薄明と双子の姉妹 (リメイク中) 作:きょうこつ
翌日。ガレアスから招集を掛けられたゲンジ達は広場へと向かう。集まるとガレアスは厳格な表情を浮かべながらある指令を出した。
「ルナガロンの狩猟を頼みたい」
「ようやくか」
それを聞いたゲンジは思わず声を漏らす。里にて自身らを襲ったモンスターの依頼がようやく出た事にゲンジは胸を高鳴らせたのだ。
「で、内容は討伐か?捕獲か?」
「いや、正確には今ではなく近々頼みたい。依頼についてはまだ検討中だ」
「どう言う事だ?」
ガレアスの言葉にゲンジは首を傾げ詳細を尋ねる。すると、ガレアスは背後にある板に貼られている城塞高地の地図へと目を向けると氷雪地帯のエリアを指差した。
「奴はまだ目立った行動はしていない。調査隊が発見したのはこの地点の更に奥。つまり狩場から離れた場所だ。狩場から遠く離れてしまえば更にモンスター達の縄張りの中へ入ってしまい奴らを刺激させてしまう。故に奴が付近に現れた時に依頼をしようと考えているのだ」
「成る程な。でも、今回の招集はそれだけじゃねぇだろ?」
「あぁ」
ガレアスは再び頷くと今度は岩場の多い渓谷エリアを指差した。
「モンスターの凶暴化と縄張り拡大に伴って…奴らを喰らうが為に『マガイマガド』も姿を現し始めて来た」
「…!!」
そのモンスターの名を聞いたゲンジは目を大きく開かせた。マガイマガドとは別名『怨虎竜』とも呼ばれる獣竜種でありまだ百竜夜行に悩む里を壊滅寸前まで追いやった怨敵である。だが、それもゲンジが来た際に最初に起こった百竜夜行にて討伐されており、百竜夜行を終えてからは里付近や大社跡には姿を現す事が無くなった。
今回の個体はマスターランクの成熟された手強い個体である。いくら希少種を大量に狩猟してきた自身らでも厳しい物となるだろう。
だが、これはゲンジにとって絶好のチャンスでもあった。ここに来てから数週間が経過しようとしており、その間にエスラとシャーラは自身らが持つ武器を強化してマスターランクに対応し始めているのだ。それに対してゲンジは未だに双剣が上位止まりである為に立ち止まっていた。今回のマガイマガドを狩猟すれば自身の武器もマスターランクへ対応できる武器へと強化する事が可能となるだろう。
故にゲンジは珍しく目を大きく開きながら拳を鳴らしていた。
その一方で、マガイマガドを見たことがないエスラとシャーラは首を傾げていた。
「ゲンジはともかく私達は初めて見るモンスターだな…。ガレアス殿、何か情報はないのか?」
「貴殿らの里の長であるフゲン殿によるとマガイマガドは鬼火を纏い攻撃してくるだけでなくその爆発を推進力として高速な移動も可能にすると聞いている。俺として答えられるのはここまでだ。後は直接対峙したゲンジに聞くといいだろう」
それからゲンジ、エスラ、シャーラの3人は皆と別れると調査のために準備へと取り掛かった。
ーーーーーー
「ねぇゲン。ゲンは一回、マガイマガドを討伐したんでしょ?どうだったの?」
「…」
ゲンジは一年前の里に来てから間もなく到来した百竜夜行の際に会敵し戦ったマガイマガドを思い出す。
「ガレアスさんの言う通りアイツは鬼火のような炎を纏ってたしそれを爆発させて移動してた。それだけじゃねぇ。尻尾も他のモンスターとは全く違う形状だ。まるでランスのように突き刺すのに特化したかのような」
「尻尾も危ないんだ…。なら…念入りに準備しないとね…」
「あぁ」
「それよりも、何で加工屋に向かうの?」
「俺の武器の強化について相談するためだ」
そう言いゲンジ達は広場を抜けた先にある加工屋へと向かった。
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ーーーーー
ーー
それから広場を離れた一同が加工屋へと差し掛かった時であった。
「お〜いゲンジちゃ〜ん!エスラちゃん!シャーラちゃん!」
加工屋の方から自身らを呼ぶ声が聞こえてきた。その声を聞いたゲンジは落胆しながらも目を向ける。
「その呼び方はやめろ…『ミネーレ』」
「え〜いいじゃん。その方が可愛いんだし♪」
その先にいたのは片手に金槌を持ち肩に掛かる逞しい女性がいた。その女性は所々露出が目立つが、その露出した白い肌は見る限り鍛え上げられており立派であった。
この女性の名はエルガドの加工屋である『ミネーレ』といい、ハンターや騎士も関わらず全員が必ずお世話になる加工屋だ。ミネーレはゲンジが来る前に里にしばらく滞在しており、その時はハモンの弟子として彼の技術をその目で盗み今に至るようだ。
ミネーレはニシシと笑うと金具で肩をポンポンと叩く。
「今日はどうする?武器の強化?生産?ところがどっこい防具の生産!?」
「違う。近々、マガイマガドの狩猟に行く事になった。だから俺の武器の強化について話がある」
「マガイマガド…ね。オッケー♪お姉さんに任せな!」
そう言い彼女は腕をまくりまるで力瘤を自慢するかのようにポーズを決める。彼女は肌が白く透き通っていながらも腕の筋肉は凄まじくポーズを決めた時には二の腕からしっかりと力瘤が盛り上がっていた。
「とりあえず武器を見せて」
「あぁ」
ゲンジはミネーレへ自身の武器であるイステヤを手渡した。ゲンジの双剣は他の双剣と違い刃の範囲が長い為にモンスターへ攻撃が当てやすい優れ者である。
手渡された双剣をミネーレはじっくりと鑑定すると、ペンを取り出し次々と紙に書いてゆく。因みに加工屋はこの様にして一時的に強化後のデザインやそれに必要な素材の大まかな数を算出していくのだ。
それからしばらくして___
___「うん!こんな感じかな!」
ミネーレは幼い少女のように興奮しながら、書いた紙をゲンジに手渡した。
「成る程な」
手渡された図面を見たゲンジは顎に手を当てる。
そこには強化後の図面や必要な素材が描かれており、この素材を用いた際のどれ程の強度が見込まれるのかも計算されていた。
形状はあまり変化は見られないが塗装や素材がマスターランクの個体な為に攻撃力の大幅アップや爆破属性の強化が見込める事が分かる。
名前は『禍業物・大幽鬼イステヤ』と書かれていた。
「素材は上位の個体と比べて形は違わないから前のと同じデザインにしてみたよ」
「そこまで見越してるのか…すごいな…」
「でしょ〜♪取り敢えず加工後はそんな感じでいいかな?」
「あぁ。素材が揃い次第、すぐに来る」
「オッケー♪」
それから加工屋と今後の強化について話し合うとマガイマガドを狩猟するべく城塞高地へと向かった。