薄明と双子の姉妹 (リメイク中) 作:きょうこつ
あれからゲンジはバハリから輸血を受け大量の血液を提供した。その量は凄まじく大瓶一本が丸々満たされてしまう程の量であった。
だが、その分ゲンジの体内から血液が無くなっているために貧血となってしまった。
「大丈夫ですか?」
「あ…あぁ…」
ヒノエに肩を貸してもらいながらゲンジは自室のベッドへと横になる。体内の血が足りない為にゲンジは一人では動けないのだ。因みにミノトはよろず焼きを取りに向かっていた。
「試作品の完成…まで…2週間か…それまでは…回復に専念しねぇと…」
そう言いゲンジは試しに天井に向けて手を伸ばしてみるも血液が不足している為なのか力が出ずうまく腕が上がらなかった。
「そうだ…ガレアスさんが言ってた“薬師”は…?」
「シャーラ達が密林まで赴き探しに行っています。見つかり次第すぐ帰ると言っていたので早ければ数日後には帰ってくると思いますよ」
「そうか…」
ヒノエの言葉にゲンジは頷くと天井に目を向けた。
「色々あるが俺はしばらくこのままってことか…」
「うふふ。その分 前の様な事にならないので私は安心ですけどね♪」
そう言いながらヒノエはゲンジの頬に口づけをする。
すると
扉が開き大量のよろず焼きが包まれた箱を持ったミノトが入ってきた。
「お待たせしました」
そう言いながらミノトは全てのよろず焼きを部屋の中に運ぶとテーブルをベッドのそばに置きそのうちの一つを置いた。
アツアツで出来立てなのか香ばしい香りが漂いゲンジの鼻へと入るとその臭いに刺激されたゲンジはゆっくりと起き上がりよろず焼きへ手を掛けようとした。
「ようやくか…腹が減っ………え…?」
手を掛けようとしたその瞬間 そのよろず焼きをミノトが取り上げる。取り上げたミノトは素早い手つきで風呂敷を開けると敷き詰められたこんがり肉の一本を差し出した。
「旦那様…口を大きく開けてください」
「いや…一人でも食べられ…「ほらほら旦那様、ミノトの言う通りあーんしてください♪」……だから一人で食べ……
「「あーん・し・て・く・だ・さ・い…!!!!」」
「わ……分かっ…分かり…ました…」
それからゲンジは自分で食べる事を許されずヒノエとミノトに食べさせられたのだった。
「エルガドにいる間は私達がご飯を食べさせてあげますからね〜♪」
「は…!?待て!流石に体調が治ったら___
「食べさせてあげますからね………“ね”…?」
「は…はい…」
嫁には敵わない情けない夫だった。
ーーーーー
ーーー
ー
それから、メル・ゼナの出現報告が出る事なく2週間が経過した。密林に赴き薬師である竜人族男性『ダドリ』を探していたエスラとシャーラは見事に見つけ彼と共に帰還してきた。そしてもう一方でゲンジの血を研究していたバハリも対抗策の試作品が完成していた。
2週間後過ぎた日の朝。採血した分の血液を取り込み完全に回復したゲンジはフィオレーネから招集を受けるとヒノエやミノト、エスラやシャーラ達と共に作戦本部へと向かった。そこには既に皆が集まっておりバハリの持っている器具を見つめていた。
「もうできたのか?」
「あぁ!」
ゲンジが尋ねるとバハリは徹夜明けだというにも関わらず変わらないテンションで頷くとテーブルの上に一つの石を置いた。
「コイツか?」
「そうさ。結構前に世間を騒がせた極限個体に対抗する為にドンドルマの狂竜症研究所で作られた『抗竜石』を参考にしてみたんだ。それに因んで『抗毒血石(こうどくけっせき)』とでも呼んでくれ」
そう言いながらバハリは抗毒血石を掴むと腰から抜いた一本の短剣と重ね合わせる。
「使い方は簡単。この抗毒血石で武器を研ぐだけ。すると刃物全体にゲンジ君から取り出した血液が染み付いて、斬りつけた箇所から体内へ侵入して毒を除去する」
「…だが俺の血が体内に入ればその血が増殖して更に凶暴化させてちまうんじゃねぇのか?」
「その点もぬかりないよ。血はあくまでも毒物の除去。適合したら白血球の様に消滅する様になっている」
ゲンジからの疑問もバハリはサクッと答えると懐から次々と先程とは色が異なる抗毒血石を取り出しテーブルへと置いた。
「さてさてさ〜てとだ。ただ攻撃を与えて弱体化させるだけじゃ芸がない…そこでもう一つ。血液に四つの特性を持たせてみた」
そう言いバハリはテーブルに置いた抗毒血石の内、一つを取り上げる。
「コイツは斬りつける度にモンスターの体内に潜む毒物だけでなく抗体を死滅させ免疫を低下させていく効果がある。即ち状態異常攻撃が通りやすくなるのさ。特に爆破属性ばっかり扱ってるゲンジ君にはうってつけだ♪」
「確かに…」
ゲンジが納得していく一方でバハリはもう止まらなかった。
「そして次が属性攻撃の通りやすさを高める。次が弾かれにくくなる。そして最後が単純に攻撃力を上乗せするやつさ」
全ての種類の説明を終えるとバハリは大きく欠伸をする。
「以上かな。因みにガンナータイプのエスラ君の場合の染み込ませた弾丸。そっちの姉方の受付嬢君の場合のビンも用意してあるからね」
バハリの納得のいく説明に皆は希望を抱き始めたのか石を見つめた。
そんな中であった。
「報告します!!」
けたたましい勢いで調査隊が駆け寄ってきた。その調査隊は即座にガレアスの前に立つと汗を流し息を吐きながらも報告する。
「_____城塞高地にて…エスピナスの姿を確認…!!!」
「「「「…!!!」」」」
その知らせを聞いた一同は驚きを隠せなかった。だが、バハリは違う。
「丁度いいねぇ。普通の奴にも効くのか試してみようじゃないか。この砥石の力を…!!!」
そう言いながら自身の開発した砥石を強く握り締めていたのだった。