薄明と双子の姉妹 (リメイク中) 作:きょうこつ
「ゲンジさん。ゲンジさん」
「…ん?」
不意に寝ていた身体を誰かに揺さぶられて、ゲンジは目を覚ます。まだ日が顔を出していない明朝の前。自身の眠る布団の横にはヒノエが腰を下ろしていた。
「なんだ…?」
「来ましたよ。『大型モンスター』の狩猟依頼が」
「やっとか」
遂に来た狩猟依頼。ゲンジは肩の骨を鳴らすと、装備を纏う。シルバーソル装備は見た目は重いように見えるが、実は軽いのだ。素材として使われるリオレウス希少種の重殻も重鱗も硬く軽いという何とも異質な素材である。故に双剣使いのゲンジにとっても、比較的に動きやすい装備なのだ。
「いくか」
空はまだ暗い。だが、もうすぐ朝日が顔を出そうとしている。
「んで?そのモンスターはなんて奴だ?」
「はい。『オサイズチ』です」
『オサイズチ』
それは、多くの地方で見かけるドスジャギィと同類の鳥竜種である。ドスジャギィと同様に小型の肉食モンスター『イズチ』を従えており、集団で敵を撹乱させる戦法を持つという。何でも商人が向かう中で、遭遇したらしく、運良く逃げ切れたものの、未だ流通経路を闊歩しており、このままでは流通が停止してしまう可能性があるらしい。
ゲンジは未発見のモンスターに興味を持つ。
「名前からするに小型モンスターのリーダー的なやつか?」
「はい。ですが、ご油断はなさらないように。オサイズチは尻尾が斧のように鋭く、殺傷能力が高いので気をつけてください」
「あぁ」
ヒノエの僅かながらの情報を聞き入れると、ゲンジは大社跡へと向かう。
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鎌風一陣 迫り来る 鎌風二陣 攻め寄せる
長の鎌風 来たりなば 已すでに土壇場 三枚おろし___。
ゲンジは大社跡に到着すると、支給品ボックスを漁る。支給品ボックスには応急薬や、携帯食料が届けられているが、体力は秘薬があり、スタミナは強走薬がある故にゲンジはその系統のアイテムには目を向けなかった。ただ、地形だけは把握できていないので、支給品である地図を見て、即座に怪しい3点を見つけるとハチに向けて示す。
「ハチ。この場所に向かってくれ。最短に」
「ワン!」
ハチは返事をすると、ゲンジとミケを乗せて走り出す。
ハチの速度はいつも変わらず速く、あっという間にキャンプがある地点からモンスターが闊歩するエリアへと移動した。
乗る中、ミケはゲンジに場所を示した理由を問う。
「でもなんでここだって分かったニャ?」
「勘だよ」
ハチはゲンジ達を乗せたまま、目の前にある巨大で朽ちた鳥居を通り、深部へと入っていく。すると、中には竹林が見えてきた。
「…すぐ近くにいるな。見ろ。食い散らかした跡がある」
ゲンジが指さす方向をミケは見る。そこには、食い散らかされた草食モンスターの遺体があった。腸が既に引き摺り出されており、肉も引きちぎられていた。
それと同時に更に奥の竹林から、鳥竜種の鳴き声も聞こえてくる。
ハチは左右が竹林に挟まれた大きな道を進み、二手に分かれている道のうち、左手に曲がった。
すると、そこには目的のモンスターが、自慢の尻尾の切れ味を確かめるように竹を切る動作をしていた。
「いたニャ!」
数匹のイズチ。だが、一頭だけ明らかに巨大な個体が混じっていた。通常のイズチよりも発達した四肢とヒノエの情報通りの尻尾の先端部分に生えている鋭利な刃。
「ミケ、ハチ。俺がオサイズチをやる。お前らは周りのイズチを任せる」
「ニャ!」
「ワン!」
ゲンジは双剣を取り出すと、オサイズチに向かって駆け出す。強走薬を飲み、それと同時に鬼人化を行うと、目の前にいるイズチもろとも、オサイズチに向けて身体を回転させると、オサイズチ達に向けて刃を振るった。
「オラァ!!!」
身体を回転させながら放つ回転斬りはカマイタチの如く刃の嵐となり、オサイズチの至近距離にいた2.3体のイズチを吹き飛ばし、それと同時にオサイズチの額に傷をつけた。
「ギャオ!!」
ようやく気づいたオサイズチはすぐさま跳躍し距離を取ると、ゲンジに向けて威嚇する。
ゲンジはその威嚇する姿勢を隙と見て、更に双剣を振り回す。
「ハァッ!!!」
アルコバレノに宿された爆破属性の粘菌が次々とオサイズチに付着していく。更には、元の攻撃力も高いために、オサイズチはアッサリと怯んでいく。それもそうだ。ゲンジの極限に鍛え上げられた肉体が振るう双剣は成熟個体の中でも歴戦を勝ち抜いたG級個体の素材から作り上げられた武器だ。格が違う。
「キャイン!」
弱々しい声をあげると同時に攻撃された頭を引っ込めるように後ろへと後退する。だが、ゲンジは双剣を振るう事をやめない。
「ヴァア!!!!」
怯んだオサイズチに向けてゲンジは双剣を振り回し、肉を削ぐ。そして、遂に爆破属性の粘菌が赤く活性化し、遂には粘菌が付着していたオサイズチの頭部に付着した粘菌が爆発した。
「ギャァオオオ!!!」
上がる苦痛の悲鳴。だが、ゲンジは手を緩める事はない。苦痛の声とは即ち弱っている証拠だ。ハンターにとってその苦痛の叫びは原動力となる。
あとは完全に息の根が止まるまで斬り刻むだけだ…!!
ゲンジの双剣を振るう速度は更に増していく。従来の動きだけでもオサイズチを圧倒していた。鉄蟲糸技も使わずに。
「オラァ!!!」
そして、双剣の力を込めた一閃。二つの剣を拳の如く振り下ろした。その瞬間 再びオサイズチの身体が爆破する。すると、それが最後の一押しとなったのか、オサイズチの身体が大きく吹き飛ばされると同時に弱々しい声をあげながら、起き上がる事が無くなった。
「ふぅ…」
オサイズチの亡骸を見て一仕事を終えたかのように息をつく。
辺りを見回すと、ミケとハチが上手くやったのか、イズチ達の亡骸も転がっていた。
「ゲンジ!終わったかニャ!?」
「あぁ。お前らもよくやったな」
駆け寄ってきたミケとハチの頭をゲンジは撫でる。
「さて、ハチミツでも取って帰るか…」
ゲンジは初めて見るモンスターな故に記念に一度、素材を剥ぎ取る。剥ぎ取ったその素材はオサイズチの牙であった。
その後、ゲンジは再びハチに跨ると、ハチミツを採取して、キャンプへと戻り、カムラの里へと帰還した。