薄明と双子の姉妹 (リメイク中) 作:きょうこつ
それから3人に手紙を手渡したアイルーが広場へと走り去っていく姿を見送った3人は、カムラの里から自身ら宛の便りに首を傾げる。そのうちの一枚ずつをエスラとシャーラは手に取ると裏面に書かれている届け元を見た。
「あ、ヒノエさんとミノトからだ」
「私もだ」
「あ…俺もだ」
出所はなんと里の受付嬢でありゲンジの妻でもあるヒノエとミノトからであった。突然の手紙をエスラとシャーラは不思議に思いながらも久しぶりの二人の執筆が嬉しいのか直ぐにその便りを開いた。
「…わぁ!2枚の手紙と写真が入ってる!」
中身を取り出したシャーラは驚くと共に笑みを浮かべた。中には一枚の写真と2枚の手紙が入っており、写真には満面の笑みを浮かべる里の皆が写っていた。
それを背後から見ていたミネーレはハモンを見つけると「おぉ!師匠も元気そうだ!」と喜びの声を上げる。
「何て書いてあるの!?」
「えぇと…」
ミネーレから尋ねられたシャーラは写真を仕舞うと一枚の執筆された文面を読み始めた。
『拝啓 私達の大切な家族へ。貴方方が里を立ってから早くも3週間が経ちました。体調の方はお変わりありませんか?此方では貴方方の活躍のお陰で未だに大型モンスターの発見が報告されておらず平和な日々が続いております。エルガドでの任務は大変かつ危険と隣り合わせかと思いますが貴方方ならば必ず全ての災禍を打ち払えるだろうと信じております。
早く任期を終えて里の入り口にある鳥居を潜りながら笑顔で帰って来てください。また皆と共に団欒とした暖かな日常を過ごせる事を心より願っております。
カムラの里一同より』
____だって」
「うぅぅ〜!!!」
まるで親からの手紙であるかのような内容にミネーレは感動のあまり涙を流し始めた。
「いいなぁ!!しかもその手紙の白い箇所に書かれている子供達の絵も尚いい!!」
「うん。確かに」
そう言われたシャーラは手紙の余白や裏面に目を向けた。そこには子供達が書いたのか、やや角張った字体で『頑張れ!』『早く帰ってきて!』『大好き!』『帰ったらウサ団子で祝杯!』などと書かれていた。
「私も同じ内容だが、書いてくれている子達が違うな。恐らく皆、私達3人がいつも一緒にいると思い別々の手紙に書いたのだろう。それにほら」
子供達の絵や字体にエスラも笑顔を浮かべると、封筒の中に入っていたもう一枚の手紙を取り出した。そこには丁寧な字体で書かれた手紙が入っており差出人を見るとなんと『ヒノエ』であった。
「ヒノエ自身が書いてくれた手紙もあるぞ!」
そう言いエスラは更にキラキラと笑みを輝かせた。それを見たシャーラも先程、写真と共にしまったもう一枚の手紙を取り出し差出人を見た。そこにはヒノエの妹である『ミノト』の名前が書かれていた。
「あ、私の方はミノトだ。えぇと…」
ミノトからの差出にシャーラは驚くとその文面を読み上げる。
