薄明と双子の姉妹 (リメイク中)   作:きょうこつ

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陽光と共に届く吉報

「ぐがぁぁ…」

里の中でも一際巨大な家の中。巨大なイビキを立てながら、和服を着て寝ている大男は里長である『フゲン』

 

「むむ…!!」

突然 そのリオレウスの如き鋭い目が一瞬で開かれ、横になっていた上半身を突然 起こす。

 

「ふむ。今日も良い朝だ」

百竜夜行は根絶はされていないものの、撃退かつ、その群れを喰らい、里を壊滅状態へと追いやったマガイマガドの討伐によって、いつ起こるか分からない百竜夜行に対する恐れが無くなり、目覚めが良くなった。

 

その時だ。

 

「里長『フゲン』殿にお手紙だニャ〜!」

タル配達便であるアイルーが窓から顔を出して、フゲン宛の手紙を差し出した。

 

「俺宛て?そうか。百竜夜行が去った事で多くの道が開通したんだったな」

フゲンはアイルーから手紙を受け取る。差出人はこの辺りで距離の近い『ユクモ村』の村長『タツミ』からだ。

 

「タツミ 殿からか」

フゲンはその手紙を開くと、内容を読む。それは『嵐龍』アマツマガツチと呼ばれる古龍の撃退に成功した報告だった。

 

「ほぉ!!何とめでたい!!」

すると、その下にはまだ続きがあった。

 

「おぉ!これは!」

ーーーーーーーー

日が登る直前。暁と呼ばれる時刻の中

 

「んん…」

ゲンジが目を覚ますと、目の前にはグッスリと眠るヒノエの顔があった。

昨夜は夢から現実にかけて災難だったが、その後はヒノエが寝ぼけて此方に向かってくる事はなかったので、また圧迫される事なく眠る事ができた。

 

「はぁ…昨日は散々だった…」

「何が散々だったのですか?」

すると、後ろから声が聞こえ、振り返ると、目を覚まし、釣り上がる目を向けているミノトの顔が映り込んだ。

 

「起きてたのかよ…」

「えぇ。貴方が目を覚ます前から。それよりも……」

 

「!?」

ミノトの目が突然鋭くなり、自身を睨む。それはまるで嫉妬心に包まれたかのような目だった。

 

「昨夜は随分とヒノエ姉様のお身体をご堪能なされましたねぇ…?」

ミノトのゲンジを抱き締める腕の力が強まる。

 

「ま…まさかあの時も起きてたのかよ!?」

 

「当たり前です!あんな大声で話されていれば誰だって起きます!」

 

ミノトは顔を赤くし、頬を膨らませると、ゲンジの身体を抱き締める腕を解く。そして即座に頭を両手で挟み込んだ。

 

「ちょ!?何すんだ!?」

「それはこちらのセリフです!よくも神聖な私の姉様のお身体を…許せません…!!そこまで胸がお好きならば…」

 

そう言いミノトは挟み込んだ腕の中にあるゲンジの頭を自身の胸元に押し付けた。

 

「むぐ!?」

「嫌と言うほど堪能させてあげます…!」

 

その大きさはヒノエとほぼ同じであり、一般の女性よりも遥かに大きな胸はゲンジの顔を包み込んだ。顔全体にミノトの白装束の間から見える胸が押し付けられ、甘い香りが鼻をくすぐると同時に呼吸が困難になっていく。

それと同時にミノトの脚がゲンジの身体に絡みつき、締めつけはじめる。

 

「どうです?これがお好きなんですよね!?」

呼吸困難に加えて疲労した身体が次々と締め上げられ、ゲンジは悲鳴を上げようとするも、口を塞がれあげる事ができない。

 

「ヒノエ姉様はどんな匂いでしたか!?どんな感触でしたか!?私とどちらが気持ちよかったんですか!?」

 

「何で途中から張り合ってんだよ…!?いい加減はな……むぐ!?」

 

「口答えは禁止です!!罰としてこのまま窒息させて差し上げます……!!」

次々と強まる腕の力はゲンジを更に柔らかい胸に押しつけ,呼吸をできなくさせていく。

それと同時に締め付ける脚の力も増していった。

 

「〜!!(む…息…が…息…)」

 

 

すると、

 

「あら。二人ともおはよう」

 

