私のヒーローアカデミア~ねじれちゃんの妹は最強?です~ 作:レイラレイラ
「
敵の来訪に驚きを隠せない切島が叫びをあげるが、クラスの面々も同様の考えであろう。
通信を試みる前に妨害される可能性を危惧したすぐるは、電波をざっと感じ取るとそれがぐちゃぐちゃにされていることを察知した。
「多分だけど、向こうに通信妨害とかセンサーの無力化を出来る“個性”がいるのは確実じゃないかな。外部への通信は不可能だと思った方がいいね」
「校舎と離れた隔離空間、そこに
すぐるに試行結果と焦凍の推測を聞き、クラスメートの皆の顔がさらに固まる。
「…………状況は把握した。13号、避難開始! USJからの脱出と学校側への報告を! 波動と轟は13号のサポートを頼む!」
相澤はさっさと指示を下すと、ゆっくりと歩を進める。
「一人で戦うんですか!? イレイザーヘッドの戦闘スタイルは敵の個性を消してからの捕縛、正面戦闘は…………」
「一芸だけじゃ、ヒーローは務まらん。13号! 任せたぞ」
相澤は一言だけ言い残すと、敵集団のもとへと飛び込んでいく。
「射撃隊いくぞぉ!!」
相澤が戦闘に入り、一瞬驚愕したヴィランたちもまた戦闘態勢をとる。
「情報じゃ、13号とオールマイトだけだったろ!? ありゃ誰だ!?」
「知らねぇが、一人で突っ込んでくるとは…………」
「「大まぬけ!!」」
相澤を狙うべく銃に変形させた指や、触手のような髪で攻撃を放とうとする敵達だったが…………
「あれ? 出ね…………」
個性が発動せず呆然とする隙を相澤が逃すはずもなく、捕縛布で絡めとり敵同士を激突させることであっという間に意識を刈り取った。
「ばかやろう!! あいつは見ただけで“個性”を消すっつぅイレイザーヘッドだ!」
「消すぅ~!? へっへっへ、俺らみてぇな異形型のも消してくれるのかぁ!?」
「いや、無理だ。発動型や変形系に限る」
四本の腕と岩のような肌を持つヴィランが相澤に殴りかかろうとするが、それよりも先に相澤の拳がヴィランの顔面に突き刺さる。
体勢を崩すヴィランの足を捕縛布で身体ごと持ち上げ、背後からのヴィランの攻撃を回避しつつ投げつける。
「おまえらみたいな奴の旨味は統計的に、近接戦闘で発揮されることが多い。だから…………その辺の
肉弾戦も強く、ゴーグルで目線を隠しているため「誰を消しているのか」の判別がつかない。
特に集団戦においてはそのせいで連携に遅れを取ることになり、自身の優位に事を運ぶことができる。
「すごい……! 多対一こそ先生の得意分野だったんだ」
「分析してる場合じゃない! 早く逃げるぞ!」
「させませんよ」
先程入ってきた入り口の扉に向かう途中、生徒達の前に靄ヴィランが立ちはだかった。
「初めまして、我々は敵連合。せんえつながら…………この度ヒーローの巣窟、雄英高校に入らせて頂いたのは平和の象徴オールマイトに息絶えて頂きたいと思ってのことでして。本来ならばここにオールマイトがいらっしゃるハズ…………ですが、何か変更があったのでしょうか? まぁ…………それとは関係なく……私の役目はこれ」
靄男の右腕が大きく広がり、何らかの行動を起こそうとするがそれを妨害せんと攻撃を放つ。
「その前に俺たちにやられることは考えなかったか!?」
「ダメだ、どきなさい二人とも!」
「危ない危ない。そう……生徒と言えど優秀な金の卵…………」
すぐるも13号と邪魔にならない範囲から、空気弾を靄男に撃とうとしたのだが爆豪と切島が割り込んできたためにそれは叶わなかった。
「散らして、嬲り、殺す」
黒い靄がその範囲を広げ、A組の全員を包み込んでいく。
焦凍とともに回避行動を取ろうとしたすぐるだが、想定より広がる時間が早かったために黒い靄に飲み込まれた。
◆◆◆◆
「何これ何これ!? 不思議! 私、空中にいるの!」
靄のヴィランに飲み込まれ、すぐるは凄まじい暴風と叩きつけるような雨が降り注ぐ場所にワープさせられたのだと知る。
背中に竜巻を発生させ、すぐるは落下を防いでゆっくりと着地する。
「ここは暴風・大雨ゾーンかな? 他にここにワープさせられてる子がいるかもしれないし、早く探して合流しなくちゃ!」
戦闘向きの“個性”持ちならばまだいいが、中には戦闘に向かない“個性”の生徒が単独で飛ばされているとなると末恐ろしい。
生体電流を探るべく探知を行うと、前方約六百メートルに見知った生体電流を持つ者がいた。
「この感じは常闇君! 大丈夫だと思うけど、集団リンチとかにあってたら笑えないよね!」
