薄明と双子の姉妹 (リメイク中)   作:きょうこつ

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月夜に輝く薄明

「ねぇエスラさん。ゲンジさんって昼間はどんな訓練してたの?」

ヨモギは寝る前に興味本位でエスラにそう尋ねる。すると、その質問にエスラも不思議に思っていた。

 

「え?いや…分からないな。そういえばゲンジは見回りばかりで武器を振り回す姿を見ていなかったな…」

 

 

◇◇◇◇

 

真夜中 皆が寝静まり、遠方の高台には里の皆が交代交代で見張り役を行っていた。

 

警戒態勢が最も緩む中、エスラはふと目を覚ます。

 

「……まだ夜中…か…」

辺りには今もなお気持ち良さそうな寝息を立てる女性ハンター達に加えて腹にしがみついてくるヨモギやミノトの頭に手を置きながら眠るヒノエの姿があった。

 

もう一度、寝ようとも考えてはいたが、どうにも寝付けずにいた。

 

少し散歩をしよう。そう思い、エスラはシャーラを起こさずに、ベッドから立ち上がる。そして、近くに置いてあるゴールドルナ装備の脚と腰部分だけを纏う。

 

◇◇◇◇◇

 

外出して、戦闘エリアの入り口に出ると、そこには満天の星空が広がっていた。

 

「綺麗だな」

その星空はタンジアの港にいた時と同じ星空であった。数々の星々が輝く夜空に見惚れながらも、ふと、入り口である高台から戦闘エリアへと目を向けた。

 

「…ん?」

そこには1人の人影があった。その人物の正体はシルバーソルを纏っていたのでアッサリと分かった。『ゲンジ』だ。

 

「(こんな夜遅くに何をやっているのだろうか…)」

 

そう思いながら見つめていると、ゲンジは自身に気づかず、ゆっくりと背中に背負う双剣を引き抜いていた。

 

「…!!」

その瞬間 ゲンジの姿が壁へと跳躍すると更にその壁を蹴り、空高く飛び上がる。

 

飛び上がったゲンジはそのまま空中で四方八方へ次々と双剣を振り回していった。その振り回す速度は正に神速。遠目で見ていた自身の目には一振り一振りに白銀の軌跡が残っていった。

 

それだけでは終わらない。双剣を振り回した直後にゲンジは翔蟲を上空に射出し、更に空高く飛び上がっていった。

 

「(何をするつもりだ…?)」

 

エスラは興味を持ち、その行く末を見守る。すると、ゲンジは状態を下へと向けると、双剣を横にし回転し始めた。

 

 

「!?」

その回転は初速から残像が見える程までの速度へと達し、次々と下へ落下する。

このままでは頭から突っ込んでしまうのではないか。そう思っていると、突然 ゲンジは偶力として扱っていた双剣の刃を前へと重ね合わせる。

 

月夜に見やるその姿は正に一本の槍。そのままゲンジは地面へ向けて回転しながらドリルの如く落下していった。

 

そして、回転する槍と化したゲンジの身体が地面へと衝突した瞬間。

 

衝突した箇所の地盤が木っ端微塵になると同時に砕けなかった欠片が辺りへと四散。それと共に巨大な土煙が吹き立つ。

 

 

「…!!」

その光景を見ていたエスラは言葉を発する事が出来ずにいた。今までずっと共に生活していたが、これ程までに成長した姿は見た事がなかった。

彼の強さは自身では及ばないと思っていたが、まさかここまで差が開いていたとは。

砂埃が晴れると、そこには自身に気づき、こちらに振り向くゲンジの姿があった。

 

「ん?フフ」

こちらへと気づいたゲンジに向けてエスラは微笑みながら手を振った。

 

◇◇◇◇◇◇

その後、ゲンジとエスラは拠点に戻り、装備を外すと風が吹く入り口の段差に腰を掛けていた。ゲンジはこちらを振り向くまで、見られた事に気づいていなかったようだ。

 

「見られてたのか…」

 

