薄明と双子の姉妹 (リメイク中) 作:きょうこつ
里を回ったゲンジは、依頼を受けようと考えついた。
「さて、ひと回りも済んだし久しぶりに依頼でも受けるか」
1週間で鈍りに鈍った身体の調子を取り戻す為に狩りに出かける為にゲンジは装備を揃えるべく家へと脚を運ぶ。
その時だった。
____喰らえ 喰らえ
全てを喰らえ
「…!」
突然 自身の頭の中で響くかのように謎の声が聞こえた。それはまるで地の底から響く程、低い男の声だった。
「ゲンジ…大丈夫かニャ?」
「……あぁ。大丈夫だ。単なる頭痛だよ」
ゲンジは頭に手を当てるも、それ以降は声が聞こえる事はなかった。そのまま家へと再び脚を運ぼうとした時だった。
「おぉ。ゲンジよ。探したぞ」
肩に手を置かれ、陽気に声をかけられる。振り返ると相変わらず歳を喰いながらも筋骨隆々であり、生き生きとしているフゲンの姿が映り込んだ。
「フゲンさんか。アンタも変わらずだな」
「ハッハッハッ。たった1週間程度じゃ俺は変わらんよ。そうだ。お主に話したい事があった。俺の家まで来て欲しい」
「え?まぁいいが、ちょっと待ってろ」
その後、ゲンジは家に一時的に戻り装備を纏うとフゲンの家へと向かった。
ーーーーーーー
フゲンの家の中に着くと、座布団の上に座る。ミケとハチは外でフゲンのオトモであるコガラシと遊んでいた。
フゲンから雅な湯のみ出される。中には湯気が湧き立つお湯が注がれている。それと同時に注がれた茶の真ん中には茶柱が立っており、手を取るたびに揺れて水面を揺らした。
「…何か良いことでもあったのか?」
フゲンの入れる茶に茶柱が立つ時は大体 良い知らせである。だが、その反面に立っていなかった場合は悪い知らせを聞く。
「あぁ。まぁ、取り敢えず楽にしてくれ」
それから、フゲンはゲンジに現在の状況に加えて、自身の武勇伝を話し始めた。その話は中々面白く、普段、他人の話にあまり耳を傾けないゲンジでも笑みを溢してしまう程のものであった。
それに対して、ゲンジも自身の訓練時代の事や各地方を回って、この地方にいなかったモンスターの話をフゲンにした。
この地方には存在しないモンスターの話にフゲンも興味を示し、笑いながら聞いていた。
その談笑はどれくらい続いただろうか。互いに言葉を交わしながら茶を飲んでいる内に時刻は既に夕焼けが差し込む程にまでなっていた。
「あ、もうこんな時間か」
ゲンジは立ち上がり、フゲンの家から出ようとする。
すると、それをフゲンは呼び止めた。
「お主に聞きたいことがある」
「聞きたいこと?」
「うむ」
フゲンは頷くと、自身が毎日扱う湯呑みを手に取ると口に運び、苦味を感じながらそっと元の場所へと置いた。
そして 目を大きく開くと、その鋭い眼光をゲンジに向ける。
_______2人をどう思っておる?」
その瞬間 窓の底から風が入り込み、その場に涼しげな空気を運んだ。先程の談笑し合った楽しげな空気が一瞬にして沈黙へと成り代わってしまった。
フゲンからの突然の質問にゲンジは固まってしまった。
「…どうした?」
「え…いい…いや…その…」
「ん?いまさら過ぎる質問だったか?すまんすまん。なら変えよう。『式の日取り』はいつにする?」
「飛びすぎなんだよ!!!!」
それから空気を戻すと、ゲンジは難しい顔となる。
「結婚……する程好きであるか…言い切れるかどうか…」
ゲンジの中では、ヒノエとミノトは恋人という範疇にはありながらも、結婚という将来を誓い合う程の相手としては見れていなかったのだ。
ゲンジのその言葉にフゲンは腕を組みながら、しばらく黙り込む。
