薄明と双子の姉妹 (リメイク中)   作:きょうこつ

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第一戦 料理対決

「食材はミノトに頼んで仕入れてもらいました。とれでもお好きな食材を選んでくださいね」

 

「ほぅ?気前が良いな。だが、私は手を抜かんぞ」

「勿論」

エスラの真剣な眼差しにヒノエも笑みを浮かべながら返すと、2人は次々と食材を選んだ。

 

それぞれの台所にて食材が並べられると、2人の料理対決が幕を開けた。

 

 

ーーーーーーーー

エスラの場合

 

エスラは大量に集めた食材を前に腕組みをしながら悩んでいた。

 

「うぅむ…(料理の経験はあまりないな…。勢いに任せて多めに取ってしまったが)」

 

元々、エスラは料理が苦手であった。それは珍しくないだろう。狩猟生活が日常となっているハンターにとって、料理などする暇はない。時間は有限であるために皆は『肉を焼く』『魚を焼く』という単純な工程作業によって成り立つ極上の飯で腹を満たす。

故にハンターで料理が得意な者など珍しい部類だ。

 

「(ティカル君の料理本を思い出すしかないな…!)」

 

エスラは頭を振り絞り、長きに渡る放浪の旅の中でゲンジがティカルの料理本で一番美味そうに食べていた料理を思い出し、それを作る事に決める。もっとも、作っていたのはシャーラかゲンジであったが。

 

ーーーーーーーーー

ヒノエの場合

 

ヒノエはミノトが料理をする場面を何度も見てきた為にどんな調味料を入れればどんな味になるのかを理解していた。

 

「(ふふ。ミノトには感謝しなくてはいけませんね。この勝負が決まればゲンジだけではありません。ミノト。貴方のご飯も今度から私が…!)」

 

そう頭に愛するゲンジと妹であるミノトの顔を思い浮かべると、ヒノエは食材を切り刻む手を早める。

 

更にヒノエは長くゲンジと生活してきた為にゲンジの好物をよく知っていた。

 

「(ゲンジはとにかくお肉が好きな筈。なら、たくさん入れてしまいましょう♪)」

そう言いヒノエは厚切りにした肉を次々と並べていき、それに唐辛子や塩といった調味料を塗す。

 

だが、ここでヒノエは致命的な過ちを犯していた。

 

それは………調味料の量だった。

 

「(ふむふむ…辛子は……これぐらいでしょうか?)」

秤も使わずにヒノエは大量の辛子を肉に塗してしまっていたのだ。

それだけではない。

 

「(ふふ。ゲンジはしょっぱいものが好きですからこれくらいは…)」

ヒノエの目の前には山が出来るほどに積まれた塩。それを全て肉につけ込んだのだ。正に塩分の塊。見るだけでも喉から水分が消え去りそうであった。

そしてヒノエは塩を混ぜ込んだ肉を串に刺すと焼いた。

◇◇◇◇◇

 

それから十数分が経過した。

 

「できた!!」

 

「私もできました」

 

「はや!?」

2人は同時に料理を完成させた。そして、皿に盛り合わせると、ゲンジの目の前に置く。

 

座らせられていたゲンジの前に出されたのは見た目がなんとも絶品な料理だった。

 

「これは…ティカルの料理本に載ってたやつだよな?」

 

「あぁ。ゲンジが最も旨そうに食べていたやつを思い出してな」

エスラが作った物はごくごく一般的な食材で作られたものだった。盛り付けられたご飯の上に肉、野菜、そしてキノコといった山菜が盛り付けられ、その上には卵が乗せられていた。

 

野菜やキノコは狩場でも採取できるので、ご飯さえ持っていけば環境によってはどこでも食す事が可能である。

 

一方で、ヒノエが作った料理もまた、豪華なものだった。

 

「お…これは…」

その料理を見たゲンジは若干ながら涎を垂らした。盛り付けられた更には厚切りの肉が並べられており、その上にはエスラと同様に山菜が盛り付けられていた。

扱った食材の種類は少ないが、ヒノエの器用な手つきでそれは芸術作品のように進化する。

 

「ゲンジはお肉が大好きでしょ?シンプルな作りですが、味には自信がありますよ!」

 

そして、実食となる。

 

まずはエスラの料理だ。

端で一掬いすると、そのまとまったご飯と脂が滴り落ちる肉を口に運んだ。

「あむ…」

 

そして 口の中でご飯と共にメインである肉と野菜を噛みちぎりながら味わう。

 

「……(なんだこれ…肉が柔らかすぎるような…)」

その味は何とも異質なものだった。肉はまるで生肉であるかのように柔らかく、獣臭も少しだけだが感じ取れる。

 

 

 

さらに

 

ガリッ

「ん!?」

 

突如 謎の硬いものが歯に挟まる。

 

「これは…じゃがいも……?」

 

「あぁ!ゲンジは芋が大好きだろ?だから混ぜたのさ!」

そう言いエスラは満面の笑みを浮かべながら胸を張る。たしかにそれは嬉しいは嬉しいが、この感じからすると、このジャガイモは完全に生であろう。

 