「当たり前さ。あんなに派手な動きをすればな。それよりも、昼間は案内やら準備やらで動き回っていただろう?ちゃんと休まなければダメじゃないか」

 

エスラはただ、先程の動きは感心はしていたものの、身体を休めない事について叱ると、ゲンジは右手を顎に当てながら、溜息をする。

 

「別に…ただ人が多いとやりづらいんだよ。夜にやった方が集中できる」

 

「確かにそうだな。けど、お前がそれで倒れてしまっては元も子もないのだぞ?」

 

「……あぁ。それくらい分かってるよ…だから明日は昼間にやるさ…」

 

「なら、安心だな」

話が終わると、エスラは気になっていたある事を話した。それは、最近 自身の悩みともなっている事だ。

 

「…ゲンジ。お姉ちゃん達の事は嫌いか…?」

 

「なんだ急に」

唐突な質問にゲンジは首を傾げる。エスラは毎日毎日 ヒノエとミノトに構う姿を見て、自身はもうゲンジの視界の中には入っていないのかもしれないとシャーラと共に思っていたらしい。

 

「最近…ヒノエ達にばかり構っているだろ…?まぁ好きな人なのだからしょうがないが…。その…言うのも何だが、少し寂しくなってしまってな…。私達はゲンジからは嫌われてしまっているのか、ずっと悩んでいたのだ」

 

エスラは貯めていた本音をぶつける。集会所の時も、荷車に引かれていた時も、ずっとエスラは言い出そうかと溜め込んでいたらしい。

 

すると、ゲンジは首を横に振る。

 

「んな訳ないだろ。エスラ姉さんもシャーラ姉さんも大好きだよ」

 

「え!?」

ゲンジの答えにヒノエは顔を赤くしながら驚く。すると、ゲンジは次々と過去を思い出しながら話し出していった。

 

「幼少期の頃…死のうとした俺を諭して助けてくれたのはエスラ姉さんだし…いじめられた俺を助けてくれたのはシャーラ姉さん…。2人のお陰で今の俺がいるんだ。嫌いになる理由なんてねぇよ。大切な家族だ」

 

「ゲンジ……」

その言葉にエスラは心がホッとすると同時に身体の奥底が熱くなっていった。

 

「じゃ…じゃあ私にキスしてくれ!!ぶちゅぅ〜っと!___あれ?」

 

咄嗟にゲンジに向けて接吻を要求しようとした時、ゲンジの身体がゆらゆらと揺れていた。

よく顔を見ると瞼も若干ながらも少しずつ力を失うかのように下へと下がっていった。

 

「眠いのか?」

 

「いや、眠くねぇ…」

ゲンジの身体は少しずつだが、風に煽られながら揺れていた。

 

「眠いだろ。もしかして、お姉ちゃんが来るまでずっと鍛錬していたのか?」 

 

「だから眠くねぇって言ってるだろ…俺は…もっと…強くなっ……て…」

するとゲンジの身体がゆらゆら揺れ、ゆっくりとこちらへ向けて倒れてきた。

「おっと」

すかさずエスラは倒れてきた身体を支える。見ると、ゲンジの目は閉じられすっかり寝息を立てていた。先程の威力ならば、確かに昼間の人が多い時には無闇に鍛錬はできない。だが、よくよく考えれば、ゲンジは砦に着いてからずっと初めて砦に来たハンター達に設備について教えていた。兵器や狼煙など。

鍛錬の時間が取れない事も分かる。それ程まで、ゲンジは仲間思いなのだろう。

 

そして、先程の言葉をもう一度思い返すと、眠るゲンジの顔に向けて笑みを溢す。

 

「ふふ。嬉しかったぞゲンジ」

自身の肩に置かれたゲンジの顔を膝に置くと前髪を上げ、額へとそっと口付けをした。

 

「お前のそういう優しい面にも…人を大事にする面にも私は惚れているんだからな…」

 

その後、エスラは眠るゲンジの身体を抱き抱えると、シャーラと向かい合わせるように横にさせると、その間に横になり、2人の肩を抱き寄せながら眠りについた。

 

 

 

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