薄明と双子の姉妹 (リメイク中)   作:きょうこつ

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奥の手

 

里から手紙が届いた後にゲンジ達は気を取り直し、城塞高地での状況を知るべくガレアスの元へと赴いた。再びモンスターの調査の指令が出されるかと思っていると、彼の口から出された指令は待機であった。彼曰く先日のマガイマガドの件の後に再び調査開始の指令が出ており、現在はゲンジ達とは違うハンター達に調査を任せているようだ。

「いいのか?ソイツらだけに任せておいて」

 

「貴殿らはマガイマガドに限らずこれまでのモンスターの調査で疲れている筈だ。事態は着々と進んでいる…他の強力なモンスターが現れた時の為に身体を休めておいて欲しい」

 

「了解した。調査隊が帰還するのはいつ頃になりそうなんだ?」

 

「少なくともまだ数日は掛かるだろう。マガイマガドが森を徘徊していた為なのかモンスターの殆どが奥地へと姿を消していったからな」

 

「成る程な」

 

その後。ガレアスの指令通り休暇を言い渡されたゲンジは武器の訓練をするべく近くの場所にある訓練所へと赴こうとした。

 

 

そんな中だった。

 

 

「やぁゲンジに皆。丁度いい。嬉しい知らせが入ったぞ。2日前に里へ向けて出立した船が今夜中にでも到着するそうだ」

 

「は…!?」

 

偶然にも出会したフィオレーネから今夜中に里の便が到着する事が知らされた。

 

 

「な…なんで急に!?明日じゃなかったのか!?」

 

「ん?」

それを聞いたゲンジは驚きの表情を浮かべながら固まり尋ねる。それに対してフィオレーネは不思議そうに思いながらも話す。

 

 

「いや、波が穏やからしくてな。客人らの要望もあってかスピードを上げて向かっているらしく、予定よりも早く到着するとのことなのだ」

 

「……」

 

 

その知らせを聞いたゲンジは咄嗟にエスラの方へと首を向ける。すると彼女はニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべながら頷いた。

 

それを見たゲンジは再びフィオレーネへと目を向ける。

 

「わ…分かった…」

 

ーーーーーーーー

ーーーーー

ーー

 

それから時が経ち、月が輝く深夜。里の船を迎え入れる為なのか、いつものように目印になるようにランプを手に持った船員達が小船で海へと出ていた。

 

そんな景色が見えるとある船の自室の中では…。

 

 

「こ…これで本当にいいんだよな…?」

 

「あぁ!」

 

 

全身に女物の服を着るゲンジと、それを見ながらにっこりと笑みを浮かべるエスラとミネーレ、そして頬を染めているシャーラの姿があった。

ゲンジが着せられているのは酒場のウェイトレスが着るような白いシャツとリボンのついた黒いスカートが特徴的なドレスであった。筋肉質な腕や脚もタイツで包み込まれている為にその威圧感を消し去っており、その上、長い髪を左右で纏められツインテールにもさせられている為に男としての面影が何もかも無くなってしまっていた。

ゲンジが顔を赤面させる中、その傍らではミネーレがその姿を見ながらうんうんと頷いていた。

 

 

「急だったからこんな物しか作れなかったけど…まぁ似合ってるじゃない♪」

 

「ぐぅ…」

 

 

ミネーレの言葉にゲンジは男としてのプライドが傷ついたのか項垂れる。この女装こそが、エスラが考えた作戦である。エスラはシャーラを抱き寄せると説明を始めた。

 

 

「いいかい?お姉ちゃん達がヒノエとミノトをここへ連れてくる。彼女達が最初に入るようにね。そしたらすぐに飛びつきこう言うのだ!『会いたかったよお姉ちゃん!来てくれてありがとう!だ〜い好き!』と。そしたら二人はメロメロになって怒りなんてものはすぐに消えてしまうだろう。いいかい?とにかく声を裏返し上目遣いで甘えろ!」

 

 

シャーラを扱いながら説明したエスラはキッパリと言い放つが、その作戦を聞いたゲンジは既に羞恥心でパンク寸前なのか、顔を真っ赤にさせておりミネーレも手を叩きながら大爆笑していた。

 

 

「本当にこれしか方法が無いのか…!?」

 

「勿論。下手に謝ろうでもすれば見返りを求められるだろ。例えば……3週間分の性欲発散とか…ね?」

 

「…ひぃ!?」

 

 

エスラのウインクをしながら口にした答えを耳にしたゲンジは身を震わせた。今の彼女達は不機嫌な上に3週間の鬱憤が溜まっている。もしも無理に落ち着かせようとすれば起爆剤となり猛獣と化した彼女達の餌食となってしまうだろう。

 

すると

 

ブォーン__。

 

