薄明と双子の姉妹 (リメイク中)   作:きょうこつ

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カムラの里

里を襲った大災害『百竜夜行』の原因を突き止め根絶する事を承諾したゲンジは、ヒノエに連れられ、外に出る。

 

ーーーーーーーー

外へと出た瞬間 ゲンジは目を大きく見開かせた。

 

「…!」

目の前に広がっていたのは、正に幻想と呼ぶに相応しいほど美しい景色だった。多くの桜が舞い散り、その下には店や家が立ち並んでおり、まるで街のように栄えていた。

 

 

「さぁ、行きましょう」

ヒノエは立ち止まるゲンジの手を取り歩き出した。ヒノエの顔が知れているのか、道行く人々は皆ヒノエに手を振ったり頭を下げていた。だが何故か自身へは冷たい目線だけが突き刺さっていた。

 

「(なんだ…?一体…)」

 

 

「まずは里をご案内します」

ヒノエはゲンジを連れてある場所へと向かう。そこは巨大な炎が鉄を溶かし、溶かした鉄を男達が次々と金槌で叩きつけ、加工音を鳴り響かせる『鍛冶屋』だった。その近くにある武器を置いている場所では鉄を打ち続ける初老の男性がいた。

 

「ハモンさん。おはようございます」

 

「…」

ハモンと呼ばれた男性はゆっくりとこちらへ目を向けた。全身には老人には見合わない筋肉に加えて、他者を威圧させる程の鋭い眼光。

ゲンジを見た瞬間にその眼光は更に鋭くなる。

 

「何か用か?」

 

「はい。百竜夜行の撃退に協力してくださるハンター様を案内していました。こちらは『ゲンジ』さんです」

 

「そうか…」

ハモンは頷くと、再びその鋭い視線と共に手に持っていた金槌をゲンジへと向けてきた。

 

「儂の名前は『ハモン』だ。それだけ言っておく。いいか?儂のところには武器の生産、強化の用事以外は近づくな」

 

「ハモンさん!」

「…フン」

 

ヒノエに注意されながらも、ハモンは鼻を鳴らし再びゲンジから目を離し、加工へと戻った。ゲンジは長年のハンター生活の経験から、加工屋は少しのミスも許されない為に集中している中で気安く声をかけられるのは癪に触るのだろうと解釈し、頷いた。

 

「分かった」

 

「つ…次にいきましょう!」

ヒノエはゲンジの手を引っ張るとその場を後にする。

 

◇◇◇◇◇◇

 

「すいません。なにぶん ハモンさんは気難しい人でして…」

 

「別に気にしてない。加工屋は大体あんな感じだろ」

 

「いや、そうではないと思いますが」

次に連れてきたのは里の吊橋を渡った先にあるアイルー達が多くいるオトモ紹介所であった。

 

すると、ゲンジより若干背の低い少年が大量のアイルーを連れて現れた。

 

「ヒノエさん!おはようございます。おや?貴方は」

現れた少年はヒノエの後ろにいるゲンジを見る。少年はゲンジに見覚えがあったのか、何かを思い出し、手を握る。

 

「貴方がハンターさんですね。僕の名前は『イオリ』です!オトモの事ならなんでも任せてください!」

 

「お…おぅ。俺は『ゲンジ』だ。よろしくな」

「はい!オトモが必要となったらいつでも来てください!」

ゲンジは戸惑いながらも挨拶と自己紹介をする。

 

「イオリくんはハモンさんのお孫様でもあるんですよ。ではイオリくん。オトモの事はお願いしますね」

 

「はい!」

 

その後、イオリと別れると、ヒノエはまた手を引く。

 

「そろそろお腹が空きましたでしょ。とっておきの場所に連れて行ってあげます」

 

「いや…まだ二軒しか回ってねぇぞ。腹減ってるのお前だけだろ」

ゲンジの手を引っ張るヒノエの表情は今までにない以上に輝いていた。

 

連れてこられた場所は一人の少女が2匹のアイルーと共に餅を突いている出店だった。そこにはお花見用なのか、何本もの長椅子が桜の下に設置されていた。

 

「あ!ヒノエさ〜ん!やっと来てくれた〜!」

その少女は手を振ると、ヒノエに駆け寄る。

 

「こんにちはヨモギちゃん。早速ですがウサ団子を私の分とこの子の分をお願いできますか?」

 

