薄明と双子の姉妹 (リメイク中)   作:きょうこつ

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身柄の引き渡し

 

ミノトと共に集会所へと入るとそこには待っていたかのように厳格な表情を浮かべるフゲンとゴコクの姿があった。

 

「よぅ。フゲンさん。ゴコク殿」

 

「…ゲンジ」

 

二人は自身の姿を見つけるといつものような豪快な笑い声を上げる事はなかった。目の事も知っているのか、それに関しては触れようとしない。

 

「…傷の方は問題ないか?」

 

「多少痛む。だが普通に歩けるから問題はねぇ」

 

「ミノトも大丈夫か?」

 

「同じく問題ありません」

 

「そうか。ならばよい」

「……」

2人の様子を見て安心しているフゲンの声がいつもより低い。まるで何かを引きずっているかのように。その正体を既に見抜いていたゲンジは即座にフゲンに向けて歩み寄ると頭を下げた。

 

「あの時は周りが見えず暴れてすまなかった。もし不快ならすぐに消える…だが、百竜夜行を終わらせるまでは待って欲しい」

 

暴走する自身をフゲンは何度も呼びかけて止めてくれようとした。だが、自分はそれを斬り捨てマルバ達への復讐する道を選んでしまった。

あの時 笑いながら彼らを痛ぶる自身の姿を見た里の皆は自身に嫌悪感を抱いてしまうだろう。

 

「いや、そんな事はしなくてよい」

 

すると フゲンの巨大な手が自身の肩に置かれる。

 

「よくぞ…いていてくれた」

浮かび上がられたその笑みは豪快ではなく、安心を感じているかのようなものであった。

すると、即座に表情が一変し、1人の里をまとめる長としての威厳を放ち忠告した。

 

「だが流石に今回はやりすぎだ。以後は本当に気をつけてくれ」

 

「あぁ」

 

それはゴコクも同じである。いつものように糸目で笑みを浮かべている表情からは笑顔が消え失せ、糸目が開き出し鋭い眼光が自身を捉えていた。

 

「里の皆はともかく子供達が怖がっておったぞ?それに加えて本部から直々に処分が下ることとなったでゲコ」

 

「あぁ。承知の上だ」

 

ゴコクの言葉に頷く。本部からとなると相当重い処分となるのだろう。下手をすれば除名処分である。

すると、ゴコクはゲンジに向けて本部であるロックラックのハンターズギルドから発行された書類を見せた。

 

「ハンター『ゲンジ』よ。ハンターズギルドの命により貴殿には1ヶ月の謹慎と1年のハンター活動停止を命じる…ッ!!!」

 

「そんな…!」

 

下された判決はとても重い。だが、それは当たり前だ。あれ程の事をしたのだから。そしてそれを後ろで聞いていたミノトは衝撃を受け、即座に抗議の声を上げた。

 

「ゴコク様!原因は私です!!私が罰を…!!」

 

「やめろ姉さん」

 

それに対してゲンジは手を前に出し、ミノトを制する。

 

「俺がアイツらを再起不能にしたのは事実だ。罰を受ける覚悟はできてる」

 

「ゲンジ…」

だが、ゲンジにとってはその処分はどうでも良いことであった。

 

「だが俺は百竜夜行が起こればその命令を無視してでもいくぞ…?その後は除名するなり勝手にしろ」

 

謹慎期間中に百竜夜行が起こり再びあの古龍が現れれば自身はその処置を無視してでもいく。二度とハンターには戻れない事も覚悟の上だ。

 

すると、ゴコクはその書類をトントンとつつく。

 

「___何を言っておる?ホレ2人共。ここをよく見るんじゃ」

 

「「ん…?」」

 

叩かれた箇所をゲンジとミノトはジッと見る。ギルド直々に発行された判決の書類の下には注釈が貼ってあった。

 

『なお百竜夜行が完全に収束するまで処分は保留とする』

 

「…!?」

その文章を目を掻きながらもう一度確認する。見間違いではない。

 

「…え!?い…いいのか!?」

 

「ホッホッホ。今回ばかりはギルドも本腰を入れておる。なにせ古龍が現れたのじゃからな。

それに謝罪文も送られてきてのぅ。ハンターを派遣できなかった事に加えてゲンジに『収束するまで専属ハンターとしての活動を求む』という書き置きが入っておった。もちろんエスラとシャーラにもでゲコ」

 

前回よりも重い罪であるにも関わらずこの処分。やはりギルドも百竜夜行に加えて新たなる古龍の出現に手が余っているようだ。

 

「引き受けてくれるか…?」

ゴコクの表情が先程と一変していた。口角がニヤリと釣り上がらせていたのだ。それに対してゲンジは腕を握り締めながら頷く。

 

「あぁ…!!」

 

その朗報にゲンジは首を鳴らすと即座に装備を整え修行をするべく修練場へと向かおうとした。

 

「あ、これは別件でゲコ。痛みが完全に引くまで修練もクエストも禁止じゃ」

 

「…」

 

◇◇◇◇◇◇

その後 ゲンジは軽く3人と集会所の席で談笑する。そんな中 ゲンジはある事を尋ねた。

 

「あのクソ野郎はどうするんだ?」

 

それは自身が追い詰めたマルバ達ことであった。今もなお、集会所に隣接している医療用ベッドに寝かされている。

 

「それについては今日の内にマルバとやらの父親が3人まとめて引き取りに来る様でゲコ」

 

