薄明と双子の姉妹 (リメイク中)   作:きょうこつ

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逆恨み

「久しぶりたなぁ?薄明のゲンジさんよ〜」

 

「テメェ…!!」

 

そこに立っていたのはマルバとデン、レビであった。前に殴った箇所には痣ができており、髪を引きちぎられた箇所は既に毛が生えていた。前よりも目は血走っており、狂気に満ちていた。

 

「どうしましたゲンジ!?」

 

咄嗟にゲンジとミノトの悲鳴を聞いたヒノエが駆けつける。

 

「貴方は…!!」

ヒノエは現れたマルバを見ると目を大きく開いてしまう。それと同時にこれまでに無いほどまで目を鋭くさせた。

 

「妹に何をしているのですか……?」

 

「おうおう。誰かと思えば役立たずの大飯ぐらいじゃねぇか」

 

「…!!」

その言葉にヒノエはあの日の事を思い出してしまう。それに気づいたゲンジは即座にヒノエの肩を掴む。

 

「よせ。耳を傾けるな」

 

「…えぇ」

 

ゲンジの声にヒノエは我に帰り、即座に気を持ち直す。状況が最悪だ。見るとミノトの首筋にはナイフが突きつけられていた。

 

「…妙だな…」

ミノトならばマルバ程度の男の拘束は解けると思っていたが、よく見ると3人の腕と脚の筋肉が発達していた。

 

「テメェら…まさか怪力の種か鬼人薬を飲んでやがるな…?」

 

「察しがいいな。そうさ。俺たち3人は鬼人薬を飲みまくって前よりも筋力を強化したのさ!さて、まずはそのまま動くなよ?後ろのジジイもそうだ」

 

マルバ達はゆっくりと階段から降りてくる。背後からミノトを救出しようと試みたゴコクの存在にも気づいていたのだ。

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

広間の真ん中へと着いたマルバはデンとレビに椅子を用意させるとミノトの首にナイフを突き付けながら腰を下ろす。辺りから次々と里の皆が出てきた。

 

「テメェら。何が目的だ?」

ゲンジは額に筋を浮かべながらマルバへと問う。すると、マルバは鋭い目をゲンジへと向けた。

 

「決まってるだろ?お前への復讐さ。俺があの後どんな目にあったと思ってる?辛かったぜ。親父にボコボコにされた挙句、勘当。横にいる二人もだ。全部お前の所為なんだよチビ野郎!!」

マルバの口から次々と放たれる恨言。だが、全ては自業自得である。彼らが里を騙しヒノエへと罵詈雑言を浴びせなければ起きなかった事だ。完全なる『逆恨み』である。

 

「それは貴方達が…!」

「待て」

返答しようとしたヒノエをゲンジは止めた。マルバのナイフがミノトの喉元に突きつけられている。下手に返答すれば何をしでかすか分からない。故にゲンジは要求を飲む事に決める。

 

「なら、どうすればいい?」

 

「そうだな〜。う〜ん。まず装備を脱いで土下座をしろ。地面に深々と頭を突きつけてな。そして謝罪しろ」

 

「……」

その要求に対してゲンジは装備を外すと前へと出てマルバに対して膝をつく。

 

「ゲンジ!やめてください!私に構わずこの人を!」

ミノトは叫ぶもゲンジは答えず、ただ深々と地面へ頭をつけた。里の者達はただ見ていることしか出来なかった。

そして深々と頭を下げたゲンジは聞こえるように謝罪の言葉を口にした。

 

「………すいませんでした」

 

「あ〜?聞こえねぇぞ?もっと大きな声で言えよ」

マルバは耳を傾けながら促す。それに対してゲンジは返答することなく先程よりも大きな声で、そして、恨みの感情を混じらす事なく口にした。

 

「本当にすいませんでした」

 

すると マルバ達はヘラヘラと笑い出す。

 

 

「見ろよ!薄明って異名つけられてるハンターの土下座だぜ!?マジで傑作だな!!」

 

「本当にその通りだ!あの時の威圧感がまるで感じられねぇよ!!」

次々とゲンジに向けて彼らは罵詈雑言を浴びせていく。3人の醜悪に満ちた笑い声が辺りに響き渡る。

 

