薄明と双子の姉妹 (リメイク中)   作:きょうこつ

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久しき里の風景 

エスラとシャーラが里に住み始めて数日が経った。里の皆もゲンジの家族という事もあってか、すぐに仲を深めており、ヨモギやコミツといった里の子供達からも懐かれていた。

 

2人は里へ来た翌日にウツシから他のハンター共々『翔蟲』の訓練を受けているようだ。

 

「では、私達は訓練に行ってくるよ」

 

「帰ったらお団子食べようね」

 

「あぁ」

多くのハンター達と共に訓練に向かう2人を手を振りながら見送る。

 

ゲンジもようやく謹慎が解け、外出が許されるようになったのだ。故にゲンジは久々にカムラの里を回る事に決める。

 

◇◇◇◇◇◇

 

「ほっほっほ。ようやく顔を合わせられるのぅゲンジよ」

 

「アンタも相変わらずだな」

集会所に赴くと、ゲンジはテッカちゃんを撫でながらゴコクと団欒していた。

 

「聞いたぞ?主らの家族もここに住む様子でゲコな」

 

「あぁ。気に障ったか?」

 

「いんやぁ!そんな事はない!寧ろ更に賑やかになるから楽しみでゲコ!」

すると、ゴコクは目の前にあるカウンターで次々と仕事に手をつけ、手際良くハンター達にクエストを紹介するミノトに目を向ける。

 

「前までハンター嫌いであったあの娘がいまではあんなに生き生きとしとる。これもお主のお陰でゲコな」

 

「…フン」

ゴコクに目を向けられたゲンジは目線を逸らす。そして、そのままミノトがいるカウンターへと向かっていった。

すると、丁度よく、受付の一段落を終えた様子であり、ハンターの列が途切れ、話しやすくなっていた。

 

「ゲンジ。よく来てくれました。依頼ですか?」

ゲンジが来た事でミノトは穏やかな表情を浮かべた。いつもは硬く険しい表情をしていた彼女の顔からは少しだけだが、力が抜けているようだ。

 

「いや、久しぶりに里を見て回ろうと思ったからな。立ち寄っただけだ」

 

「成る程。確かに1週間も家の中でしたからね」

 

「あぁ」

その後 ミノトと別れたゲンジは集会所を出ると ヨモギの茶屋へと向かう。

 

◇◇◇◇◇◇

 

「嬢ちゃん!ウサ団子3本!」

 

「こっちも!」

 

付近にあるヨモギの茶屋では多くの客が花見席に座りながらヨモギに団子を注文していた。

 

「はい!しばし待たれよ!」

注文を承ったヨモギは即座に串を取り出して、店員のアイルーと共に見事な射的劇を見せながらウサ団子を作り出す。

 

「ヨッ!!カッコいいよお嬢ちゃん!」

 

「こっち向いて〜!!」

周りから見ていたハンター達からは次々と拍手喝采が湧き上がる。

 

「えっへん!」

次々と投げられる喝采にヨモギは顔を赤く染めながらも得意げに胸を張っていた。

 

その様子を見ていたゲンジは変わらない雰囲気に安心するとその中に混ざる。

ゲンジが来た事で辺りのハンター達がざわめきだした。

 

「お!?アイツはまさか『薄明のゲンジ』じゃねぇか!?」

 

「マジかよ初めて見たぜ!」

団子を食べながら辺りのハンター達の憧れや期待。そして驚きの目線がその間を通り抜けるゲンジに向けられる。

ゲンジはそれを気に留めず、悠々と歩きながら団子のための餅をつくヨモギの元に向かう。

 

「あ。ゲンジさ〜ん!よかった!ようやく外に出られたんだね!」

すると、それに気づいたヨモギは天真爛漫な笑みを浮かべながら手を振る。ゲンジもそれに応えて手を挙げた。

 

「よぅ。変わり無くて何よりだ。早速だがウサ団子を一人前頼む」

 

「はぁ〜い!ではしばし待たれよ!」

いつも通りのヨモギのテンションにゲンジは安心しながらしばらく待つと、ウサ団子を受け取る。エスラ達が帰ってくるまで待とうかと考えてはいたが、やはり、我慢ができない。

ここは今、ハンター達が多くいる為に、違う場所で食べようと考えていた。

 

「う〜ん…自宅で食うか」

「あ!そうだゲンジさん!」

自宅が近い為にゲンジは自宅で食べることに決める。すると、ヨモギが呼び止めた。

 

「ん?」

呼び止めたヨモギは巨大な風呂敷が積まれた荷車を引いてきた。それを見た辺りのハンター達は目を点にした。

 

「おぉ!?なんだあの量の団子!?」

 

「軽く見積もっても30本はあるぞ!?」

その巨大な風呂敷に包まれていたのは全てウサ団子であった。ただでさえも3本で腹が満腹になるウサ団子がそれの約16倍もの量も積まれていたのだ。

 