「そうか。なら…俺も顔くらいは合わせとかないとな」

 

「……あまり手荒な真似はよして欲しいでゲコよ?」

 

「向こうから何もしなければ俺だって何もしないさ」

ゲンジは立ち上がる。マルバの親は遅くとも正午には到着するそうだ。そうなるとあと数時間である。

 

 

すると

 

「里長〜ゴコク様〜」

 

集会所の入り口から声が聞こえ、そこへ目を向けるとヒノエが歩いてきた。

 

「ん?ヒノエか。どうし……んん?」

 

いや、よく見ると後ろに大柄な男性を連れていた。顔からは無精髭を生やしており、長く伸びた髪を後ろに一纏めにしていた。体格はフゲンより少し小さめだがそれでも一般の男性ハンターよりも遥かに大柄であった。歳はざっと見ておよそ40代だろうか。

それに加えて纏うは轟竜とされる強力なモンスター『ティガレックス』の装備『レックスS』シリーズ。更に背負っているのは大剣『カイラライホーン』砂原に生息している獰猛な飛竜『ディアブロス』の武器であった。

 

「約束のお時間より早く到着したそうなのでご案内しました」

 

「ほぉ。という事はこのハンターが…」

 

その言葉にフゲンとゴコクは驚く。目の前に立つ大柄な男性ハンターこそマルバの親であった。子供のマルバとは全く異なり、体格や装備から見れば相当な実力者である事が窺える。

そのハンターは前へと出る。

 

「お初にお目に掛かる。俺はハンターとして活動している『ラトル』というものだ」

 

空気に溶けるその声はとても根太く聞くものを畏怖または鼓舞するかの様であった。

すると、ラトルというハンターは突然 フゲン達に向けて深々と頭を下げる。

 

「2度に渡って俺の愚息が迷惑をかけしまい大変申し訳ない…」

 

フゲン達は驚く。あのマルバとは考えられないほど、このラトルというハンターは常識人であったからだ。

 

「顔を上げてくれ。まぁ、お主の息子の件は伝わっていると思うが、大丈夫か?」

 

フゲンはラトルに息子であるマルバの現状を伝える。いや、既に文にて知らされていた。やはり、知らされた当初は相当ショックであったのか、聞くのが二度目であったとしても、瞳が震えていた。

 

 

「……当然なる報いだと思っている。そちらにいるのが『薄明』のゲンジ殿ですかな?」

 

ラトルの目がゲンジへと向けられる。目を向けられたゲンジは前へと出ると青く光る片目をラトルへと向けた。

 

「そうだ。初めましてラトルさん」

 

「呼び捨てで構いませぬ」

 

ゲンジは手を差し出す。年上という事もあり、ゲンジは呼び捨てではなく敬称をつける。すると、ラトルも同じく手を差し出し、互いに交わした。ラトルの手はゲンジよりも遥かに巨大であり、丸太のように逞しく鍛え上げられていた。

 

だが、それは見かけだけでの話。握力ではゲンジも負けてなどいなかった。

 

「…やはり流石はG級ハンター。握力で分かる。何度も死線を掻い潜って来ているな」

 

「どうも。だが、それはアンタも同じだろ?ティガレックスの上位個体は下手をすればG級に成り立ての奴でも苦労する。ディアブロスも例外じゃねぇ」

 

「いやいや。これは仲間が強かった故に手に入れられた物だ。俺だけの力ではない」

 

「そうか」

 

互いに言葉を交わし合うと手を離す。

そして、本題へとはいろうとする直前にゲンジは頭を下げた。

 

「ゲンジ!?」

 

「何をしておるでゲコ!?」

 

突然頭を下げたことにフゲンとゴコクは驚く。すると、ゲンジはラトルに向けて謝罪の言葉を口にした。

 

「アンタの息子を殺そうとしてすまなかった」

 

ミノトは即座に止めようとしたが、それをヒノエは制する。ゲンジが謝る理由は他人の息子を亡き者にしようとした事である。たとえ、どんな理由であれ、自身が彼を二度と普通の生活ができない身体へと変えてしまったのは紛れもない事実である。

 

それを聞いたラトルは首を横に振るう。

 

「謝らないでくれ。俺はそれぐらいの報復を忠告はしていたからな。奴の自業自得だ」

 

ラトルの表情からは何も感じる事がなかった。これが結果だと受け入れているかのようである。

そんな中 顔を上げたゲンジはある事を尋ねた。

 

「なぜ勘当して野放しにしたんだ?」

 

「一度目に君達に危害を加えた時は流石に驚いていた。だがその時でも俺は信じていた。改心し、謝罪をするだろうと。そして忠告と共に謝罪をする事を名目に息子を追い出した。

里に赴き謝ると共に罪を償えばすぐに勘当を取り消すつもりでいた。だが、結果はそれとは真逆。尻拭いをしてくれた君に敵意を抱いた結果、手紙の内容のようになった。俺としては…純粋に愛情が湧かなくなってしまった」

 

「そうだったのか」

ラトルの表情は何も映し出されていない。自身への恨みも。そして、息子への愛情も。一番 心に傷を負ったのはラトルなのかもしれない。

 

それからラトルはフゲンとゴコクに連れられ、マルバ達の待つ外のテントへと向かって行った。

 

「親御様も辛そうですね」

 

「あぁ。信じてても裏切られたからな」

 

その様子をゲンジ達は遠くから見つめていた。

 

 

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