生体電流にも指紋同様に違いがあり、すぐるはクラス全員の情報を記憶していたためにそれが誰のものか判別がつく。
身体が崖に落ちるようなスピードで駆け出していくすぐる。
「待っててね、常闇君!」
「
『アイヨッ!』
「ぐはっ!」
いかにもチンピラといった風貌のヴィランが黒い影に吹き飛ばされ、意識が沈んでいく。
何人もぐったりと身体を横たえさせ、動けないでいるヴィランたち。
しかし、多勢に無勢という言葉があり常闇は度重なる戦闘でかなり疲弊していた。
「さすがに分が悪いか…………」
「ま、ガキにしちゃよくやったよ。じゃあ…………死ねやぁ!」
「くっ!」
手をドリルに変形させた男は、それを常闇の顔面にむけて突きだす。
万事休すか、と死を覚悟した常闇だったが…………
「な、なんだテメェは!」
「ねえねえ知ってた? 私があなたたちを倒すってこと!」
どこか明るげな声に目を向けると、ヴィランの腕を掴んだすぐるが「やっほー」と塞がっていない方の手を振っていた。
爆豪の時と同様の手段を取ったのか、ヴィランは無言のまま意識を奪われている。
「なめてんじゃねぇぞ、このガキがぁ!」
「波動! 後ろだ!」
「大丈夫、
鉄パイプを振りかざし、すぐるの背後から殴りかかるヴィランだったが見えない何かに弾かれ攻撃はあっさりと無効化される。
『反射』
すぐるを守護する盾であり、敵にとっては自身を傷つけることになる凶悪極まりない力。
攻撃はあっさり返され、結果的に自分で自分を攻撃しているヴィラン。
「ちくしょぉ! 攻撃が当たるどころか、返ってきやがる!」
「なんかタネがあるはずだ! 撃って撃って撃ちまくれ!」
「むぅ~~! また暴力を振るうんだね! 私、暴力は嫌い! だから…………ちょっと強引にいくね!」
重心を前方に傾けると、すぐるはその場から掻き消える。
「ど、どこへ…………ごはっ!!」
先程攻撃を防がれたヴィランの懐にすぐるが現れたと思えば、腹部に凄まじい衝撃が走り吐瀉物を撒き散らしながら昏倒する。
攻撃を終えたと思えば、またすぐるの姿は消え気づいたときにはまた別のヴィランが腹に重い一撃を食らっている。
「POWERRRR!! なんてねっ!」
しゅびっと決めポーズを取り、チロっと可愛らしく舌を出すすぐる。
「テメェ、暴力が嫌って言ってるクセに自分が暴力振るってんじゃねぇかよ…………」
「暴力じゃないよ! POWERRRR!! だよ!」
「いや、わけわかんねぇよ…………」
すぐるの暴論にすらなっていない謎理論を最後に、ギリギリまで意識を保っていたヴィランも気絶してしまう。
「ふぅ。常闇君は怪我は…………ないみたいだね。取り敢えず、この人たちを縛っておこうよ。せっかく倒したのに逃げられたら嫌だもんね」
「感謝する。さすがに一人で二十人もの数を相手取るには俺の実力不足だった」
「気にしないで、ヒーローとして普通のことをしただけだもん。それに…………多人数で一人を苛めるのを見るのは特に嫌いだから……」
「…………そうか。それより、さっきのPOWERRRRというのはなんだ? 個性把握テストの時とも、戦闘訓練の時ともまるで違う戦法だったが」
「え? あ、それはね~」
常闇は一瞬影が差したような表情のすぐるを見て、不器用ながらも話題を切り替えた。
パッと明るげな表情に変わると、すぐるは誇るように先程の戦闘スタイルについてヴィラン達を拘束しながら話し始めた。
「私の個性は『ベクトル操作』って言ってね。文字通りベクトル……つまりは力の向きを操る個性なんだけど、今回の場合は身体の重心を傾けて増幅した身体運動と掛け合わせれば、音速並みに早く移動できるようになるの。殴るときには反作用を何重にも束ねて、無反動でも充分な威力になるけど、確実性を増すためにちょっと強めに振り抜いたの。POWERRRRっていうのは、お姉ちゃんの友達に通形ミリオ君っていう先輩がいてね! 戦法自体もその人の技術を私なりにアレンジしたもので…………」
「む? どうした波動」
話が唐突にピタリと止まり、常闇は拘束の手を止めてすぐるの方に目を向けた。
「オールマイトを殺すつもりだって、あの靄の人が言ってたのを思い出してね。手当たり次第にこの人たちの記憶を覗いたら、詳しいことは知らないみたいなんだけど皆揃って
声音や言動とは裏腹にすぐるの目は笑っておらず、常闇は背筋に凍るような何かを感じていた。
プロフィールとすぐるちゃんの個性の表記が違うのは訳があります。
結構ストーリー上重要なことだったり。