薄明と双子の姉妹 (リメイク中)   作:きょうこつ

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家族との再会

「はぁ…暇だ…」

謹慎中のゲンジは家の中で寝転がっていた。過酷な筋トレもアッサリと5セットを終えていた。汗が大量に流れ、それによってベタついた肌を洗い流す為に自宅にある風呂に浸かり、その後サッパリすると雑巾で筋トレした箇所の床を拭き、その後はずっと天井を見上げていた。

 

最初は謹慎というのは家にいるだけなので楽だろうと思ってはいたが、実際に体験してみれば案外辛いものである。

 

「はぁ…」

またため息をついてしまう。

無限の退屈だった。皆は忙しい。だから昼間に会いに来る者はヒノエとミノト以外は誰一人としていない。

すると

 

ガタン

玄関から何やら物音が聞こえた。

 

「…ん?なんだ?」

横にしていた状態を起き上がらせ、玄関へと目を向けた。すると、昼休みになったのか、ヒノエが入ってくる。

 

「なんだよヒノエ姉さん。もう昼なの……か…?」

その瞬間 ゲンジの思考が停止してしまう。

 

「……え?」

入ってきたのはヒノエだけではない。彼女に連れられて2つの人影が入ってきた。1人は女性ながらも高身長で長く伸びた髪を後ろにまとめており、ゴールドルナ装備を纏っている。

2人目は自身と同じ背丈で青い髪を切り揃えたボブカット。そして身に纏うのは自身と同じシルバーソル装備だった。

 

間違いない。幾度も会いたいと願っていた自身のたった2人の肉親。

 

『エスラ』と『シャーラ』だった。

 

「ね…姉さ__」

「ゲンジィィ〜!!!!!!!」

 

「へ!?」

突如として涙を流しながらエスラが自身に目掛けて飛び込んできた。

 

「わぁ!?」

すると、エスラが身体に抱きつき、次々と涙と鼻水が流れ出る顔に押しつけてきた。

 

「うわぁぁ!!よがっだぁぁ!生ぎでだぁぁ!!」

 

「ぎゃぁぁぁぁ!!やめろ!!鼻水!鼻水が口に入ってき…ヴォエアェェェエ!!」

 

◇◇◇◇◇◇

 

それからエスラを落ち着かせたゲンジは玄関付近にある段差に腰を掛けていた。

 

「驚きました。まさか貴方達がゲンジが話していたご家族の方だったんですね」

 

「あぁ。私はエスラ。こっちはシャーラだ。よろしくねヒノエくん…いや、歳上だからヒノエさんと呼ぶべきかな」

 

「いえいえ。気軽にヒノエとお呼びください」

エスラの自己紹介にヒノエは生き生きと答える。彼(ゲンジ)とは対照的にエスラは自身と同じくお喋りな性格であり、ゲンジが自身を彼女と重ねていた理由が何となくだが理解できた。

 

その一方で、横にいるシャーラと呼ばれた彼女も見るとミノトに似ていた。沈黙した雰囲気を漂わせており、ミノトと同じく無口であった。

現在彼女は隣に座るゲンジに団子を食べさせていた。

 

「はい。あーん」

「あ…あむ…」

無表情に差し出された団子をゲンジは嫌がる素振りを見せながらも従い、口を開ける。

その光景は正に可憐の一言に尽きる。エスラが鼻血を出そうとしているのは言うまでもないだろう。

 

「そういえばゲンジ。装備はどうしたんだ?」

 

「え?いや、武器を預かられてるから、今は着る必要ねぇと思って」

 

「そうか。いや…ちょっとまて…」

エスラは思考を整理する。自宅とはどういう意味なのか。それになぜ先程、ヒノエを姉さんと呼んでいたのか。

 

「全部話してもらおうか…?」

エスラの首がブリキのように小刻みに振り向くと同時に肩に手がおかれると、抉り込むかのように突き立てられた。

 

「分かったから…団子食った後にやめて…」

 

その後、ゲンジは全てを洗いざらい告白した。救ってくれたヒノエの為に百竜夜行の根絶を約束して、その合間の住まいとして水車小屋を借りている事や、ヒノエがあまりにもエスラと雰囲気が似ていた為に姉と思うようになってしまった事。そして、その妹であるミノトもシャーラに似ており、上に同じく姉として見ている事を。

 

「成る程…確かにヒノエ殿は私に似ているな…そうなると双子のミノト殿もそうなのか?」

そう言いエスラは自慢の観察眼を開眼させ、ヒノエの………胸を見ていた。

 

「…ふむ…私より若干ながら小さいな。着物に押さえ込まれているから形から推測するとシャーラと同じくらいだろうか?」

 

「堂々と観察してんじゃねぇよ。雰囲気が似てるって言ってんだろ変態姉貴」

「姉さん最低」

ジロジロと舐め回すように見るエスラをゲンジとシャーラは睨む。

一方で、ヒノエは嫌がるどころか、手を口に当てながら笑っていた。

 

「おっと失敬失敬」

すぐさまエスラは目を離すとヒノエに向けて頭を下げた。

 

「ゲンジが世話になったようだね。本当に感謝する。礼を言わせてくれ」

「ありがとう。私達の家族を助けてくれて」

 

それに続いてシャーラも頭を下げる。彼女達にとって、ヒノエは家族を助けてくれた命の恩人である。

それに対してヒノエは手を横に振る。

 