「ぐぅ…!」

その様子を見ていたフゲンは痺れを切らし前へと出た。

 

「お主達の目的は分からん…だが、どうかミノトを解放して欲しい。必要ならば金を払おう。頼む…!」

 

里長としてのプライドを捨て、自身の幼馴染であるミノトを救うために頭を下げた。それに対してマルバは答えた。

 

「流石は里長だ。非常事態の対処法を心得てる上に仲間思いか。ならよぉ?今からそのチビをボコるから手を出すな。俺達の気が済んだら解放してやるよ」

出された条件は簡単に言えばゲンジを売り、ミノトを買う。誰よりも里の皆を思うフゲンにとってはその条件は決して飲めるものではなかった。そしてゲンジに向けて拒否の念を促そうとするミノトの口を手で塞いだ。

 

「な…!そんな要求…!」

 

 

「___いいよ」

 

フゲンが断ろうとした時 目の前で土下座をしていたゲンジはその要求を飲んだ。

 

「俺をいくら殴っても良い。だから…ミノト姉さんには手を出さないでくれ…頼む」

再びゲンジは深々と頭を下げた。それを見ていたフゲンは即座にゲンジに対して怒りの声をあげる。

 

「おいゲンジ!!」

 

「黙ってろクソジジイ。ミノト姉さんが助かるくらいなら安いものだ。それ以外に奴からミノト姉さんを離れさせる術がねぇ」

 

「ぐぅぅ…」

確かにそうだ。あの距離ならばクナイを投げたとしてもミノトにも被弾してしまう。ボウガンも音次第ではバレてしまうだろう。ハモンも構えていたボウガンを下げてしまう。

苦渋の判断の末、フゲンはゲンジに任せて引き下がった。

 

「いいか里の奴ら。コイツはフゲンさんじゃねぇ。俺が独断で決めたんだ。絶対に責めるんじゃねぇぞ」

 

ゲンジは辺りの皆へと呼び掛ける。皆はそれを理解はしていた。だが、最も辛いのはフゲンの方だろう。

 

そんな中 マルバは笑みを浮かべながら左右の二人へと目を向ける。

 

「お前ら。先にやっていいぞ。俺は最後でいい。お前ら二人でまずは楽しめ」

マルバの言葉に二人は頷くと、手に小型ナイフとアイスピックを持ち、土下座をするゲンジへと向かっていった。

 

◇◇◇◇◇◇

 

二人はゲンジの前へと着くと、恨みの込められた目を向けた。

 

「おいこのチビ野郎。前はよくもやってくれたな?お陰で彼女に逃げられた上に勘当されちまったよ」

 

「同じくだ。どう責任とってくれるんだぁ?あ"ぁ!?」

 

「ガハァ…!」

その言葉とともにレビの蹴りが土下座をするゲンジの脇腹へと入り込む。怪力の種と鬼人薬を飲んでいるために筋力が前とは比べ物にならない程発達していた。故にゲンジは口から息を吐き出す。

 

「お前 前に言ってたよな?俺たちの事を『ハイエナ』ってな。今すぐこの場で叫べよ。『ハイエナと罵ってすいませんでした』とな!」

 

そう言いデンの蹴りが反対側の脇腹へと打ち込まれる。次々と左右から放たれいく蹴りにゲンジの身体は次々と傷がついていく。

 

「はぁ…はぁ…はぁ…」

蹴りが止むとゲンジは息を切らしながら謝罪する。

 

 

「ハイエナと…罵って…本当にすいません…でし…ガァ…!」

その時だ。ゲンジの頭へと謝罪の言葉を要求したデンの蹴りが打ち込まれた。ゲンジの身体が吹き飛ばされ、砂状の地面を転がるとうつ伏せになる。

 

「ムカつくんだよ!!俺達より長くハンターやってるからって偉そうにベテランぶりやがって!!」

「どうせその装備も強い奴に寄生して作ったんだろ!?ド汚ねぇ野郎だなぁ!!」

そう言いデンは次々とゲンジの身体へと蹴りを入れる。それはレビも同じだ。彼らの何の根拠もない恨み言の込められた蹴りが何発も小さなゲンジの身体へと打ち込まれる。

ゲンジのインナーの間から露出している肌に靴の皮が擦り、擦り傷をつけていった。

 

