薄明と双子の姉妹 (リメイク中)   作:きょうこつ

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朝の訪れ

「……」

目を覚ますと自身が眠る布団の上を朝日が照らしていた。

目を凝らしながら開けると目の前には上半身の寝巻きがはだけ肩が露出しているミノトが今も自身に抱き付きながら静かな寝息を立てていた。

その着崩しは範囲が広く、あと少しで胸も完全に顔を出そうとしていた。

 

 

「相変わらずお目覚めが早いですね」

 

「そっちもだろ…」

後方から声が聞こえ、振り向くとミノトと同じく上半身の寝巻きだけをはだけさせながら自身を抱き締めるヒノエが見つめていた。

 

「は…早く服を着ろ…崩れてる…」

ヒノエの崩れた寝巻きからは自身よりも広い肩や女性の中でも豊満な部類に入る胸の谷間が見えており、それが変形しながら自身に押し付けられていた。それを指摘されたヒノエは微笑みながら更に身を寄せてきた。

 

「このまま裸になって抱き合うのもいいですよ♪」

 

「や…やめろ…!早く起きてくれ!」

 

「はいはい♪」

ヒノエは布団を退かし起き上がる。見ると3人とも掛け布団から素足がそのまま出ており、着物が膝小僧まで上がっていた。

 

「っ…!?ここまで寝巻きが崩れてる…」

見るとゲンジもヒノエと同じくいつのまにか上半身の着物だけが脱げており細身ながらも筋肉が積まれた身体が丸見えであった。ゲンジの寝巻きや里での和服は全てフゲンのお下がりであり、小柄なゲンジにとってはダボダボなのだ。これでもまだ15歳の頃の物らしい。

 

「着直したくてもできねぇ…」

 

「そのようですね」

ゲンジの身体はミノトの手によって懐に押さえつけられていた。その手の力は強く、剥がせるものではなかった。

その力と反面してミノトの寝顔はとても可愛らしく、夢を見ている幼子のようであった。

 

 

「いつもの可愛い寝顔に戻っていますね…」

 

思い出すのは昨夜 押し倒された時であった。

 

◇◇◇◇◇

 

顔を赤らめた二人が自身に向けて震える瞳を向ける中ゲンジは頷く。すると突然 ヒノエは身体を退けた。

 

「ミノトのお願いを先に聞いてもらいましょうか」

 

「分かった…」

ゲンジは先程の揺れる瞳から要求される内容を大体把握しており、覚悟を決めていた。

 

「で…では…」

ミノトはモジモジとしながらもゲンジに顔を向けると自身の要望を告白する。

 

「あの…今夜は私を抱きながら寝て欲しいです…」

 

「…え?」

ゲンジは予想していた要望とは大きく異なっていた為に呆気に囚われる先程の緊張感が解けてしまった。

 

「あの者から胸を揉まれて以来…寝ると思い出してしまうようになり……それがとても気持ちが悪いのです。なので…それを打ち消す為にゲンジに抱き締めてもらいたく……そうすれば安心する気がするのです…」

 

「……」

ミノトの要望は断りたくても断れない内容であった。たしかにあんな事をされれば誰だって傷つく。下手をすれば男でもだ。ミノトにこんな辛い思いをさせてしまったのは自身の責任である。

 

「分かった…」

 

頷くとミノトは安心したかのように少しだけだがほんのりとした笑顔を見せた。

 

「では、今日はミノトで、私のお願いは明日聞いてもらいましょうか!」

 

「あ……そ…そう…」

返ってきたのは意外な答えであった。ヒノエの方がもっと過激な要望をしてくると危険視かつ覚悟していたが、それは幸いなことに不発に終わった。

 

それからヒノエとミノトは川の字を模すかのようにゲンジを間に挟みながら横になった。

 

「ゲンジ…お願い…します…」

 

「……ん…」

望み通りミノトの背中に手を回すと優しく抱き締めた。すると、ミノトは安心したのか、抱き締められた瞬間に自身に身を預けながら寝息を立て始めた。

2人と寝食を共にした日から何度も抱き締められながら寝る時はあった為に、多少は慣れてきたが、それでも少し胸が熱くなってくる。

 

すると

 

「ひ…ひぐ……」

突然 ミノトは涙を流し始めた。まるで何かを思い出したかのように。それと共に自身の名を溢す。

 

 

