薄明と双子の姉妹 (リメイク中)   作:きょうこつ

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早く盟友でヒノエとミノトと一緒に狩りにいきたいな…


爵銀龍 

 

___我が餌…久方振りの餌…!!

 

暗い暗い空間の中 地の底から響くような恐ろしい声が聞こえてくる。その声を聞いたゲンジは眉間に皺を寄せるとその声が聞こえた方向へと目を向けると胸を抑えながら叫んだ。

 

「出てくるな……引っ込んでろ…ッ!!!!!」

 

 

ーーーーーーー

ーーーーー

ーーー

 

忽然と現れたメル・ゼナ。感じられる威圧感はこれまで見てきた古龍とは別格のものであった。辺りはメル・ゼナの放つ威圧感によって沈黙に包まれていた。だが、メル・ゼナだけが原因ではなかった。

 

「はぁ…はぁ…はぁ…!!」

 

「ゲンジ!しっかりしろ!」

 

フィオレーネに必死に肩を支えられながら声を掛けられているゲンジが変化を遂げていたのだ。全身からは次々と鬼人オーラと共に謎の黒いオーラが湧き始め全身を包んでいく。

 

「な…!お前…目が…!!」

 

更にゲンジの目元がひび割れの様な紋様が浮かび上がると共に両眼が漆黒に染まり始めていったのだ。謎の変化が再びこの地でも始まろうとしていた。

 

 

 

だが、ゲンジは一瞬ながらも凄まじい咳払いをすると、顔を両手から叩き、すぐさま立ち上がる。立ち上がると先程まで黒く浸食していた目が元の目へと戻っていた。

 

「だ…大丈夫なのか…!?」

 

「あぁ…」

 

フィオレーネに答えたゲンジは目の前で自身を凝視するメル・ゼナへと目を向けた。

 

「それよりも、まずは奴だな。状況が最悪だ。………よっと」

 

 

「ギャァオオ!!」

そう言いゲンジは懐から何かを取り出すとメル・ゼナ目掛けて投げつけた。投げつけられた物体がメル・ゼナの身体へと当たると突然とメル・ゼナは顔面を押さえながら苦しみ出した。

 

「な…!?今のは…」

 

「こやし玉だ。その内逃げるだろ」

 

「ならば…今のうちに撤退を」

 

メル・ゼナが臭いに悶絶している隙をついて辺りの飛行物体を振り払い、フィオレーネは撤退を提案する。それに対してゲンジも頷き後方で荷車を少しずつ押しているバハリ達の元へと向かった。

 

 

 

その時であった。

 

 

「アイツだ…アイツを…アイツを討ち取れれば…!」

 

「「…!?」」

 

先程から直立していたクレトが何かをぶつぶつと呟いており、見れば双剣を構えながらメル・ゼナへと歩いていったのだ。それを見たフィオレーネは咄嗟にクレトへと叫んだ。

 

「殿下!お下がりを!」

 

「アイツを僕が…討ち取れば…!!」

フィオレーネが静止の声を掛けるが、まるで耳に入っていないかの様に呟いたまま、クレトはメル・ゼナ目掛けて駆け出した。

 

「おいバカ!戻れ!!」

 

ゲンジの撤退を求める声さえも意に介す事なくクレトはメル・ゼナ目掛けて向かっていく。

 

「くたばれモンスターがぁ!!!!」

そして こやし玉に苦しむメル・ゼナへ目掛けて双剣を振り回した。

 

 

 

キンッ__

 

その瞬間 辺りに双剣をぶつけた金属音が響き渡る。クレトの振り回したその双剣の一撃によってゲンジ達へと興味を失いかけていたメル・ゼナの敵対心を完全に刺激させてしまったのだった。

 

 

「ゴルル…!!!」

 

「…え?」

 

攻撃されたメル・ゼナは先程まで嫌っていたこやし玉の臭いさえも意に介す事なく自身に一撃を見舞ってきたクレトへとその鋭い目を向けた。

 

「ッ!あのバカが…!」

その状況を見ていたゲンジは舌打ちをすると即座に駆け出した。

 

「な!?ゲンジ!こやし玉を当てたならば逃げ出すのではないのか!?」

 

「完全に怒った古龍には意味ねぇんだよ。あのまま放っておいたら人一人殺すまで治らねぇ!」

 

「なんだと!?殿下!!」

 

フィオレーネもゲンジと共にクレトを救うべく後に続く。

 

 

その一方で、攻撃を繰り出した瞬間にようやく意識が鮮明となったクレトは此方を睨みつけるメル・ゼナから放たれる威圧感によって完全に硬直していた。

 

「あ…」

 

「…!!」

その瞬間 メルゼナの血の色のような禍々しいオーラを纏った尻尾が唸り出しクレトを貫こうと迫ってきた。だが、寸前にゲンジが飛び出し、彼の身柄を抱き抱えながら右へと回避した事でその尻尾の一突きを凌ぐ事ができた。

 

