薄明と双子の姉妹 (リメイク中)   作:きょうこつ

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元凶の再来

次の日、

 

「…?」

歯を磨いていると、玄関から物音が聞こえ、いつものように起こしに来たのかと思い、口の中に含んだ水を吐き出し、玄関へと向かった。だが、そこに立っていたのはミノトだけであった。

 

「ヒノエ姉さんは…?」

ミノトは首を横に振ってしまう。

 

「ゲンジに合わせる顔がないそうです。暗い顔を浮かべながら里の仕事に向かわれました。ヨモギちゃんの話によるとウサ団子も買わずにいるとのことです」

 

「そこまでかよ…」

いくらなんでも重く受け止めすぎている。ヒノエの援護は自身から申し出た事だ。それに怪我も自己責任である。ヒノエ自信があそこまて受けとめる必要は皆無である。

 

「…ッ。焦ったい。直接言ってくるか。ミノト姉さんも」

「勿論」

ゲンジは痺れを切らし、ヒノエに会う為にミノトと共に家を出る。

 

「ミノト姉さんは叱る事は出来ねぇのか?」

 

「私は…その…そこまでの器量は…」

 

「はぁ…」

ミノトの心細さにゲンジは溜息をつく。確かに姉を溺愛しているミノトからすれば叱る事は愚行に入るだろう。

 

「取り敢えずウサ団子買ってやりゃ元気が出るだろ……ん?」

 

そう言いながらゲンジとミノトは受付場に着く。すると、ヒノエは3人のハンターに話しかけられていた。

 

ーーーーーーーー

 

「ねぇねぇ。君この後暇?何なら俺らと飲まない?」

 

馴れ馴れしい口調で話しかける一人のロングウェーブの髪型をしたハンターは達者な言葉でヒノエの机に腕をのせながら見つめていた。

背は高く、細身で顔の彫りも深く、目も透き通っており、

その顔は正しく10人中10人の女性が振り向く程の美形であった。

 

俗に言うナンパである。世間にも受付嬢を口説こうとする者は後を絶たないが、これは全世界共通のギルドの法で『ハンターである立場を利用し、ギルド関係者への強引な干渉は禁ずる』と決められている。

 

それを知ってか知らないのか、ハンターの内の一人はヒノエに歩み寄る。

けれども彼女はそれを拒否する。

 

「いえ結構です…里の仕事がまだ残っていますので」

だが、その言葉にいつものようなハキハキとした様子は無かった。まるで中身の抜けた虚のように。

だが、その言葉はご最もであり、辺りにいる3人以外の数人のハンターも頷く。受付嬢は立場こそハンターより低いが、ハンターと依頼人の仲介人であるので、重要な役職である。

 

だが、断られた事が癇に障ったのか、男がますますヒートアップする。

 

「いいだろ?お茶くらい」

「!?」

そう言い強引にヒノエの手を掴む。その拍子に持っていたペンが手から離れて地面へと落ちた。

 

「離してください…」

ヒノエは男に言い放つが、男は引き下がらなかった。

 

「ちょっと時間をもらうだけだからさ。な?」

そう言い男は無理矢理 ヒノエを連れ出そうとした。

 

 

「おい。何やってるんだ?」

 

その時だ。即座にヒノエの腕を強引に掴んだ腕を握り潰すかの如く鷲掴みにする手が現れる。

 

「…!」

ヒノエに言い寄っていた男の目が変わる。そこには鋭い眼光を向けたゲンジが立っていた。

 

「今すぐ手を離せ。じゃねぇと腕の骨をへし折る」

そう言いゲンジは腕の握力を更に強める。ゲンジは腕は一般のハンターよりも細いが、それでも双剣を振るうために握力や上腕二頭筋の筋力は著しく発達していた。

そして、その言葉と同時に発せられた濃密な殺気が辺りに漂わされる。

 

その握力に驚いたのか、男はすぐさまヒノエから手を離す。

 

すると、ゲンジに続くようにミノトも現れる。

「姉様!」

 

ゲンジと共にきたミノトは強引に手を取られたヒノエに駆け寄ると、手を引き、男から引き離した。

 

「おいおい君。まだ話は終わって…お?」

 

ミノトに手を引かれながら離れるヒノエの肩を掴もうとすると、その男の手をゲンジは振り払う。

 

「触るな」

そう言い放つ。ヒノエは即座にミノトに連れられながらゲンジの背後に避難した。

 

「んん?」

 

すると、その男はゲンジを見ると、その素顔を認識したのか、顔を輝かせる。

 

「これはこれは!有名なハンター『薄明のゲンジ』殿ではないか。百竜夜行の件はご苦労だったね」

 

「あぁ?」

まるで目上であるかのように話しかけてくる男にゲンジは不快感を抱くと同時に額の筋を隆起させる。

 

「随分と馴れ馴れしいな」

 

