VALKYRIE PROFILE ZERO   作:鶴の翁

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 さて、少々オリジナルな展開で行きましょう。


第6話

 柔らかな双月の月明かりが照らす中、レナスはコルベールから受け取った地図を頼りにこの世界のどんな生物よりも早く、その身で夜風を切りながら東へと飛んでいた。

 

「そろそろだな」

 

 コルベールから聞いたところによると、東の地は砂漠になっており『サハラ』と呼ばれているらしい。

 

「なるほど、聞いた通りだな」

 

 もうすでにその目で捉えているその地は、確かに砂漠と化しており、更に東へと続いていた。

 そして、この地はエルフ達が住んでおり、人間との争いが絶えないそうだ。

 

「エルフが住んでいると言うことは、住めるだけの環境があるはずだ、そこを探すか」

 

 ミッドガルドでもエルフは住んでいるが、彼等も神族とはいえ寿命が長いだけで人間とは然程変わらない。熱や冷気も感じるし、動けば疲れ、腹も減り、喉も渇く。

 そんな彼等が砂漠と化したこの地のど真ん中に居住を作るとは思えない。

 ならば、この砂漠のどこかにオアシスの様な水場か、砂漠と境界を作るようにミッドガルドの精霊の森の様な場所があるはずだ。

 レナスはそう考えると更に高度を上げ、そのような場所がないかゆっくりと飛行しだした。

 すると、そう時間もかからぬうちに、予想していた森の様な影を捉えた。

 

「やはりな」

 

 素早く、その場所へと身を翻すと、その森の中央付近と思われる上空で待機した。

 

「手早く事が運べばよいが……」

 

 ポツリと誰に言うわけでもない独り言を漏らし、レナスはそのままその森へと降り立った。

 バサバサと木々の葉に体を当てながらも、しっかりと地に足をつける。

 決して硬くはない土の感触と、その上に積もる落ち葉や小枝が小さく音を鳴らす。

 

「さて、彼等を探すとしよう」

 

 そう言うが早いか、はたまた足が一歩前に出るが早いか、その瞬間レナスの足元に矢がトスリと音を立てて刺さった。

 

「……随分な歓迎だな」

 

 矢が飛んできたであろう方向へと目を向けるが、夜の森というのは視界が悪く、矢を射った相手を探すも見つけられない。

 

「いきなり殺されなかっただけでもありがたく思え! 貴様、何者だ!」

 

 余程耳が良いのか、此方の声が聞こえていたようで、強い口調の返答が森の奥から返ってきた。

 明らかに敵意がある……、穏便には済みそうにないかもしれないな。

 耳が良い相手のようだが、それでも聞こえるやすいようにと少し声を張り上げるようにレナスは答える。

 

「我が名は運命の三女神が一人! 魂を選定する者『ヴァルキュリア』! 訳あってこの地を訪れた! すまないがここの長と話がしたい!」

 

 昔から言い馴染んでいる名を視えない相手へと告げる。今は創造主であるレナスだが、この異界の地でそれが通用するとは思えない。無論、先程名乗った名も通用するとは思い難いが、神としての名を無下にされる事は無いだろうと思っての判断だった。

 

「神……だと……!」

 

 その答えに少なからず同様した声が微かながらもレナスへと届いた。

 さて、どう出るか、と声が聞こえた方をじっと見据えるが、返ってきたのは言葉ではなく、明らかな殺気を含んだ矢であった。

 

「っ!」

 

 咄嗟に後ろに飛び退きつつ、すぐに剣を抜き放ち正面へ構える。矢はレナスが立っていた場所に突き刺さる。矢が突き刺さった場所と角度からして確実に左足を狙った攻撃であった。

 

「貴様! 何のつもりだ!」

 

 矢を射った相手に少なからず怒りを覚えながらもレナスは相手に理由を問う。

 

「何のつもりだと!? 黙れ!! 神の名を語る不届き者め! この世界に神などおらぬ!」

 

 その言葉と共に幾つもの矢がレナスの体を目掛けて飛来する。

 レナスは最小限の動きで矢を躱し、落とせる矢は剣で払い落とした。

 

