薄明と双子の姉妹 (リメイク中) 作:きょうこつ
4人に全身を揉みくちゃにされた後に気を失ったゲンジはその後 ヒノエに揺すられる形で目を覚ます。辺りには着物が着崩れているミノトやインナーから乳房が零れ落ちそうなエスラとシャーラが寝息を立てていた。自身が眠っていた布団は汗でベタベタとしていた。
「……早く布団干そ…」
「ふふ♪そうですね」
昨夜の出来事を思い出して頬を染めるゲンジにヒノエは微笑む。二人は皆が使っている物以外の布団を洗い外へと干した。
「〜♪」
晴天が照らす中、ゲンジは隣で意気揚々と鼻歌を歌いながら布団を干すヒノエにある事を尋ねた。
「その…大丈夫か?里についた途端に倒れたって聞いたが…」
それは昨夜、シャーラから経過日数と共に聞いた話であった。ヒノエは里へと帰還した瞬間に倒れてしまい丸1日寝込んでいたらしい。
その間 ミノトはつきっきりで涙を流しながら自身とヒノエの看病をしていたようだ。
自身は問題ないのだが、ヒノエのことが心配であったが故に尋ねると、ヒノエは笑みを浮かべながら頷いた。
「大丈夫ですよ。ミノトのおかげですっかり元気になりました。それよりも…」
ヒノエはゲンジの頭や胸に巻かれている包帯に目を向ける。すると、ヒノエの表情が一変し、悲しげに曇りだした。
「貴方の方が重傷である事を…分かっていますか?」
「その…悪かった。ずっと隠していて」
ゲンジは今まで自身の中にイビルジョーの思念が眠っていた事を黙っていた事について謝罪した。
「話したくない貴方の気持ちも分かります。ですが…貴方ばかり苦しんでいる姿を見るのはもう我慢できません。なのでこれだけは言わせてもらいます」
ヒノエの布団を干す手が止まると4本の透き通った手が自身の手を掬い取り両手で包み込んだ。
「もっと自分を大事にして私達を頼ってくださいね」
その真剣な眼差しには包帯が巻かれた自身が映っていた。彼女がこんな表情を浮かべるのは久しぶりである。自身があの日、初めて胸の内を告白した日を思い出した。
「分かった…」
「ヒノエとの約束ですよ?」
「あぁ」
静かながらも彼女に頷く。ゲンジが頷いた事に安心したのかヒノエの曇り掛かった表情が晴れ再び笑みが浮かび上がる。
「ふふ♪」
そしてその優しい笑みを浮かべながらゲンジの頬へと口付けをした。
その後 皆を起こし朝食を済ませると、インナーの上から和服を着用する。ヒノエはすぐさま1日分の仕事を終わらせる為に里の受付場へと向かっていった。
そんな中 ゲンジはある事を思い出した。
「俺のアルコバレノは…?」
「それがな…」
シルバーソル装備は見当たるも、自身が愛用していたアルコバレノが見当たらないのだ。それについてインナーの上に同じく和服を纏うエスラに問うと、気まずい表情を浮かべながら答えた。
ゲンジが暴走した際に砥石を使わず不安定な切れ味のまま過剰な攻撃をヌシであるリオレウスに当て続けた為にアルコバレノの刃が欠けると同時に切先が歪んでしまったらしい。
今はハモンが預かっているようだが、本人からも修復は不可能と判断されたようだ。
それを聞いたゲンジは自業自得だとしても肩を落としてしまう。
「ッ…天殻がパーになっちまったか」
ゲンジにとって、アルコバレノは正に血と涙の結晶であった。死に物狂いでG級個体であるブラキディオス を狩猟し、やっとの思いで手に入れたその稀少部位がこんな数ヶ月で水の泡となってしまったのだ。
「仕方ねぇ。しばらくはコイツを使うか」
恥ずかしい事にゲンジの武器は種類が少なかった。所持しているのはアルコバレノに加えて後はジンオウガの双剣である『王牙双刃【土雷】』
苦渋の判断の末に後者の双剣をしばらく扱う事に決めた。G級装備ではない為に攻撃力が格段に低くなってしまうが、それでも十分に強力な武器である。
塚を掴むと、二度三度空中に放り投げキャッチし、馴染ませる。
「まぁ悪くはないか」
ゲンジは馴染みを確かめると武器を立て掛ける。
「行きますよ。旦那様」
「あぁ」
ミノトに呼ばれると草履を履くべく腰を下ろした。
ゲンジが目覚めた事を聞いたゴコクからあの時の話を聞きたいと言う伝言をミノトから伝えられ、集会所へと向かう事となったのだ。
「……」
その呼び出しに応え集会所へと向かうべく草履を履くもゲンジの身体は少し震えていた。あの時の自身を見られたならば、里の皆に少し嫌悪感を持たれてしまったのではないか、気味悪がられてしまうのではないかという恐れが現れていたのだ。