「いえいえ。むしろ私達が助けられたくらいです。ゲンジがいなかったら…この里はお終いでした」

そう言いヒノエはあの日、ゲンジが百竜夜行を退けると共に自身らを逃し単身でマガイマガドを討伐した日を思い出した。彼がもし、ここにいなければ、里は終わっていただろう。

50年前は里に被害を出してしまったが、今回はゲンジがいたお陰で里は何の被害も及ぶ事なく、それに加えて撃退する事で精一杯だったマガイマガドを討伐できたのでヒノエ達の方も感謝しかなかった。

 

「本当に彼は私達の英雄です。百竜夜行で見たあの強さは正に無双の狩人でした」

 

「ほぅ。詳しく聞かせて欲しいものだな」

 

「勿論です!私もあなた方と是非一度話してみたいと思っておりました!」

エスラと話が合ったヒノエはその後の予定を約束すると、受付の仕事へと戻るために立ち上がる。

 

すると、ヒノエの目がエスラから離されたゲンジへと向けられた。

 

「さてゲンジ」

「え…?」

向けられたその目にゲンジの背筋が凍りついた。それもその筈。ヒノエの目は朝の食事の後と同じ目をしていたからだ。

 

そして、ゲンジの嫌な予感が的中した。

 

「この後の分をいただきます!」

「うわ!?」

ヒノエの手がゲンジの背中に回され、翔蟲の如く抱き寄せられた。

 

「「なぁ!?」」

突然の出来事にエスラとシャーラも驚きの声をあげる。

ゲンジを抱き寄せたヒノエは満面の笑みを浮かべながらゲンジの頬に何度も自身の頬をぐりぐりと擦り寄せた。

 

「おい!?今朝で今日分って言ってたじゃねぇか!」

 

「気が変わりました。やっぱり2回に分けさせてもらいます!」

そう言いヒノエは何度も何度も頬を擦り寄せる。その様子を見ていたエスラとシャーラは驚きのあまり口をガァとさせたまま固まっていた。

 

 

それから数分後

 

「チャージ完了です♪」

頬ずりを終え、満足したヒノエはキラキラと笑顔を輝かせながらゲンジから離れた。

 

「うぅ…」

何度も何度も頬ズリをされた事でゲンジは目を回していた。けれども、ようやく解放され、安心感を得る。

 

だが、ヒノエはこれだけでは止まらなかった。

 

「ふふ♪」

「え?」

ヒノエはゲンジを再び抱き寄せると 頬に口付けをした。

 

「「!?」」

頬ズリに続き今度は口付けの場面を目の当たりにしてしまったエスラとシャーラは唖然としてしまう。

その一方で ゲンジの頬に唇を押し付けたヒノエはゆっくりと離れる。

 

「ミノトには内緒ですよ?」

それだけ言い伝えると、軽快なステップを踏み、鼻歌を歌いながら受付の仕事へと戻っていった。

 

「ったく…なんでこんな時に…」

ゲンジは今もなおヒノエの暖かい唇の感触が残る箇所に手を当てる。

 

ガシッ

 

「…え?」

 

ゲンジの肩が両サイドからそれぞれ両手で掴まれる。振り向くと目から光を失ったエスラとシャーラが迫ってきていた。

 

「ゲン……詳しく話を…」

 

「聞かせてもらおうか…?」

 

その圧にゲンジはガタガタと震えながら頷いた。

「…はい…」

 

その後、ゲンジはヒノエに頬ずりされた理由を話す。だが、それだけでもエスラ達から問い詰められ、結局、自身が2人に唇を奪われた事と寝食を共にしている事も話した。

 

「な……キキキ…キスだとぉ!?」

それを知ったエスラはショックのあまり歯を食いしばらながら血の涙を流し床に拳を次々と打ちつけた。

 

「お姉ちゃんというものがありながらぁぁ…!!」

 

それと共にシャーラはゲンジをジーと何の感情のない目で見つめていた。

「私が心配してた時にそんな呑気だったなんて…」

 

「わ…悪かったって!!俺だって…その…姉さん達に会いたかったさ…!」

 

「ふぅん…?」

 

「あの時…あの嵐の後で里で目が覚めた時も姉さん達の事が心配だったんだよ。俺と同じように怪我してないか…ちゃんと避難できたのか…」

 

そう言いゲンジは目線を逸らしながらも、満更ではないかのように頬を赤く染めた。彼自身もギクシャクと収集の付かない雰囲気の中であっても、姉と会えた嬉しさは確かにあった。

 

「手紙が来たときは本当に嬉しかった。だから…その…別に呑気だった訳じゃねぇって…」

ゲンジはその後の言葉が上手く思い浮かばず、口をゴミゴミとさせると同時に目を泳がせていた。

 

「……ふふ」

その様子をジロリと見ていたシャーラは真顔から一転し、笑みを溢すと一度目を閉じ、美しい青色の瞳が見えるまで目を開けて優しく微笑むとゲンジを抱き締めた。

 

「それくらい知ってるよ」

 

「シャーラ姉さん…」

ゲンジはシャーラが自身を普通の家族として見ていてくれている事に安心した。だが、その安堵も束の間だった。

 

「でも………」

「…え?」

 

抱き締める指が背中に食い込む。

 

「キスしたのは許せない…!!!」

 

 




○○コソコソ噂話

ゲンジは一時期、身長が欲しいがためにカルシウムが豊富なミルクを毎日飲んでいるらしい。結局は全て骨に吸収されて骨密度が増すだけであった。
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