薄明と双子の姉妹 (リメイク中)   作:きょうこつ

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広まる噂

ヒノエとミノトの愛の接吻を受けた日から早くも数日が経ってしまった。あの日以来、ゲンジはヒノエとミノトと共に(強引に)寝食を共にするようになり、毎晩毎晩とヒノエとミノトに擦り寄られた。

それは偶然見かけたフカシギによって噂となり、瞬く間に里に広まっていった。里の皆の反応はフゲンを含めて___

 

『ようやく2人に男ができたか!』

 

というヒノエとミノトを祝う声が続出した。2人を幼い頃から知るフゲンによると、これまで2人は男付き合いが全く無かったらしい。何度も告白は受けたらしいが、2人は頷く事は無かったらしい。

このままずっと独身でいてしまうのかと心配していた故に安心したらしい。

 

1人の男に2人の女性が寄り添うのはどうなのだろうかという問いも、里の皆はフゲンを含め___

 

『まぁあんな事があったら当然そうなるだろうし、2人がいいならそれで良くね?』

__という何とも面白味のない反応であった。

 

因みに、未だにゲンジの謹慎は解かれることはなく、あと3日はこのままらしい。

その合間に心配していたのか、ヒノエやミノトに加えてイオリやヨモギも何度か来てくれたようだ。その他にもコミツやセイハクといった里の面々も。

だが、来る人来る人 全員話題が恋バナであり、ゲンジは返答に困る日々が続いていた。

 

ゲンジは里の現状が分からないために毎日来るヒノエやミノトに里の事情を聞いていた。

 

数日前、ヒノエに罵詈雑言を浴びせた結果、ゲンジによって完膚なきまでに叩き潰されたハンター『マルバ』『デン』『レビ』の3人は目が覚め、取り調べを受けた後に逃げるように里から出て行ったらしい。その逃げる様子はミノトからすれば正に無様と言える他ないらしく、とても上位ハンターには見えなかった様だ。

そして、目覚めた直後の取り調べにて発覚した事があり、それはなんとあの3人は上位ハンターではなく、ただの下位ハンターである事がギルドカードによって明かされた。

ならば、なぜ彼らが上位装備を纏っているのか。それは、3人のうち、マルバの父親が上位ハンターであるらしく、父親の目を盗み、3人で防具を着用して優越感に浸っていたらしい。

 

「道理で泥一つ付着してねぇ綺麗な装備なわけだ。しかもあの時、何だか体格に似合わずにぶかぶかに見えてたから怪しいと思っていたがやっぱりそれか。ムカつくを通り越してもはや呆れるよ」

 

「全くです!大体あの強さで姉様を侮辱するなんて烏滸がましいにも程があります…!」

ミノト自信作である朝食を食べていると、それを思い出したのか、ミノトは頬を膨らまし愚痴を漏らす。

 

 

その後、食事を終えると、食器を水桶の中へと入れ、食器にこびり付いてしまったご飯粒の欠片をふやけさせる。

 

食器を取り出して片付けると、ヒノエはミノトと共に受付の仕事へと向かうために、草履を履いた。

 

「では、またお昼に来ますよ」

 

「私も。余裕があればご一緒します」

「あぁ…」

ゲンジに見送られながら2人は手を振り、玄関を抜けていった。

 

 

___が、突然2人はその脚を止めた。

 

「「忘れてました」」

 

何かを思い出した2人は同時に息を合わせて振り向くと、見送るゲンジに向かう。

 

すると

 

「ふぎ!?」

2人はゲンジに近づき小さな身体を抱き締めた。ゲンジよりも若干ながら肩幅が広い2人はアッサリと小さなゲンジの身体を包み込んだ。

 

「今日の分のエネルギーをいただかなければいけませんね〜♪」

 

「んぐ…」

そう言い2人はゲンジの頬へと両サイドから自身の頬を擦り寄せてくる。

接吻を受けた日から2人は受付の仕事に行く前にこのようにして擦り寄ってくるようになった。彼女達曰く物凄くやる気が出るらしい。

 

「ふふ♪」

「…」

ヒノエは満面の笑みを。ミノトは無表情ながらも頬を染めながらゲンジの頬へ擦り寄った。

その後、数分間に渡り、頬を擦り寄せた2人はいきいきとしながら受付の仕事へと向かって行った。

 

「(早く謹慎 解けてくれねぇかな…)」

 

そう思いながらゲンジは2人を見送った後に囲炉裏から少し離れたスペースに立つと誰もいなくなった家の中を見つめる。

 

手を何度も握る。血の流れも止まっている。痛みも疲労も感じられない。

 

「よし…」

 

ゲンジは頬を叩くと、トレーニングを再び行う事に決める。

 

まずは柔軟トレーニングからだ。双剣という身体全体を扱う武器をフルに活用するには複雑な動きに対応するための柔軟が不可欠である。

 

