薄明と双子の姉妹 (リメイク中) 作:きょうこつ
秘め始める想い
数日後に起こると予言された百竜夜行。
里に残る者は即座に帰還し、砦にて迎撃する者は数日間、ここで寝泊まりとなる。
予言されたのは数日後。皆はそれに備えて寝ていた。
その夜
皆が寝静まる中、ゲンジはいつ来てもおかしくない状況故にキャンプの入り口。即ち砦を見渡せる穴の入り口の前で座っていた。
「…」
月明かりが指す渓谷の中でゲンジは第一関門であるエリア1の方向を見つめながら、あぐらをかき、今か今かと待ち構える。
「眠れないのですか?」
すると、同じくして後ろから声をかけられ、見るといつもと変わらずコーデを纏うヒノエが立っていた。
「ヒノエ姉さん…」
ヒノエはゲンジの横にそっと腰を下ろす。
「まぁ眠れない…。いつくるか分からねぇからな。予言なんて当てにならねぇ」
百流夜行は神出鬼没。いつ束になって襲い来るかわからない。もし、寝込みを狙われて襲われでもしたら準備が全て無駄になるだろう。
「見張り役の方がいますからご安心を。それに…ゲンジはずっと動いていたから休んだ方がいいですよ」
「…今回ばかりはそうなるな」
「ふふ」
顔を指で掻きながら納得するゲンジにヒノエは微笑むとゲンジの肩に手を置き、自身の側に抱き寄せた。その際にゲンジの頬は少し赤く染まる。
「初めて会った時のことを覚えていますか?」
「あぁ…まぁ俺にとって初めては姉さんが布団の横で座っていた時だがな」
「そうですね〜」
ヒノエは微笑みながらゲンジと最初に話したあの日を思い出した。
「当初は私も…皆と同じく諦めかけていました。里に訪れたハンター達が次々と断る中で貴方も絶対に断るだろう…と」
ヒノエの告白にゲンジは驚かなかった。確かにあの時、自身に頼むヒノエの目からは希望が消えていた。恐らくダメ元で頼んでいたのだろう。表面には出さなかったが、ヒノエも内心皆と同じく希望を見出せていなかったのだ。
「けど、貴方が頷いてくれた時は本当に嬉しかった。そして、ゲンジが次々と依頼をこなしてきてくれたお陰で…私達は大きな希望を持つことができてここまで来ることができた」
そう言いヒノエの手がゲンジの両頬を挟み込むと、顔を向けた。その顔はいつもよりも美しい笑顔が輝いていた。
「本当にありがとう…!!」
満面な笑みを浮かべる目からは涙が零れ出ていた。それは、自身らに希望を与えてくれたゲンジに対しての感謝の涙だった。
「…泣くのは百竜夜行が終わってからにしろ」
ゲンジは装備を外すと、ヒノエの涙を拭き取る。
「それに約束しただろ。原因を突き止めるまで協力して絶対に守ると」
ゲンジの真っ直ぐな眼差しから放たれた言葉が届いた時、ヒノエの心の奥底で何かが弾けた。まるで幼い頃に自身の添い遂げたい理想像の男性と重ね合わせる様に。
「…!」
それと同時に胸の奥が突然熱くなる。
「ふわぁ…約束破るのは主義じゃないんだよ…。見張りがいるなら俺はもう寝る…」
そんな事も知らずにゲンジは欠伸をすると横を通り過ぎてキャンプに向かっていった。その姿を見ながらヒノエは原因不明の熱さに胸を押さえると顔を赤く染めていた。