薄明と双子の姉妹 (リメイク中)   作:きょうこつ

193 / 205
二度目の会敵 怨虎竜 

 

加工屋と話を合わせたゲンジ達はその後、フィオレーネ達と合流すると船に乗り城塞高地へと向かった。

 

城塞高地へと着いたゲンジは支給品ボックスから一つずつ支給品を取り出してポーチへと詰めていく。

 

そんな中、ゲンジは今回、初めて同行する騎士であるルーチカへと目を向けた。

 

「…」

 

初めて会った際は寡黙な雰囲気を漂わせ沈着冷静な印象を受けた。だが、今は全く異なっていた。

 

「はぁぁぁ!!いよいよ楽しい狩りの幕開けだぁ!ヒャッハァァアア!!!」

 

明らかにヤバい奴に変貌していた。物静かかつ寡黙な表情が印象的であったあの姿とは180度変化しておりその時の面影すらも消え去っていた。

 

 

気を取り直してゲンジは地図を開く。

 

「まずマガイマガドがいそうなこのエリアに向かうぞエスラ姉さん。…あと……」

 

「ルーチカだ。ちゃんと覚えろチビ」

 

「…」

 

ルーチカから罵られたゲンジは額に青筋を浮かび上がらせると近くに置かれていた巨大な石を持ち上げた。

 

「ままま待ってくれ!アイツは狩りになると人が変わってしまうんだ!」

 

「へぇ〜そうなんだ。俺、普通の女より低いからそういうの言われると相手に石を投げつける原始人になっちまうんだよな〜!!(怒り)」

 

そう言い傍から腕を通し止めるフィオレーネを引っ張りながらゲンジはルーチカへと迫っていく。

 

「うぉ!?力強!!待て待て!アイツには私から言っておくから気を抑えてくれ!!」

 

それから気を落ち着かせたゲンジは残りの4人と共に探索地を確定させるとその場へと向かった。

 

 

ーーーーーーーー

 

城塞高地の中でも特に木々が生え、地面には緑が広がる草原地帯。この狩場にて初めて相手をしたモンスターガランゴルムが眠っていた場所にターゲットであるマガイマガドはいた。

 

「…」

 

ゲンジはその姿を一年前に自身が戦った個体に重ねながら見つめた。外見の変化は特に見当たらない。それもそうだ。ゲンジが闘った個体は50年を生きる歴戦の個体であり言うなればマスターランクレベルの個体である。上位の個体としか会敵していないゲンジから見れば特に驚く点はないだろう。

 

その一方でエスラやシャーラは初めて目にするのか、少し瞳を震わせながら驚いていた。

 

「あれが…マガイマガド…か。一時は里を壊滅に追いやった存在だが…まさかこの地域にも出没するとはな…」

 

 

「あぁ。じゃあ作戦通りに行くぞ…!」

そんな中、作戦の序盤である相手の行動パターンを覚えているゲンジが悠々と歩いているマガイマガドへ向けて駆け出した。

 

「グルル…!!!」

 

マガイマガドは迫り来るゲンジを鋭い目で捉えると尻尾を振り回し始める。すると振り回された尻尾の先端から紫色の炎『鬼火』が溢れ出し尻尾の先端を包み込んでいった。

 

炎を纏った尻尾を振り回しまるで燃える槍の様に変化させるとマガイマガドは態勢を変化させながら一気に尻尾の先端部分を突き出した。

 

「…!!」

 

迫り来る炎の槍。それを見たゲンジは鍛え上げられた動体視力を用いると共に右手に持つ双剣の持ち方と体勢を変化させ跳躍した。

 

そして 

 

「ヴォァア!!!!」

 

迫り来る槍の先端部へ向けてイステヤの刃を突き刺すと共に身体を回転させた。それによってゲンジの身体は回転しながら火車の如くマガイマガドの長い尻尾の先端部から鋭い牙の顔面までを駆け抜けていき、紅蓮の爆炎を纏いながらその身の肉を切り刻んでいった。

 

「ギャァオオオ!!」

 

切り刻まれた事によりその場に鮮血が舞いマガイマガドは苦痛の声を上げながら身をよぎらせる。その様子を見ていたエスラ達も遂に参戦する。

 

「私にしっかりと合わせてくれたまえよルーチカ殿」

 

「そのセリフ、そっくりそのまま返すぞ」

 

ボウガンを構え装填しながら駆け出した二人は別々の高台へと移動し、岩場の影へと隠れるとその場からゲンジと交戦するマガイマガドに目掛けて弾を撃った。

 

撃たれた弾はほぼ全てのモンスターに対して苦痛を与える『貫通弾』である。二人の銃口から放たれた貫通弾は空気を突き抜けていくとゲンジに向けて牙を剥こうとするマガイマガド目掛けその先端部を突き出しながら迫っていき、強靭な重殻で覆われている身体に突き刺さっていった。

 

 

「ギャァオオオ!!!」

 

