薄明と双子の姉妹 (リメイク中) 作:きょうこつ
ゲンジが去った後の明かりが消え、月の光が差し込む集会所では、ミノトは一人、書類を整理していた。
「…」
熱が入らない。先程のゲンジの言葉が的を射ていた故にどうすればよいのか迷ってしまう。
ギルドマネージャーであるゴコクはペットのテッカちゃんの背に布団を敷きながら寝息を立てていた。
「姉様…」
不意にそう漏らしてしまう。迷った時にはいつも姉であるヒノエに頼っていた。自身の悪い癖である。だが、どうしても彼女は見つけることが出来なかったのだ。自身の答えを。
すると、閉まっていた集会所の扉が開く。
ミノトの目線はすぐさまその場に移る。もう閉めている筈だ。誰だろうと思い顔を向けてみると…
「ミノト〜」
「…!」
扉からヒョコッと顔を出したのはヒノエだった。その姿を見た瞬間 座っていたミノトの姿が立ち上がる。
「姉様!?なぜここに!?」
「書類の整理でミノトが困ってるって聞いたから来たのよ。大丈夫?」
「え…いや…その…」
ミノトの悩みが吹き飛ぶ。ただ姉が来てくれた事が嬉しかった。
「大丈夫です!」
「そう?でも心配だから手伝うわよ」
「えええ!?姉様の方は大丈夫なんですか!?」
「私のは里の依頼の整理だけだからすぐに終わるわ。それより、ミノトの方が大変でしょ。集会所は里以外からの依頼もあるんだから」
「こ…これしきの量は大したことありませんよ
ミノトは強がるように虚勢をはるも、顔から若干の疲れが出ていることをヒノエは見逃さない。
「誤魔化しても無駄ですよ?ちゃんと分かりますからね」
「うぅ…」
ヒノエの指摘が図星なのか、ミノトは言い返す事ができなかった。姉の手を煩わせるのはどうしても気が引けてしまうが、ここは甘える。
「お…お言葉に甘えます…」
「よろしい」
それから、ミノトは久しぶりに姉であるミノトと共に姉妹として笑い合いながら業務に徹した。ミノトが浮かべる笑顔はヒノエ曰く久しぶりの笑顔だった。
ミノトは自身よりも素早い手つきで次々と依頼書を仕分けしていく姿に目を輝かせる。
「流石姉様です!」
「そうかな〜♪」
妹であるミノトに褒められた事が嬉しいヒノエも頬を紅潮させ、笑顔を浮かべる。
その時間はミノトにとって夢のような一時だった。作業であっても、自身が心の底から尊敬するヒノエと共にいる事はミノトにとってこの上ない物だった。作業をすること約1時間。ようやく業務である書類の整理が終了した。
「お疲れ様ですニャ!」
すると、集会所勤務の団子屋の店主であるアイルーがお茶とウサ団子を運んでくる。このアイルーはヨモギの師匠でもある。
「ありがとうございます♪」
ヒノエは出されたウサ団子に目を輝かせると、一本手に取る。
「はい。ミノトの分」
「ありがとうございます!」
ヒノエから団子を受け取ったミノトは月光が指す桜を見ながらその付近にある椅子にヒノエと共に腰をかける。
月の光が桜に差し込み、幻想味の溢れる空間を作り出す。誰もがこの景色を見れば嫌な思いも辛い思いも全て忘れてしまうだろう。けれども、ミノトはスッキリしていなかった。
ミノトは今まで抱えていた悩みをヒノエへと打ち明ける。
「姉様…彼の事…どう思いますか?」
それはゲンジの事だった。聞けばヒノエは自身が嫌うゲンジとよく団子を食べていると聞く。なぜ、そこまで親しくなれるのか、ミノトは不思議で仕方がなかった。
すると、ヒノエは笑顔で答える。
「本当に頼りのある人ですよ。どんな些細な依頼でも迷う事なく全て引き受けてくれます。お陰で里の人達も少しずつ信頼を取り戻してきていますし」
「信頼…」
その言葉にミノトは言葉が途絶える。ゲンジはもう里の人のために動き出していたのだ。それを知ったミノトの心の中で変化が起きる。
「それに何と言っても可愛いですよ。ぷにぷにの頬に釣り上がった目。そして恥ずかしがり屋さんなのはミノトそっくり」
「う…」
まさかの身体的な特徴まで一致していることにミノトは複雑な思いを抱く。
ヒノエの話を聞いて行く中、ミノトはゲンジに対しての印象が少しずつ変わってきた。
「(私も…信じて…いいのかな…)」
その夜 ミノトは夜桜の風景をヒノエと共に楽しみ、そして甘えるようにヒノエの身体に自身の身体を預けるようにして寄り添う。ヒノエも同じくミノトに身体を寄せて、姉妹共に身を寄せ合いながら眠りについた。
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朝が訪れ、小鳥のさえずりが聞こえ始める中、その鳥の声によって椅子に腰を掛けていたミノトは目を覚ました。
「…ん」
寝息と共にミノトは目が覚めると、自身の顔がヒノエの膝の上にある事に気づく。その暖かい感触にミノトは虜になり、再び寝息を立て始める。
「(姉様の膝枕…)」
幼い頃からこうしているとすぐに落ち着いていた。今もそうだ。
すると
「あら、おはようミノト」
「お!?おはようございます姉様」
ヒノエも同じく目を覚ました。ヒノエは膝の上で顔を乗せているミノトに優しく微笑む。
「ふふ。ミノトは本当にこれが好きなのね♪」
「はい…」
ミノトはもう離れようかと考えていると、ヒノエに頭を撫でられる。
「私にはこうすることしかできないわ…。ごめんね…いつも大変な仕事を任せてしまって」
「いえ!私にとってはそこまでではありません!それに私の目標となるヒノエ姉様の方がもっと大変_____
その時だった。
「うわぁぁぁ!!!ゲンジさぁぁん!!!」
外からヨモギの悲鳴が聞こえた。
「「!?」」
二人は驚くと、すぐさま立ち上がり集会所を出て現場に向かう。
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カムラの里の者達が起きるのは日が完全に昇ってからだ。太陽がまだ少ししか顔を見せていないために、起きているのは自身らとヨモギ程度しかいないだろう。
そのヨモギの悲鳴が聞こえた場所へと走って行く。
そして、別れ道を曲がり、ヨモギの団子屋が見えた時だった。
「!?」
ヒノエとミノトは驚きのあまり立ち尽くす。
そこにはヨモギに揺さぶられながら地面にうつ伏せに倒れるゲンジの姿があったのだ。