薄明と双子の姉妹 (リメイク中) 作:きょうこつ
目覚めたゲンジは現在の状況に困惑していた。
「……なんでここで寝てるんだ…?」
辺りを見渡すと、隣にはエスラ。そのまた隣にはヒノエに抱きつくミノト。辺りには女性ハンター達。完全に女子の陣で眠っていた。
「ふわぁ…まぁ起こさなければいいだけか…」
ゲンジはあくびをすると、そのまま起き上がり、誰も起き上がらせないようにゆっくりと外に出た。
その姿を一足先に目覚めていたミノトに見られていた事を知らずに。
◇◇◇◇◇◇
朝日が照らす。百竜夜行が来る知らせはまだ来ない。今日も整備を終えると共に鍛錬をする事に決まりだろう。
それから少しばかり柔軟体操を行うと、装備を纏う。
それから、続々と皆も起床してくる。
◇◇◇◇◇◇
「今日も自由に過ごしてくれ。武器訓練でも探索でもいい。兵器は整備する奴以外は今のとこは触るな。以上だ。解散」
集められた皆へと指示を出すと、全員は頷く。その後、全員はそれぞれ持ち場につき、訓練を開始した。
ゲンジは今日はエスラに言われた通りに昼間に訓練を行うようにした。
「すぅ…」
双剣を構えながら、息をゆっくりと吸い込む。そして、片方の双剣の持ち手を逆に変える。
近くで見ていた双剣使いのハンターはその構えに驚いた。
「(な…なんだあの持ち方は…!?)」
片手は刃を向け、もう片方は柄を向ける。見たことがない持ち方であった。本来ならば、双剣の持ち方は両方とも同じというのが一般的だ。左右とも異なるなど聞いたことがない。
すると、ゲンジは右足を後方に下げる。それと同時に地面が陥没し、辺りには砕けた破片が舞い上がった。
「…!!!」
そのハンターだけではない。周りにいるハンター達も訓練の手を止めた。
それ程の濃密な殺気が辺りを覆っていたからだ。
そして、双剣を構えたゲンジはゆっくりと体勢を低くすると、まるで獲物を狩るモンスターの如く、前のめりとなった。
「コォォォ…」
まるで自然界の風のような呼吸音がその場に響き渡る。それと同時にまるで龍属性のようなオーラがゲンジの身体から溢れ出ていた。
その瞬間
ゲンジの踏み込んでいた脚が一気に前方へと踏み出された。陥没していた地面が更に沈み、ゲンジの身体が前へと弾丸のように飛び出していった。
それと同時に風が吹き荒れ、辺りにいたハンター達は腕で顔を覆う。
「んお!?」
「なんだなんだぁ!?」
そんな中、顔を覆ったハンターの内の1人は腕の間から、その景色を見ていた。
「おいおい…嘘だろ…?」
ふと、そう零してしまった。すると、風が止み、辺りにいたハンター達も次々とその景色を目にする。
「…!!」
そこにあった光景はハンター達の度肝を抜いた。
なんと____
____遠方にある的に目掛けて一直線状に地面が抉り取られていた。
的の立っていた地点にゲンジが背中を向けながら立っており、その足元には粉々に砕け散った的の破片が散らばっていた。
「これが…G級ハンターの力…かよ…」
「俺たち…とんでもねぇ奴に反抗してたんだな…」
改めて辺りの上位ハンター達は自身の力量と、数々の死線を潜り抜けてきた者との力量の差を染み込む程にまで感じた。
装備の強さでその者の強さが決まる。それは“下位”まで。上位の者達は武の心得などを会得して身体を活用する者が多いが、更なる高みすなわちG級とは己の身体と纏う装備をフルに活用する真の猛者達の領域である。
◇◇◇◇◇◇
それから、その日の鍛錬を終えた皆は食事を終えると、ゲンジはある事を尋ねる為に、フゲンの元へとエスラ、シャーラと共に向かう。
