薄明と双子の姉妹 (リメイク中)   作:きょうこつ

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閑話 カムラの里のほのぼの日常〜ミノト画伯〜

ある日の昼

 

狩りを終えたゲンジはミノトに報告すべく、受付に赴く。するとそこには頭を抱えながら悩み込むミノトの姿があった。

自身が目の前にいてもなお、ミノトは気づかずに、俯いたままであった。

 

「何か悩み事か?」

 

「…!」

すると、声を掛けられたミノトは我に帰ったのか、俯いていた顔をあげる。

 

「帰っていたのですね!?も…申し訳ありません…気づきませんでした…」

 

「別にいいが、何を悩んでたんだ?……ん?」

ミノトが俯いていた理由を聞き出すと同時にゲンジはふと、受付カウンターの机の上にクシャクシャに丸められた一枚の紙を見つけた。

 

「なんだこれ?」

ゲンジはそれを拾い上げると、丸められた紙を展開する。

 

 

「…本当になんだこれ…?」

ゲンジは未知なる者と遭遇したかのように首を傾げた。

そこには何ともグニャグニャな絵が描かれていた。

 

「は…!!」

すると、それを見られたのがとてつもなく嫌であったのか、咄嗟にミノトは顔を真っ赤に染め上がらせると、その場から身を乗り出し、見ていたゲンジの頭を掴むと、手の平で目を塞いだ。

「みみみみ見ないでくださぁい!!」

 

「ぎゃぁぁ!!変な目の塞ぎ方すんなぁぁあ!!」

 

◇◇◇◇◇

 

それから、騒ぎを聞き駆けつけたヒノエによって、ミノトは落ち着きを取り戻すと、3人はお昼の為にヨモギの茶屋へと向かった。

 

「成る程。絵が趣味だったのか」

 

「はい…その…先程はすいません…取り乱してしまいました」

 

「別にいいって。まぁ失敗作は見られたくないもんな」

 

「んん…理解していただけて助かります…」

ミノトが取り乱してしまった理由は、ゲンジが見たあの絵は自身では納得がいかなかった絵であるらしく、それを見られた事で遂、恥ずかしくなってしまったようだ。悩んでいたのも、一向に自身の絵の才能に疑問を感じていた事らしい。

理由を聞いたゲンジは納得し頷くと、ヒノエとほぼ同じ動作でウサ団子を一つ口に入れる。

 

「ミノトは時折、ゴコク様から絵の指南を受けていますからね。昔よりも比べ物にならないぐらいに上手くなっていますよ」

 

ヒノエの言葉にミノトは手を差し出すと首を振る。

 

「そんな!ヒノエ姉様に比べれば私なんてまだ…未熟でしゅ…」

「あらあら♪」

満更でもないのか、ミノトの顔は赤く染まっていた。語尾も噛んでしまうという動作にヒノエは微笑むと頭を優しく撫でる。

 

「自信作とかはないのか?」

 

「勿論ありますよ!」

ミノトは胸を張りながら立ち上がると、懐から綺麗に折られた一枚の紙を取り出した。

 

「つい最近のものですが、テッカちゃんにお団子を取られるゴコク様の絵を描きました!これはヒノエ姉様を描いた絵の次に自身があります!」

 

「まあ!」

「ふむ」

ミノトから差し出された絵をゲンジは受け取ると、身を寄せてきたヒノエと共に期待を寄せながら紙を開いた。

 

「……ん?」

 

そこに描かれていたのはテツカブラの幼体であるテッカちゃん。だが、その上に乗っていたのは『ヨツミワドウ』であった。

 

 

「………テッカちゃんの上に乗っているのが…?」

 

「はい。ゴコク様です!いかがでしょう!」

 

「これが……ね…」

まさかとは思っていたが、ヨツミワドウに見えるのがゴコクであったのだ。

 

「ミノト。また上手になりましたね!」

 

「…え?」

すると、その絵を見たヒノエは笑みを浮かべながらミノトの頭を撫でる。

 

「ね?ゲンジもそう思いませんか?」

そう言いヒノエは振り向き、同意を求めてくる。だが、改めて見ると何とも個性的すぎる絵であった。これを上手と言っていいのだろうか。

 

「これは……いくらなんでも…へ__」

 

「上手ですよね?」

 

