薄明と双子の姉妹 (リメイク中)   作:きょうこつ

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深い深い夢という名の現実から

「…!」

本物のエスラとシャーラだった。目の色も髪も身体も正真正銘の彼女達だった。

 

「どうしたんだい?私達の身体なんか見つめて……はっは〜まさかお姉ちゃんの身体に欲情しちゃったのかい?」

 

「な訳あるか」

 

「ゲンジがしたいというなら仕方ないな〜♪さぁ!お姉ちゃんが好きなだけ抱いてあげ…ふぎ!?」

「姉さんやめて」

エスラの頭にシャーラの拳骨が降ろされる。エスラのこのブラコン全開の様子にシャーラの冷静さ。間違いなく彼女達だった。

 

だが、今はそれどころではなかった。頭に雷が落ちたかのようにショックを受けていた。

 

「(どうなってんだ…まさか…今までのは全部夢だったのか!?)」

ゲンジはヒノエとミノト。そして、里の皆の姿を思い浮かべる。もし、これが現実というならば、自身を救ってくれた双子の姉妹も穢れた自身の姿を受け入れてくれた『カムラの里』も幻想という事になる。

 

「(ま…待てよ…。もしかしたら存在するかもしれねぇ。聞いてみればわかる…!!)」

ゲンジは即座に地理学に精通しているエスラに尋ねる。もし、存在するならばすぐに現地へと赴けば良いだけだ。

 

「エスラ姉さん!」

 

「ん?」

 

「カムラの里って知ってるか?」

 

「カムラの里…?うぅん……

 

エスラは顎に手を当てて考え込んだ。

 

「_______聞いた事ないな」

 

「…え」

 

返ってきた答えに身体が硬直してしまう。いや、知らない訳ない。そんな筈がない。

 

「い…いや…知ってるだろ!?あの…ウサ団子が名物の!」

 

「ウサ団子?なにを言っているんだい?お姉ちゃんが地理について精通していることはゲンジがよく知っているだろ」

 

「…!!」

その言葉に何も返すことができなかった。身体中から力が抜けていく。

 

「そうか…」

 

「それよりゲンジ!シャーラ!今度のリオレイア希少種は過去一のビックサイズらしいぞ!」

 

「本当…!?」

シャーラはエスラの話に目を輝かせていた。いつもの日常の風景だ。本来、ゲンジはこれを望んでいた。だが、何故か気分は昂ることは無かった。

 

「(嘘…だろ…?本当に全部夢だったのか…!?)」

夢だとしても頭の中には鮮明に残っていた。百竜夜行の撃退に加えて、ヒノエやミノトの顔、そして自身を受け入れてくれたカムラの民。あれは全て自身が思い描いた幻想だった。

 

「……」

「どうした?ゲンジ。元気がないぞ?」

 

「…いや…なんでもない…」

 

「それに、早く見つかるといいな。ゲンジを快く受け入れてくれる村を。もし見つかればそこが私達の第二の故郷だ」

 

その故郷こそがカムラの里なんだ。醜い己を受け入れてくれた最高の居場所なんだ。

 

「さぁ!着いたぞ!」

船が着くと、エスラ達は荷物を整え始める。自身も荷物を整理するが、全くその気にはなれなかった。カムラの里が存在しないという事が自身の気力を掻き消してしまったのだ。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

外へ着くとエスラは誰よりも早く先へと進んだ。

 

「こっちだ。この山を進めば近くに村がある!そこに依頼が出されている筈だ!」

 

そう言いエスラはウキウキとしながら我先へと進んでいく。

 

「どうしたのゲン?さっきから元気ないよ」

 

「…あ…いや…別に…」

シャーラからも心配の声を貰うが、ゲンジは異常がないように見せるために返した。

衝撃が大きすぎて立ち直る事ができなかった。

 

◇◇◇◇◇◇

 

「ほほぅ。遠土遥々よくぞ来てくれましたな。儂がこの村で村長を務めておる。ふむふむ。やはり流石は金銀姉弟…間近で見るとオーラが違うのぅ」

 

村へと到着すると、背が低い竜人族の村長らしき人物が歓迎してくれる。だが、歓迎など、目にも耳にも入らなかった。

 

「んん?そちらの方は少し気分がお悪いようですな」

「え?ゲンジ、大丈夫かい?」

 

エスラに安否を確認されるも、ゲンジは答える気にもなれない。ずっと、ただ青い空を見上げていた。

 

「申し訳ない。少々人見知りなもので。では、早速クエストを受けさせていただこう」

「はい。村の受付に依頼を出してあります故によろしくお願いします」

その後、村長直々に依頼を任され、リオレイア希少種が住むと言われている竜の巣がある山へと向かった。

 

「さぁ2人とも!竜の巣はもう目の前も同然だ!張り切って行こうじゃないか!」

 

エスラが張り切る中、シャーラは今朝からずっと様子がおかしいと見ていたのか、ゲンジの肩を何度も揺する。

 