「ゲンさん!」

 

「ゲンジさん!!」

 

その様子をもう見ていられなかった里の数人の男達が止めに入るために向かおうとする。

だが、それに対してゲンジは怒声をあげた。

 

 

「来るなぁ!!!」

 

その怒声に止めに入ろうとした数人の男達は脚を止めた。ゲンジはうつ伏せになる中、向かってくる里の男達に目を向けながら叫んだ。

 

「絶対に来るな!!来たらぶん殴るぞ!!お前らの手は鉄を叩くためにあるんだろ!!」

 

「ぐぅ…」

その言葉に数人の男達は歯を食いしばりながらその場で立ち止まってしまう。ゲンジも耐えているのだ。ここで自身らが下手に手を出してミノトに何かあってしまってはゲンジの我慢が無駄になってしまう。

 

 

「お〜怖っ。助けに入ろうとした奴に殴るぞだってよ」

 

「鬼畜だぜコイツは。人間じゃねぇや」

ゲンジの必死の言葉を彼らは嘲笑うと、手からアイスピックそして小型ナイフを取り出す。その切先は入念に研ぎ澄まされているのか鋭利となっており、太陽の光が反射していた。

 

「さぁ〜て。そんな奴には制裁を加えてやらないとな〜デン」

 

「そうだなレビ。おらクソチビ。さっさと土下座し直せよ」

デンはつま先でゲンジの腹を突く。すると、それに答えたゲンジは先程の痛みがまるで通っていないかのように震え一つ起こす事なく土下座をした。

 

「よぉ〜し。そのまんま動くなよ〜?」

 

アイスピックを持ったデンはそのまま地面についた手を押さえる。それを見ていたヒノエは目を震わせる。

 

「何を…するつもりですか…?」

 

「決まってるだろ?文字通り“制裁”だよ…!」

そして、デンの手に持ったアイスピックの先端部分がゲンジの手の甲へと向けられた。

 

「…!!」

 

それを見た瞬間 ヒノエはもう我慢の限界が来たのか、怒りの形相を浮かべながらデンへと向かおうとした。

 

「来るな姉さん」

だが、それをゲンジは再び怒声を放つ形で止めた。

 

「俺は大丈夫だ。……だから絶対に来るな…!!」

その声は先程よりも勢いが失われていた。何発もの暴行を加えられた事により、ゲンジも少しずつだが強靭な肉体にダメージが蓄積されていったのだ。

 

「おうおう。本当に酷い奴だな〜?せぇ〜っかく助けに入ってこようとした奴に向けてよぉ?そんな酷い奴には〜」

 

デンのアイスピックが振り上げられた。

 

 

「罰を与えないとなぁぁ!!!」

 

そして振り上げられたアイスピックが一気に振り下ろされ、ゲンジの手の甲へと突き刺さされた。

 

 

「ぐぅ!?」

燃えるように熱く、そして一点に集中する痛みにゲンジは苦痛の表情を浮かべる。

突き立てられたアイスピックはゲンジの手の甲から平へと貫通した。

 

「おいおい。一回目でこれか〜?」

アイスピックがゆっくりと引き抜かれると傷口と金属部分が擦れ更に痛みが襲ってくる。そして、アイスピックが抜かれると空洞となった箇所から大量の血液が漏れ出した。

 

「もっと頑張れ……よッ!!」

 

「ぐぅ…!!」

そして今度は腕へとアイスピックが突き立てられた。そして、次々とデンのアイスピックはゲンジの両腕を貫いていった。腕には何箇所も穴が空き、大量の血液が次々と流れ出ていく。

 

突き刺される度にゲンジは苦痛の声を上げていた。だが、決して叫ぶことは無かった。辺りにいる者達に不安を煽がないために。痛みを押し殺し、耐えていった。

 

「おっと。これ以上開けちまうと死ぬな。さて、次はお前の番だぞレビ」

 

「あいよ。だが、ナイフじゃ死んじまうな。棒くれよ」

 

「おぅ」

デンは近くにあった長い棒を拾うとそれをデンへと渡した。棒を受け取ったレビは次々と振りながら強度を確かめると、ゲンジに向ける。

 