「フゲンさん。話がある。ゴコク殿とウツシ、ハモンさんとヒノエ姉さんとミノト姉さんも呼んで欲しい」
「…ん?」
◇◇◇◇◇◇
皆が布団で一休みしている最中、カムラの里の中心人物達はゲンジとシャーラ、そしてエスラに呼び出され、拠点の入り口に輪を作るように座っていた。
「ゲンジよ。急にどうしたのだ?」
「百竜夜行についてだ。前回と前々回について知っているアンタらと情報を集めているウツシに話を聞きたい」
そして、ゲンジは自身が抱いていた疑問を話す。
「百竜夜行の予報の外れについてだ。いくらなんでも急すぎると思わないか?」
「数十年周期って聞いてたけど……前回から早すぎる」
「まぁ…確かにそうだな。俺も同じ事を考えていた」
ゲンジとシャーラの言葉にフゲンも怪しいと思っていた。数ヶ月間は起こらないとされていたのになぜ、急に数日後に起こる事が予想されたのか。
「前回と、前々回。起こる直前に何かなかったか?天候やガルク達が異常に吠えるとか」
「うぅむ……50年前と数ヶ月前か…」
「あぁ。思い出した」
フゲンやゴコク達は50年前を何とか思い出そうとする。そんな中、ハモンは当時を思い出し、話し出した。
「確か、50年前は発生する1ヶ月ばかり前から各地で強風が確認されたな。そして百竜夜行が始まる数日前にその強風が大社跡を襲っていた」
「…となると、前回も同じだな。私達がこの地域に来た時に強風どころか台風が襲っていた。その直後に百竜夜行が起こったのだろう?ゲンジ」
「あぁ。エスラ姉さんの言う通りだ。それからこれを話しておく」
そして、ゲンジは話をつなげる為に、ユクモ村の帰りの最中に古龍を目撃した事を打ち明ける。
皆は驚いていたものの、話をつなげる事を告げると冷静になる。ゲンジは今回そして、前回、前々回から、数百年間に渡る百竜夜行の発生する原因を予想した。
「今回は俺が古龍を見た直後に予報が外れた。発生する直前期に暴風が発生していたとなると…百竜夜行は風を操る古龍が原因なんじゃねぇか?」
「風を操る古龍…それならば、既にユクモ村にて撃退された筈では?まさか、戻ってきてしまったとか」
ヒノエは風と聞き、霊峰に潜むアマツマガツチを予想したが、ゲンジは首を振る。
「古龍は撃退されたら数百年は未開の土地で眠る筈だ。だからアマツマガツチじゃねぇ。アマツマガツチとは別に風を操る古龍だろうな」
「成る程…ですが、そのようなモンスターとなるとアマツマガツチ以外にクシャルダオラしか思いつきませんね」
「アイツは寒冷地帯が住処だから今回とは関係ないな。ゴコク殿は知らないのか?」
ゲンジは竜人族の中でも年寄りとされているゴコクに目を向けた。彼はかれこれ数百年は生きている。ならば、その古竜の手掛かり、または情報の欠片でも持っているのではないか。そう思い、ゲンジは問う。
「ふむ…」
目を向けられたゴコクは難しい顔をしながら顎に手を当てると、申し訳なさそうな表情を浮かべた。
「すまぬ。儂も分からないな」
「そうか。ゴコク殿も分からないとなると、俺が見つけたのは……新種なら問題だな」
ゲンジはゴコクを責める事なく頷くと、自身が見たあの蒼い皮膚を持つ古龍を思い出す。古龍は新種が見つかったとなると、ハンターズギルドが大騒ぎになる程の大事態だ。
「ハンターズギルド本部に問い合わせてみるでゲコ。聞けば少しは分かるやもしれぬ」
「頼む。俺達も古龍観測所に知り合いがいるから聞いてみる」
その後、ゲンジ達は解散して、それぞれの寝場所へと戻った。
今日は昼間に鍛錬を行った故にゲンジは眠気に襲われており、1人で訓練に出かけようとはしなかった。