「これは…ヒノエ姉さんの分なのか?」

 

「うん!朝に一度 来たんだけどさ、『これからは凄く忙しいと思うので3本でお願いします』ってさ」

 

「そうか。まぁ…確かにそうだな」

ゲンジは辺りで花見をしながら団子を食べるハンター達を見る。ヒノエは流石に自身の分だけで時間を割かせる訳にもいかないと考えたのか、50本のウサ団子の注文を断念したらしい。

 

「でもさ。ずっとヒノエさんの為に50本も作り続けて来たからそれがもう慣れちゃってさ!ついつい用意しちゃったんだ。だから届けてほしいの!」

 

「成る程な。……」

その山のように積まれたウサ団子を見て、ゲンジは辺りを見回し、ヒノエ又はそれに関係する者がいない事を確認する。

 

すると、ゲンジはヨモギに近づき、金の詰まった麻袋を取り出し、渡した。

「金は俺が出す……」

「うぇ!?」

 

差し出された金にヨモギは目を点にしながら驚いた。

 

「その…ヒノエ姉さんには世話になってるからな…あとミノト姉さんの分の団子もくれ」

正に太っ腹。その様子にヨモギは口に手を当てながら乙女の如く顔を赤く染めていた。

 

「まさかゲンジさん…そこまであの2人のことが!」

 

「やめろやめろ!!声がでかい!!!」

咄嗟にゲンジは噴き出そうな程の声量のヨモギの口を塞ぐ。

 

「むぐむぐむぐむぐ!(任せて!すぐに作るから!)」

 

「助かる…」

 

なぜ、こんな事をしたのだろうか。普段ならば絶対に金など出さない。故意に奢るなぞ、今まで家族以外になかった。だが、今は無意識のうちにやってしまった。

それ程、自身はあの2人に感謝しているのだ。

◇◇◇◇◇◇

 

丁度、昼休みの時間となり、受付を一時 中断したミノトは自身が敬愛するヒノエが待つ里の受付場へと向かった。

 

いつも通りの場所へ着くと、そこにはいつも変わらず空を見上げながら鑑賞に浸っているヒノエの姿があった。

 

「あらミノト。偶然ね。私も休憩していたところなの」

ヒノエは手で風を送るように仰いでいた。

ヒノエもヒノエで、初心者のハンター達に向けてクエストを紹介していたらしい。

 

「私もです。どうでしょう?ゲンジを誘って家でお昼を」

 

「いいわね!早速 呼びにいきましょう!」

その案にヒノエは笑みを浮かべると立ち上がる。

 

そんな時だった。

 

ゴロゴロゴロゴロ

 

荷車を引く音が聞こえる。すると、ヨモギの茶屋に続く道からゲンジが片手で荷車をゆっくりと引きながらこちらに向かってきていた。

 

「あ!丁度良かったです。ゲンジ!これから私達とお昼を…え!?」

 

その荷車に積まれたのは巨大な風呂敷に包まれた大量のウサ団子だった。

ゲンジはヒノエ達の前に着くと、荷車から手を離し、パンパンと荷車を叩く。

 

「ヨモギからの差し入れだ。いつも頼みに来るからついつい用意しちまったらしい。あとこれ、ミノト姉さんの分」

 

そう言いゲンジは荷車から6本セットのウサ団子をミノトに手渡すと同時にヒノエの横に荷車を置いた。

 

「ヨモギちゃん…!!」

ヒノエはゲンジの話を聞いた瞬間にヨモギに感謝する。

 

「ありがとうゲンジ。では、一緒に食べましょうか!」

ヒノエは団子の山を見て満面の笑みを浮かべながらゲンジを誘う。が、ゲンジはそれを断った。

 

「悪いが、予定がある。また今度な」

それだけ言うと、ゲンジはまるで逃げるかのようにソソクサと早足で去っていった。

 

それから、ヒノエはヨモギから差し入れとして送られたウサ団子を満面の笑みを浮かべながら食した。隣にいるミノトも同じく表情には出さなかったが、嬉しそうにウサ団子を頬張った。

 

「はぁ…幸せです…ミノトの料理と並んでウサ団子は至高の食べ物です♪」

「姉様…」

ウサ団子を食べ終えたヒノエは満足すると、食べ終わった串を全てまとめ、それと同時に荷車に手を掛ける。

 

「では、ヨモギちゃんにお金を払うついでにこれを返してきます」

 

「ね…姉様!自分の分は自分で払います!」

「いいのですよ」

ミノトは咄嗟に自身の分を払うべく同行しようとするが、ミノトはそれを止めた。

 

「たまには姉らしく太っ腹なところを見せたいので」

それだけ言うとヒノエは荷車を引きながらヨモギの茶屋へと向かっていった。

 

◇◇◇◇◇◇

 

