薄明と双子の姉妹 (リメイク中) 作:きょうこつ
彼がクエストへ出てからもう数時間が経つ。辺りはもう夜になり、里で遊んでいた子供達や職人達が家へと戻っていった。
「…」
一体どういう神経をしているのだろうか、なぜ、彼はこんな危険なモンスターを6体まとめて引き受けたのか。ハンターだからなのか、はたまた狩猟が大好きなのか。
分からない。
「ミノトや、儂はちょいと他のギルドに書状を送らねばならぬ。ゲンジが帰ってきたらちゃぁんと対応するんでゲコよ」
「…わかりました…」
ゴコク様に言われたものの…私はどうしても彼に良い印象が持てない。
机に顔を向けたまま、私の意識は現実ではなく想像の方へと傾いてしまった。
もし、里長が信じた通り、彼が百竜夜行の原因究明を手助けしてくれるならば、今回の百竜夜行は退けられる可能性がある。
「おい」
「…!」
突然 聞こえた声に私の意識は現実に戻された。見ると目の前には彼が立っていた。装備を外した彼の冷たい目線が私に向けられていた。
「終わったぞ」
「え!?あの量をこんな短時間に!?」
驚く私の目の前に彼は狩猟対象のモンスターの素材を並べた。
「ほら、報奨金は?」
「は…はい!」
私は恐る恐る報奨金を手渡した。すると、彼は報奨金の中身を確認せずにそのまま去っていこうとした。
「お…お待ちください!」
「…ん?」
私は聞きたかった。なぜ、今日になって突然 あの量の依頼を受けたのか。
「なぜ…突然にあの量の依頼を!?」
そう問いただす。
「信用」
「…!」
その二文字の言葉だけで私は衝撃を受けてしまった。あの時…ゴコク様との会話を全て聞かれていたのだ。そうなると、彼は私が信用を寄せていない事を知っている。
放たれた言葉に私はもう分からなくなってしまった。彼を信用してもいいのか、それともするべきではないのか。だが、彼は信用を得るためにこの量のクエストを受けたのだ。
ならば、信用するべきなのか…
「まぁ、出来ないならいいけどな。俺も前に来たハンターの話には頭にきた」
「…何故それを!?」
「ミケから全部聞いた。里や皆が大好きなお前はその皆の期待を裏切った3人組のハンターが許せずハンターを信用できなくなった。合ってるだろ?」
「…」
全てが的中していた。そうだ。彼が来る前のハンターが原因で私はハンター自体が信用できなくなってしまった。
「俺は大嫌いなんだよ。そんなくだらねぇ事するようなゴミ共と一緒に見られるのがな」
「そ…それは…」
私は何も言い返せなかった。彼の言う事はごもっともだ。全てのハンターがあんな薄情な者達ではないことは分かっていた。けれども、自身は…どうしても許す事が出来なかった。里の皆が信じていたというのに……
「最初はお前から信用を得るために依頼をたくさん受けた。まぁモンスターへの興味もあってだが。それでも信用できねぇならしないでいい。それなら俺はもう何も言わねぇし、里から出て行くまであまり顔も合わせん」
彼はそれだけ言うと集会所から出て行ってしまった。
「………」
再び引き止めようと前に出ていた手をゆっくりと下げた。
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集会所から出たゲンジは、虫が鳴く夜道を歩いていた。
「ゲンジ…あれで良かったのかニャ?」
ハチに乗りながら先程の答えについてミケは問うが、ゲンジの顔に迷いは無かった。
「いいんだよ。信じて心に負担が掛かるなら信じない方がマシだ」
これがゲンジの答えだった。別に信用されなくてもいい。百竜夜行が終わるまでなのだから。それは最初の自身の考えと同じだった。
そんな中で、ゲンジはゴコクに溢していたもう一つの言葉を思い出す。
“姉様と…一緒にいたい”
あの声は本当に寂しさを感じさせるものだった。姉を持つ自身にも同じ経験があった。当時、まだハンターになりたての頃,いつも狩場に一緒にいた姉が情報収集のためとはいえ、他のハンターと狩りに行く日が多かった時があり、その時は寂しさのあまり泣いていた。
当時の自身と重なって見えてしまい、仕方がなかった。
「………」
ゲンジは少し悩むとある考えを思いつき、立ち止まる。
「んニャ?どうしたニャ?」
「先に帰ってろ。少しやり残した事がある」
ハチに乗りながら前を歩くミケにそう言うとゲンジは自宅とは逆方向に歩いて行った。