薄明と双子の姉妹 (リメイク中) 作:きょうこつ
ヒノエとミノトは姿は違えど、自身の姉であるエスラとシャーラに凄く似ていた。なぜ、ここまでエスラやシャーラに似ているかは理解できなかった。
けれども、ミノトに抱き締められた時、それまで感じていた孤独感が嘘のようになくなっていた。
「………」
目をゆっくりと開けると、自身は布団に横たわっていた。時刻はもう夕刻であり、夕陽が部屋を照らしていた。
「あ、お目覚めですか?」
「あぁ…」
ヒノエは相変わらず笑顔でそこにいた。その隣ではミノトも同じく腰を下ろしており、ゲンジを見つめていた。そんな中で 何故かヒノエはニヤニヤといやらしい笑みを浮かべていた。
「な…なんだよその顔…気持ち悪いな…」
「あらあら。覚えてないんですか?ミノトに抱き締められながらグッスリと眠っていたじゃありませんか」
「…!」
ゲンジは眠りにつく前の出来事をようやく思い出した。ミノトに抱き締められた瞬間にシャーラと重ねて見てしまい、そのまま身を預けてしまった事を。しかも、その直後にヒノエが戻ってきていたらしく、ヒノエは自身が目が覚めるまでグッスリと眠る姿を堪能していたらしい。
その話を聞いたミノトは顔を赤く染めていた。
それと同時にゲンジの顔も段々と赤くなってくる。
「本当に女の子みたいで可愛かったんですよ〜。それに布団に寝かせる時もずっとミノトの手を握っていましたし♪」
「わぁぁぁぁ////」
完全に恥ずかしいところを見られてしまった上に寝ぼけてまたやってしまった事にゲンジは顔をリンゴのように真っ赤に染め上がらせると、恥ずかしさのあまり布団に潜り込み、頭を布団越しに掴む。
「違う違ぁぁう!!あれは違うんだ!」
「何が違うんですか〜?」
布団を被り、完全に身を隠そうとしたゲンジを逃がさないために、ヒノエは布団を掴み、力一杯引く。すると、一瞬で布団が引き剥がされ、ゲンジのうずくまる姿が丸見えとなった。
「ふふ。ちゃんと人の顔を見て話さないといけませんよ♪」
「ちょ!?」
そう言いヒノエはゲンジに近づくと、両手で顔を挟み込む。逃げ場を失ったゲンジを更に追い詰めるようにヒノエは笑顔で見つめた。その一方で、恥ずかしさのあまり、極限状態に達していたゲンジの顔はヒノエの顔の目の前で顔が固定され、目を逸らす事もできないために更に真っ赤に染まる。
「や…やめろ…」
「あらぁ?照れてるんですか〜?」
「見りゃ分かるだろ!」
「でしたら…」
すると、ヒノエの手が即座に顔から離れると、肩におかれ、そのまま引っ張られる。
「わ!?」
ボフッ
頭に柔らかい感触が伝わる。ヒノエは抱き寄せたゲンジを膝下に下ろしたのだ。倒れたゲンジの目の前には自身を見下ろすヒノエの顔があった。
「これならいいですよね?」
「よくねぇよ!……押さえるな!」
すぐさま離れようとする動きを察知したヒノエは肩に手を置き、ゲンジが起き上がる事を阻止する。
完全に身動きが取れない事を悟るとゲンジはそのまま抵抗する事を諦める。
「というか…仕事に戻らなくてもいいのか?」
「それはご心配なく。『誰かさん』のお陰で今日明日分の書類整理が終わったのでゆっくりと休めます♪里の皆も『誰かさん』が一度に全部の依頼を受けた事で品が即座に手に入り大喜びしていましたよ」
「うぅ…」
今更になってゲンジは自身の行動に後悔する。まず、ゲンジが受けた採取依頼全てはゲンジが集会所で受けた大型モンスターの依頼の前に出された物である。ゲンジが大社跡で暴れ回り、次々とモンスターを蹂躙した事で、モンスターの出現報告が止み、危険がなくなった事で自由に採取しにいけるようになり、ゲンジが受けた採取依頼の後は依頼が出されなくなったのだ。
そして、ヒノエの仕事も減った事で、ミノトの仕事にも手を貸す事ができるようになり、二日分の整理が終わったのだ。