 

 

「お願いします…もう“人”を…捨てないでください…!!私達の元からいなくならないでください…!!」

 

 

顔が見えず分からない。細々と聞こえてくるこの声は寝言なのか、本音なのか区別できない。だが、涙は紛れもない本物であった。自身の肩に温かい涙の感触が伝わる。

 

「ミノトは貴方の事をずっと心配していたんですよ」

 

「……そうか…」

ミノトはゲンジが出て行くと話していた時に加えてマルバ達に暴行を加えられている時からずっと感情を抑え込んでいたのだ。それを知ったゲンジは力強くミノトを抱き締めた。

 

「ありがとう…ミノト姉さん…」

 

すると

 

「では私も♪」

「!?」

今まで横になりながらその光景を見つめていたヒノエが背中から手を回し身を引き寄せながら抱き締めた。

 

「いつものことですからこれはカウントしませんよね〜」

 

「す…好きにしろ…」

ヒノエの抱擁にまたもや胸が熱くなってしまう。だが、流石に疲れていたのか、自身も眠気に襲われミノトと同じくすぐに眠りについてしまった。ミノトはゲンジに抱かれ ゲンジはヒノエに抱かれるという何とも奇妙な体勢で。

 

ゲンジが寝静まった中、ヒノエはただ見つめていた。

 

「………」

 

ヒノエの目の前にあるのは小さくも大量の刺し穴やナイフによって切り裂かれた傷を覆う包帯に巻かれた背中。

ヒノエは昼間の出来事を思い出した。ミノトを救う為にゲンジは反撃する事も怒る事も押し殺しマルバ達の攻撃に耐え続けていた。

あれ程の痛みをどんな思いで耐えていたのだろう。どれほど我慢してきたのだろう。

 

それを考えただけでヒノエは心が抉られそうであった。彼が傷つく姿を見ているだけしか出来なかったのがどれほど辛かったか。

 

「…私だって…心配して…いたんですからね…!」

 

目を震わせ堪えていた涙を流しながらヒノエはゲンジの小さい身体を優しく包み込み寄り添いながら眠りについた。

 

そしてその声はヒノエの泣く声に目覚めていたゲンジの耳にハッキリと聞こえていた。

 

◇◇◇◇◇◇

 

寝ている合間に緩くなっていた寝巻きがだんだんと剥がれ…

 

____今に至る。

 

「ゲンジが側にいて本当に安心したのでしょう。一度、寝ていた時は魘されていましたからね」

 

「そうだったのか…。まぁミノト姉さんのトラウマが晴れて良かった」

ゲンジは眠るミノトの頬を撫でる。彼女はヒノエと同じく表面上は気丈に振る舞っているが、精神面に関してはまだ幼い。やはりとても辛かったのだろう。

 

そんな中、ゲンジはヒノエへと顔を向ける。

 

「ヒノエ姉さんも心配してくれてたんだろ?ありがとう…な…」

 

それは昨夜、自身が眠りについた直後にヒノエが感情を抑えきれず啜り泣いてしまった時の事だ。彼女もミノトと同じくずっと気にかけてくれていたのだ。故にそれを話したゲンジはお礼を言った。

 

それに対してヒノエは頬を染めながら笑みを浮かべる。

 

「当然ですよ旦那様。いつだってヒノエは貴方の事を想っていますから」

 

照れ臭くなりながらもヒノエの答えはゲンジの心を暖かくさせていった。そしてヒノエは再びゲンジの頬へ口付けすると上半身を起き上がらせた。

 

「では、そろそろご自宅に戻りご飯を食べましょうか♪」

 

「あぁ」

ゲンジはミノトを起こすべく肩に手を伸ばす。すると、ヒノエは突然 それを止めた。

 

「あ、ちょっと待ってください」

 

「え?」

 

呼び止められたゲンジは目を向ける。すると、起き上がったヒノエは微笑みながら今も横になっているゲンジの顔に自身の顔を近づけた。

 

「な……なんだよ……」

 

「私からの一つ目の我儘を聞いてもらいましょうか」

 

 

「……え?まぁいいけど…」

 

その後 出された条件にゲンジは凍りついた。

◇◇◇◇◇◇

 

それからミノトを起こし、自宅へと戻るとエスラとシャーラと共に朝食を取る。

 

「あらあら。どうしました義姉さん?お口にあいませんでしたか?」

「うるしゃい……」

 