「ったく。不用意に攻撃しやがって…!!」

 

クレトの身を確保したゲンジは即座に彼を立ち上がらせる。だが、クレト自身は目を震わせながらゲンジに向けて眉間に皺を寄せていた。

 

「な…何をやってるんだ…!?僕がアイツを討ち取ろうと…!!!」

 

「おい誰か!コイツを頼む!!」

 

眉間に皺を寄せながら言い放つクレトに目をくれる事なくゲンジは後方で荷車の運搬を行おうとしている調査員達に向けて叫んだ。その叫びに調査員の一人が頷き即座に駆け寄ると彼を担ぎながら走っていった。

 

「おい離せ!くそ!おい!ソイツは僕の獲物だぞぉ!!横取りするなぁぁ!!!」

 

彼の叫び声が聞こえてくるものの、その声に耳を貸す程、ゲンジには余裕などない。クレトを引き退らせたゲンジはクレトの攻撃によって興奮状態へと陥ったメル・ゼナを睨みつけた。そのメル・ゼナは自身らを標的として捉えているのか鋭い目を此方に向けていた。

 

「くぅ…どうすれば…このままでは…」

 

「…」

 

フィオレーネは目の前に自身ら騎士の長年の怨敵が現れた為に心が落ち着かず混乱し始めていた。現在の状況を打破できる作戦が思いつかない為に頭を抱えてしまう。

 

そんな中、フィオレーネの横で冷や汗を流していたゲンジはゆっくりと深呼吸をすると共にメル・ゼナへ目掛けて何かを投げつけた。

 

「目を閉じろ!」

 

「!?」

 

その瞬間 周囲一帯が閃光に包まれた。その発光が始まる寸前に目を塞ぎ直視を防いだフィオレーネはゆっくりと目を開く。見れば目の前にいたメル・ゼナが顔を抑えながら首を振り回しており、辺りの岩場に身体を打ち付けていた。

 

「こ…これは閃光玉…!?」

 

「そうだ」

 

横へと目を向けるとゲンジは背中から武器を取り出し砥石を使って武器の斬れ味を回復させていた。

 

「目的を一つに絞るぞ。まず、奴を仕留める事は諦めろ。奴が閃光玉から目を覚まする前にダメージを与えてここから追い払う」

 

「な…そんな…!ここで仕留めなければ…」

切れ味を回復させたゲンジはその切れ味を確かめるべく刃を見つめると目の前で、自身らとは反対方向へ攻撃を放つメル・ゼナへと目を向けた。

 

「ルナガロンとの戦闘でだいぶアイテムを消費しちまった。この状態で万全の古龍種との闘いは自殺行為だ。それに…俺もいつまで抑え切れるか分からん…正直…もう限界だ…!」

 

「な…!」

 

ゲンジの言葉にフィオレーネは驚き彼の顔を見た。シルバーソルヘルムの間から見えるその目は黒色へと再び染まり始めていた。

 

「ゲンジ…君はそんな状態でありながら…」

 

「余計なお世話だ」

 

フィオレーネの言葉を一蹴したゲンジは強走薬を飲み込んだ。

 

「俺が奴を斬りまくる。お前は奴の注意をひけ」

 

「…あぁ…了解した…!」

 

本来の目的を果たしたいと考えていながらも、状況が状況や為にフィオレーネはゲンジの作戦に頷きメル・ゼナの元へと駆け出した。

 

ーーーーーーーーー

 

 

その一方で、目の前が閃光に包まれていたメル・ゼナはようやく視界が安定してきた事で落ち着きを取り戻す。

 

そんな中、鮮明とした視界の中に最初に入ってきたのは此方を向きながら盾を構えるフィオレーネであった。

 

 

「…」

盾を構えながら走っていたフィオレーネはどこから攻撃が来ても備えられる様にメル・ゼナの目を見ながら走っていた。

 

「(コイツ…正確に私を追ってきている…やはり一番先に飛び込んできた奴を警戒するか…ならば好都合だ…!)」

 

そんな中 フィオレーネはメル・ゼナだけでなくその背後にも少しながら意識を向けていた。自身へと釘付けになっているメル・ゼナの背後には双剣を構えたまま体勢を低くさせているゲンジの姿があった。

 

「…」

 

ゲンジは鋭い目でフィオレーネを追っていくメルゼナを見据えながらゆっくりと右手の双剣の持ち位置を変えていった。

 

 

その時だった。フィオレーネへと目を向けていたメル・ゼナがゲンジの方へと振り向くと共に尻尾の先端に黒いオーラを纏わせ始めた。

 

「ゴルル…!!」

 

メル・ゼナ自身は既に気付いていたのだ。ゲンジが忍び寄ってきている事を。そして黒いオーラを纏わせた尻尾を振り回すと槍の如くゲンジ目掛けて突き刺した。

 

その光景を見たフィオレーネは驚き叫んだ。

 

「な…!!危ない!!!!」

 

 

その瞬間

 

 

「ヴォアァッ!!!」

 