「お?そちらが話していたハンターさんですね!」

ヨモギと呼ばれた少女はヒノエの後ろにいるゲンジに目を向けると、頭を下げる。

 

「初めまして。私は『ヨモギ』!ここのお団子屋をやっております!どうぞお見知り置きを!」

 

「あぁ…俺は『ゲンジ』だ」

活発な自己紹介をするヨモギという少女にゲンジはまたもや戸惑いながらも自己紹介をする。

 

「ではではでは!初めてのゲンジさんにはお試しという事でウサ団子一人前をご馳走しちゃいます!しばし待たれよ!」

クルクルと周りながら承ったヨモギは歌を口ずさみながら数本の串を取り出す。すると、次々とアイルーがこねた団子をお手玉のように回すと、空中に投げ飛ばした。

 

 

すると、ヨモギの身体も飛び上がり、次々と空中に浮かぶ団子に向けて串をクナイのように飛ばした。

 

「ヤァ!」

すると、その串一本一本が軌道上にある団子を3つずつ貫通していき、一つのお団子となる。

 

「ニャ!」

そして、そのお団子をキャッチするかの如く、もう1匹のアイルーが木の板を取り出すと、次々と向かってくるお団子がその板へと突き刺さった。

 

「わぁ〜!!」

「…」

それを見ていたゲンジの隣に座っていたヒノエはパチパチと手を叩く。ゲンジも、空中に浮かぶ団子全てに命中させていることに驚く。

 

「はいどうぞ!」

するとヨモギから一杯の湯呑みに汲まれたお茶と先程木の板に突き刺さった巨大な団子を差し出された。これは『ウサ団子』といい、カムラの里の名物である。

 

「ちゃんとよく噛んで食べるんだよ!」

 

「あ…そうか…」

団子を一本手に取ったゲンジはふと、横に目を向ける。自身の隣に座っていたヒノエは大量に積まれた団子を美味しそうにモサモサと食べていた。

 

「……」

その場面を見たゲンジは再び団子に目を向けるとゆっくり口を開けて一つの団子を口にする。

 

 

「…!!」

その瞬間 口の中に甘みが広がる。モッチリとした食感に噛めば噛むほどに広がる独特な風味が口の中を満たした。

 

ゲンジはその味に夢中になり、残りの2つもアッサリと完食してしまう。

 

「はい!食べ終わった後はお茶をどうぞ!」

出されたお茶を見ると、茶柱が立っていた。ゲンジはゆっくりと飲む。すると、先程の団子の甘味とお茶の苦味がマッチし、口の中を更に快感に包み込んだ。

 

「う…美味い…!」

 

「やったぁあ!!」

ゲンジのふと漏らした感想にヨモギとアイルー達は手を合わせながら飛び上がる。

 

「これがウサ団……ご…って…速!?」

不意に横を見ると、あんなにあった団子の山が消え去っており、ヒノエが満足そうな笑みを浮かべていた。

 

「ここのお団子屋さんはハンターがよくクエストに行く前に訪れる場所でもあるんですよ。お団子それぞれにハンターさんの身体能力を向上させる効果があるのです」

 

「そうだったのか…だから多くの種類の団子があるんだな」

ゲンジは掲示されているお団子の種類に驚く。すると、ヒノエは立ち上がると手を差し出した。

 

「では、里長の所へと参りましょう。集会所にご案内します」

ゲンジはその手を取らず、立ち上がるとヒノエの後を付いていく。

 

ーーーーーーーーーー

ハンターズギルドの出張所が設置されている村には必ず集会所が存在し、その村独特の設備も設置されていることがある。ここ、カムラの里にも集会所が存在しており、中にはアイルー達が切り盛りする団子屋があった。

その他にも中央には桜が植えられており、風に煽られて美しい雨を降らせていた。

 

「ここが…集会所か」

ヒノエに連れられたゲンジは今まで見てきた集会所とは違う雰囲気に興味を持った。すると、受付が見える。

 

「あちらが集会所の受付場です」

 

「あそこが……ん?」

ヒノエが紹介した場所を見ると、受付にヒノエと容姿が似ている女性が立っていた。だが、ヒノエと違い、二つの髪飾りをつけており、目も彼女と違い吊り上がっていた。

 

「あの受付の奴は…?」

 

「彼女はミノト。私の双子の妹です。私は里での依頼を、ミノトは集会所での依頼の仲介人を授かっています」

 