「さぁ〜て?前の…お返しだぁ!!」

 

「ガハァッ…!!」

振り回された棒は風を切る音をたてながらゲンジの頬へと辺り、ゲンジの身体を吹き飛ばす。

 

「まだ死ぬなよ?全然満足してねぇんだからよぉ!!」

そう言い次々とレビは手に持った棒をゲンジへと振り回していった。硬い棒はゲンジの身体へと打ち付けられ痣をつけていった。

 

 

その振り回しが何十回と続く中 ずっと目の前で見ていたヒノエは涙を流しながらゲンジに向けて叫ぶ。

 

「もうやめてくださいゲンジ!!お願いします!!」

 

「そうだよゲンさん!これ以上やられれば死んじまうよ!!」

 

ヒノエは必死に訴えた。周りの皆も同じだ。もう見てはいられなかった。だが、それでもゲンジは反撃する様子を見せず棒による振り回しの直撃を受けていた。

そして、それをずっと目の前で見せられていたミノトも目を震わせながら何度も何度もゲンジへと叫んだ。

 

「ゲンジ…やめてください…私に構わず…反撃してください…!!」

ゲンジの頬が棒に打たれ、痣ができる。

 

「やめてください…!!」

身体が振り回された棒に打たれ、脆い音が響き渡る。

 

 

「やめてぇぇッ!!!!!」

ゲンジの身体の所々からは大量の血が流れ、足元を血の海へと変えていった。そして、ミノトの悲痛な叫びと共にゲンジの身体はその血の海の中に沈み込むようにうつ伏せに倒れた。

 

だが、その直後、うつ伏せに倒れたゲンジの顔がゆっくりと上げられ自身に向けられた。

 

「…!」

その顔には血に濡れていながらも狂気も怒りも混じっていない純粋な優しい笑みが浮かんでいた。

 

「すぐに…助ける…から…待ってろ」

 

そして、ゆっくりとゲンジは血を垂れ流しながらも立ち上がる。見ると脚と手は既に痙攣を起こしていた。身体のダメージが限界に近づいているのだ。

 

「さぁ……続きと…いこ…うか…」

だが、それでも彼は反撃する事はなかった。何の恨みも抱く事なく、ゲンジは二人に身体を向ける。ミノトを助けるために。

 

すると、それを見た二人は手に持っていた武器を下げた。

 

「…え?」

突然武器を下げた事で身構えていたゲンジは構えを解いた。

 

「はぁ…アホらし。もう飽きたわ。だろ?デン」

 

「そうだなレビ。なんかもうスッキリしちまった」

そう言い二人はゲンジから離れ、マルバへの道を開けた。

 

「行ってこいよ。もぅ俺達は何もしねぇからよ」

 

「あぁ。おいマルバ!俺たちもうスッキリしたからいいぞ〜!!」

 

レビの声にマルバは頷く。

 

「そうか。よし来いよチビ。この女を掛けて勝負しようじゃねぇか」

 

「………分かった…!」

ゲンジは頷くとデンとレビの間を通りマルバへとゆっくりと向かう。今もなおナイフがミノトの喉に突きつけられているため、走って向かう事はできない。

 

「(ミノト姉さん…今…助かるからな…)」

視界が少しずつ二重になってきている。意識が朦朧としてきている証拠だ。早くミノトを救出しなければならない。

 

その時だ。

 

 

「ゲンジ!!危ない!!!」

 

「避けてください!!」

ヒノエとミノトの声が聞こえてきた。それと同時に辺りからも次々と声が上がり始める。

 

「避けろゲンさん!!!」

「危ねぇ!!!」

 

「……え?」

何度も暴行を受け、身体能力が低下していたゲンジは気付くことが出来なかった。

 

 

 

 

 

___背後からナイフを振りかぶるレビの存在に。

 

 

 

 

 

刹那

 

 

ゲンジの背中にレビの振り回したナイフが斬りつけられた。

 

その瞬間 ゲンジの背中から血が吹き出した。斬りつけられたゲンジはミノトにたどり着く寸前にその場にゆっくりと倒れた。

 

「ゲン……ジ…?」

倒れた際に血が飛び散りミノトの頬に付着する。倒れたゲンジの目からは光が消え去っていた。

 

 

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