すると、その震える姿を見たミノトは落ち着かせるかのようにゲンジの肩に手を置いた。
どんな結果であれ旦那様が皆を守ってくれた事に変わりありません。だからご心配なさらないでください」
「…ありがとな…」
ミノトの言葉によって、多少の自身を取り戻す事ができたのか、重く苦しい緊張感が少し和らいだ。
ミノトにお礼を言うと共に集会所へと向かった。
◇◇◇◇◇◇
「おぉゲンジよ!!目が覚めたか!」
集会所へと着くと陽気な高笑いを浮かべながらフゲンとテッカちゃんの前右脚で踏まれているゴコクが出迎えた。
「悪い。心配かけたな」
「いやいや気にするな。お主が無事で本当に何よりだ!」
フゲンはいつもと変わらず笑みを浮かべながらゲンジの両肩を叩く。
「あの…それよりゴコク様が…」
そんな中でミノトのふと漏らした声にゲンジとフゲンは共にテッカちゃんの足元へと目を向けた。よく見ればボコボコにされた跡もある。
「ゴコク殿もすまない。ただ無事で何よりだ」
「いや…今現在進行形で無事じゃないんですが…」
「いやいやゲンジよ。気にせんでえぇでゲコ。それで突然じゃがのう。……あの助けて…」
その後 テッカちゃんに退いてもらう様に説得すると頷き右前脚をゴコクから退けた。何でもおやつをくれないから拗ねていたらしい。それだけで足蹴にされるとは完全に嫌われているのではないのだろうか。
◇◇◇◇◇◇
その後、ミノトは受付場にて仕事に取り掛かる。その一方でフゲンとゴコク、そしてゲンジは集会所にある椅子に座ると向かい合った。まず、フゲンから青いモンスターが現れた事を伝えられた。それについて、ゲンジも意識だけはあった為に頷き、ユクモ村から帰ってくる際に見た奴と同じである事を話した。
そうなれば、現れたモンスターは古龍という事になるだろう。現在はハンターズギルドが行方に加えて百竜夜行との関連性を調査しているようだ。
話が簡単に終わると、フゲンは自身に向けて気まずい表情を浮かべていた。それについてはもうミノトから聞いている。
「アンタらが聞きたいのは分かっている。俺の中に眠る奴の事だろ?」
「うむ。お主には酷かもしれぬが…話してくれるか?」
「あぁ。いつかは話さないといけないからな」
ゲンジは頷く。そして、自身の内に眠るイビルジョー について知っている事全てを打ち明けた。
「奴は古龍を見ると俺の意識を食い千切り表面に出てくる。俺が意識を保てば肉体の所有権を取り返す事はできねぇが、奴と同じ景色。そして、モンスターの声が聞くことができる。
意識を乗っ取られたあの時 奴の声と共にあの古龍の声が頭の中に響いてきた」
ゲンジの話にフゲンは既視感を感じ、ヒノエの事を思い出す。彼女も同じく頭の中に突如現れたあの古龍の声が聞こえてきた事を話していた。
「ヒノエの共鳴に似ているな…。何と聞こえたのだ?」
「其は誰ぞ_____其は誰ぞ。まるで俺の中にいるイビルジョー に向けて問いかけている様だった。そして奴は答えた。
『我は悪魔』『汝らを喰らうが為に深淵より参った暴食の権化なり』
___とな」
「俺達が聞こえた時と同じだな。その後は何かなかったか?」
「あぁ。その後は奴は中に引っ込んだな。あそこまで表面化して出てきたのは初めてだった。黙っていて本当にすまなかった」
ゲンジは頭を下げる。だが、その謝罪をフゲンはゴコクと共に即座に否定した。
「謝る必要などない。寧ろ感謝している。確かに最初は驚いていたが、それでもお主のお陰で俺達は救われたのだ」
「そうでゲコ。だからあまり重く受け止めるな。モンスターの血が流れていようと、儂らを救った英雄に変わりないでゲコ。それに里の皆も気にしておらん。だから安心して胸を張って欲しいでゲコ」
二人の言葉は自身の中に僅かながに残っていた不満を全て消し去ってくれた。
自信を取り戻す事ができたゲンジは安堵の表情を浮かべると二人に向けて頷いた。
「あぁ」
その後、3人で団子を食するとゲンジはミノトに手を振りながら集会所を後にした。
「(俺は…幸せ者だな…)」
多くの皆の言葉を思い出しながら心に呟く。だが、百竜夜行が終わった訳ではない。
ゲンジは目を鋭くさせると右腕を握り締める。
「(近い内に確実に元を食い殺してやる…!!)」
そう誓うゲンジの右目が一瞬だけ黒色に染まった。
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