薄明と双子の姉妹 (リメイク中)   作:きょうこつ

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怨念纏いし龍

ゲンジ以外の皆は動かなかった。いや、動く事が出来なかった。

 

目の前に現れたその巨大なモンスターは鋭い目線を向けながら一歩一歩と近づいてくる。

 

「な…なに…?あのモンスター…」

「寒気が…止まらない…」

初めて遭遇したヨモギとイオリは全身を震わせていた。

 

すると、ゲンジがようやく皆の元に着くと、前に出て武器を構えた。

 

「こいつ…初めて見るな…」

初めて見るモンスターにゲンジは疑問を抱くと、フゲンは伝えた。

 

“怨虎竜マガイマガド”

 

「百竜夜行と共に現れ、その群れを喰らう化け物だ…!」

 

「へぇ…イビルジョーみてぇな奴だな…」

マガイマガドと呼ばれたモンスターは、こちらに目を向けたまま動かなかった。

 

フゲンはすぐさま背後を見る。キャンプに続く避難場所まで距離がある。それはマガイマガドとの距離とほぼ同じだった。撤退すれば、マガイマガドは確実に追いかけてくるだろう。

もし、追いかけられれば,間違いなく、追いつかれる。

 

正に絶体絶命の状況だ。

 

故に、フゲンは決めた。

 

「皆よ…ここはゆっくりと後ろに下がれ…。ゲンジもだ」

 

「「「「…」」」」

ゲンジを含めた皆は頷くと、マガイマガドから目を離さず、少し早く後ずさる。

 

目立った行動をしなければ、向こうも興味を示さない。故にマガイマガドはずっとこちらに目を向けているだけで追ってくる様子は無かった。

 

その時だ。

 

 

バキッ

 

 

「「「…!!」」」

 

「しまった…!」

ミノトの脚が落ちていた小さな木を踏み潰してしまった。木が折れる音はとても大きく響き、その音によってマガイマガドを刺激してしまった。

その瞬間

 

「グロォオオオオオオオ!!!!!」

 

マガイマガドが刺激され、巨大な咆哮をあげる。

 

 

「走れッ!!!全速力でだ!!!」

咄嗟にフゲンはヨモギとイオリを担ぎ出し、全速力で走り出した。

一方で、マガイマガドはとてつもない速さで迫ってくる。

 

ヨモギとイオリを抱えていながらも、フゲンは皆よりもぐんぐん前へと進んでいき、ヨモギとイオリの翔蟲によって、避難口へと飛び込んだ。

 

それに続き,ゲンジも翔蟲を取り出そうとする。

 

 

その時

 

「!?」

後方にヒノエと共に走っていたミノトが脚を踏み外し、体勢を崩してしまった。この6人の中で最も重い武器を背負うミノトは、武器がのしかかる形となり、上手く立ち上がる事ができなかった。

 

「ミノト!!」

咄嗟に気がついたヒノエは即座に駆け寄る。だが、その目の前には既にマガイマガドが迫ってきていた。

 

「!姉様!私を置いて逃げてください!!」

ミノトはすぐさまヒノエに逃げるように叫ぶ。だが、ヒノエは決して聞き入れなかった。

 

「そんな事…できるわけないでしょ!!」

大切な妹を見殺しにはできない。ヒノエはミノトを見捨てず、即座に立ち上がらせる。

 

「…!!」

だが、立ち上がった時には既にマガイマガドは目前まで迫ってきていた。

 

間に合わない。

 

「(姉様…申し訳ありません…!!)」

涙を流しながら自身の失態が仇となり、事態を招き、ヒノエに手を煩わしてしまった事にミノトは涙を流した。

自身の所為で敬愛する姉を死なせてしまう自身を恨んだ。

 

マガイマガドの腕が振り上げられ、ミノトとヒノエに向けて振り下ろされる。

 

「…!!」

ヒノエはミノトを守るために、抱き締め、背中を向けた。

 

 

「ミノト!!ヒノエ!!」

 

「「ヒノエさん!ミノトさん!!」」

フゲンとヨモギとイオリの声が響いた。

 

 

その時

 

 

「ヴォラァ!!!」

ゲンジが翔蟲を用いて飛び出すと、身体を高速回転させながら、ミサイルの如く、前脚を振り下ろそうとするマガイマガドの顔面に向けて突っ込んだ。

 

「グルル!?」

 

ゲンジの刃は前脚を振り下ろそうとしたマガイマガドの顔面に突き刺さると、その巨体を後ろに後退させる。

 

「ふぅ…!!!」

回転を終えたゲンジはミノトとヒノエの前に着地すると、二人に向けて叫ぶ。

 

「早く行け!!俺が時間を稼ぐ!!」

「ゲンジ…!」

ゲンジは双剣を構える。一方で、マガイマガドは即座に状態を立て直していた。見る限り、明らかに先程のモンスター達とは格が違う。

 

「そんな…貴方も一緒に!!」

彼だけを置いてはいけなかった。家族を置き去りにはしたくない。故にミノトはゲンジに向かって叫ぶ。

 

