフゲンさん!こんなとこで切腹するなよ!?」

 

「離してくれ3人共ぉおおお!!!こんなペットも管理できないジジイを早く死なせてくれええぇ!そして次の里長はお前だウツシぃ!!!」

 

「誰がウツシだぁ!?分かった!!分かったから!!俺が探してくるから!だから腹切るのはやめろぉおおお!!!」

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

「逃げ出したのは…食いしん坊の『サンラ』か。デカデカ柿が好物らしい」

 

「でしたらまずそのエリア3か4に行ってみましょうか!」

 

「そうですね…」

地図に丸をつけながら確認するゲンジの両隣にはそれぞれ弓とランスを背負ったヒノエとミノトの姿があった。

二人の内ヒノエはご機嫌であったがミノトは不満爆発な表情を浮かべていた。それもそうだ。楽しみにしていたゲンジとヒノエとの食事を邪魔されてしまったのだから。

 

因みにエスラとシャーラは里でサンラを探しているらしい。

 

「それよりも、何で二人まで来てるんだ?別に里にいていいんだぞ?」

 

「何を言っているのですか?私達は貴方の妻なのですから何処へでもお供しますよ♪」

 

「その通りです…旦那様の行く先に我ら姉妹あり…」

 

「だったら頼むから怒りを抑えてくれ俺だって抑えてるんだから」

 

ヒノエはルンルンと身体を揺らしながら答える一方で、ミノトはドス黒いオーラを放っていた。今もなお完全にブチギレ状態であり、もしもフゲンが話しかけでもしたら確実に殴り飛ばしそうな勢いだあった。

 

「では行きましょうか」

 

そう言いミノトはズシズシと地響きが鳴る程の足取りで向かっていき、ゲンジ達は後を追っていった。

 

◇◇◇◇◇◇

 

大社跡の巨大な鳥居が見える箇所。ゲンジがビシュテンゴを見つけた場所に到着した3人は辺りに巣食うイズチ達を討ち払うと辺りを探索した。

 

「う〜ん。この辺りの筈なのですが」

 

「見つかりませんね…」

 

「はぁ…」

そう言いヒノエ達は手当たり次第に柿の実る木々を探していったが、一向に見つかる様子はなかった。どこを探しても見つからない為にゲンジは溜息をついてしまう。

 

そんな時だった。

 

「…ん?」

一本の柿の木を見ていたゲンジはその木々の間から見える枝に止まる一つの影を見つけた。

 

「あ…あれは…」

 

目を凝らしてよく見てみる。カラフルな羽毛にクリッとした目玉。そして額にツノの様に逆立つ毛。紛れもない一羽のフクズクであった。フクズクを見つけたゲンジは後ろで探している二人に静かに声を掛けた。

 

「おい…見つけたぞぉ…」

 

「「?」」

 

ゲンジが小声で呼ぶと二人は同時に振り向き首を傾げながら耳に手を当てる。

 

「み・つ・け・た…!」

 

「「?」」

 

「だからみ・つ・け・た…!!」

 

距離が遠いためか何度も伝えても二人には一向に伝わらなかった。二人は耳を立てるばかりであった。

 

それに対してゲンジは勢いよく手の動きを加えながら再度伝える。

 

「み…!つ…!け…!た…!!!ここの…!木の…!上に…!いる…!!」

 

 

 

ミノト「…好き好き…お姉ちゃん愛してる…ですか?」

 

ヒノエ「まぁ♪」

 

 

ブチっ

 

 

遂にゲンジの堪忍袋の尾が切れた。

 

 

「ちがぁぁぁああああうッ!!!!___

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

____あ」

 

ゲンジの放った巨大な怒鳴り声はその場に轟き辺りの木々を揺らしていった。それによって案の定、フクズクは驚きその場から飛び立ってしまった。

 

「しまった!!」

 

木から飛び出したフクズクへと目を向けたゲンジは走り出した。すると、後ろの二人もゲンジの後を追いかけるかの様に走り始める。

 

「旦那様〜!あの愛の言葉をもう一度〜♪」

 

「木の上にいるって言ったんだよ!!何で伝わらなかったんだよぉ!!」

 