「そうなのか」

すると、その『ミノト』という受付嬢はこちらに気づくと、カウンターから出て歩いてきた。

 

「ヒノエ姉様。どうなされましたか?……そちらのお方は…」

 

「…」

ミノトはヒノエの横にいるゲンジに目を向ける。彼女の吊り上がった鋭い目線がゲンジに向けられる。対してゲンジはそれに臆する事なく、闘争心を剥き出しにした鋭い目線を返す。

 

 

 

…………

 

「…ヒノエ姉様…この子怖いです」

 

「は…?」

すると、突然 向かいに立っていたミノトがヒノエの後ろに逃げる様に隠れる。その様子にゲンジは緊張が抜ける。

 

「私より小さいながらも獣のような鋭い瞳から殺意を感じます…」

 

「あらあら…」

 

「おい…」

何故か予想していた反応が180度違うためにゲンジは抗議する。

 

「小さいってなんだよ!あとお前が最初にこっちを睨んできたんだろうが!?」

 

ミノトはふいとゲンジから顔を逸らす。

 

「私は別にそんなつもりはありません。元々目がこのような形なだけです。見た目だけでご判断なされたのですか?」

 

「ぐぅ…」

ミノトはゲンジを睨んでいる様に見えたのが、それはただ彼女の目が最初から鋭いだけである。

 

「おぉ!ようやく来たか。待っていたぞ」

 

すると、集会所の奥から二人の男性が歩いてくるのが見えた。

一人はゲンジよりも半分程度の背丈の老人であり、もう一人は体格が六尺を軽く超える筋骨隆々の男性だった。

 

その二人はゲンジに向けて陽気に手を上げる。

 

「俺は『フゲン』こちらがここのギルドマネージャー兼長老である『ゴコク』殿だ。お主が『ゲンジ』だな?」

 

「あぁ」

貫禄とはいえ、体格からはとてつもなく大きな覇気が出ていた。恐らく全盛期ではG級相当のハンターだっただろう。

そんな中で、ゲンジは頷くと知りたがっていた百竜夜行について問う。

 

「フゲンさん…と言ったか。アンタに聞きたい事がある。百竜夜行ってのはどういう災害なんだ?」

 

「うむ…数多の竜すなわち『百竜』そして、それらの強襲すなわち『夜行』。百竜夜行とは多くのモンスターが一斉に里に攻めてくる事だ。その災害が何故起こるのか。原因が今もなお掴めておらん状況だ」

 

ヒノエの説明と全く同じだ。詳しく聞いた意味がない。故にゲンジは質問を変える。

 

「ヒノエから聞いた。この里に来たハンターに次々と声を掛けたが、全員に断られたそうだな?何故だ。出てくるモンスターが強すぎる個体ばかりなのか?」

 

「それは儂が答えるでゲコ」

すると、ギルドマネージャーであるゴコクがゲンジの前に出ると、フゲンの代わりに説明した。

 

「襲撃してくるモンスターの中には普通のハンターでは手に負えない『ヌシ』という者が混ざっておってのぅ…。今でもまだ全容が掴めておらんのでゲコ。故に得体の知れないモンスターを相手にしたくないが為に断られてしもうたのだ」

 

「…声かけたハンター全員が腰抜けか。まぁいい」

ゲンジは断ったハンター達を軽蔑すると、肩を鳴らす。

 

「俺の力が必要なら手を貸す。命を助けてくれた礼として」

 

その言葉にゲンジを恐れていたミノトの目が変わる。それと同時に里長のフゲンは笑みを浮かべた。

 

「頼もしいな。流石は『薄明のゲンジ』だ」

 

「な…」

自身が呼ばれていた異名を口にしたフゲンにゲンジは驚く。

 

「知っていたのか…?」

 

「知らぬわけがなかろう。お主の腕は既にこの地方にも響いておる。天性の双剣使いであり、希少種を狩る力量を兼ね備えておると。一度、主の狩りを間近で見てみたいな」

 

「生憎だが、俺の狩猟スタイルは見せもんじゃねぇ。取り敢えず、滞在するための宿はあるか?」

 

「いや、お主には空き家を一つ渡そう。そこを自分の家だと思って自由に使ってくれ」

 

「分かった…」

 

ーーーーーーーー

その後、ゲンジはヒノエの案内の元、広い空き家へと案内された。中は整理されており、埃もあまり見当たらない。

 

「ここをご自由にお使いください」

「へぇ…結構広いんだな…」

ゲンジは持っていた荷物と装備を辺りに置く。

 