船の到着を知らせる笛の音が聞こえてきた。その音を聞いたエスラとシャーラ、ミネーレは立ち上がる。

 

 

「さてゲンジ!私達が連れてくるから上手くやるんだぞ!」

 

「取り敢えず頑張りな♪あ、因みにそれ“なにして”汚しても大丈夫だからね」

 

「何がだ!?」

 

去り際のミネーレの言葉に驚きながらもゲンジはそのままフリフリのドレスを着たまましゃがみ込む。

 

 

「うぅ…」

 

 

それからしばらく沈黙が続くと共に辺りが静寂に包まれた。静かな空間の中で一人になり二人が来る事に震える中、ゲンジは改めてよく考えた。

 

「…」

 

考えてみれば自身が彼女達との簡単な約束を破らず、悲しませなければ良かっただけである。そうなるとこれは正に因果応報とも言えよう。機嫌が悪いのも自身を心配してくれた為である。ならば此方が恥を掻いたとしてもそのケジメはつけなければならない。

 

「…よし…!」

決意を固めたゲンジは頬を赤くしながらも立ち上がる。

 

すると

 

 

__サ…サ…

 

遠くから此方に向けて歩いてくる音が聞こえてきた。その音を耳にしたゲンジは入り口付近に立ち止まると、ゆっくりと両手を構える。

 

その足音は段々と近づき遂にマイハウスの入り口の目の前まで迫ってくる。その音を聞いた瞬間にゲンジは動き出す。

 

「…!!」

 

 

そして両手を広げながら駆け出し目の前に立っている者へと手を回しながら抱きつくと声を裏返し少女の様な声で叫んだ。

 

 

「会いたかったよお姉ちゃん!来てくれてありがとう!だ〜い好き!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

抱きつく中、いつまで経っても返事がない事にゲンジは不思議に思い始める。その上、何故だか布の様なコーデとは異なった感触に違和感を覚え、顔には何故か柔らかめな板の感触があった。

 

「(あれ…何か変だな…)」

 

恐る恐るゲンジは抱きついた手を離しながらゆっくりと見上げた。

 

 

「!?」

 

その瞬間 ゲンジの全身が凍りついた。そこにいたのはヒノエでもミノトでもなく顔を真っ赤に染め上げながら震えるフィオレーネであった。

 

「あ…あ…!!」

 

その顔を見たゲンジの全身は固まった直後に震え始める。その理由は簡単だ。先日の夜に彼女からカミングアウトされた彼女自身の性癖である。それはロリコン。

彼女は自身よりも小さく幼い子供達を見ると母性が通常よりも倍以上に爆発してしまうのである。第三者から見ればゲンジの身体はチッチェよりも少し高い程度。更に四肢をタイツで覆われておりスカートで筋肉質な足元も隠れ、髪型も幼さを強調したツインテール、そして何よりも声を裏返していた為に正に当てはまっていた。

 

一方でゲンジは女装が趣味と受け止められてしまう事を危惧し咄嗟に訳を話そうとするが、もう遅かった。

 

 

「アアアアアアアアアアアアア!!!!!」

 

 

「ひぇえええ!!!!」

 

 

顔を真っ赤にさせながら興奮したフィオレーネの両手が開くと共に一瞬で懐に抱き寄せられる。

 

 

「何て可愛らしい子なんだ!この柔らかい頬にツインテール…あぁ!!もぅ撫で回したくなってきてしまうではないか!」

 

 

そう言い抱き締めている相手がゲンジである事も知らずにフィオレーネは頬を擦り寄せ始めた。何度も何度も頬擦りされる中、ゲンジは必死に止める様に声を上げるもフィオレーネの耳には届く事は無かった。

 

 

「い…いやぁ!!やめ…やめろ!!離せ…離してよォ…!!!」

 

 

「あぁ…!!赤らめた顔もまた可愛いなぁ!心配するな!お姉ちゃんは怖い人じゃないぞ!そうだ!後で私の部屋に一緒に行こう!お菓子をたくさんあげようじゃないか!お父さんやお母さんはいるのかい!?もしいなければ今夜は私が君のお母さんになって一緒に寝てあげよう!」

 

 

そう言いフィオレーネは更に頬を紅潮させ興奮しながらゲンジの全身を撫で回し頬を擦り寄せていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時であった。

 

 

 

 

 

 

 

「あらあら…お二人とも随分と楽しそうですね〜」

 

「ヒィ…!!」

入り口付近から聞き覚えのある声が聞こえてきた。その声を聞いたゲンジは一瞬にして表情を青くさせながら声が聞こえた方向へと目を向けていく。

 

そこには全身から黒いオーラを放ちながらも笑みを浮かべているヒノエと鋭い目を向けるミノトが立っていた。

 

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