「そ…そうか…」

その後も生の野菜や肉が所々に発見されたが、ゲンジは全て平らげる。自身の中の結果としては完全に生の食材が所々から掘り起こされ、幸せな食感が長くは続かなかった。

 

ハッキリ言えば不味い。

 

「(ちゃんと味見してたのか!?)」

 

「どうだ!?ゲンジ!美味かったか!?」

「い…いや…それは…」

エスラは顔を輝かせながら接近してくる。ここまで一生懸命に作ってくれた料理に不味いだなんてハッキリは言えない。

 

すると

 

「ぐえ!?」

「あらあら。まだこちらを食べてませんよ」

ヒノエが手を突き出し、ゲンジに迫るエスラを押しのける。

 

「もしも味に不備がありましたら遠慮なく言ってくださいね。

そう言いヒノエは笑顔を輝かせるが、そう言われると更に言えなくなってしまう。

 

「(そんな笑顔で言うな…!!余計言いづらくなるじゃねぇか…!!)」

 

ゲンジは見た目は非常に良いヒノエの料理を前に手に橋を持つと、肉の一切れを口に運んだ。

 

「あむ…ん!」

その食感はとても柔らかく、脂身は口に入れた途端にスッと蕩けた。更に赤身の部分の肉は分厚く、噛めば噛む程、肉汁が溢れ出る上にとても歯応えがある食感であった。

 

「う!」

ゲンジは食べる手を早める。その様子を見たヒノエはパァと顔を輝かせた。

 

「な…そんな!?」

「ふふ。まず初戦は勝負あったようですね」

 

ヒノエはゲンジの食べる姿から自身の勝利を確信する。先程よりも獲物に食らい付く狩人の如くゲンジはヒノエの料理に噛み付いていた。

 

「(うん…!いいな。普通に……うぅ!?)」

 

そんな中 食べ進める手が突然止まる。

 

「う…うぅ!?」

下だけでない。喉の奥底が沁みる。息を吸う度に冷たい空気がその箇所を急激に冷やしていった。

更に、口の中に目から涙を浮かべる程の香辛料の香りが広がる。

 

「(な…なんだこの辛さ!?しかもしょっぺぇ!?」

 

喉から口内に広がる尋常ではない辛さに汗が止まらない。

更にその辛さは目まで侵食し、目元からは涙が流れていた。

その涙はヒノエを更に笑顔にさせる。

 

「まぁ!涙を流してしまう程美味しかったのですね!」

 

「んぐ…!?」

ゲンジは咄嗟に首を横に振る。

美味しいんじゃない!辛すぎて死にそうなんだ!!!

 

けれども、ヒノエはその意思を感じ取る事もなく笑みを浮かべる。

 

「嬉しいです!頑張った甲斐がありました!」

「ちょっと待てぇ!!!」

勝利を確信したヒノエ。だが、途端にエスラは前に出た。

 

「まだゲンジから正式な言葉がないだろう!!『君の料理の方が美味かった』と聞くまで勝利は認めんぞ!!!」

その必死な血相にヒノエは臆する事なく口に手を当てながら微笑んだ。

 

「ふふ。分かっていますよ」

勝利は我にあり。確信していたヒノエの笑みは止まる素振りを見せなかった。

 

一方で、ゲンジは先程のヒノエの笑顔を見てしまった結果、これを残すのは不味い事になると思い、完食するべく食べる手を限界まで早め、次々に口へと放り込んでいった。

 

辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い!!!

 

「(辛い!!!!)」

 

思考も全て辛さに侵食されてしまっている。今すぐにも叫び出したいほど辛い!もう味わう余裕もない。即座にこの料理を完食してしまいたいという思いだけが残されていた。

 

そして

 

___ごくん

 

ようやく皿の上に置かれた肉や野菜そして白飯を完食して、ゲンジは飲み込んだ。

 

その顔は正に唐辛子といっても良いほど真っ赤に染まっていた。

完食を見届けたエスラとヒノエはゲンジに迫る。

 

「さぁゲンジ!どっちが美味しかった!?」

 

「遠慮なさらず答えてくださいね!」

 

2人の問いかけに、ゲンジは口を震わせながらある言葉をふと漏らす。

 

 

「_____か………」

 

 

 

 

「「か?」」

 

その一文字を聞いたヒノエとエスラは次の単語に期待を寄せる。さぁ。どちらか。自身か相手か。

 

 

そして ゲンジは顔を真っ赤にさせながら今までの思いを全てぶつけるかの如く口を開いた。

 

 

 

「辛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

_____ドサッ

 

 

その叫びが止まると同時にゲンジの身体は後ろに向けて力尽きたモンスターのように倒れてしまった。

 

 

その様子を見た2人は首を傾げる。

 

「うむ…こうなると難しいな…」

判定役であるゲンジは目を回しながら気絶しており、先程の叫びも明らかに美味いという歓喜の声とは違っていた。

 

「では、第一戦は引き分けといきましょうか。ルールはルールですし」

 

「そうだな。次は負けないぞ?」

 

「私こそ」

 

そして、2人は気絶するゲンジを引っ張るとお風呂場へと向かっていった。

 

第一戦 両者 引き分け___。

 

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