「止めろ! 私は此処に戦いに来たのではない!」

 

「では何をしに来た! 何千年もの間我々を放っておいて今更救いに来たなど吐かすのか!」

 

 何千年? それほどまで彼等は此処で何を……。

 レナスに思考させる暇など与えぬと言うように攻撃の手を止めることなく何本もの矢がレナスへと向けられる。

 

「仕方がない、少々手荒かもしれんが……」

 

 奴に近づき、武器を破壊するか、攻撃が出来ない程度に手足に傷を負わせるしか無いな、と考えたレナスは足に力を込め、一気に近づこうとするが――。

 

「双方止めぬか!」

 

 背後の方から、攻撃を仕掛けてくる奴とは違う別の声が森に響き渡った。その瞬間、矢による攻撃はピタリと止まった。

 声のした背後へと振り返ると、そこには数人の若い男性のエルフとその中央に老齢な男のエルフが立っていた。

 

「長!」

 

 ガサリと音を立てながら矢が飛んできていた方から少年に近い年齢のエルフが姿を現した。

 そのまま、私を牽制しつつ、彼等の方へと近づいていく。

 

「長! 何故此処へ!」

 

 長と呼ばれた老齢のエルフに問い詰める少年のエルフに、長は手に持つ長い杖をその頭に振り下ろした。

 ボカリと小気味良い音が聞こえ、少年エルフは頭を抱えてうずくまってしまった。

 

「馬鹿者、これだけ騒げば誰でも気になるわい」

 

 それだけ言うとその少年エルフを余所に長は私へと近づいて来た。

 他のエルフ達はそれを止めようとするが、長に片手で制され、その場に待機した。

 

「申し訳ないお客人、すまぬが剣を収めてはくれぬか、後顔をよく拝見したい」

 

 私へと近づきながら長はそう言ってきたので、言われた通りに剣を収め、顔が良く見えるように兜を外した。

 すぐ側まで来た長は手に持っている本のようなものをめくりながら私の顔と交互に見比べていた。

 そして、ようやく何かわかったのか、ほぅ、と軽く頷くと、本を閉じ私を見つめながら口を開いた。

 

「もしや、貴方様は『アーリィ・ヴァルキュリア』様でございますか?」

 

 長に姉と間違えられたものの、確かに彼は私達を知っているようだ。ならば話は通じよう、その前に間違えは正しておかねばならぬがな。

 

「確かに私は『ヴァルキュリア』だが、姉であるアーリィではない、私は次女のレナス、『レナス・ヴァルキュリア』だ」

 

 長にそう説明すると、驚いたように彼は目を丸くし、深々とお辞儀をした。

 

「申し訳ございません、レナス様、私共の持つ古い文献には簡単な立ち絵と名前しか書かれておらず、間違えたのでございます」

 

 そう言うと手に持つ文献を開きながらそのページを開いて見せてくれた。

 なるほど、確かに色が入っているわけではない立ち絵だと、三女神のうちの誰だと、見分けがつかないな、それに私や、『シルメリア』の名は姉とは違い、横に補足として書き示されている。

 

「良い、間違えたことに関しては何も咎めぬ。それよりも先程の争いを止めていただき感謝する」

 

 軽く頭を下げると、長は驚き、手にしている杖を手放すほど慌てふためいた。

 

「お止め下され! 我々にそのように頭を下げるなど、オーディン様に知られたらなんと申されるか……」

 

 あまりにも慌てながら、すぐに顔を上げるように懇願されてしまったため、そうか、と軽く言うと、顔を上げ、本題へと入ることにした。

 

「長よ、すまないが、この世界はアスガルドやミッドガルドとは違う世界のようだが、なにか知らないか?」

 

 私の言葉に先程と同じくらい驚いたのか、長はまた目を丸くした。

 

「なんと……! 知らずにこの世界へ来られたのですか!?」

 

 むむむ、唸る長に着いて来ていた若いエルフが、あのう、と声を上げた。

 

「なんじゃ?」

 