ミノトと共に過ごせる。己の身を犠牲にしてまでも自身らが一緒にいる時間を作ってくれた事にミノトと同じくヒノエも感謝していたのだ。
けれども、身を犠牲にした事に対してはあまり、嬉しくはなかった。
「けど…疲れた時には必ず休んでくださいね」
ヒノエの白く滑らかな4本の指がゲンジの額に添えられる。
ハンターにはたとえ採取であろうと無茶はつきものであるとヒノエは理解はしていた。けれども、彼女にとって、ゲンジはもはや家族同然の者である故に身を削る行為はあまり見たくはないのだ。
「あまり、無茶はしないでください」
『あまり無茶はするなよ』
身を案じるヒノエの言葉でさえもゲンジの目にはエスラと重なって見えてしまっていた。
「…分かった…」
ゲンジはゆっくりと起き上がる。
「というか…何でミノト姉さんまでいるんだ?」
そう言いゲンジはヒノエの後ろに座るミノトに目を向けた。
すると、ヒノエは思い出したかのように説明した。
「それがですね。ミノトが私やゲンジと3人で夜桜を見たいと……あら?」
「ゲンジさん………いま何と……?」
「え?」
ヒノエは言葉を中断。そして、ミノトは驚き、その言葉をもう一度聞き返す。ゲンジは首を傾げながらも自身の発言を思い返す。
「……はッ!!」
その瞬間 ゲンジはデジャブを感じ取ると同時に思い出し、顔を真っ赤に染め上がらせる。
「わ…わわ…うわぁぁあぁ////」
またもややってしまった。遂にはミノトさえも姉と捉えてしまいうっかり『姉さん』と呼んでしまったのだ。
ゲンジは両手で顔を隠しながら悶え始め、
そして、それを楽しむかのようにヒノエは悶えるゲンジの肩を掴むと、その悶える動作を停止させる。
「あらあら〜また間違えてしまいましたね〜♪」
一方で、ミノトは何故か同じように顔を赤く染めていた。
「姉さん…私が姉さん…」
すると、突然身を乗り出す。
「ゲンジさん!!」
「うぇ!?」
そして、ゲンジの目の前まで来ると、ヒノエに掴まれていた両肩を掴み出し、自身の前に寄せた。いきなり、目の前に引き寄せられたゲンジは驚く。
そして、ミノトは顔を強張らせながらゆっくりと言った。
「もう一度…言ってください…!」
「えぇ!?」
ミノトは次々と迫ってくる。後ろにはヒノエが肩を掴んでいた事でゲンジには逃げ場が存在しなかった。その圧に耐えきれず、言う事を躊躇しながらも恐る恐るもう一度口にした。
「ミ……ミノト姉さん…」
「………悪くありませんね」
品定めするかのように聞いたミノトは頷く。
「次からは私の事もそう呼んでください」
「は…?」
ミノト自身もその呼び方を気に入ってしまったのだ。だが、事故で発言してしまったゲンジは即座に拒否する。
「よ…呼ぶわけねぇだ___
「もし拒否すると言うのなら…」
すると、ミノトの目が一瞬光りだす。
要求を拒否したゲンジにミノトはとてつもない事を言い出した。
「ゲンジさんが私達姉妹に赤子のように甘えているという噂を里中に…」
「やめろぉぉ!!!」
完全にヒノエと同じくミノトの悪い性格が出てしまった。ミノトはたまに自身の要求が通らなければどんな手段を使っても通そうとする癖があるのだ。流石に噂を流されれば、里の者から白い目線で見られると思いゲンジは即座に拒否を取り消し、了承する。
「わ…分かった!呼ぶ!呼ぶよミノト姉さん!」
「よろしい」
ゲンジを無理やり了承させたミノト。笑みを浮かべるその顔からは達成感が感じられる。
そして、ヒノエもヒノエで嬉しそうに手をパチパチと叩いていた。
「あらあら、ミノトもこれで晴れてお姉ちゃんですね!」
それから、ゲンジはヒノエと同じくミノトも姉として見るようになった。最初は抵抗していたが、うっかりと『姉さん』と呼んでしまったために、その呼び方が定着してしまった上にミノトに弱みも握られてしまったので受け入れる事となった。
そして、ゲンジを最初は非難していたミノトもヒノエの様にゲンジを新しい家族…弟として見るようになった。