「何か必要なものがありましたら遠慮なくお申し付けください」

 

「あぁ。いいのか?ここまでしてもらって」

 

「お気になさらないでください。私は嬉しいのです。共に戦ってくれる仲間…家族が増えた事が」

 

「家族…?」

 

「えぇ。里の皆は私にとって掛け替えのない家族だと思っているのです。それは共に闘ってくれる貴方も同じです」

 

「家族…か」

笑みを浮かべながら答えるヒノエにゲンジは頷く中、忌まわしき幼少期を思い出してしまう。彼にとって、家族とは自身に苦しみを与えた存在とでしか見ていなかった。母親は生まれてすぐに病死。父親からは妙な血を打ち込まれた。

ヒノエがどう思っていようが、肉親である姉達を除いてゲンジにとって家族なぞ、塵に等しかった。

 

「…んなもんの何がいいんだよ…」

ヒノエに聞こえない様に吐き捨てるとゲンジは今後の予定を考える。すぐさま依頼を受注してクエストに行くのも良いが,どうなのだろう。

 

「依頼で何か大型モンスターの奴あるか?」

 

「今の所はありませんよ。もし大型モンスターの依頼が届きましたらすぐにお知らせいたします」

 

「なんだ…じゃあ狩場の下見にでも行ってくるか」

 

「あらあら、今日はもうお休みになられてはいかがですか?もし眠れないようでしたら私が子守唄を」

 

「んぐ…」

完全に子供扱いされているゲンジは頭に怒りマークを浮かべる。昨日といい、今朝といい、ヒノエは自身を幾つだと思っているのだ。

 

「ガキ扱いするな!お前らからすれば子供だが、これでもちゃんとした21歳の大人なんだよ!」

 

「まぁ!」

皮肉ながらもゲンジは自身の歳を告白する。すると、ヒノエは完全に意外だったのか、驚きの声を上げる。

 

「竜人族にしてはお若いのですね」

 

「だから俺は竜人族じゃ…もういい」

ゲンジは髪を掻きむしると、話が通じないと思い、断ち切ると、荷物整理をし始める。だが、崖から落ちた際に殆どの荷物が消え失せており、いつも常備していた回復薬グレートや、ハチミツ、そして秘薬も消え失せていた。幸いにも、財産だけは残っていた。

 

「……崖から落ちた時に荷物が幾つか無くなってやがる…どうするか」

 

「あ!でしたら…」

ゲンジは荷物の減少に頭を悩ますと、ヒノエは何かを思いつき、ゲンジを連れて外に出る。

 

ーーーーーーーー

連れてこられたのはカムラの里の家が立ち並ぶ場所だった。その間にある幅の大きい道には、1人の顔を隠した若者が立っていた。若者の後ろには、多くの雑貨が並べられた車輪付きの台があり、その引き手には寒冷地域に生息する草食モンスター『ポポ』がいた。

 

「いらっしゃいませ。おや、珍しいですね。ヒノエ様が男性の方とご一緒とは」

 

「こんにちは。彼が道具を欲しがっていたので連れてきました。今は大丈夫ですか?」

 

「えぇ。どうぞごゆっくりと」

その青年は素顔を見せずとも、とても清らかな雰囲気を漂わせていた。

 

「アンタは…」

 

「申し遅れました。私は『カゲロウ』と申します。ここカムラの里にて雑貨屋を営んでおります。以後お見知り置きを。ハンター殿」

 

「お…おぅ。俺は『ゲンジ』だ。よろしくな…」

その青年はゆっくりと頭を下げながら自己紹介をしてくる。戸惑ったゲンジも慌てて自身の名を名乗る。自己紹介を終えていた事を確認したヒノエはゲンジにここがどういう場所なのか教えた。

 

「カゲロウさんは狩りに必要な道具を取り揃えているんですよ。なので、必要な物ができた際は心強いと思います」

 

「そうか……早速だが。あれとあれと………

 

ーーーーーーーーーー

 

その後、必要な物を買い揃えたゲンジはヒノエと別れて自宅へと戻ると、次々と準備する。

 

「っ……ハチミツは採取しねぇとな」

いつも持ち歩いていた回復薬グレートを作るにはハチミツが不可欠だが、流石のカゲロウも取り揃えていなかった為に、直に取りに行く事になる。

今日からいよいよ、新しい土地での暮らしが始まる。

 

 

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