ゲンジは今もなお勘違いしているヒノエに叫びながらフクズクを追いかけていった。

 

ーーーーーーー

ーーーーー

ーーー

 

それから数時間後。大社跡を飛び回るサンラをやっとの思いで捕まえたゲンジとミノトはくたびれながら里へと帰還した。

 

「はぁ…ようやく捕まえましたね…」

 

「あぁ…流石にあんなに走り回されるのはな…」

 

それもそうだ。なにせ休憩無しで数時間も動きっぱなしであったのだから。最後の最後でようやく自身らを認識して飛んで来てくれたのが唯一の救いだろう。

 

その一方でゲンジ達と共に走り回っていたヒノエは汗一つ垂らさず満面の笑みを浮かべながらゲンジに抱きついていた。

 

「うふふ〜♪旦那様旦那様〜♪」

 

「何でそんなに元気なんだよ…!?」

 

「あんなに嬉しい事を言われては喜ばずにはいられませんよ♪」

 

「だから聞き間違いだって言ってるだろぉ!?」

 

それから里へと帰還したゲンジ達はエスラとシャーラにサンラを見つけて捕獲した事を話すとそのままフゲン達の待つ集会所へと向かった。

 

そして 集会所に到着し、待っていたフゲンへとミノトは捕まえたサンラを差し出した。

 

「里長…見つけましたよ」

 

「おおおお!!」

 

帰ってきたサンラの姿を見たフゲンは感涙するとサンラを抱き締めた。

 

「よくぞ帰ってきてくれたなサンラぁ!!もう二度と勝手に逃げ出してはダメだぞぉ!!!」

 

「「…」」

 

一人の大男が涙を流して飛び回りながら1匹のフクズクを抱き締める凄まじい絵面にゲンジとミノトは怒りが引き下がる程まで引いてしまう。

 

ーーーーーー

 

それから騒動は収まり、無事にフクズクは元の小屋へと戻された。

 

だが、ゲンジ達はある事を疑問に思っていた。

 

「それよりも…何で脱走なんか…フゲンさんのフクズクだぞ…?」

 

「確かに…里長はフクズクをこよなく愛しておられますしフクズク達も凄く懐いている筈…」

 

「何とも不思議でゲコなぁ」

 

そんな事を疑問に抱いたゲンジ、ミノト、ゴコク、そしてその場にいたヒノエはフゲンへと目を向けた。

フゲンは里でも一番のフクズク好きであり、3羽も飼い慣らす程の技量と1羽ずつに注ぐ愛情が溢れている。そしてそれはフクズクも同じであり、放し飼いにしても小屋を開けっ放しにしても呼び出せば直ぐに戻ってくる程だ。

 

なのに何故なのだろうか。

 

「…あ」

 

そんな中、フゲンは何かを思い出したのか、パッと俯いていた頭を起こした。

 

「昨日…酔っ払っていて餌をあげるのを忘れていた…」

 

「「…」」

フゲンから出た言葉に辺りは凍りついた。それもそうだ。あれ程まで泣き喚いた挙句の果てに切腹までしようとし、辺りを騒がせた結果が自身の自業自得なのだから。

 

「いや〜アッハッハッ!いやぁすまなかったなぁ。よくよく思い出してみたら昨日は久しぶりに結構飲んだんだった!流石に少しは控えた方がいいなぁ!」

 

自身が原因である事を思い出すとフゲンは大きな声で高笑いし始める。

 

「はぁ…お主という奴は…本当に人騒がせな…」

 

「おっちょこちょいな所は変わりませんね」

 

フゲンの優柔不断かつ反省の無い様子にゴコクは呆れ果てヒノエも苦笑し始める。

 

 

 

それとは別に……

 

 

「ほぅ…?酔っ払って…」

 

 

「忘れていた…ですか?」

 

 

ポキ……

 

ポキポキ…

 

フゲンの背後から拳の音を鳴らす二つの影が。その影は全身からドス黒いオーラと共に真っ赤に染まった目をフゲンへと向けていた。

 

 

「ん?二人共どうし____

 

ドカ!バキ!グシャ__!

 

その後 里中にフゲンの叫び声が響き渡ったと言う。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。