薄明と双子の姉妹 (リメイク中) 作:きょうこつ
百竜夜行が遂に明日に迎える。前日は皆はそれぞれ武器を持ち、次々と身体を慣れさせていた。
そんな中で、驚いたのはヒノエとミノト、そしてヨモギとイオリも武器を扱う者だった事だ。
「…!!」
鋭い目を向けながら遠方にある的に向けて数本の矢を放ち、全て見事に命中させるヒノエ。
「ゼェィヤッ!!!」
強烈な突き出しを放ち、竜巻を発生させて前方に放つミノト。
「アハハハハ!!!」
ゲス顔で笑いながら次々と通常弾をブッ放すヨモギ。
「ヤッ!!!」
高出力属性解放斬りを放つイオリ。
前半は分かるが後半はシュールだろう。だが、その光景を見ていたゲンジは自身らハンターが情けないと若干ながら感じていた。まだ15にも満たない幼い少年少女が武器を手に持ち命を掛けて戦おうとしているからだ。
カムラの里は技術は発展しているものの、人口が若干ながらに少ない上に戦える者は尚も少ない。それならば仕方がないか?否,本来ならば幼い彼らを戦わせないためにハンターがいるのではないのか。
「…断った奴らはどう言う神経してるんだよ」
ゲンジは内心、協力を断ったハンター達を卑下しながらも、武器を構える。
「すぅぅ……」
呼吸をし、肺に酸素を取り込む。すると、それに呼応するかの様に周囲の空気の色が変わった。
そして、ゲンジの脚が地面に陥没し、その際に飛び出した小石がゆっくりと上昇する。
『…!?』
辺りで武器の訓練をしている者達はその手を止める。武器の訓練を中止させる程の濃密な殺気がゲンジから放たれていたからだ。
そして、
「…!!!」
ゲンジの閉じられていた目が一瞬で開くと同時に、踏み込んでいた脚を一気に前に踏み出す。
駆け出したゲンジは壁に向けて飛ぶと、再び壁を蹴り、三角跳びを行う。そして、翔蟲を取り出して更に高く飛ぶと、縦横無尽に双剣を振り回した。
「…!!」
無呼吸運動の如く、肺に空気を溜め込んだ事によって身体能力を極限まで高めたゲンジの双剣が残像を作りながら刃の嵐を形成する。
そして、乱舞を即座に終えると、ゲンジは身体を唸らせ、高速回転させる。
自身の斜め下に置かれた的をモンスターであると想像して、ゲンジは高速回転させた身体を斜め下に向けて、その的に目掛けてミサイルの如くダイブした。
「オラァァァァァッ!!!」
猛々しい叫び声と共にスクリューミサイルと化したゲンジの身体がその的に向けて突っ込み、的をそのスクリューの嵐に巻き込む。
そして、地面に衝突する寸前にゲンジの身体が元の体勢に戻り、着地する。
「ふぅ…」
辺りに舞うは砂埃。そして、モンスターとして設置した的は粉々に粉砕されていた。
この的は一定の威力が無ければビクともしない程に頑丈に作られている。その強度は巨木と同様。それを木っ端微塵としてしまう程の威力だった。
その行動を最後まで見ていたヒノエを除くミノト達は驚きのあまり立ち尽くしていた。
中でもミノトやヨモギ、そしてイオリは初めて見るゲンジの武器の扱いに口をポカンと開けていた。
「す…凄い…!」
「あれがゲンジさんの…G級ハンターの力…」
「初めて見ましたが…想像以上です…」
ヨモギとイオリ、そしてミノトはゲンジの芸当に感嘆する。そんな中で、もう見慣れてしまったヒノエはパチパチと手を叩いていた。
「まぁ凄いわ!ゲンジ!」
「…」
ヒノエの褒める声にゲンジは何も答えなかった。すぐ後ろにいるというのに。まるで、自身だけの世界に入っているようだった。
「え?あ、そうか?」
すると、少し遅れてからようやく気づき始めてゲンジはヒノエに振り返る。
ヒノエはゲンジを抱き上げぐるぐると回り出した。
ーーーーーーーー
それから訓練を終えた皆はキャンプへと戻ってきた。
「皆の者!明日は遂に百竜夜行が起こる!!腹ごしらえのためにたっぷりと飯を用意してもらった。さぁ!存分に食べてくれ!」
皆の前に並べられたのは山盛りの料理だった。
里の者は次々とその用意された料理を口に入れる。アイルーやガルク達も食らい付き、スタミナをとる。そんな中、ふと、一人の里の者は横に目を向ける。
「…!?」
その里の者の目の前には驚くべき光景が広がっていた。
「ハグハグハグハグ…!!」
「ふむ…うまいうまいうまい…!!」
見るとゲンジとフゲンが次々と料理を息をするかのように平らげていた。その量は軽く数人分に登る。そしてゲンジの隣にいるヒノエもゲンジよりも速度は遅いものの、優雅な動きを早送りするかのように料理を口の中に入れていく。
ヒノエに加えて,フゲンが大飯ぐらいだと言う事は里の皆は周知していた。
だが、ゲンジまでもがあそこまで大食いだとは知らなかった。
「おかわり」
まだまだたくさん料理はあるものの、ヒノエに匹敵する大食い振りに里の皆は若干引いていた。
ゲンジの身体は代謝が大きいために、いつも、大量にご飯を取らなければならないのだ。クエストでもヨモギの団子を食べたとはいえ、現場ではこんがり肉を最低でも10個は食べてしまう。
もし少しでも食事を絶ってしまえば、ゲンジは身体能力の真価を発揮できなくなってしまうのだ。
「あら!ゲンジったら本当は食いしん坊さんなのね!」
「ハグハグハグハグ…んん…」
いつもウサ団子一本を食べる姿しか見ていないミノトはその光景を見て驚くと、同じ大食いもの同士と言う事で顔を輝かせた。
ゲンジもゲンジで自覚しているのか、恥ずかしがりながらも頷いた。
それから、皆はワイワイとしながらも前日の食事を楽しんだ。
そして、誰一人とそれを最後の晩餐だとは一欠片も思わなかった。自身らは勝って帰ってまた皆で飯を食う。
ただそれだけだ