「自己紹介が遅れた。僕の名前は『マルバ』そして、彼らは『デン』『レビ』」

その男の左右にいたハンター2人も多くの女性が振り返る程の美形であった。装備の強さも然り。マルバはジンオウS デンはレイアS レビはレウスS装備を着用していた。どれもこれも上位装備の中でもかなりの強さのあるモノだ。

 

「僕は君のファンでね。是非とも会ったらサインをもらいたかった」

そう言いマルバは装備の腕の部分を目の前に差し出した。

 

「ここに書いてはくれまいか?」

「断る」

サインの要求にゲンジは拒否する。

 

「俺はただ自分のためだけに生きてるだけだ。その程度の事でサインなんざ恥ずかしい」

 

「いやはや手厳しいな。では、僕のパーティへ入らないかな?」

 

「はぁ?」

 

「僕は主に3人で活動していてね。ちょうど4人目が欲しかったところさ。装備も美しいし何より顔も可憐だ。私の4人目のチームにピッタリ」

 

「くだらねぇ勧誘すんじゃねぇよ。誰がテメェのチームに入るか」

 

まさかのチームの勧誘。ゲンジはその傲慢さに腹を立てながらも、怒りを抑え込みながら吐き捨て、手短に済ませるべく、先程の事について追求した。

 

「それよりさっきは何のつもりだ?テメェもハンターならギルドへの同意なしの必要以上の干渉は禁じられてる事くらい分かってるだろ」

 

すると、注意を受けた事が気に食わないのか、マルバは目を細くさせ、ハッと笑う

 

「その女のことか。この美しい僕が2回も声を掛けてあげたというのに拒否してね。もういいさ。興味が失せた。謝ればいいんだろ?ごめんごめん」

 

まるで反省の色がない謝罪に辺りの者らは不快感を覚える。ミノトに至っては既に噴火寸前である。

だが、それで謝ったのならば、面倒になる前にここで終わらせるのが妥当であろう。

 

そのつもりでいた。だが、ゲンジは終わらせる事ができなかった。今放った言葉の中にある単語が混じっていたからだ。

 

『2回目』

ということは、一度は声を掛けたという事だ。それはつまり、百竜夜行が起こる前となる。

 

「1回目はいつした…?」

ゲンジの言葉を発する声が低くなった。だが、それに臆する事なくマルバは答えた。

 

「う〜ん。そうだなぁ…確か一月くらい前だったかなぁ?」

 

「…!!!」

 

1ヶ月前。それは、自身がこの里に来たのとほぼ同時期だ。そして、ゲンジは遂に確信した。

この男達こそ、里の者達からハンターの信用を奪い去った

 

_______元凶であると。

 

 

 

その瞬間 ゲンジの怒りが一瞬で頂点に達した。ようやく見つけた。この里の者からハンターへの信用を奪い去ったクズ野郎どもを…!!!

 

「テメェらか……里の食べ物食い散らかしてヒノエ姉さんとミノト姉さんに近づいた挙句の果てに逃げた下衆野郎は…!!」

 

全身に怒りを込め、手を握り締めたゲンジはゆっくりと近づく。

 

すると、自信らを下衆呼ばわりした事に腹を立てたレビが前に出た。

 

「おい貴様!俺達をいきなり下衆呼ばわりするとはどういうつもりだ!いくら有名なハンターであっとしても調子にのる…ゴハァ!?」

 

その瞬間 前に出たレビの顔面に向けてゲンジの鋭い拳が突き刺さった。

 

「うわぁぁ!!!痛い痛い痛い!!!」

顔面に拳を打ち込まれたレビはその場で顔を押さえながらのたうち回る。その顔はもはや美形とは言えなかった。殴られた衝撃で歯や鼻の骨が折れた上に鼻から血も吹き出した事でその顔は一瞬で醜悪に満ちた顔となった。

 

「く…くぅそ…!!俺の顔を!!」

 

「あ?随分と似合う顔になったじゃねぇか」

 

ゲンジはマルバに顔を向き直す。その表情は憤怒に満ちており、リオレウスの如く鋭い目がマルバに向けられていた。

 

「とっととこの里から出てけ。テメェらの所為でこの里がどれだけ苦しんだと思ってる?」

 

ゲンジの怒りの込められた目が向けられる。

 

「ちょ!?いきなり何をするんだい?僕達が君に何かしたのか?」

まるで身に覚えがないかのような素振りは更にゲンジを憤慨させる。

 

「テメェ ヒノエ姉さんとミノト姉さんに言い寄った後 協力するといいながら里中で横暴を働いたらしいじゃねぇか」

 

その話を聞いたマルバは思い出したかのように大笑いし始める。

 

「ハハハ!里に協力?嘘に決まっているじゃないか。見え透いた嘘を見破れない里も里だろ?ただでさえ上位3人で大量のモンスターの群れを撃退する事自体 おかしな話だ!」

 

次々と溢れ出る傲慢な性格。その態度は次々とゲンジの怒りを上昇させていった。

 