『拝啓 私の大切な家族でもあり親友でもあるシャーラ並びに大切な二人目の姉君であるエスラ様。体調の方はお変わりありませんか?食事はしっかりと摂っていますか?貴方方ならば心配はないと思いますがやはり相手は最高峰の強さを誇る個体ばかり。命を大切に調査に臨んでください。遠い場所からでもミノトは貴方方が無事にまた鳥居の門を潜り帰ってきてくれる事を信じ願っております。
カムラの里 集会所 受付担当ミノトより』
「___だって」
「うぅ……ミノト〜……」
「それよりもそっちは?」
「え?あぁ」
シャーラから尋ねられたエスラは今度は此方の封筒に同封されていたヒノエの文面を読み上げた。
『拝啓 私の尊敬するエスラ義姉さんと大切な二人目の妹のシャーラ。貴方方が里を出立してから3週間が経ちました。速くもなく遅くもありませんが私やミノトはまだ貴方方がいなくなった里の日常には慣れておりません。ですがこれもまたハンターの妻にとっては避けては通れぬ道の一つ。悲しいものですが堪えながら私達は貴方方の無事を祈っております。
エルガドでの任務は厳しいものと思われます。もしも辛く寂しくなってしまった時はいつでもいいですから遠慮せずに里に帰ってきてください。どんな時でも私達は貴方方を暖かく迎えられる準備ができております。
カムラの里 里の受付担当 ヒノエより』
「うぅ……ヒノエぇ…!!!」
ミノトに続きヒノエの手紙の内容を読んだエスラもミネーレに続くように感動の涙を流し始めた。
二人が泣き合う中、その状況をジト目で引きながら見つめていたシャーラはゲンジの方へと目を向けた。
「ねぇゲン。ゲンの方は何が入ってた?やっぱりゲンの場合は二人からかな?」
そう言いゲンジに届けられた手紙について尋ねた。妹である自身には同じく妹であるミノト。エスラの場合はヒノエ。ならばゲンジは二人の夫のため、二人からの温かな手紙が入っているのだろう。そう思いながらシャーラは此方に背中を向けるゲンジに近寄ると肩に手を掛ける。
「ねぇゲン……ん?」
見るとゲンジは何故だか震えていた。まるで手紙の中身が恐ろしいものであるかのように。
「わ!?どうしたの!?そんなに震えて…何か変なのでも入ってたの?」
シャーラが驚きながら尋ねるとゲンジは震えながら3枚のうち、2枚を取り出す。それは自身らと同じ里からの手紙と里の皆の写真であった。そしてそれを見せたゲンジはもう一枚の手紙を取り出した。
「俺にも二人から来てたよ…それ以外は同じで写真も入ってた。でもこの一枚だけ…」
そう言いゲンジは取り出した白い手紙を差し出した。そこには自身らとは異なり『貴方を愛する妻より』と書かれていた。手紙自体は何の変哲もない普通のものである。特に震える程の要素はどこにも無い。
「何が怖いの?」
「読んでみろよ…」
「ん?」
ゲンジがまるで幽霊でも見たかのように震え上がるその様子にシャーラは首を傾げながらも手紙を広げて内容を読む。すると、左右から気になったのかエスラとミネーレも覗き込んできた。
「えぇとなになに……
『拝啓 私達の心から愛する旦那様へ。貴方が二人と出立してから3週間が経とうとしています。お身体は大丈夫ですか?食事も摂っていますか?精神面での問題はありませんか?