「!?」

突然聞こえたヒノエの声に驚いたミノトは抱き締める力を弱める。

 

「ぷはぁ…!」

それと同時にゲンジも即座にミノトの胸元から顔を出して酸素を吸い込んだ。

 

ーーーーーーー

その後、ゲンジは無事に解放され、身体を左右に捻ったりしながら柔軟体操をする。

 

「死ぬかと思った…」

 

「ゲンジが悪いんですよ!ヒノエ姉様に破廉恥な事をするから!」

ゲンジが体操する一方でミノトはヒノエの柔軟運動に付き合っていた。

 

「夜コッソリ布団に入ってきたアンタらはどうなんだよ!!」

まるで身に覚えがないかの様な態度にゲンジは頭に怒りマークを浮かべる。

 

「あらあら。でも、そのお陰でグッスリと眠れていたじゃない。私の胸に顔を擦り付けたりして」

「んぐ…!?」

それにゲンジは不味そうな表情を浮かべるも、即座に反論する。

 

「それはどう考えても不可抗力だろうが!しかも俺が真ん中にいながらあそこまで近づきやがって!お陰で死ぬとこだったんだぞ!?」

 

「女性の胸で圧死したとなると薄明の名が廃りますね姉様」

「そうね。何だか可哀想に見えてきたわミノト」

 

「そのセリフ吐いていいのは第三者であって加害者のアンタらじゃねぇ…!!」

一方で、ヒノエ達の顔からはいつも時々見える疲れが完全に消え去っていた。

「私達も久しぶりにグッスリ眠れたわ。そうだ!今度からゲンジと一緒に寝るようにしましょう!」

 

「では次は私が真ん中に」

ヒノエのアイデアにミノトは賛成すると同時にヒノエの側で寝ようと画作する。

 

「おいおい!アンタらの寝相に俺が犠牲になれってのか!?」

 

すると、

玄関から入り口を叩く音が聞こえる。

 

「おぉい。ゲンジよ。起きとるか?」

それは今日最も早く起床したフゲンだった。

 

「あ。里長。おはようございます」

「待て待て待て!!その格好で行くなァァァァ!!!」

胸元が空いた白装束のまま、フゲンに挨拶しようとするヒノエを止めると、即座に隠す為にシルバーソルメイルを装着させようとする。

 

「ん?その声はヒノエか。少しは大概にしろよ。いくら好意を持っているからと言って夜は分かるが流石にこんな明け方……」

 

家の中へと入ってきたフゲンは凍りつく。そこに広がっていたのは白装束を来たヒノエにシルバーソルメイルを装着させようとするゲンジと、柔軟運動をするミノトの姿だった。

 

「すまん…事情は分からんが取り込み中だったようだな…また来る」

 

「ちょっと待てぇ!!どう思ってるか知らねぇが誤解だ!!」

ーーーーーー

ーーーー

ーー

 

その後、いつもの受付嬢のコーデに着替えたヒノエとミノトに加えて、装備だけを着用したゲンジは外に出て、ヨモギの団子屋にある長椅子に座る。

 

「ゲンジよ。今回の事、改めて礼を言わせてくれ。お主のお陰で里に被害を出さずに撃退できた上にマガイマガドも討伐された」

 

「よせよ。まだ原因が分かってねぇんだ。安心できないだろ」

 

「まぁ確かにそうだな…それとだ」

すると、フゲンは一枚の手紙を取り出すとゲンジに差し出した。

 

「主に吉報だ」

 

「え?」

ゲンジはその手紙を受け取ると、目を通す。すると、ヒノエとミノトも横から覗き込んで来た。

 

『拝啓 カムラの里の皆々様並びに里長のフゲン様。いかがお過ごしでしょうか?こちらでは、先の週に渓流の奥にて発見された『嵐龍』アマツマガツチが村に集ったハンター様方により、撃退され、村には平和が訪れた事をご報告いたします。

ですが、そちらの災害【百竜夜行】がまだ収束していないとお聞きしており、未だ心配で他なりません。もし、お手が必要となりましたら、私達ユクモ村一同、全力で御協力させていただきます。災害は不規則に起こると聞いております故に、何卒早いご返事をお願いいたします』

 