突き刺さった貫通弾は体内へと侵入すると砕け更に内部に仕組まれていた弾が発射され、その身を貫いていく。その弾はエスラ達から次々と放たれていき、その痛みにマガイマガドは悶絶するかのような呻き声を上げ始めた。

 

「よし!このまま続けるぞ!」

 

「あぁ!!」

 

エスラとルーチカはそのまま弾丸を装填し打ち続けていく。

 

そんな中、先程まで待機していたシャーラとフィオレーネも同時に動き始めた。

 

シャーラと共に駆け抜ける中、フィオレーネは高台から援護射撃を放つ二人に向けて叫び出す。

 

「二人とも!麻痺弾を頼む!!」

 

その叫びに二人は頷くと、先程まで射出されていた貫通弾が麻痺弾へと変わりマガイマガドの全身に電撃を走らせていく。

 

そして遂に麻痺弾の効果が現れマガイマガドの全身に巨大な金色の稲妻が迸ると共に硬直させた。その隙をついたフィオレーネは片手剣の盾を取り出しマガイマガドの顔を殴りつけていく。

 

「ゼイャアッ!!」

 

フィオレーネの精錬された動きと共に鍛え上げられた片手剣の盾が振るわれる事で次々とマガイマガドの脳天へと当たり鈍い音を響かせると共に麻痺に苦しむマガイマガドのスタミナを奪い取っていく。

 

 

フィオレーネがマガイマガドの頭へと攻撃する中、その横を通り過ぎていったシャーラはゲンジとは反対方向から向かい双剣を構える。

 

「ゲン!いくよ!!!」

 

「あぁ…!!!」

 

シャーラの叫びにゲンジも答えるとシャーラとほぼ同時に翔蟲を取り出しマガイマガドの腹に向けて双方から放つと、その弾性力を利用して一気に飛び上がった。

 

 

飛び上がった二人はその場から空を飛び抜けると双剣の刃の先端部を向けながら回転していく。そして、その回転する刃をマガイマガドの腹に目掛けて押し込んでいった。回転する刃は重厚な重殻をその回転力によって次々と破壊していき内部の肉へと強靭な刃を抉り込ませていった。それと共にゲンジの双剣の属性が次々と発動し爆裂の華を咲かせると共にシャーラの双剣の水属性がマガイマガドの体温を奪い取っていった。

 

そして その回転力が弱まり回転が止まる瞬間にゲンジとシャーラは開いた傷口を更にこじ開けるが如く捩じ込ませていた刃を左右に開くとその場から飛び退く。

 

 

これで終わりなのだろうか?否___。

 

「ハァッ!!!」

 

「グロォオオオオオオオ!!!」

 

フィオレーネがマガイマガドの顔面を殴っていた事により麻痺が解けたと同時にマガイマガドの意識は朦朧としながらその場へと倒れる。ゲンジとシャーラ、エスラとルーチカの援護射撃によって体力を奪われた事で意識を保てる力が弱まり通常よりも早く混乱してしまったのだ。

 

「よし今だッ!!一気に叩き込めッ!!!」

 

エスラの叫び声に4人は頷き一斉に攻撃を放っていく。

 

 

ゲンジとシャーラとフィオレーネのスタミナを無視し強走薬による連撃によって外殻に続いて更に尻尾の先端や顔面の角が破壊されていきエスラとルーチカによる毒弾の援護がマガイマガドの体力を次々と奪っていく。

 

だが、マガイマガド自身も生きる為に必死に足掻き続ける。気絶が解けた後は即座に顔を振り回して意識を覚醒させ、別エリアへの逃走を図ろうとする。

 

それをゲンジは見通していたのか、斬撃を放つ前に逃げる航路を読み取りその場へと落とし穴を仕掛けていた。足場を見ておらず逃げる事に必死であったマガイマガドはアッサリとその穴へと身を落とし、再び身動きが取れない状態となってしまった。

 

マガイマガドが落とし穴に落ちた事により5人は更に奮起すると先程と同じく怒涛の勢いで攻撃を放っていく。

 

そして

 

「ヴォォァアアア!!!!」

 

ゲンジの叫び声と共に重ねられた刃がマガイマガドの身体を斬りつけた。それが決めつけとなり、遂にマガイマガドは落とし穴を出たと同時にその身体をゆっくりと地面に倒したのだった。

 

◇◇◇◇◇

 

その後。無事にマガイマガドは討伐され、剥ぎ取られた遺体もエルガドから来た調査員の荷車に乗せられ無事に運ばれていった。

 

それを見送ったゲンジ達も即座に帰りの船に乗り込み城塞高地を後にしエルガドへと帰還した。

 

ーーーーーーー

ーーーー

 

そして 遂に念願の強化の時がやってきた。

 

ゲンジはエスラ、シャーラと共にミネーレの元へと訪ね、夜になっても尚、金具を手放さない彼女へと素材と武器を渡した。

 

「ん?やぁゲンジちゃん!その様子だと…揃ったようだね♪」

 

「あぁ。だから強化を頼む」

 

