薄明と双子の姉妹 (リメイク中)   作:きょうこつ

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晴れることのない不安

百竜夜行を撃退して5日が経った。未だに現れた古龍の観測は続けられており、百竜夜行との関連性は掴めていない。

 

傷が完全に完治した事でゲンジは身体の感覚を取り戻すべく、『アンジャナフ』の狩猟へと向かう事に決めた。集会所にてクエスト受注の手続きを終えると、すぐさま出発口へと向かう。

 

そんな時だ。

 

「あの…ゲンジ…」

「ん?」

突然 ミノトが出発しようとするゲンジの手を掴んだ。その目からは何かを気にかけているようだった。

 

「大丈夫ですか?何か…気分が悪いとかありませんか?」

あの日からミノトは毎日ゲンジとヒノエに聞きながら体調の良し悪しを確認していたのだ。それに対してゲンジは答えた。

 

「あぁ。今のところ奴の声は聞こえないから大丈夫だ」

「分かりました。なら良いです…何かあったら絶対に言ってくださいね…!!」

「あ…うん」

ミノトの剣幕に押されながらもゲンジは頷きクエストへと向かっていった。

 

「……」

頷いたとしても、ミノトの顔からは不安が消える事は無かった。

 

それは砦に戻った時にエスラから更に聞かされた話が原因だ。彼がもし、再び飲まれてしまえば、再びあの恐暴な姿へと変化してしまう。それは絶対に阻止しなければならない。

 

 

◇◇◇◇◇

 

「エスラ。一つ聞かせてもらいたいが…もしゲンジが古龍と対峙したらどうなってしまうのだ?」

 

フゲンの質問に皆も同じくエスラに問う。それに対してエスラは全てハッキリと答えた。

 

「奴はまず完全に意識を食い破る為に出てくるだろう。そして、もしもゲンジの意識が完全に食い潰されれば…乗っ取られたその瞬間からしばらくは肉体の所有権が奴に握られる」

 

『『…!!』』

 

皆は絶句した。ただでさえ完全に表面化していない状態でもヌシであるリオレウスを下し、そして現れた古龍を恐れさせた。それ以上の暴動が丸一日続くのだ。

 

そして、エスラは過去に一度だけ起こったその事例を話した。

 

「最初に起きたのはまだゲンジが薬を打たれたから間もない8歳の時だ。ある日…私達の住む村に狩場からドスジャギィが迷い込んでな。その時はハンターも男達もいなかった為に村中がパニックとなった。私はシャーラとゲンジの手を引いて逃げていた」

 

◇◇◇◇◇◇

 

「ゲンジ!シャーラ!こっちだ!」

逃げなければ食われる。既に一人の子供が食われていた。そんな時だった。

 

「ゲンジ!何故止まる!?」

突然、ゲンジは足を止めた。私は即座に叫び、手を引いたが、彼はまるで鉄のように硬く、動く事がなかった。すると、ゲンジは突然 振り返り、走り出した。

 

「おい!ゲンジ!」

彼が走り出した先には1匹のジャギィがいた。人間の子供よりも倍の大きさを誇るジャギィはゲンジに目を向けた瞬間 牙を剥き襲いかかってきた。

 

「…!」

もう間に合わない。私は食べられてしまうという危機感からシャーラと共に目を瞑った。諦めていた。

 

そう思っていた。

 

 

「ギィェェ…!!」

 

ジャギィの弱々しい声が聞こえた。それと同時に肉を貪る音も聞こえてくる。

 

私達は恐る恐る目を開けた。そこに映っていたのはとても信じられない光景だった。

 

「おいゲンジ……何をやってるんだ…?」

 

___何とゲンジがジャギィの腑を引き摺り出し、血に混じった肉を食っていたんだ。次々と血生臭い…人間が直に嗅げば吐き出してしまいそうな異質な物を美味しそうにゲンジは食べていた…。

 

私達は何も言う事が出来ず、その場で腰が抜けてしまった。そして血肉を食べ終えたゲンジはジャギィを食べ尽くすとナイフを握り今村の中心部で備蓄を食らっているドスジャギィへと向かって走っていった。

 

その後は正に悲惨な状況だった。

 

現れたドスジャギィをゲンジは蹴り1発で吹き飛ばし転倒させると、顔へ向けて何度もナイフを突き刺していった。脳味噌へとナイフを突き立てて遂にはスクランブルエッグのようにグチャグチャにされたドスジャギィはそのまま息絶えていき、そしてゲンジはまたその血肉を喰らっていた。

ドスジャギィの死体を喰らうゲンジのその目はドス黒い血の色に染まっていた。そう。あの古龍が現れた時の様にな。

 

辺りにいる村の皆はその光景を眺めていた。

 

____恐怖の目を浮かべながら。

 

それから訳数時間が経った時 ゲンジは突然 目を覚ました。腹の中に溜まっていた血や生肉の生臭さに吐き気を促されたのか、皆の元から離れていくと人知れずの場所に行き、吐き出していた。私達が駆けつけていた時には既にゲンジの足元には胃の中に取り込まれていたジャギィの血肉が全て吐き出されていた

 

◇◇◇◇◇

 

「何とも信じ難いが…今回の事があれば納得のいく話だな」

フゲンの言葉に皆は頷く。

 

「そうだ。そしてその日から…ゲンジへの差別は激しさを増していった。石を投げられ、殴られ……話しかければ無視され……思い出すだけで腹が立ってくる」

 

「姉さん…」

見るとエスラは歯を食いしばりながら右拳が握られており、そのまま地面に叩きつけていた。聞いていたシャーラは昔を思い出したのか、俯いてしまう。

 

「…話を戻そう。ゲンジが奴に支配された時、肉体の能力が桁違いに変化してしまう。8歳というイオリやヨモギよりも幼い子供が駆け出しハンターの苦戦するドスジャギィを蹴りで吹き飛ばすんだからな。下手をすれば子供ながらG級ハンターと同等の力を得られるだろう。その代わり…数時間は奴に肉体を乗っとられるのだ。故にゲンジはずっと奴を抑え込んでいた。奴の力に飲まれないように。

 

だが、今回はそれが起こってしまった」

エスラは眠っているゲンジの頬を撫でる。

 

「簡単に言えば、古龍とゲンジを鉢合わせる事は起爆剤になる。それだけだ」

 

話を聞いていたヒノエはもちろん ミノトもゲンジが自身らにずっと隠していた更に辛い過去に何も言葉を発する事ができなかった。

 

◇◇◇◇◇◇

 

「ゲンジ…(貴方には私達がついています…なので…人である事を捨てないでください…!!)」

 

そう心に願いながらミノトはゲンジを見送った。

 

ーーーーーーー

ーーーーー

ーーー

 

クエストの為に砂原へと着いたゲンジの前には巨大なアンジャナフが立っていた。

 

___グロォオオオオオオオ!!!

 

 

 

ゲンジを見たアンジャナフは巨大な咆哮を放つ。それに対して怯む事なくゲンジは双剣を構えた。王牙双刃の刃に蒼い雷が纏われる。

 

「さて…いくか…!」

人間として生き生きとした目を向けながら双剣を逆手持ちにするとアンジャナフへと向かっていった。

 

 

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