「長、とりあえず、村に戻りませんか? この騒ぎを村の者達にも説明して安心させねばなりませんし、何より、神様に立ち話とは些か無礼かと……」

 

 若いエルフの意見に長は、そうじゃなと頷いた。

 

「申し訳ないが、レナス様。我々の村まで来て頂けますか? そこで全てお話いたします」

 

 どこかで見た流れだが、此処で断る通りはない、むしろ全て話すと言っているのだ、私がこの世界について知らぬことは全て教えてくれるだろう。

 

「わかった」

 

 私の返答に長は頷くと、此方ですと促すように皆を連れて先頭に立って歩いた。

 長に殴られた少年も、まだ使えそうな矢をいそいそと回収しその後に続いた。

 

 しばらく歩くと、木で出来た柵に囲まれた大きくも小さくも無いそれなりの大きさをした村へと付いた。

 門の前では、心配そうにしているエルフ族の女性たちや眠たそうに目を擦りながらも起きている子供達までいた。

 着いて来ていた若いエルフ達は各々その場で解散し、彼女らに、大丈夫、心配ないよと声をかけながら自身の家へと帰っていった。

 もちろんあの少年も次の交代のエルフであろう少年に声をかけ、欠伸をしながら戻っていった。

 その際に此方をまだ敵視しているようで、軽く睨まれたが、それでも眠気が勝ったのか、すぐに家の中へと入っていった。

 

「申し訳ございません、レナス様。どうも一部のエルフ達は『神』を邪険に思っている者がいるようでして、彼もその一人なのでしょう。ですが、どうか許してくだされ」

 

 長は私にそう言うと此方です。と、この村の中では一番大きな家の前へと案内した。

 家の中へと案内された私は、長に促されて向き合うような形で椅子と腰を降ろした。

 ギシリと椅子が軽い悲鳴を上げたが、その後は静かな家の中にはパチリパチリと暖炉の火の音しか聞こえてくるものはなかった。

 静かでありながらも、重い静寂の中、長が口を開く。

 

「レナス様、先程からの度重なる無礼、どうぞお許し下さい……。私の命で払えるのでしたら、それで……。どうかさっきの少年の事は許してやってください」

 

 また深々と頭を下げた長は、いやに物騒なことを口にした。

 

「構わない、それぐらいで処罰しようなどとは思わない。それよりも得体の知れない私に対して、怖気もせずに向かって来たことを褒めてやるといい」

 

 私の答えにホッとしたのか、ありがとうございます、と言うと再度頭を軽く下げた。

 

「で、長よ、話してもらえるか? この世界は何だ?」

 

 本題へと話題を移すと、長はゆっくりと頷き、ポツリポツリと話しだした。

 

「この世界は恐らくレナス様も考えている通り、アスガルドともミッドガルドとも違う別の世界でございます」

 

「やはりか」

 

 考えは当たっていたらしく、長の言葉で確信へと変わった。

 

「やはりわかっておられましたか」

 

「ああ、我々とは違う魔法、崇拝されている宗教、そして空に浮かぶ二つの月」

 

 ある程度、オスマン達より話を聞いた話と照らしあわせてもこの世界が別のものだと思わせるものは多く、ある程度は予測出来たものである。

 

「話を続けさせて頂きます、そもそもの発端はオーディン様達による世界の創造がされていた時にまで遡るそうです」

 

 オーディン様達による世界の創造……! 昔なんて言葉では言い表せないほど前の事ではないか

 

「そんなに前なのか」

 

「ええ……、そう言い伝えられております」

 

 ゆっくりと落ち着いた物言いで更に長は話を進める。

 

「世界を想像している最中だったそうです。とある場所に次元の裂け目が出来てしまったのです。それをオーディン様の命により我らの先祖はその地へ向かい、修復することになりました。しかし、その裂け目を消すことは出来ず、オーディン様へ嘆願しても手を貸すことは出来ないと一蹴されたようなのです。ですからご先祖様達は消すことが出来ぬのならとその地に人が寄り付かぬように此処と同じように深い森を造り、裂け目を両方から塞いでしまおうと考えなさったそうなのです」

