薄明と双子の姉妹 (リメイク中)   作:きょうこつ

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沈みゆく陽の輝き

ハチの背中に力が抜けたかのように乗るゲンジの姿をヒノエはただ見つめていた。

 

「悪いなハチ。毛が血で濡れちまって」

 

「ワン!」

「気にするなって言ってるニャ」

ハチの言葉をミケは通訳する。すると、その言葉にゲンジは微笑み頭を撫でる。

 

「そうか。ありがとな」

 

何も言葉が出ない。ハチの背に背負われながら運ばれる彼の姿を見て、どうしても自身が許せなかった。

あの時、自身がゲンジの忠告に従っていれば…ゲンジが大怪我を負う事は無かった。

何度も何度も ヒノエは後悔の念に駆られ、自身を責め立てる事しかできなかった。

 

「姉様…」

隣ではその暗い表情からミノトが心配していた。

 

その後キャンプへとついたゲンジは持ち合わせていた回復薬を飲み干し、体力は回復したものの、開いた傷は回復する事は無かった。開いた傷口から次々と血が滴り落ち、地面を濡らす。

すると、ミケが即座にポーチから包帯を取り出した。

 

「包帯ならあるニャ!」

 

「助かる」

ゲンジはそれを受け取り、ヒノエに渡した。

 

「頭を頼む」

「えぇ…」

頷き、受け取ったヒノエは包帯を切り取ると、慣れた手つきでゲンジの頭に包帯を巻きつける。

 

「ゲンジ…さっきは本当にごめんなさい…」

包帯を巻く中、ヒノエは先程の自身の失態を謝罪する。だが、その事についてはもう気に留めていない。

 

「別に気にする必要はねぇ。狩りに傷は付き物だ。今まで無傷で帰ってきた奴なんていねぇよ」

 

ゲンジはヒノエを慰めるも、ヒノエの表情は曇ったままであった。

 

それから、ゲンジは身体に包帯を巻き終えると、流れ出ていた血が止まる。だが、出血が酷すぎた為に全身がダルい。血が不足していたのだ。

 

「……かなり出血したな。携帯食料で何とかもたせるか…」

ゲンジは支給品ボックスの中にある携帯食料を全て取り出すと、齧る。

 

携帯食品は味気ないが、それでもハンターのスタミナを増やすので、全く効果がないという訳ではない。

 

「それじゃあ帰るか。ミノト姉さんも歩けるか?」

「問題ありません」

ミノトも立ち上がると、ゲンジは俯くヒノエに手を差し出した。

 

「ほら、さっさと行くぞ。いつまでもメソメソしてんじゃねぇ」

 

「ありがとうございます…」

その手を取ると、ヒノエはお礼を言う。だが、いつもの優しい笑顔に戻る事は無かった。

 

帰る道中 ゲンジとミノトは両サイドからヒノエの手を取り引くように歩くも、ヒノエの顔は晴れる事は無かった。

 

ーーーーーーーーー

 

「おぉ!!無事だったか!!」

 

里へと着くと、皆が総出で出迎えていた。ヒノエとミノトが無事な事に皆は歓喜の声をあげるが、一人だけ、無事では無い者がいた。

 

「ゲンジ…!!お主その身体は…!!」

里を出る時よりもゲンジの傷は増しており、貧血による疲労も見えていた。

 

「やっと…着いたな…」

ハチに跨っていたゲンジはゆっくりと降りる。

 

その瞬間

 

「あ…」

身体のバランスが崩れ、前に倒れてしまった。

 

「ゲンジ!!」

即座にヒノエは両手でゲンジの身体を抱き止めるように支える。すると、ゲンジは今にも途切れそうな声を出す。

 

「血を…何か血肉になるもの……早く…魚でも…」

「魚…肉…うむ。分かった」

その要求にフゲンは頷き、ヨモギを呼んだ。

 

「ヨモギ!よろず料理を頼む!とにかくたくさんだ!」

 

「はい!」

 

ーーーーーーー

 

その後、集会所のテーブルにな大量に積まれたこんがり肉や焼き魚が敷き詰められた弁当やそのまま焼かれた物をゲンジはヨツミワドウの如く口の中へと放り込んでいった。その勢いは止まらず、もうアッサリと大食いとして知られているフゲンが食べる量を超えていた。こんがり肉は骨を残して、焼き魚は内臓や骨さえも噛み砕いていった。

 

その結果 こんがり肉 50本 焼き魚35本という何とも破格の量を食し終えた。

 

「ふぅ…」

大量のタンパク質を取り込んだゲンジは水を飲み干すと、息を吐く。

 

「すまん。助かった」

 

「いや、礼ならヨモギに言ってくれ。それよりその傷…やはりヌシと闘ったのか?」

 

「あぁ。討伐もしておいた」

「なんと…」

フゲンの問いにゲンジは頷く。すると、テッカちゃんに乗ったゴコクが現れた。

 

「本当に体力がえげつないのぅ。百竜夜行に加えてマガイマガドを相手にしてまだ数日程度しか経っておらんのにヌシを討伐するとは…」

ゴコクはゲンジのバケモノじみた強さに感嘆と共に驚きの声を上げた。

 

「あぁ。でも、ヌシは強かった。爪の薙ぎ払いだけでこの様だからな」

 

そう言いゲンジは包帯が巻かれた身体を見せる。

 

「それで済んだら良い。最悪の場合、傷が開き命が危なかったのだぞ?」

 

「その点は分かってたさ。だが、あの2人を失うよりはマシだ」

ゲンジの自己犠牲を問わない言葉にフゲンは黙り込むと、息を吐く。

「………まぁ何はともあれ…主らが無事で何よりだ。ヒノエとミノトを救ってくれて感謝する」

フゲンは頭を下げるも、ゲンジは首を横にふる。

 

「別に、礼を言われる事じゃねぇ」

そして、貧血を治したゲンジは立ち上がると、集会所を出る。

「今日からしばらく俺は休ませてもらうよ」

 

「あぁ。むしろそうして欲しいくらいだ。遠慮なく身体の治療を優先してくれ」

その後、ウツシの報告によると、討伐されたヌシ・アオアシラの死体は無事に回収され、ギルドへと送られるようだ。

 

ーーーーーーーー

 

集会所を出た先にはミノトが待っていた。

 

「無事に貧血が治った様ですね」

 

「あぁ。それより…ヒノエ姉さんは?」

ゲンジはヒノエの事について聞く。先程、自身が集会所に向かってから姿が見えないのだ。すると、ミノトは深刻な表情を浮かべた。

 

「今も尚…心を閉ざしてしまっております。ウサ団子を見せても口にせず、食事も取らない様子です」

 

「ッ…」

ヒノエの容態が重体に近い。もし、このまま戻らずに食事を取らなくなれば、彼女は栄養失調で更に状態が悪化して最悪倒れてしまうだろう。

 

「一日だけ様子を見るか」

「分かりました…」

ゲンジの提案にミノトは頷き、2人はそれぞれの家へと戻っていった。

 

 

その夜 月明かりが指す部屋の中でゲンジは頭を両手で組んだ腕に乗せながら、考えていた。

どうすればヒノエが元に戻るのか。彼女の笑顔や人柄の良さも手際の良さも里が機能している原動力の一つだろう。彼女がいつもの調子に戻ってくれなければ、里の皆は少なからずリズムが崩れてしまう。

 

「(どうするか…)」

深く深く考え込んでいると、気づけばゲンジは考え込みながら目を瞑った。

 

 

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