何とも稚拙な文であった。

だが、この文を見て驚いたのはユクモ村がこの近くにあったことだ。自身がこの里に来る前に会ったハンター『トゥーク』はこの村の専属ハンターである。となれば、その嵐龍を撃退したのは彼となるだろう。

 

「すげぇな…。アイツが古龍を…」

古龍の撃退を成功させたトゥークに舌を巻く。そんな中で、読み進めていくと、追記がある。

 

ー追記ー

『もし、そちらの里で『ゲンジ』というシルバーソル装備のハンターを見かけましたら是非ともそちらもご返事をください。ユクモ村にて、二人のご家族の方が探しています』

 

「…!!!」

その文面を読んだ瞬間 目から涙が滴り落ちる。

 

「主の家族がユクモ村にいるらしくてな。ずっと探していたそうだ」

 

頭に思い浮かぶのは、いつも、夢の中で見る二人の姉『エスラ』と『シャーラ』の顔だった。

 

「エスラ姉さん…シャーラ姉さん…!!」

 

本当の家族が無事であった事に涙を流す。

 

「どうする?家族に会いにいくか?会うならば道が開通しているからいつでもいけるぞ」

 

フゲンの問いにゲンジは少し考え込むと、涙を拭い応えた。

 

「いや……できれば、姉達の方から来れるよう伝えて欲しい…。今ここを留守にするのは危険だからな…」

 

百竜夜行が終わった訳ではない。いつ、再び訪れるか分からない。もしかしたら、自身が留守にした直後なのかもしれない。そうなれば、完全なる人員不足で今度こそ里は壊滅してしまうだろう。

 

「まぁ…確かにそうは言えるが……良いのか?」

 

「あぁ。早く会いたい気持ちはあるが…俺を助けてくれたこの里が襲われるのが一番 癪なんだ」

 

ゲンジの言葉にフゲンは頷くと、手紙を受け取る。

 

「うむ。ならばそう伝えよう」

そして、フゲンはそのまま自宅へと戻っていった。

 

桜が舞い散り、雨のように降り注ぐ中、ヒノエはゲンジの両肩に手を置く。

 

「良かったじゃない。家族が見つかって」

 

「あぁ…そうだ…な…」

その後、ヨモギが起きると、ヒノエとミノトは仕事前の朝食として、ゲンジは目覚めた後の至福としてウサ団子を注文した。

 

「はいどうぞ。ゲンジさんにはサービスでもう1セットオマケだよ!たくさん食べてね!」

そう言いヨモギは天真爛漫な笑顔でヒノエにいつも通り50本。ミノトとゲンジに6本差し出した。

 

隣では、置かれた団子をヒノエが次々と頬張り、また隣ではミノトも好きなのか、嬉しそうに頬張っていた。

 

そんな中で、ゲンジはずっと一本のウサ団子を手に取り,見つめていた。

 

「あれ?どうしたの?」

ヨモギが心配すると、ゲンジは我に帰る。

 

「いや、大丈夫だ。いただく」

そう言いウサ団子に齧り付く。噛む度に溢れる甘い味にモチモチとした食感。それぞれ個性のある味。久しぶりに食すその味にゲンジは若干ながらも頬を釣り上げる。

 

すると、

再び涙が溢れ出てきた。

気づけば、その涙の量は次第に増していき、地面を濡らしていた。

ウサ団子の美味さに感激したのか?いや、違う。噛む度に思考能力が強くなり、その思考によって、頭の中に今まで見る事が出来なかったエスラとシャーラの顔が映し出されていったからである。

 

声が出てしまう。

 

ゲンジは叫びたい衝動を抑えるかのように次々とウサ団子を食べる。

甘さで全てを誤魔化そうと。それでも、その衝動は抑えられなかった。

 

6本全て完食し、団子を飲み込み、お茶を飲み干せども、その気持ちは変わらなかった。

 

「あら?ゲンジ、どうしたの?」

 

「なぜ泣いているのですか?」

 

ただ家族が無事に生きていた事が嬉しかった。

 

「違ぇ…よ……泣いてねぇよ…た…ただ…嬉しいだけだよ…」

泣く顔を見せないように、ゲンジは顔を手で覆いながらも、その手の間から涙が溢れ出ており、言葉が途切れ途切れになっていた。

 

 




タツミ
ユクモ村の村長の名前(オリジナル)
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