ヒノエとミノトから逃げたゲンジはイオリが営むオトモ紹介場や、ロンディーネがいる交易場がある場所へと立ち寄った。

 

 

「ゲンジさん!良かった。無事に謹慎が解けたようですね!」

 

「よぅイオリ。元気そうでなによりだ」

ゲンジが来た事に気づくと、いつものようにアイルーやガルク達とコミュニケーションを取っていたイオリが立ち上がる。

 

「オトモは元気か?」

 

「はい!皆 すくすくと育っています!ミケとハチも元気ですよ!」

そう言いイオリは健全な状態であるオトモ達を見せる。

 

ゲンジは謹慎期間中はずっとイオリにハチとミケを預けていたのだ。

 

「そうか。じゃ、そろそろ2人を引き取るよ」

 

「分かりました!」

 

それからイオリはハチとミケを呼びにその場を離れる。その数分後にイオリはハチとミケを連れて戻ってきた。

 

「ゲンジ!ようやく謹慎が解けたようだニャ。また一緒に狩りに行けるニャ!」

 

「ワン!」

ゲンジを見たミケとハチは嬉しそうに抱きつき、温もりを確かめるように頬に擦り寄る。

 

「おぅ。すまなかったな。ずっとほったらかしで」

ゲンジは2匹の頭を撫でると、立ち上がる。

 

「イオリ。世話になった。また来るぞ」

 

「えぇ!いつでも来てください!」

イオリに感謝の言葉を告げると同時にまた来る事を約束すると、ゲンジは手を振りながらイオリと別れ、その場を後にした。

 

 

______「ちょっと待てぇえええ!!!!」

 

「んあ?」

 

すると、その場に巨大な声が響き渡り、去ろうとするゲンジの脚を引き止めた。

見るとイオリのオトモ紹介場の近くに交易船が停泊しており、停泊していた場所に1人の女性が立っていた。

服装はカムラの里にいる者に比べると、異国の雰囲気を漂わせている。

 

「まだ私がいるだろぉがぁぁ!!いつになったら出番を寄越すんだ!!」

 

「あぁ。確かいたな」

「ずぅと空気で忘れてたニャ」

「ワン」

頭を掻きむしりながら叫ぶこの女性の名前は『ロンディーネ』

カムラの里と交易をしている国の使いであり、長きに渡り、その交易の役長として里の皆から親しまれている者である。

交易とは、品と品を交換する事であり、普段は中々採取できない物も交易であれば、一度に大量に受け取れるので、とてつもなく便利なものである。

 

「ほら、前に頼んでいたハチミツ、マンドラゴラ、不死虫だ」

 

そう言いロンディーネは前にゲンジが頼んでいた交易の品をまとめた麻袋を手渡した。

ゲンジはよくここを利用しており、特にハチミツ、不死虫、ツタの葉、蜘蛛の巣、雷光虫といった、罠の素材や『生命の粉塵』の素材などを取引していた。

 

「すまねぇな。謹慎中だったもので」

 

「気にしなくていい。私は凄くスッキリさせてもらったからな」

そう言いロンディーネはフッと笑みを溢す。異国の者である彼女も長年カムラの里にいるのか、愛着が湧いており、里を汚したマルバ達には嫌悪感を抱いていたようだった。

 

「百竜夜行がまたいつ起きるか分からん。だから、私も全力で交易の手数を増やしておくから、積極的に利用してくれ」

 

「あぁ。感謝する」

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

その後 イオリやロンディーネと別れたゲンジはその場を後にし、里へ戻ると、入り口付近に来た。

 

「おや、お久しぶりですゲンジさん」

穏やかな声で挨拶をするのは、ゲンジが里に来てからずっとアイテムの事に関して世話になっているカゲロウであった。

 

「あぁ。ようやく謹慎が解けたから里を回っていた。ずっと礼を言いたかったんだが、事が続いてな」

 

「いえいえ。お気になさらず。ゲンジさんは今や里を救った英雄。その英雄様の役に立てたのなら何よりです」

 

「よせよ。まだ百竜夜行が収まってねぇんだ。英雄なんて呼ばれる程じゃねぇ」

それから、ゲンジはカゲロウと軽く談笑すると、回復薬や解毒薬などを購入して、別れた。

だが、別れ際に

 

「お二人とお幸せに」

 

というお世辞もクソもないただ単に余計な事を言われ、ゲンジの顔は真っ赤になった。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

人が次々と通り過ぎる道の中 ゲンジは空を見上げた。

 

「…」

晴れ渡る空。だが、それでもまだ百竜夜行が収束する道が見つからない。もしも。この状況下で百竜夜行が起こりでもしたら、再びヒノエ達と共に出撃しなければならないだろう。

 

「とっとと終わらせねぇとな…」

 

改めてゲンジはヒノエへの恩返し…いや、里への恩返しの為に原因を突き止める事を決意し、ハチに乗るミケと共に歩みを進めた。

 

 

 

 

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