数分後 茶柱が揺れると同時にフゲンは目を開くと、ガッカリしたかのように肩を落とす。
「そうか。主がそうなら、致し方あるまい」
「……悪い。まだ自信が持てなくてな……」
「良い。ならば……そうだな。近くの村の2人のハンターがヒノエとミノトに好意を抱いていた筈だ。そ奴らなら任せられるかもしれん」
フゲンのふと溢した言葉がその場に静かに響き渡る。
その瞬間
____あ?」
フゲンの家…いやカムラの里全域が高密度の殺気に包まれた。
それと同時にゲンジを中心にフゲンの家の中にある家具が次々と揺れ、触れてもいない湯呑みには亀裂が走っていた。
「誰だそいつらは…?2人に勝手に手を出しやがって…場所を教えろ…!!!!」
ゆっくりと立ち上がる時に見えたゲンジの目は想像を絶する程 血走っており、顎にある筋肉さえも筋を沸き上がらせていた。
殺気の根源はゲンジであり、鳥居の方から鳥達が飛び立つ羽音が聞こえてくる。
すると
「ハッハッハッ!!!」
フゲンはゲンジのその顔を見た途端に面白がるように顔を上げ手を叩きながら高笑いし始めた。
一方で 突然 笑われたゲンジは青筋を浮かべながら低い声でフゲンに問う。
「…なぜ笑う…?場合によっては殴るぞ」
ゲンジは拳を握り締める。その姿を見たフゲンは笑いを止めると、活気立つ笑顔を向けながら答えた。
「いやぁすまんすまん。主が想像以上に怒るものでな。うむ。それほど2人の事を大切に思っておるのがよぉく分かった」
「…はぁ?」
フゲンの言葉にゲンジは調子が狂い、殺気を引っ込めてしまう。
「分からんか?今のは嘘だ嘘。お主があまりにハッキリしないもんだから少しカマを掛けてみただけだ」
「な…!!!!」
まさかの全て嘘だったのだ。フゲンはわざと、ゲンジをハめて真意を確かめようとしていたのだ。
それと同時に自身が真剣になっていた事に気づいたゲンジは顔を赤く染め上がらせてしまう。
「いやぁあそこまで怒ったのならば何よりだ!!力もしかり!愛情もしかり!!うむ。お主なら安心して2人を任せられる」
そう言いフゲンは笑みを浮かべながら、ゲンジの肩に手を置いた。
「2人を頼むぞ」
その後 フゲンの家を出ると、ゲンジは先程の自身の事を思い出してしまい、依頼を受ける気力を失ってしまった。
薄々と感じてはいた。自身が2人に好意を抱いている事を。それがハッキリと言い出せなかった。
だが、フゲンの行動によって、自身のモヤモヤな正体がハッキリと分かった。
夕日が差し込む中、ゲンジは皆が次々と宿に戻る中、集会所へと向かった。
「ニャ!?ゲンジ!どこ行くニャ!?」
それをミケはハチに乗りながら追いかける。
◇◇◇◇◇
「お手を煩わせてしまい申し訳ありません」
「いいのですよ。集会所の依頼を受けに来るハンターは多いのですから」
受付のカウンターに座りながら作業をしているのは、ミノトだけではなく、ヒノエもであった。
あまりにも、集会所の依頼の受付の人数が多い為にヒノエは里の依頼の受付を少し早く閉めて、こちらに応援にきたのだ。
次々と帰還するハンター達の手続きを姉妹は次々と捌いていく。
それから、しばらくしてハンター達の人数が段々と減り続け、遂には数十分に一団体程度のものとなった。
外には夕日が沈み込む様子が映し出されており、それに比例するかのようにハンター達は宿へともどっていった。
「ふふ。とても賑やかですねミノト」
「はい。里が明るくなり、私は嬉しいです」
たった1週間前は暗く、ハンターもゲンジ1人であった里が今では何十人ものハンター達が訪れ、明るく活気に満ち溢れた物へと生まれ変わっていた。
