薄明と双子の姉妹 (リメイク中) 作:きょうこつ
抱き始めるミノトの恋心
いつからだろう。彼に恋心を抱いてしまったのは。
最初は彼も前のハンターの様にすぐに逃げ出すだろうと思っていた。けれども、それは大きく違っていた。彼は今まで見てきたどのハンターよりも、他人を思いやり、勇敢で真っ直ぐな信念を持っていた。
私から信用を得るためだけに大量のクエストを受けて倒れた時以来、罪悪感から彼の事を気にかけるようになった。
罪悪感故に、自主的ではないため、本当に彼を私自身の意思で気にする事はなかった。
ただ、彼が私の事を姉と思ってくれた時はとても心が弾んだ。尊敬する姉様に近づけたと思い、私は嬉しかった。
だからは、ゲンジの事を弟のように見ていた。百竜夜行の時も彼が私達の大切な家族だから守った。想いを寄せていたという感情は微塵も無く、ただの家族だと思っていた。
だが、その後のマガイマガドから助けてもらって以来、彼の事を思うと胸が熱くなるようになってしまった。
彼の姿を見ると、抱き締めたい衝動感に加えてずっと一緒にいたいという欲求が次々と出てきてしまう。
その証拠に、姉様としか寝ない私も、ゲンジが布団に寝ている時は、本気で入り込もうとした。
そして、私は自覚してしまった。
私は彼の事を姉様と同じかそれ以上に…好きになってしまった事を。
助けてもらった時のあの悠然なる姿。そして、小柄ながらも大きな背中。何人たりとも寄せ付けない無双の如き強さに…私は惹かれてしまったのだ。
「……」
彼の事を思うと、どうしても眠れなかった。心が炎のように熱く、とても抑えきれない。
「ミノトも眠れないの?」
「…そういう姉様こそ…」
見ると、姉様も顔をリンゴのように紅潮させていた。私達は顔を見合わせながら、お互いの意思を確かめ合うかの様に頷いた。
「そろそろ寝付いた頃だからお邪魔しましょう♪」
「そうですね。実は私もそう思っていたところです」
私は姉様と共に寝巻きである白装束を纏いながらも、ゲンジの家に向かう。
ーーーーーーーーー
彼の家にはもう灯が灯されておらず、月明かりだけが照らされていた。その中で、彼は寝息を立てながら眠りについていた。
抜き足差し足忍足。私達はゲンジを起こさないように静かに上がり込むと、左右に腰を掛ける。
「…」
いつ見ても少女と見間違えてしまうその寝顔はとても愛くるしい。あまりにも可憐な為に私は凝視してしまった。
「ミノト。視線を向け続けてしまうと起きてしまいますよ」
姉様の囁きに私は我に帰り、ゲンジの布団をめくると、姉様と共に挟み込むように入る。
すると、先程の燃える様な熱さが嘘の様に治った。
姉様と共にゲンジに身を寄せる。小さいながらも逞しい彼の身体に巻きつける様に手を置きながら、私達は身を寄せて、目を閉じた。
「おやすみミノト」
「はい。おやすみなさいませ。ヒノエ姉様」
ーーーーーーーーーーー
再び目を覚ましたゲンジはいつもと違い装備を纏っていた。
「お?預かってる筈の双剣が…ヒノエ姉さん達には行くなって言われてるが……やはり狩りには行かねぇとな!」
すぐさまその場を飛び出し、夜の大社跡へと向かう。
いつもより身体が軽い。それに、気分もいい。
あまりの身軽さに疲れる事を知らず,あっという間に大社跡へと着いてしまった。
「よし、取り敢えず大型モンスターを見つけて……ん?」
すると、空から無数の火球が降り注ぐ。
「まさかここで会えるとはな…リオレイア希少種」
そこには、月を背に舞う金色の月『リオレイア希少種』が翼を広げ、自身を睨んでいた。
「ギャァオオオ!!!」
辺りに響き渡る咆哮は空気を揺らし、炎を撒き散らす。
炎?いや……ウサ団子だった。
「はあぁぁぁ!?」
リオレイアは次々と口内からウサ団子を生成すると、ゲンジに向かって投げ落とす。
「ちょ…!?なんでウサ団子…むぐ!?」」