 

 ミッドガルドにある人の来ないエルフの居る深い森……。

 一つしか思い浮かばないな。

 

「なるほど、ならばもう一つの場所は精霊の森ということになりそうだな……」

 

「ほう、ミッドガルドでの封印地はそう呼ばれておるのですか」

 

「私自身確かめたわけではないが、ミッドガルドでエルフ達の住む深い森となるとあの場所しか思い浮かなばないからな」

 

 それに最深部まで行ったことは無い上に、彼等も別段必要のないことは話さなかったのだろう。

 

「そして、この世界での封印地、次元の裂け目の先がこの場所と言うことか……」

 

「そうなのです。そういえば、レナス様はどうやってこの世界へ?」

 

 ふと気になったのか長が話題を変える。

 

「私がこの世界へ来た方法?」

 

 目を閉じて思い出す、がそんなに前の事ではなくせいぜい数時間前のことなので鮮明に覚えている。

 

「……この世界の魔法使いの少女にだな、使い魔として召喚された」

 

「……は?」

 

 長は何を行っているのかわからないといったように、眼と口を大きく開きポカンとしている。

 

「そのままの意味だ、私はこの世界へは使い魔として召喚された」

 

「何を馬鹿な……、神を使い魔にですと……!?」

 

 信じられないとばかりに顔に手を付き、長は頭を振るう。

 

「ではまさか! 今その魔法使いの使い魔をしておられるのですか!?」

 

 ハッと気がついたように長は顔を上げた。

 私は頭を横に振ると簡単に説明を加える。

 

「いや、召喚はされたが、『コントラクト・サーヴァント』だったか? あれは受けていない、が少々気になることがあってな。その魔法使いのそばにいることにしている」

 

「気になることとは?」

 

 嫌な言葉が発せられるのではと脳裏に浮かんだのか、長はゴクリと喉を鳴らした。

 

「その魔法使い、ルイズと呼ばれている少女は、我々と同じ神力をその身に宿している」

 

 隠すことなく長にそのまま伝えると、長は嫌な予想が当たったのか、やはりと呟くと俯いてしまった。

 

「何か心当たりがあるのか?」

 

「はい……」

 

 顔を上げた長は何処か疲れた様な表情で語りだした。

 

「六千年程前の事だったと聞きます……、ふらりとゲートから一人の男が現れました。名をブリミル。彼もまた神力をその身に宿した人間でございました。そして忌むべき人間だと聞いております」

 

 聞き覚えのある単語に私はピクリと反応する。

 

「ブリミル? その世界の宗教か何かの名前ではなかったか?」

 

 私が問い返すと、長はコクリと頷いた。

 

「そうです、この世界の人間達が崇拝し、我々エルフ達と人間達の戦いを引き起こした張本人であると、聞いております……、詳しいことは私も、余り……」

 

 そう言うと口を閉ざし、またも俯いてしまった。

 しかし、何か決心したかのよう真剣な顔付きに戻ると、スクリと立ち上がった。

 

「申し訳ないが少々着いて来てもらえますか?」

 

 そう言い、再び外へと私を連れ出した。

 長の家を出て更に森の奥へと進むと、そこには魔石で作られたドーム状の様な物が設置されていた。

 

「これは?」

 

「これが次元の裂け目の封印地でございます。我々はこれを『シャイターン(悪魔)の門』と呼び、人間達は、この場所を聖地などと呼んでいるそうです」

 

 私はそう言われたドームに近付くと触れて確かめてみることにした。

 なるほど、確かにとても強い歪みを感じる、しかし、それを抑えているこのドームはそれを抑えるにはとても不安定に感じられる……、これは一体?