「すぅ…」

床に座り、息をゆっくりと吐きながら、脚を開く。すると、その脚がなんとほぼ180度で開脚したのだ。

更に、その体制からゆっくりと状態を前に下すと、まさかの胸板全てが床へとついた。

 

さらに、足を左右に広げると、ゆっくりと背中を後ろへと倒していく。

 

 

そして、立ち上がるとゲンジは今度は両手を地面につきたて、そのまま下半身を持ち上げる様に上にあげた。

 

逆立ちだ。これも訓練生がよくやる筋トレだが、ゲンジの筋トレは違った。

 

「ふっ…!」

片手を離すともう片方の手だけで全身を支えていた。全体重を片手の小さな重心だけで支えており、あろうことか、その手を何度も曲げながら上下運動をしていた。

 

本来、肉体労働であるハンターでもここまで行う者はいない。

多くのハンターは男女ともに体格の良い者が殆どであり、その体型と運動神経を維持するままでよいのだが、体格に恵まれなかったゲンジはそれをカバーするために己の身体を一般のハンター以上に鍛え上げてきた。

それでも、体格は育つ素振りを見せなかった。だが、鍛え上げられた筋肉は細身の身体に敷き詰められていたのだ。

 

「…!」

ゲンジは片手だけで状態を起こすと、今度は脚を振り回す。すると、空気が切られる音が響く。

 

ヒュン ヒュン ヒュン

次々と聞こえる空気を切る音。

武器だけでなく、己の身体を鍛え上げた結果。手に持つ武器だけでなく、身体も武器と化していき、細身ながらも放たれる蹴りは鞭となり、何十キロもある小型モンスターを吹き飛ばし絶命させる程の威力となった。

 

「ふぅ…」

 

◇◇◇◇◇◇

 

「〜♪」

可愛らしく鼻歌を歌いながらヒノエはクエストの受付をしていた。次々とくるハンター達に手慣れた手つきで依頼を紹介していく。列ができるほどではないが、それでも絶え間なくハンター達が依頼を受けに来た。

 

そんな中、ヒノエの目の前に2人の女性ハンターが現れた。

 

「受付嬢殿。聞きたいことがあるのだが、よろしいかな?」

少し低めの声。だが、他者を威圧するというより、活気立てる明るい雰囲気を感じさせる。

 

「はい。少々お待ちを」

ヒノエは筆の手を止めて、声がする方を見上げる。

 

「お待たせしまし……まぁ…!」

思わず驚いてしまう。

そこに立っていたのは金色に輝く装備を纏ったハンターだった。装備の形はリオレイアを彷彿させるが、原種はやや濃い緑に対して、この装備は金色に輝いていた。まるで夜空に輝く黄金の月のように。

 

「お…おい!あれって『金銀姉弟』じゃねぇか!?」

 

「マジかよ…!?初めて見た!」

辺りからそのハンターの名声を証明するかの如く、次々と声が立てられる。

 

「(『金銀姉弟』…?どこかで聞いたような……)」

その聞き覚えがあるかのような単語にヒノエは首を傾げるも、今は仕事中故に意識を戻す。

 

「希少種の依頼はあるだろうか」

「ありません」

突然に希少種依頼。確かにこの地域では特殊個体がよく出現するが、前にゲンジが討伐したヌシ以来、特殊個体のモンスターの出現報告はない。

 

 

すると金色の彼女の背の後ろからヒョコッと青色の髪をした小柄な女性ハンターが顔を出した。

 

「姉さん目的見失ってる」

そう言い金色の彼女を押しのけると、自身の前に立つ。

 

「まぁ…ゲンジにそっくり…」

不意にそう零してしまう。目の前にいる彼女の装備は先程の女性に対して、銀色に輝いていた。フォルムはレウス装備が基盤となっているが、レウス装備よりも放たれる威圧感が凄まじい。

その姿は自身が好意を寄せている人物であるゲンジを彷彿させる。髪の色も目の色もだ。ゲンジよりは髪は短くとも、同じ色の髪に同じ色の目。さらに、顔の作りも目以外は似通っていた。

 

そんな中、ふと自身が漏らした言葉を聞いたその女性の動きが止まった。

 

「え…?今…ゲンジって言った…?」

「はい」

首を縦に頷くと。その女性は突然と目の色を変え、自身に迫ってきた。

 

「ここにゲンがいるって聞いて来た!!今どこにいるか知ってる!?」

普通の人ならばこの剣幕で驚きのあまり何も喋る事ができなくなるだろう。けれども、ヒノエは長年の経験故に銀色の彼女の問いに普通に頷く。

 

「はい。もしかしてお二人はお知り合いなのですか?」

ヒノエは2人が何者なのか尋ねた。すると、青い髪の女性は頷き答えた。

 

「知り合いもなにも…私達は…ゲンの家族。ゲンは___

 

________私達の大切な弟…!!!」

 

 

 

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