ゲンジの叫びと共にその身体が回転し紫色の爆炎を纏いながら突き出された尻尾の先端部分の刃から付け根に向けて沿う様に斬りつけていった。

腰へと一瞬で到達するが、それだけでは終わらず、回転速度を加速させ遂には異形な頭部にまで到達しその頭に生える耳の様な突起物を斬りつけた。

 

更にゲンジが斬りつけた直後に斬りつけられた箇所が次々と紫色に爆発していきメル・ゼナの堅固な甲殻を次々と破壊していった。

 

「ギャォオオオオ!!!」

 

尻尾から頭頂部に掛けて斬られると共に斬りつけられた箇所が爆発した事でメル・ゼナは苦痛の声を上げる。

 

 

だが、ゲンジはその声を聞いても尚 ペースを下げるどころか上げ始めていった。

 

「ヴォラァ!!!」

 

着地してからメル・ゼナの目線が此方に向けられる前に四肢の間を翔蟲で移動し、発生した死角から更に双剣を振り回し尻尾や頭頂部だけでなく動体や四肢といった全身を斬りつけていく。

 

そして それを繰り返して行くうちにゲンジの刃を振るう姿は最早 捉えきれぬ領域にまで達してしまった。 

 

「__!」

 

その双剣捌きの速度はまさに“神速”と呼ぶに相応しい物であった。辺りの地形を利用しながら次々とメル・ゼナに向けて四方八方から刃を振るい傷を付けるだけでなく爆破属性によって銀色の甲殻で覆われた全身に傷を刻み込んでいったが、フィオレーネの目には周囲から紫色の刃と爆炎が次々とメル・ゼナを襲っている様に見えていた。

 

「(速い…!速すぎて防御すらできていない!里で見た時とは比べ物にならん…これが彼の本気だというのか…!?)」

 

 

 

そんな時であった。

ゲンジが一時的に斬撃の手を止め、メル・ゼナの背後に現れた事で斬撃の嵐が止んだ。

 

「…!」

見るとメル・ゼナは此方に背を向け舌を垂らしながらその場に佇んでいた。即ち完全に隙が出来たというわけだ。

 

それを見たフィオレーネは立ち止まり剣を引き抜いた。

 

「(背後が…狙える…!疲弊している…きっと動けない…!!!)」

 

そう考えたフィオレーネはメル・ゼナ討伐を最優先とする思考に頭が満たされてしまい、そのまま翔蟲を扱い背後からメル・ゼナへ向けて剣を振り下ろそうとした。

 

「(ここで少しでも奴にダメージを!!)」

 

それを近くの壁付近から窺っていたゲンジは血相を変え叫んだ。

 

「…!よせ!!」

 

だが、その声は届く事なくフィオレーネは疲弊しているメル・ゼナの背後から奇襲を掛けるべく向かっていく。

 

その時だった。

 

「ゴルル…!!」

 

背後を向けていたメル・ゼナが一瞬にして此方を振り向くと後脚で立ち上がると共に強靭な前脚を振り下ろしてきた。

 

「な__!?」

 

その直後。横からゲンジが現れフィオレーネを突き飛ばした。それによってフィオレーネはメル・ゼナの振り下ろしから逃れる事が出来たが、飛び込んできたゲンジが直撃を受けてしまう事となった。

 

「がぁ…!!」

 

「ゲンジ!!」

 

地盤を砕く程の強烈な一撃がゲンジを襲い彼の身体をそのまま地面へと叩きつけてしまった。それを見たフィオレーネは咄嗟に立ち上がると救援するべく駆け寄るが、それを行う前にメル・ゼナは叩きつけていた前脚を退けると巨大な翼を広げて岩場の向こうへと飛び去っていった。

 

 

メル・ゼナがようやく撤退した事に胸を撫で下ろしたフィオレーネは咄嗟にゲンジの方へと目を向けた。見るとゲンジはゆっくりと立ちあがろうとしていた。だがダメージが大きい為なのかその動きはふらついており少しでも押せば倒れてしまう程であった。それを見たフィオレーネは駆け寄ると彼の肩を支えた。

 

「ゲンジ!大丈夫か…!?」

 

「あぁ…ぐぅ…!?」

 

立ち上がったその瞬間にゲンジは苦痛の声を漏らしながら腹部を抑えた。それを見たフィオレーネは気に掛けるものの、ゲンジは即座にそれを振り払った。

 

「早く戻るぞ…じゃねぇと他のモンスターに見つかる…!」

 

「わ…分かった…!」

 

それからゲンジ達は騒ぎを聞きつけ駆けつけたエスラ達に肩を支えられながら調査を終え帰還した。今回の調査でルナガロンだけでなく謎の飛行物体の正体、更にメル・ゼナの欠けた素材などを獲得しそれは調査隊はこれまでにない程の大金星となったが、それと同時にゲンジの内なる魂を目覚めさせてしまったと共に“クレト”への不満を一部の者が抱き始めていったのであった。

 

 

 

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