「オッケー♪腕が鳴るね!」

 

ミネーレは素材と武器を受け取ると早速作業へと取り掛かった。

 

「明日のお昼までには出来上がってると思うからゆっくり待ってて♪」

 

そう言い彼女はウインクをすると再び作業の手を進めた。やはりハモンの弟子であるのか、一度、作業を始めればその目は別人のように険しくなっていった。

 

「それじゃ頼むぞ。さて…」

 

それからミネーレに仕事を託し別れたゲンジはあと、もう一つの用事を済ませるべく、一時的にマイハウスに戻る。マイハウスへと戻ると、腰と脚以外の装備を脱ぎ捨てインナー姿となった。そして、ゼニーを取り出し簡単に食材を買うと袋詰めにする。

 

「どうして食材を?」

 

「フィオレーネとルーチカにやる為だ。アイツらには手伝ってもらったからな」

 

「ふぅ〜ん」

納得したシャーラは同じく脚装備以外を脱ぎ捨てたインナー姿のまま納得すると立ち上がる。因みにエスラは疲れてしまったのか、毛布に包まり爆睡していた。

 

「なら、私も付いて行っていい?」

 

「あぁ」

 

ーーーーーー

ーーーー

ーー

 

夜のエルガドは昼間と変わらず賑やかであった。それもそうだ。いついかなるモンスターの襲撃に備えなければならない上に見張りや船の誘導係もしなければならない。辺りには見張りは勿論、船の誘導係であるランプを持った隊員達が辺りに散らばっていた。

 

そんな中、ゲンジはガレアスの元を訪ねる。彼はいつもの場所におり、ルーチカと共に議論していた。

 

「よぅガレアスさん」

 

「ん?ゲンジとシャーラか。マガイマガドの狩猟ご苦労だったな。それに武器の強化も祝っておこう。これで貴殿の実力がフルで発揮されるようになったな」

 

「どうも。それよりもルーチカとフィオレーネはどこにいる?今日の礼として少ないが飯を買ってきたんだが」

 

二人の居場所について訪ねるとガレアスは「あ〜」と納得しながら答えた。

 

「ルーチカとフィオレーネならば自身のマイハウスにいる筈だ。あの塔に二人の自室があるから行ってみるといい」

 

そう言いガレアスは石積みで作られている建物の中でも高台にあり少し大きな建物を指差す。

 

「あそこか?」

 

「あぁ。フィオレーネやルーチカの他にもジェイや俺の部屋もある。いわば兵舎といった場所だな」

 

「分かった。助かる」

 

ガレアスから居場所を教えてもらったゲンジはそのままシャーラと共にエルガドの兵舎へと向かった。

 

「ゲン…お手手繋ご…」

 

「あ…あぁ…」

 

その後、手を繋いだ二人は兵舎へと到着し、ルーチカへと食材を届けると部屋を後にしフィオレーネの部屋を探した。

 

「えぇと…フィオレーネの部屋は…ここか」

 

ルーチカの部屋の前から彼女の部屋を探していると、すぐに近くの部屋の前に彼女の名前が記された部屋の入り口を見つけた。その入り口を見つけた二人は部屋の前まで歩いてくると、軽く扉をノックする。

 

コンコン

 

「フィオレーネ。俺だ。昼間の狩りの礼品を持って来た」

 

「私もいるよ〜」

 

 

扉をノックしながら二人はそう声を掛ける。

 

 

すると

 

_____『な…ななその声はゲンジとシャーラ!?すまん!ちょっと待ってくれ!』

 

 

「「__ん?」」

 

中から慌てふためく声が聞こえると共にドタバタと騒しい音が聞こえてきた。その不審な音に二人は不思議に思い首を傾げる。

 

「どうした?散らかってるのか?」

 

『そ…そうだ!すまない!書類が溜まりに溜まっていてな!すぐに片付けるから待っていてくれ!』

 

そう言い再びドタバタと音が聞こえてくる。それについてゲンジとシャーラは予想していた為にあまり驚かなかった。

 

「書類が溜まってるのか…騎士は大変だな」

 

「なら、手伝ってあげようよ。3人いれば直ぐに終わると思うよ?」

 

「あぁ。そうだな」

 

シャーラの提案にゲンジは納得すると扉の取手に手を掛ける。運が良いのか不明だが、鍵は空いていたようだ。取手に手を掛けるとゆっくりと扉が開いていく。

 

「書類の整理ぐらいなら手伝ってやる。お邪魔するぞ」

 

 

「あー!!!待て待て!!本当に待って!待ってくださ________

 

 

 

 

扉を開けた先にあったのは___

 

 

 

 

 

 

 

 

モンスターのモコモコなぬいぐるみとチッチェの似顔絵で溢れかえる部屋であった。そして二人の目の前にはぬいぐるみを抱きながら硬直している彼女の姿が__。

 

ゲンジ「…何だこれ…」

 

シャーラ「か…可愛い…♡」

 

フィオレーネ「アアアアアアアアアアァァァァ/////////」

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。