「じゃあいい。力ずくでも追い出してやるよ」

最初はすぐさま脅して里を出ていけばそれ以上の危害を加える事は考えていなかった。だが、もうゲンジは限界であった。

拳を鳴らし、闘争本能を沸き立たせる。

 

「は…はは…!!たとえG級ハンターでも上位3人に敵うと思ってるのかよ…!?」

 

一方で、ゲンジの言葉によってプライドがズタズタとなったマルバは目を鋭くさせると同時に優雅な口調が性格と比例するかの如く横暴なものへと変化した。

 

「楽勝だよ。テメェらの相手なんざ孤島のアプトノス程度だと思えば十分だ」  

 

拳の骨を鳴らし、ゲンジは3人に向かっていこうとした。

すると、ヒノエが即座にゲンジに止まるように叫ぶ。

 

「待ってくださいゲンジ!ハンター同士の喧嘩はご法度ですよ!」

 

「…」

その言葉に我に帰ったゲンジも興奮していたのか、気をおさめる。すると、辺りに撒き散らされていた濃密な殺気が消える。

 

 

「悪いな。気が荒くなっていた」

 

だが、その光景を快く思わずイラついたマルバはとてつも無いことを言い出した。

 

「おいおい!邪魔すんじゃねぇよ受付の小娘が!対した力もねぇ癖によぉ!!」

「…!」

 

その言葉にヒノエの目が変わる。

 

「テメェ…今のはどういう意味だ?」

ゲンジの怒りの目がマルバに向けられる。

だが、それに臆する事なくマルバは立て続けに言い放つ。

 

「ギルドなんざハンターがいなきゃ成り立たない上にモンスターに立ち向かう勇気もないクソ共の集まりじゃねぇか!!!なんならそこで偉そうに団子食ってる女もそのクソの1人なんだよ。クソならせめて役に立てる様にハンターに従うのが普通だろぉ!?」

 

「…」

マルバの醜悪に満ちた表情がヒノエに向けられる。彼女自身も力不足は思い知っていた。己の力不足故にゲンジに大怪我をさせてしまった事を思い出してしまう。

 

「ハッハッハッ!図星かよ!?役に立たねぇ上に大飯ぐらいなら完全に穀潰しだなぁ!!」

 

『役に立たない』

その言葉にヒノエはゲンジが自身を庇い怪我を更に悪化させてしまった事を鮮明に思い出してしまった。

 

「あ…ああ…!!」

それと共に今まで押さえていた自己嫌悪の念が溢れ出てしまい、あまりのショック故にヒノエは顔を手で覆い、膝から崩れ落ちてしまった。

 

「姉様!」

ミノトは咄嗟に支えるも、その手の間から涙が零れ落ちた。ミノトはあの日の事を思い出し、怒りが頂点に達すると、鋭い目つきをマルバ達に向ける。

 

「貴様…!!姉様に向かってよくも…!!」

 

「泣き崩れてるとなると事実じゃねぇか。事実を言って何が悪いんだ?」

 

「何が悪い…だと…?元はと言えば貴様らが…!!」

もう我慢できない。ミノトは歯を食いしばりながら身を乗り出すと拳を放つべくマルバに向かおうとする。

 

すると

 

その動きを止めるかのようにミノトの肩にゲンジの手が置かれた。

 

「ゲンジ…?」

 

振り向くと、ゲンジは哀しみに満ちた表情を浮かべていた。

 

「…ヒノエ姉さんを頼む。今日はもう休ませた方がいい」

 

ゲンジの言葉にミノトは後ろを振り返る。今もなお 顔を手で覆いながら涙を流すヒノエ。度重なる自身を許す事ができない感情と罵詈雑言によって、もう精神が限界なのだろう。

 

「…分かりました。あまり手荒な真似はご自重くださいね」

ミノトは怒りを抑え、頷くと、涙を流すヒノエの肩を支えながら立ち上がらせ、この場を去っていった。

 

「おいおい。どこ行こうって……はぁ?なにしたんだ?」

 

後を追いかけようとしたマルバの髪をゲンジは掴んだ。

掴んだまま、離さなかった。

 

「おい。離せよ?チビが」

ゲンジはゆっくりと俯かせていた顔をあげる。

その目は

 

 

______恐ろしい程 血走っていた。

 

 




『マルバ』 『デン』 『レビ』

里のハンターへの信用を失墜させた張本人。ゲンジが運ばれる前に里に訪れたハンターであり、百竜夜行に協力すると頷き、里の食い物を漁ったり、ヒノエやミノト、ロンディーネを口説こうと言い寄ったりと横暴を働く。
里の皆は信じ続けていたが、百竜夜行が1ヶ月後に起こると決まった途端に宿の金も払わず、明け方に里を出て行った。

身に纏うのはジンオウガS レイアS レウスS といった上位装備だが、新品同様の光沢が目立つと同時に若干ながら装備に寸法が合っていないかのような隙間が空いている。
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