「さて、あと二つの団体さんで今日の受付は終了となりますね。終わったらゲンジやお義姉さん達を誘ってご飯を食べましょう」
「はい。料理はお任せを」
その明るい雰囲気に2人も染まり、この後の予定を楽しみながら決めていた。
「ふふ。ヨモギちゃんから聞いた時は本当に驚きました。まさかゲンジが代わりに払っていてくれたなんて…帰ったら代金とお礼をたっぷりしてあげないといけませんね」
「ね…姉様…目が怖いですよ」
すると
集会所の入り口から1人のハンターが大股で歩いてきた。そのハンターは宿へと戻るハンター達の間をすり抜けながら、自身らの元へと向かってやってくる。
「まぁ…!」
そのハンターを見た瞬間 ヒノエの顔は驚きと共に満面の笑みに包まれ、ミノトの表情も更に柔らかくなる。
背中まで伸びた青い髪を野を掛ける少女の如く風に揺らしながらも、苦難を乗り越えるかのように力強い足踏みかつ、暗闇を照らす銀色の太陽であるリオレウス希少種の装備を纏い近づいてくるそのハンターはゲンジだった。
顔を真っ赤に染め上げながら、まるで何かを溜め込んでいるかのように口を膨らませていた。
「あら?どうしましたか?顔が真っ赤ですよ?」
「何かあったのですか?」
歩いてきたゲンジは2人の目の前までやってくると、突然 その脚を止め、顔を上げた。
そして
右手の人差し指をヒノエとミノトに向けて口を震わせた。
「俺は……俺は……」
「?」
指先から全身が震えながら出る言葉にヒノエとミノトは首を傾げる。何を言いたいのかさっぱり分からなかった。
一方で赤く染まったゲンジは今まで腹に溜まっていた思いを全て吐き出すかの如く 2人に向けて叫んだ。
「俺は…お前ら…ふ…2人の事が______!!!!!
その後の言葉は集会所を出て行こうとしていたハンター達、テッカちゃんに乗りながら書類に筆をしたためるゴコク。そして、集会所で働くアイルー達の耳にまで届いていた。
◇◇◇◇◇◇
「ふぅ。少し遅くなってしまったな」
「ウツシさんいくらなんでも気合い入れすぎだよ…」
鍛治職人達や、ハンター達が我が家や宿へと帰る中、翔蟲の訓練を終えたハンター達も帰還する。
何故か今日はウツシの気が昂っていたのか、大社跡から直接 修練場に移動して、そこで訓練というハードなスケジュールとなってしまった。
「まぁこれである程度の翔蟲の使い方はマスターできたから良しとしよう」
「そうだね」
2人は自身らが寝泊まりしているゲンジの家へと着く。
入り口付近に近づくと、
「あ。お帰りなさいませ。夕食のご用意ができてますよ」
パタパタと音をたてながら受付嬢のコーデではなく、簡易的な和服を纏ったヒノエが出迎えた。
「ヒノエ。悪いな。せっかく作ってくれたというのに冷ましてしたまっただろう」
「いえいえ。問題ありませんよ。彼がお二人が帰ってくるまで待とうと言っていたので」
そう言いヒノエは中に目を向ける。それに釣られてエスラとシャーラは中に顔を入れると、囲炉裏の側であぐらをかきながら防具を磨くゲンジの姿があった。炎に照らされるその顔は穏やかであった。
そして、そのゲンジの横ではその身体に体を預けながら眠るハチとミケの姿があった。
さらに、その目の前にある台所ではミノトが具材の入った鍋を掻き回していた。その鍋から香ばしい匂いをエスラは味わうかのように吸い込む。
「う〜ん。いい匂いだ。では、ありがたくいただくよ」
「お腹すいた」
ヒノエは一足早く上がると、座り込むゲンジに呼びかけた。その様子を二人は微笑みながら見つめ、装備を外す。
「お二人が帰ってきましたよ。そろそろご飯を食べましょう。
_________旦那様。
「ふぁ!?」
「おお〜」パチパチパチパチ