相手は古龍。貴方が暴走してしまう恐れがあるかもしれません。ですがどんな姿になっても私達姉妹だけでなくカムラの里は貴方を暖かく迎え入れます。なのでどうか暴走し自我を失ったとしても自暴自棄にならずに思い出してください。里という貴方の居場所がある事を。調査の早期終了を願うと共に旦那様がお二人と共に鳥居の門を潜り帰ってくる事を心よりお待ちしております。__
___貴方を愛する二人の妻ヒノエ ミノトより』
__って普通のないようじゃん」
内容は自身らと同じ無病息災と帰還を願う温かい内容であった。それの何処に震える要素があるのか全く理解できずシャーラは再びゲンジへと尋ねる。
すると 彼は震えた声で答えた、
「その下…読んでみろ…」
「下?」
ゲンジに言われたシャーラはエスラ達と共に下へ目を向ける。そこには先程の続きと思わしき文章が激しい字体で二つ書かれていた。それを見つけたシャーラは読み上げる。
「えぇと……
『あれから3週間が経ちますが1通も手紙が届いておりません。何故、書いてくれないのですか?約束した事を何故破るのですか?何度約束を破れば気が済むのですか?まさか忘れてしまわれたのですか?ミノトはとても悲しんでおります。大切な妻であり私の掛け替えの無い妹でもあるミノトを悲しませた貴方を決して許しません。近々、そちらへ姉妹共々、伺わせてもらいます。もしも他の女性と性的に仲良くしているお姿をこの目に収めた場合_
____姉妹二人で貴方を呼吸ができなくなるまで○○○○します』
『貴方が出立してから3週間が経過しますが一向に手紙が届かないとは何事でしょうか?まさか私達との約束をお忘れになってしまったというのですか?手紙が届かず近況が分からない為にヒノエ姉様は心配のあまり2日間眠れぬ夜を過ごしました。大切な妻でもあり私の敬愛するヒノエ姉様を悲しませた貴方を決して許すことはできません。近々、姉様と共に其方へお伺いしますので もしも他の女性と不埒な関係を築いていた事を確認した場合___
____貴方が力尽きるまで姉様と共に○○○○します』
「「「…………」」」
その文面を読んだ瞬間 3人は石の様に固まった。見るからに先程とは全く様子が違う。何故だか赤く塗りつぶされており読めなかった箇所が見えるが、そこからは異様な気配が感じ取れ、明らかにヒノエとミノトが想像を絶する程まで激怒している様子が伺える。
その文面を見た3人はゆっくりと震えるゲンジに目を向けた。
「ゲン……何やったの…?」
「うぅ…」
シャーラが恐る恐る尋ねるとゲンジは心当たりがあるのか、話した。
◇◇◇◇◇◇
それは出立する際に二人から手紙を書く事を求められたのだ。理由は彼女達曰く体調を聞き安心感を得る事と悪い虫(女)が寄り付いていないか確認する為である。
当然、ゲンジは無理と断った。調査が難航を極めている為に毎日 手紙など書いている暇などない。
それについてはヒノエとミノトも納得しているのか、毎日書く事は不可能であると認めた。だが、それでもやはり不安なのか手紙を書いて欲しいと頼んできた。
彼女達がこれ程までに心配するのは、これまで何度もゲンジが約束を破り命の危機に晒されたり自身の身を犠牲にしようとしたからである。それによって彼女達はゲンジが遠くへ行く事に少しばかり抵抗が現れ始めたのだった。
「……分かった。書くよ」
彼女達を不安にさせやすい様にしたのは自身が原因である為にゲンジは1週間に1通を送る事を約束したのだった。
「「約束ですからね?」」
「う…うん…」
◇◇◇◇◇◇
「それで約束をほっぽり出していた事に気づいたと」
「う…うん…」
ようやくゲンジが青ざめている事を納得したシャーラと残りの二人は頷きながらゲンジに原因がある事を見抜く。
「…それって…明らかにゲンが悪いよね…」
「自業自得だな」
「うん。約束を破ったゲンジちゃんが悪い」
「うぅ…」
3人の言葉にゲンジは何も言い返せないのか、その場にしゃがみ込んだ。
因みに里から出された手紙がエルガドへ届けられるにはおおよそ2日は要する。つまり、もうすぐここに来るという訳だ。
「確か里からの距離だと…船で2日…。手紙が届くのも2日だから…少なくとも明日には着くと思うよ。2日前に確か里に向けて便が出発したからね」
「な!?」
ミネーレの言葉にゲンジは更に凍りつく。
「取り合えず言い訳でも考えておけ」
「うぇ!?どうすれば良いんだよ!?」
「そんな事は知ら_____う〜ん………うん。そうだな」
言葉を詰まらせたエスラは顎に手を当てながら考え込み、一瞬ゲンジを見つめると何かを閃いたのかニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべた。
「久しぶりに……“アレ”をやるか♡」
その後、作戦を聞いたゲンジは背筋を震わせたのであった。