その時、ゲンジの想像を絶する程の怒声が響き渡った。

 

「行けって言ってんだろぅがぁッ!!!!助かった命を無駄にすんじゃねぇッ!!!」

 

「…!!!」

その声は今まで聞いた事が無い程、怒りが混じっていた。ミノトは何も言えず、自身の不甲斐無さに唇を噛み締める。

 

「ゲンジ……」

ヒノエも呼び戻そうとした。だが、呼び戻せばマガイマガドも向かってくる。そうなれば今度こそ命がない。ゲンジが救ってくれた自身らの命が無駄になってしまう。

故に、ヒノエは決断した。

 

「行くわよミノト!」

「…はい…!!」

ミノトも決断し、ヒノエと共に翔蟲を取り出すと、避難口へと飛び込む。

 

全員が無事に避難した事を確認したゲンジは額に筋を浮かべながらマガイマガドを睨む。

 

「テメェ……ただで済むと思うなよ…?」

その目は血走り、顔から筋を隆起させる。自身を慰めてくれた恩人であるヒノエとミノトを手に掛けようとした事でゲンジの怒りは頂点に達していたのだ。

 

双剣を天に向けて掲げると、ゲンジの身体がオーラに包まれる。

 

「グロォオオッ!!!」

マガイマガドの発達した前脚が振り下ろされる。

 

即座にゲンジは横に回避し、その振り下ろしを避ける。あの振り下ろしを喰らえばただでは済まないだろう。

 

すると、マガイマガドの尻尾が唸り出す。

 

その瞬間 その尻尾の先端部分が十字型に展開すると、先端部分をランスの如く突き出してきた。

 

「…!!」

対してゲンジはその尻尾の攻撃を予測していたかのように身体を最小限の形で避けると、その突き出された尻尾に向けて双剣を振るう。

 

「オラァッ!!」

「グルル…!!」

すぐさまマガイマガドは尻尾を離れさせると、身体から青白い炎を生成した。

 

その炎は藍色から段々と変色し、怪しく輝く薔薇色の炎へと変色していく。

 

「へぇ…面白い…」

ゲンジは双剣を再び構える。恐らくだが、身体に纏ったとなると、攻撃範囲の拡大または動きの変化が見られるだろうと予測した。

 

全身に炎を纏ったマガイマガドは一旦後方に跳躍する。

 

「…!」

その離れた距離は100メートル。だが、ゲンジはそのまま双剣を持ち走り出した。

 

「グロォオオオオオオオ!!」

対するマガイマガドも走り出す。その時 マガイマガドの尻尾に纏われた炎が爆発して、マガイマガドの動きが爆発的に上昇し、一瞬の内に100メートルという距離を瞬間移動の如く移動した。

 

「…!」

冷静になっていたゲンジは目を開き驚く。炎を噴射し、加速すると予想していたが、全く違い、爆発するとは考えていなかった。

 

「グロォオッ!!」

 

「ぐ!?」

マガイマガドの巨大な前脚が横に殴りつけるように放たれ、ゲンジの身体を吹き飛ばし、壁へと叩きつけた。

 

「ガハァ…!!

叩きつけられたゲンジはそのまま落下する。

 

「…」

額から流れ出るのは血。その血は次々と手に流れ落ちた。付着した血を手で拭き取る。

 

「……はは」

笑いが出てくる。この程度の痛み…孤島のあのG級個体に匹敵するイビルジョー に比べれば……“どうということはない”

 

あのマガイマガドは恐らく上位とG級の境となる程度の強さだ。炎を完全に纏っているあの姿ならば確実にG級レベルに入るだろう。

 

久しぶりに遭遇する手強いモンスター。

更に、爆発を推進力として加速すると言う奇怪な行動によって、ゲンジの闘争心に火が灯された。

 

「面白い…!!!!!」

ゲンジは立ち上がると、こちらを睨むマガイマガドに向けて、双剣を再び構えると走り出した。

 

「グロォオオオオオオオッ!!!」

対してマガイマガドは全身に炎を纏うと、再び、前脚を振り上げる。それに対して、ゲンジは双剣の持ち手を変える。

 

 

そして、

マガイマガドの前脚が振り下ろされた瞬間 ゲンジの身体が消えた。

 

 

その直後、マガイマガドの振り下ろされた前脚に螺旋状の切り傷が刻まれた。

 

「グルル…!!」

何が起こったのか、マガイマガドでさえも理解できなかった。気づいた時には既に自身の腕が螺旋状に斬られていたのだ。

 

「!?」

その時、背中から尻尾に掛けて痛みを感じた。

咄嗟にマガイマガドは後ろに後退する。そこには自身の血液が滴り落ちていた。

 

「逃げるなよ。お前のような面白いモンスターを初見で倒すのは気分がいいからな…!!」

声が聞こえた方向へとマガイマガドは目を向ける。そこには、目が血のように赤く染まったゲンジが立っていた。

 

 

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