何故かエスラの様子がおかしい。

 

「……あの…シャーラ姉さん…エスラ姉さんの機嫌が良くないように見えるんだが…」

朝食を取る中 エスラの目が光を失っており、いつもはガツガツと食べ進んでいた白飯を今はちびちびと小粒ずつ程度しか口にしていなかった。

それについて不審に思ったゲンジは隣で食事を取るシャーラに尋ねる。

 

すると、シャーラは首を傾げる。

 

「ゲンってヒノエさん達と

 

 

 

 

 

_______エッチしたんでしょ?」

 

 

 

 

 

「…!?」

突然のシャーラの言葉にゲンジは驚きのあまり口の中に含んでいた白飯を一度も噛まずに飲み込む。

 

「はぁ!?どう言う事だよ!?」

 

「いや、何か昨日の夜に戻ってきた時に姉さんが『ゲンジの童貞が童貞が…』ってずっと呟いてたから詳しく聞いたらヒノエさん達と裸で抱き合ってたって…」

 

「「え"……」」

「あらあら」

身に覚えのない事にゲンジとミノトは凍りつき、ヒノエも動揺していた。

 

「ち…違う!!!」

 

「え?そうなの?」

 

「そうだよ!!裸って俺たち普通に服着て寝てたよ!!」

ゲンジの言葉にヒノエも頷く。そしてエスラに対して事細かく説明した。

 

ーーーーーーーー

 

「なぁ〜んだぁ!お姉ちゃんの勘違いだったんだな!!これは失敬失敬!」

 

「当たり前だ!!こここ…こんな時に!そそそ…そんな事するわけないだろ!!」

 

その後、ようやく理解したエスラは見間違いである事を自覚して頭をぽりぽりと掻く。それと同時にゲンジの貞操がまだ健在である事も理解して先程の低いテンションが180度一変した。

一方でその事を頭に想像してしまったゲンジは顔を赤面させてしまう。

 

「あらあら。それでしたら私は百竜夜行が終わればいつでもいいですよ♪」

 

「姉様ぁぁあ!!」

 

ヒノエの爆弾発言にミノトは咄嗟に口を押さえる。

 

その様子にシャーラは呆れる中 ゲンジの包帯の巻かれている左頬に手を当てる。

 

「大丈夫?ここ」

 

「え?あぁ。特に問題ねぇ…」

ゲンジは包帯越しに左頬をポンポンと叩くとゆっくりと包帯を解く。次々と巻かれた包帯が解かれ、床に落ちていく。巻かれた包帯の下から現れたのはなんと“黒い眼球”であった。いや、正確に言えば目玉の白い部分と瞳の中央部分がが黒く染まり、その周りを囲む瞳が赤い血の色へと変色していた。

 

原因は分からないが、マルバ達へと暴行を加えた際に精神が半壊した事でイビルジョー の侵食の影響が目へと現れてしまったのだ。

昨日からこの黒い目が戻る事はない。

 

「ついに左目が侵食されてしまったのか」

 

「問題ねぇよエスラ姉さん。オッドアイになったと思えばな。今のところこれ以外の影響はねぇ」

ゲンジは再び包帯を巻き直す。そして朝食を食べ終えると ゲンジは立ち上がった。

 

「………そろそろ行くよ。ミノト姉さん」

 

「はい」

 

向かうのはフゲンやゴコク達の待つ集会所である。ミノトは受付の仕事があるが、ゲンジは彼らに説明と謝罪をしなければならない。それにあれ程の騒ぎを起こしたのだ。前回よりも厳しい処分が下ることも覚悟していた。

 

すると ヒノエは立ち上がり、集会所へと向かおうとするゲンジの手を両手で包み込んだ。

 

「ゲンジ。たとえどんな処分であっても…ちゃんと帰ってきてくださいね」

 

それに続きエスラとシャーラも言葉を投げかけた。

 

「また離れ離れは懲り懲りだからな」

 

「私達…待ってる」

 

3人のその表情を見ると心の中に住まう恐怖心が段々と薄れて行った。たとえどんな結果であれ、安心してここに帰ってこれる。

 

「あぁ」

 

そしてゲンジはミノトと共にフゲン達の元へと向かった。

 

 

 




ヤってはないのですよ。ただそういう風に“見えてしまった”だけ。
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