 

「お気付きになられましたか?」

 

 長の問いに長へと向き直った私は頷き言葉を発する。

 

「封印するにしてはこのドームはとても不安定だ、もしかして何かあったのか?」

 

 えぇ、と答えると、長はそのまま話しだした。

 

「数ヶ月ほど前の事でしょうか、ちょうど今日のような月明かりの晩だったと思います。突然大きな音が村に鳴り響きました、すぐに若い者が音がした方、このドームに駆けつけますと、無惨にも壊された後でございました。すぐに修復を行ったのですが、ご先祖様達が長年かけて造り上げた、制御の魔法石で作られた扉がなくなっておりました。慌てて我々は、応急処置として囲うだけのドーム状にはなるものの、魔石を組み上げて、今の状態となったのでございます」

 

「何故、ドーム状では駄目なのだ? 封印出来れば良いのだろう?」

 

 私の言葉に長は首を横へ振った。

 

「駄目なのです。ご先祖様達の調べによりますと、この次元の裂け目は一本ではないようなのです、例えで表しますと、大きな筒状の端と端が、ミッドガルドとこの世界だとしましょう、しかし、その所々に小さく穴が空いており、更に別の世界へと通じているようなのです。幸いにもそこまで影響はないのですが、偶に換気と言いましょうか、開けてやらないと、別の世界の物が此方の世界の何処かに弾き出されてしまうようなのです。換気をすれば全てではありませんが、ある程度は抑えることが可能だと聞いております」

 

「なるほど、その為の扉か……」

 

「そうでございます」

 

 長は自身の杖をぐっと握ると意を決したのか、私へとまた頭を下げた。

 

「お願いでございます! レナス様! 盗まれたその扉を探してもらえはしないでしょうか!」

 

 盗まれたと言う言葉にピクリとレナスは反応する。

 

「盗まれた? 完全に壊されたわけではないのか?」

 

 顔を上げた長は説明を続ける。

 

「はい、実はそのドームが壊された夜、一人だけそれを持ち去る二人の人影を見たと言う者がおります。其奴の証言によると、一人は強大な神力と魔力を持ち合わせており、もう一人は、何やら我々と同じ気配のようなものを感じたと、言っておりました。どちらも目深にフードを被っており性別まではわからないものの、その不思議な気配を感じるものは、オーク鬼のように大柄だったと聞いております」

 

「では、私はその逃げた二人組を探して扉を取り返せば良いのだな? 更に詳しい特徴を聞きたいのだが、その目撃した者に会えるか?」

 

 その言葉に長は口をモゴモゴとさせ少々躊躇したが、その重い口を開いた

 

「それは……、無理だと思われます。その目撃したものは、先程矢でレナス様を攻撃したあの少年でございます。彼は神を嫌っております。話をして欲しいと言っても話してくれるかどうか……」

 

 あの少年か……、しかし、何故そこまで神を嫌うのか、長にその理由を聞いてみることにした。

 

「あの子達が神を嫌う理由ですか……、ご先祖様の代から理不尽に押し付けられたこの責務とそのせいによる逃れることの出来ないこのゲートの守り人としての使命、そして絶対に見ることのできない、ご先祖様達の故郷である、ミッドガルドへの帰還。それらの不満が積もり積もって神と言う存在が嫌いになったのでございましょう……」

 

 ですが、それでも許してやってくだされ、と長は最後に付け加えると、何度下げたかわからぬその頭をまた深々と下げたのだった。

 

「咎めるつもりはない、むしろ此方が謝らねばならないのかも知れぬな……」

 

 そう長に伝えると空を見上げた、もうすでに日が出始めているのか、うっすらと白んできており、鳥の鳴き声も聞こえ始めた。

 

「すまぬが、今日はもう戻らねばならぬ、また訪れる、その扉とやらも探しておこう」

 

 フワリと軽く浮き上がりながら長にそう伝える。

 

「ありがとうございます、何卒よろしくお願いいたします。次からは攻撃をせぬよう皆にも伝えておきます故……」

 

 そう言うともう何度見たかわからぬ深いお辞儀をしていた。

 レナスはそれを見届けると、高度を更に上げ一気に空へと浮かび上がった。

 

「やれやれ、問題は山積みのようだが、今はルイズの元へ帰らねばなるまい……」

 

 そう一人ごちると学院を目指し飛行を始めるのだった。

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