薄明と双子の姉妹 (リメイク中) 作:きょうこつ
無事にアンジャナフを討伐し終えたゲンジは空を見上げた。
「__ん?」
広がる広大な青い空を一筋の赤い彗星が横切っていた。
「……こんな時期に彗星なんてあったか…?」
その彗星は赤い軌跡を残しながら一直線に進んでいった。けれども、それにゲンジは興味を示さなかった。
その時だ。
『依代よ…!!餌が近い。我に喰わせろ…!!』
突然 頭の中にイビルジョー の声が響き渡り、頭痛が襲ってくる。
「ぐぅ!?」
意識を乗っ取ろうとしているのか額から次々と冷や汗が出てくる。それに対してゲンジは精神を統一させると心の奥底から叫ぶ。
「見間違いだ…!!大人しく寝てろ!!!」
その叫び声をあげた瞬間にイビルジョー の声が止まり、頭痛がたちまち引いた。何とか抑えることに成功したのだ。
「ふぅ…疲れさせるんじゃねぇよ…」
頭から手を離すとゲンジは荷物を抱えて砂原を後にする。その背後の空を駆ける赤い彗星はそのまま空の彼方へと飛び去っていった。
◇◇◇◇◇◇
クエストから帰還した時には既に時刻は昼を回っていた。集会所へ到着するといつものようにミノトが出迎えた。
「お帰りなさいませ。お怪我はありませんでしたか?」
「大丈夫だよ。ほら奴の素材だ」
ゲンジはクエスト完了の証として素材を前に出し、そして依頼書を見せる。
「お疲れ様です。こちらが報奨金になります。ご確認を」
「あぁ」
ミノトは印鑑を付くと報奨金の積まれた袋をゲンジへと手渡した。アンジャナフは強力なモンスターなために報奨金の額も高い。その報奨金を確認しポーチにしまうとゲンジはミノトへと声をかける。
「そういえばそろそろ昼休みだよな。一緒に団子食いに行くか?」
「え…!?」
ミノトは今聞こえた言葉を確かめるために耳を某元議員の様に傾ける。
「もう一度…よろしいでしょうか…?」
「いや、団子一緒に食いに行こうって…」
「……ヒノエ姉様付きで?」
「あぁ」
その瞬間 ミノトの身体が飛び上がる。
「行きましょう!すぐに行きましょう!!こうしてはいられません!!今日の集会所の受付は終了します!!」
「おいおいおい!昼食くらいで何やってんだ!?やめろ!終了の看板立てんな!釘で固定すんな!」
◇◇◇◇◇◇
その後 打ち付けられた『終了』の看板を引っ剥がし、ミノトを落ち着かせると共に広場に向かう。
「ゲンジから誘ってくれるのは久し振りですね。嬉しいです」
「それだけで集会所の受付を終了させるとなると流石に今後は考えるぞ…」
準備を終えたミノトはゲンジと共に集会所を出る。昼休みのためにいつも人通りのある道にはたった数人しか歩いていなかった。カムラの里の大体の昼飯はセイハクのおにぎり又はヨモギの団子であるために皆はそちらに行っているのだろう。
「あ、靴紐が」
そんな中 ミノトの靴紐が解けてしまう。
「先に行っててください。すぐに追いかけるので」
「分かった」
ゲンジは頷くと、そのまま階段を降り、ヒノエの待つ受付場へと向かおうとした。
一段一段と階段を降りる。そんな中で、ゲンジは自身の両手を見る。今回のクエストでは奴が現れたが、自身の精神で抑え込めた。耐性が現れ始めていたのだ。このままいけば、自身がイビルジョー の意識を取り込む事が可能になるだろう。それに、彼女達が側にいると安心するのだ。
故に今回は自身から誘った。
「偶には…こっちからも誘わねぇとな…」
その時だ。
「ゲンジ!」
「ん?」
背後から突然 ミノトの叫び声が聞こえてきた。何やら慌てているようであり、何だろうと思いながらゆっくりと振り向く。
「どうした?紐が切れたの___か…?」
振り向いた瞬間 ゲンジの顔が一瞬で怒りに満ちた。
「大人しくしろ!暴れんじゃねぇ!!」
振り向くとミノトが一人の男に首に手を回される形で抑えられていた。そしてその左右には二人の男が手に鋭利なアイスピック、そして小型ナイフを持ちながら立っていた。
この男をゲンジは……いや、里にいる全員が知っていた。3人とも顔に殴られた痣があり歯も折れていた。
ミノトを抑え込んでいる男はゲンジを見るとニヤニヤと笑みを浮かべながら恨みの困った悍ましい目を向けた。
「よぅ久しぶりだなぁ〜。薄明のゲンジさんよ〜?」
その顔を見た瞬間 ゲンジの眉間に皺が寄り、目元から毛細血管が脇立つ。その3人の男は一時期、カムラの里からハンターの信用を奪い去り、更に自身の妻であるヒノエの精神を崩壊寸前まで追い詰めた元凶。
「テメェら…!!!」
そこに立っていたのは一度ゲンジによって重傷を負わされたデン レビ そしてマルバだった。