吐き出されたその内の一つのウサ団子がゲンジに直撃すると、そのまま押しつぶした。地面とウサ団子に挟み撃ちにされながら、ゲンジは引き剥がそうと抵抗する。
「く…苦しい…離れろ…!離れろ…!!」
抵抗すると、更にウサ団子の重みが増してくる。柔らかい物体が次々と押し寄せて、呼吸を阻害してくる。
すると、目の前の景色が次々と歪んでいった。
ーーーーーーー
「んん…くく…ぷは…!!」
目が覚めると同時に現実世界へと連れ戻されたゲンジは即座に大きく息継ぎをする。
「はぁ…はぁ…(何なんだよ今の夢…リオレイアがウサ団子!?シュールすぎるだろ!!)」
奇想天外な夢の他に、更に驚く。
「(何も…見えない…)」
目の前が真っ暗で、何も見えずその上、身動きも取れなかった。まるで重たい何かにのし掛かられているかのように。
しかも、自身の顔に何か柔らかい物が押しつけられていた。離れようとするも、後ろからも何か柔らかい物が押しつけられ、自身を挟み込んでいた。
「(なんだよこれ…)」
訳もわからない物体に挟み込まれ,再び息苦しくなってくる。
その時だ。
「もぐ!?」
突然 後ろにある柔らかい物体が強く押しつけられ、それと共に自身の顔が前方にある柔らかい物体へと押しつけられる。
「〜!!(く…苦しい……息が…)」
柔らかい物が左右から自身を圧迫してくる。しかも、その物体はほんのりと甘い香りがしてきた。
それと共に自身にのし掛かる何かの重さも増してくる。
「(なんなんだよこれ…!!早く離れろ…!!)」
ゲンジは抵抗するかの如く、次々と身体を左右に動かす。
すると
「んん…!」
突然 声が聞こえた。
「え…?」
ゲンジは即座に動作を停止させる。それと同時に自身にのし掛かっていた物がなくなり、身体が自由になる。そして、今まで暗闇だった目の前の景色がゆっくりと明るくなっていった、
「もう…くすぐったいですよ〜」
「ヒ…!?」
声が聞こえる方へと目を向けると、そこには目を覚ましたヒノエの顔。そして、自身の目の前にはヒノエの豊満な胸があった。
「ゲンジはエッチなんですね〜女性の胸に顔なんか擦り付けたりして」
「胸…え!?」
ようやくゲンジは理解した。先程、自身を押さえつけていたのはヒノエの腕であり、自身を窒息寸前まで追い詰めていた物体の正体がヒノエの胸だった。
それを知った途端 ゲンジの顔が真っ赤に染まる。
「わ…ご…ごご…こごめん!!」
「あらあら〜?なんで潜ろうとしてるんですか?」
戸惑い、姿を隠そうと、布団に潜ろうとするゲンジの顔をヒノエは両手で挟み込み、逃がさない。
「謝るならちゃんと人の顔を見て言わないといけませんよ?ふふ」
「うぅ…」
紅潮したヒノエの顔が目の前に出される。ゲンジは即座に逃げようとするも、今もなお眠っているミノトに抱きつかれている為に身動きが取れなかった。
段々とゲンジは恥ずかしみを帯びていき、更に顔が赤く染まっていく。
「なんで…ここにいるんだよ…」
「ミノトが寂しがっていたので一緒にお邪魔しました。それに、偶には3人で川の字に寝るのもいいかなと♪」
そう言うと、ヒノエは顔から手を離すと、微笑んだ。
「まだまだ夜が深いですからもう少し一緒に寝ましょう♪」
「断る」
ヒノエの言葉にゲンジは命の危険を感じ取り、逃げようとする。
が、
「う…動けん…」
ミノトが自身の後ろから腹に手を回している事で完全にロックされており逃げる事ができなかった。
「あらあら、これでは逃げられませんね〜♪」
「面白がんなよ ちくしょう…」
時刻はまだ夜中なので、ミノトの寝息に釣られて再び自身も眠気が出始めてしまった。故にゲンジは抵抗を諦める。
「頼むから変な事するなよ…」
「はい♪」
ヒノエは笑顔で顔を輝かせると、再びゲンジを抱き締めるように手を回す。
「おやすみ。ゲンジ」
「お…おやすみ…」