「は?いや、よく見…「上手ですよね?」

 

ゲンジが否定しようとする度にヒノエは言葉を遮り、詰め寄ってくる。その影は段々と暗くなり、遂には自身の目の前へとヒノエの顔が迫ってきていた。

だが、それでも、ゲンジは否定をやめなかった。

 

「だからよく見……ふが!?」

突如、ヒノエの右手が前にだされると再び開こうとしたゲンジの口を塞ぎ込む。

すると、ヒノエは顔の影を暗くしながら聞いた。

 

「じょ・お・ず・で・す・よ・ね・?」

一言一言が強く口ずさまれ、強制的に同意を求めているかのようだった。それにゲンジは驚き、口が開かなくなってしまう。

 

 

「あらあらゲンジったら。お団子を一気に食べるから喉に詰まってしまうんですよ〜?しょうがないですね〜。お茶をもらいにいきましょうか」

そう言いヒノエはゲンジを引っ張り、ヨモギの営む茶屋に向けて歩いていく。

 

「ミノト〜。すぐに戻ってきますからね〜」

ミノトは手を振りながらその姿を見送る。

 

「…」

ミノトは難しい顔をしながらゲンジに見せた絵を見る。

 

「どこかおかしな点でもあるのでしょうか…」

 

◇◇◇◇◇

 

一方でヒノエに引っ張られたゲンジは近くの建物の間に連れ込まれるとヒノエに詰め寄られていた。

 

「ゲンジ?もう一度聞きますよ。ミノトの絵は上手でしたよね?『はい』又は『いいえ』で答えてください」

そう言いヒノエは両手で壁に手をつき、ゲンジの逃げ道を無しながら顔を近づけていった。

いつも通りの笑顔でいながらもその影は暗く、他者を威圧してしまいそうな程であった。

 

そこでようやくゲンジはヒノエが怒りマークを浮かべている事に気付いた。 

 

「ひ…ヒノエ姉さんもしかして怒ってるのか…?」

 

「私は『はい』か『いいえ』で答えてくださいと言っているのですよ?そういえば…」

 

ヒノエは何かを思い出すと、顔の影を強くしながらゲンジの頭を掴み、目の前に固定させる。

 

「前にミノトにお仕置きされた時は随分と苦しそうでしたね〜?」

 

「…え?」

その言葉にゲンジは嫌な記憶が断片的であるが、思い出してしまう。すると、それを完全に思い出させるかの如く、ヒノエは耳元にて、ゆっくりと囁いた。

 

「でしたら今度は私がして差し上げましょう。何度息が尽きても…朝までたっぷりと…」

 

「…!!」

その言葉にゲンジの全身に鳥肌が立つと同時に嫌な記憶を完全に思い出した。

数日前の朝にミノトに締め付けられ、胸で窒息しかけた事を。

男性なら願ったり叶ったりであったが、ゲンジにはあの時の苦しさが一種のトラウマになりかけていた。

 

「最後にもう一度聞きますよ?ミノトの絵は上手でしたよね…?」

 

最後のチャンスをゲンジはありがたく頂くかのように、汗を流しながら頷いた。

 

「上手!!上手です!!!」

「ふむふむ」

すると、その言葉を聞いたヒノエの顔からは先程の顔の影が消え去り、元の優しい笑顔へと戻った。

 

「そうですよね〜。ゲンジもそう思いますよね〜!」

すると、ヒノエは頷くと、ゲンジの手を取り路地を出てミノトの元に向かう。

 

「ミノト〜。ゲンジが上手だと仰っていましたよ〜」

 

「本当ですか!?」

 

「えぇ。本当です。そうですよね?」

嬉しさのあまり立ち上がったミノトにヒノエは頷くと、同意を求めるかの如く、自身の隣で震えているゲンジに目を向ける。

すると、ゲンジはまるで洗脳済みであるかのように答えた。

 

「はい…上手です…」

 

「…!!」

その言葉を聞いたミノトは嬉しさのあまりピョンピョンと跳ねると、御礼を言いながら駆け足で集会所へと戻っていった。

 

これにて、一件落着………かと思っていた。

 

「今晩は覚悟しておいてくださいね…?」

 

その晩 ゲンジはヒノエの宣告通り全身を締め付けられると同時に何度も胸に圧迫され、眠れぬ夜を過ごした。

 

 

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