「ねぇ…ゲン…大丈夫?」

だが、ゲンジは反応する気にもなれず、ずっと俯いていた。

 

すると突然、シャーラの手が自身の両肩を掴み、顔と顔を向かい合わせた。

 

 

「ゲン!さっきから様子がおかしいよ!?どうしたの!?」

 

「……」

問い詰められると、ゲンジは更に目を細くし、顔を暗くさせた。

 

「そんなに夢に出た場所がない事が悲しいの!?」

 

シャーラの言葉にゲンジは頷く。求めていた場所が存在しないただの夢だったら悲しい以外にある訳ない。

 

 

「そうだ…そこは俺がずっと探し求めていた居場所なんだ…!!!」

恋しい。里が恋しい。早く里へ帰りたい。そして、ヒノエとミノトに会いたい。あの2人にはまだ返さなければならない恩が山程ある。

 

いや…なぜ、里よりもあの2人の顔が浮かんでくるんだ?なぜ、あの2人の顔、声が頭から離れないんだ?

 

『大好きですよゲンジ』

 

『貴方が罪を被ってしまったら…私は…!!』

2人の声が次々と聞こえてくる。2人のその優しい声や悲しい声が頭から離れず、聞こえるたびに胸が鎖で締め付けられるかのように苦しくなる。

 

いつのまにか頬を拭えば涙が溢れ出ていた。それは拭えば拭う程流れ出る量は増え、溢れ出てきた。

 

______帰りたい。あの2人の元へ。

 

いつのまにかゲンジはヒノエとミノトの顔を鮮明に思い浮かべていた。

 

カムラの里が存在しない?ならば、こんな世界…自身にとってはどうでもよかった。いや、どうでもよいというより、元々、こんな世界自体が存在しない。

 

そう。これは夢だ。

 

 

ゲンジは頭を近くの岩へと突きつけた。

 

「ゲン!?なにやってるの!」

咄嗟にシャーラが止めようとするも、ゲンジは何度も岩へと頭を打ちつけた。打ちつけるたびに壮絶な痛みが頭蓋骨に響き渡り、岩の所々に突き出た先端部分が額の皮膚を擦り、次々と血が流れ出る。

 

 

「(何で痛いんだよ…!痛覚があんのか!?ふざけんなッ!!!)」

 

ゲンジは、血に濡れた顔を再び岩へと叩きつけた。

 

「覚めろ…!!夢なら覚めろ!!今すぐ覚めろ!!こんな世界望んでない!姉さん達ならユクモ村にいる!もう少しで会えるんだ!!少し我慢すればいいだけの話だ…!!カムラの里が…ヒノエ姉さんとミノト姉さんがいない世界には生きてる意味がねぇ!!!」

 

だが、何度も岩へと顔を叩きつけたとしても目が覚める事は無かった。

 

「……なぜ覚めない…」

顔を流れ出た血が覆い滴り落ちながら地面を染める。

 

そんな中、ある考えが頭を過ぎった。背中に背負うは双剣。そして、顕となっている頭と胴体の装備の間に見える首。

 

「そうか…首を切れば……目が覚めるかもな…」

ゲンジはまるで自然な動きで双剣を取り出すと、その刃を自身の喉へと向けた。もし、これが現実ならば自身の人生はそれまでだ。

 

「お…おいゲンジ!!何をしている!?」

 

「やめて!!」

 

姉達の声が聞こえて来る。だが、もう限界だった。現実も夢も区別がつかない上にヒノエとミノトが存在しないこの世界でゲンジは死を選んだ。

 

「何故だろうな…嫌な気持ちがしねぇ…」

 

本来、自身の首元に刃を突き刺す事は相当な精神が必要とされている。死への恐怖。それが身体を蝕み震え上がる筈なのに、何故か震えていない上に恐怖さえも感じなかった。

ゲンジの首に重ね合わされたアルコバレノが突き刺さされた。

 

「がぁ…!!」

その瞬間 壮絶な痛みが自身を襲う。突き刺された双剣は深く内部に刺し込まれ、肉を貫き、神経を刺激して大量の血液を噴出させた。

 

「ゲンジ!おい!何をやってるんだ!?」

 

エスラが駆け寄る姿を目に映らせながら、ゆっくりと地面に倒れた。

 

「ゲンジ…!一体なぜ…!!」

 

「嫌だよ…何でここで死んじゃうの…!?」

 

目の前に映るのは涙を流しながら自身の身体を揺するエスラとシャーラだった。

 

「(そんな顔で見るなよ…悪いが俺にとっては辛いんだ。あの2人がいない世界で生きていくのが…)」

 

2人の泣き叫ぶ姿が次々とぼやけ始める。そして、ゆっくりとその視界が閉じられ、自身の意識は深く暗い海の中へと堕ちていった。

 

___そうか…俺は首を斬ってまで世界を否定する程……2人の事が………

 

 

 

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